仮面ライダーになれたら   作:赤椿

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みんなはさ、経験ない?将来の夢を書かせるくせに、内容が気に食わなきゃ教科書通りお手本通りの夢を書かせようとする人生の先輩からのありがたい添削ってやつ。

自由記述のくせに、そこに自由なんかなくって、決められたレールを歩く息苦しい自由ってやつ。

酷いときは求めた答えしかいらない癖に「なんでも書けばいい」なんて言っておいて、僕の夢を聞く気はないなんて笑えたよ。その上、聞いてきたと思えば真面目に僕の夢を聞く気はないと来た。あーぁ、本当に笑えるよ、今でも。

あぁ、そうそう。これは記録だから返事はいらないし、聞こえないよ。聞くつもりもないしね。これを見てる有象無象の答えなんてもはやどうでもいいからね。
話を続けるとだね、今話した2点を踏まえてだ、世の中で大人になるということは、願い続ければ夢は叶うなんて綺麗事、空想に夢を馳せるのを時間の無駄、今時はタイパコスパとでも言うべきかな。それが悪いと無駄なんだから、大人になったらポイしちゃいなって暗黙の了解として植え付けてきてると思うんだ。ねぇ、そう思わない?
僕は昔から楽しい夢を思い描くことが好きでね…。でも、おかあさんはそんなことよりも大事なことがあるっていつも言ってたんだ。せんせいもそうだ、それよりも今出来ることをしなさいって叱ってきたんだよ。

だからすごく気になったんだ。子どもの夢は未来の希望とも言うなら、大人になるためにそれを捨てなきゃいけないのは違うんじゃないか?ってね。

なんだか話が脱線してきたかな。とりあえずはだね、僕が言いたいのは、子どもの夢ってのは本当に無駄なのかを世界一の発明家になって証明してみようっ!ってわけさ。

そのために僕は、皆が敷いてくれるレールの上を歩ききった。いやぁ、ついに作ったよ。どんな願いだって、僕の頭の中身を現実に描き足しちゃうスーパーマシン。

本当に大変だったよ。まさにこれこそ、天っ才発明家の僕じゃないと作れない超科学の結晶さ。こんなの作れる人間はあとにも先にも僕だけだろうね。

ちなみに今この辺に撮影時間が出てると思うけどね、このマシンはこの表示の時間の時点で既に動いてるよ。
どこかの映画のキャラが言ってたけど、計画をバカ正直に話して止められるリスクをわざわざ抱えるほど愚かじゃないからね。
既に僕の脳みそが裏返るまでカウントダウンは始まってるってわけ。それはもう、パーンと花火みたいにねっ!

ということで、みんな頑張ってね。ある意味でこれは僕のささやかな復讐の道連れとも言える。それと同時に人類史に残る最大の実験さ。この先変わり果てた世界で、人は夢を叶えて危機を乗り越えられるのか、世紀の大実験だ。エジソンがかつて文明の火を灯した電球の発明ですら足元に及ばないよ、この実験は。


諸君、この実験を生き残るために、是非とも大好きな仮面ライダーになって困っている人々を助けてくれ。
変身して敵を倒す。それだけの簡単なことさ、文字通り馬鹿でもわかるね。



まぁ、ただ願うだけじゃだめなんだよね!僕がひっくり返した世界で力を手にするなんて無理だけどね!

仮面ライダーに変身するには資格がいるんだ。その資格を手にするにはって気になるよね。うーん、そうだなぁ…うーん、おとなになっても、心の何処かでずっとずっと、どうしようもなく心が砕けてしまうくらいに純粋に仮面ライダーに憧れちゃったとか…現実を見ても大人になりきれなかった大馬鹿者、くらいかな。まぁ、そんなに簡単じゃないと思うよ。僕の周りにいた皆にはまず無理だろうね。


おっと、そろそろ時間かな?実はこの記録を撮ってるのはこれから始まる記者会見の直前なんだよね。何を発表するかもぜーんぶシークレットにしてるからみんな期待してるだろうなあ。もうドキドキするね。

世界に向けて、盛大に僕の生命を種火にして花火を打ち上げるためにも準備しなきゃだから、ここいらで記録を止めようと思う。


楽しみだなぁ、おかあさんが願い続けた世界一の発明家になるって夢を叶えたうえで、僕の夢を叶えるんだから。

あぁ、ほんとうにたのしみだ。



心の底から、ね。


その5

 

 

 

 

「手を上げて武器を捨てろ!」

 

 

「ちょいちょい! 待ってよ! 私達敵じゃないって!」

 

 

 ゼロワンに変身していた女性が手を上げながら盾を構えた警官たちに近寄っていく。

 

 フレンドリーな雰囲気を出しているが、警官たちの警戒は解けない。無理もないだろう。さっきまで仲間がやられていた怪人たちを、楽勝……とまではいかないが殲滅してしまった自分たちを守るべき一般人として見ろというのは難しいと思う。

 

「そこのお前! お前も人間か!? 人間なら武装を解除し、投降しろ!」

 

 どうにかして、誤解を解けないだろうか。そう思っていると、か細く、擦り切れそうな声が聞こえた。

 

 

 

「た、助けてくれぇ……!」

 

 

 煤で真っ黒になっているサラリーマンと足を引きずった学生が警察署へと逃げてきたのだ。

 

 

「お、おい、手の空いてるやつはこっちに来い! 救急キットもだ!」

 

 

 先程までこちらを警戒していた警官達が、警察署の門の前で今にも倒れそうになっているサラリーマンと学生の2人に駆け寄って応急処置を行っている。

 

 

「ちょ、ちょっと!? こういうときやっぱ救急車呼ばなきゃだよね!?」

 

 ゼロワンの女性が、学生の怪我の状況を見てうろたえている。

 

 無理もない。立っているのがやっとなのが目に見えてわかるし、何よりその目には今も涙が浮かんでいる。怪我の苦痛と、恐らくは怪我をした状況か原因に対して強い恐怖を抱いているのだろう。

 

 マッハの男は、心得があるのか、救急キットの中身を使い手当の補佐をしている。

 

「おじさん! マジシャンの兄ちゃんは!」

 

 そのとき、警察署の方からランドセルを背負った子どもがこちらの方へ駆け寄っていた。

 

 マジシャンという単語を耳にした学生が、涙を流しながら悔しそうに言う。

 

「あの人を……助けてくれ……あいつ!あいつテレビで見たフェニックスが! あいつやばいんだ! あいつから俺達を守るためにあの人が戦ってるんだ! 助けてやってくれよ! あいつやばいんだ! アスファルトなんかチョコみたいに溶けていくんだ! お願いだ! 助けて!」

 

 マッハの男の腕を掴み、彼は必死にの形相で叫ぶ。

 

「私からもお願いです……」

 

 学生に続いて、サラリーマンの男が口を開いた。その目にはやはり、涙が浮かんでおり、手が震えている。

 

「どうかあの人をッ! 私はいつも、子どもたちに手品を見せていたのをあの道で見ていたんです! あんなに優しい人を、置いてきてしまった……姿が変わっても、私は彼よりも歳上なのに、置いてきてしまったんだ!」

 

 サラリーマンの男は、本当に悔しそうに叫んでいる。警官の胸倉を思わず掴んでしまうほどに。

 

「お願いします! あんなに優しい青年が私達を逃がすために死んでしまったらと考えると、もう私は……私はァ……あぁあ……!」

 

「お、落ち着いてください。その人は今どこにいるんですか?」

 

 警官はなんとか落ち着かせようと、冷静になるように促し、その助けてくれた青年の所在について問う。

 聞き取れた情報から逆算すると、そのマジシャンの青年がいるのはここから走れば十五分ほどの場所だ。

怪我をした人間を連れて歩いたらどれだけかかるだろうか。それも、こんな危険に溢れた街で。この二人は、どれほどの時間を掛けてここまで来たのだろうか。今にも死ぬかもしれないと思いながら、どれだけ……。

 

そう考えると、心のなかで暗い炎が灯る。

 

 メラメラと、炎が灯る。

 

 

「……ッ!」

 

 

 拳を握りしめる音が静かに響く。

 

 

「お巡りさん、俺が行きます」

 

「……なに?」

 

 その場にいたものがこちらに目を向けた。

 

「……さっきの言葉を忘れたか。お前たちには武装解除の上投降を呼びかけている」

 

「わかってます。それでも、僕がその彼のところへ行きます」

 

「そこの二人は、人の顔を見せただけまだ信用に足る。だがお前は未だに顔を出さない!それでも、信用しろというのか!?」

 

 後ろでは未だ盾を構えた警官がこちらを睨んでいる。

 

「信用は、してもらわなくてもいいです。でも、信じて欲しい。僕は……いや俺は!こうして傷つく人を見捨てたくない。こうして力を手にしたからこそ、できるだけ手を伸ばしたい」

 

 膝をつき、治療を受けるために座り込む学生に目線を合わせる。

 

「……あんた、その姿、クウガなんだろ……? あんたは…あんたなら助けてくれるのか……?」

 

 警官とのやり取りを見た彼は不安げにこちらを見る。

 

 表情に浮かぶのは焦燥と不安。そして悲しみだ。それを見てクウガとして何かを言おうとして、昔のことを少し思い出した。

 

 

 それはかつて教室の片隅に書かれていた掲示物。テーマは覚えていないが、作文の課題だった。そこに書かれていた一文がクウガに変身してしまった彼に脳裏に浮かび上がる。

 

 

 [絶望した人間にとっての希望は、差し伸べられた手のひらだ。

 僕は、手を差し伸べる人になりたい。悲しい気持ちをすくい取って上げる人になりたい。]

 

 

 なぜ今思い出したかはわからない。誰が書いたかも思い出せない。だが、何故か今頭に浮かんできた。

 

 クウガになってしまったものとして、きっと今は何かを伝えるよりもこれが一番正しいのだろう。

 

 

言葉ではなく、行動で示す。

 

 

 彼の不安げな瞳に、サムズアップしたクウガが映る。

 

 

 無言のまま差し出されたサムズアップを見て、誰もが何も言えなくなった。

 

 

 そのままクウガは立ち上がり、ゼロワンとマッハの二人にここを任せると言葉を残して、警察署の敷地を出た。

 

 

「おい!」

 

 

 声をかけられた。警官は振り向いたクウガへと呼び掛ける。

 

 

「……マジシャンの青年を見つけたら、ここまで避難してこい! そのとき改めてお前の話を聞く!」

 

 

「だから! かならず戻ってこいッ!」

 

 

 その言葉を受けて、走り出す。

 

「超変身ッ!」

 

 体を青に変え、駆ける。跳ぶ。

 

 段々と熱を感じる。きっとこれが彼の言っていた火の怪物だろう。

 

 薙ぎ倒された街路樹から通り過ぎる際に枝を取り、変化させる。

 

 生み出されたドラゴンロッドを片手に街を駆け抜けた。

 

 

 

 

 

 

 そして見つけた。

 

 

 

 

 

 

『死ね、魔法使い』

 

 

 

「死ねない……ッ! 負けたくない……! 死んでたまるかァァァ!」

 

 

 

 

 

 右足を思い切り踏みしめて飛び込む。大剣の軌跡を遮るように青年の首と刃の間へとドラゴンロッドを滑り込ませ、そのまま敵へとカウンターを入れる。

 

 

 

 

 これが、クウガになってしまった僕と、希望の魔法使いを夢見た青年との邂逅だった。

 

 

 

 

 

 

『一人増えたところで、変わらねぇ!』

 

 

 フェニックスが放つ炎が弾丸のように放たれる。

 まるで今までのが遊びだったとでも言うように、炎の密度が高い。

 先程までのウィザードであれば、フレイムスタイルで受けていればその一撃で戦闘不能に陥っていただろう。

 

 

 だが、彼は今一人じゃない。

 

 

 横に並んでいたクウガが一歩ずつフェニックスへ向けて歩みを進めながら、八相の構えでもってフェニックスの炎を迎え撃つ。

 

 炎は振り下ろされたタイタンソードにより四散し、爆発。クウガの銀色の装甲は、原典においても爆発炎上する体液を限界まで受け切り、耐えきった頑健さを備えている。

 

「……ッ!」

 

 だが、それでもクウガも無傷というわけではない。銀色の装甲には焦げ跡がつき、声を噛み殺している。長くは持たないことはフェニックスにも悟られている。

 

 このままであればクウガの耐えられない火力を持って、フェニックスがすべてを灰にして勝利するだろう。

 

 

 

 だが、ここにいるのは仮面ライダーは一人ではない。

 

 

 クウガの叩き斬った炎。それはフェニックスの魔力により形成されたもの。つまり、同じ魔法使いである仮面ライダーウィザードに、その魔力を利用できない道理はない。

 

 ウィザードはその身に纏う魔法衣を翻し、散逸した炎を自身の魔力として還元吸収、ウィザーソードガンに装填した。

 

「マジシャンからのとっておきファンサービスだ!」

 

 吸収した魔力をウィザーソードガンで撃ち返す。

 放たれた弾丸は、目にも止まらない速さであるにも関わらず、あまりの熱量で赤熱していることがわかるほどに魔力で強化されており、流れ星のように白い軌跡を残した。

 

 

 

 フェニックスは弾丸を受けることをしない。込められた魔力量を見て、自身の練った元の魔力がどれほどの威力を持っているかを理解しているからだ。追尾してくるウィザードの攻撃に対してフェニックスが選択した行動は、同等の魔力量を込めた炎による迎撃。

 

 その手に持った大剣を地面に突き立て、自身を囲うように地面から炎を噴出させた。

 

 

 瞬間的に注がれた魔力量は先程クウガへと放った炎よりも遥かに多い。

 

 炎の壁にぶつかり、ウィザードの弾丸は弾かれて火花を散らした。

 

 

「……ッ! この距離なら、ぶった斬れる!」

 

 

 だが、ここでフェニックスは致命的なミスを再び犯すことになる。それは、ウィザードの見せかけの誘導にまんまと再び引っかかってしまったことだ。

 

 ウィザードの指に光る指輪が、先程嵌めていたコピーから変わりエキサイトになっていることにフェニックスは気が付かなかった。

 

 

まず一つ、クウガの最初の歩みが、一歩一歩踏みしめて歩くようにしていることが、移動速度を誤魔化すアドリブだということに気づかなかった。

 

二つ目に、魔力吸収の際に発生した炎の渦で、付け替えていたウィザードリング〈エキサイト〉を発動していたことに気づけなかった。

 

 

 ウィザードの魔法により、脚力が強化されたクウガ タイタンフォームは、炎の壁により視界を自ら遮ったフェニックスへと駆け出す。頑健さと引き換えに捨てられた機動力の低下という弱点を、ウィザードの魔法により筋力強化という強引な解決をしてみせたクウガはマイティフォームと変わらないスピードでフェニックスへと接近。

 タイタンソードをその勢いのままに振り下ろす。炎の壁ごとフェニックスの肩口から腹までを切り裂き、返す刀で更に一閃。

 

 

『ガァァアッ!? く、そが! ぶっ殺すッ!』

 

 

 タイタンソードの重量級の一撃により、不死を宿すフェニックスも苦悶の叫びを上げる。

 だが、ただでやられるフェニックスではない。怒りのままにタイタンソードを振り抜いた姿勢のまま、胴ががら空きとなったクウガに渾身のボディブロー。

 

 

「オッ、ぇ……ッ!」

 

 そのままウィザードの下までクウガを吹き飛ばす。

 

 あまりの威力にクウガは立ち上がることができず、腹に伝わる衝撃で喋ることもままならない。

 

「クウガさん!」

 

『魔力もねえやつが……! 良くも俺にこんな傷を……ッ!』

 

 

 フェニックスはクウガを追うようにして、大剣を振り上げたまま空へと跳ねた。

 

 ウィザードは倒れているクウガの前に立ち、フェニックスを迎え撃つ。

 

『死ねェ!』

 

 振り下ろされた大剣は重力を味方につけ、今までとは比較にならない衝撃をウィザードの腕に与えた。まともに受けたら腕をへし折られるかもしれないと咄嗟に判断したウィザードは、そのまま大剣を受け流し、体を捻りながらダンスを踊るように大剣を受け流した勢いのままにフェニックスへキックを放つ。

 咄嗟の返しということもあり、大した威力ではなかったが、フェニックスが後退り距離を取ることに成功したウィザードは、ウィザーソードガンを見て驚く。

 

 今の一撃をウィザーソードガンの刃先で滑らせたにも関わらず、若干の刃毀れが出来ていた。

 

 

 

『クソッ! 慢心なんてもうねぇ、全力で殺そうとしてるのに、こんな傷……!』

 

 フェニックスは、もはや仮面ライダーだけではなく、自分自身にも苛ついている。

 

 慢心なんて勿論していない。殺すための魔力も惜しんでいない。なのに、なぜ殺せない。

 殺せないばかりか、この胸に斬撃が2回も刻まれた。

 

『……だが、こんな傷。このフェニックス様に取っちゃただの掠り傷でしかない』

 

 それでも彼には不死身という驚異的な強さがある。

 

 炎が傷を奔り、繋ぎ合わせる。

 

 

 

「ハァ……ッ、は、は……それ、どうかな……」

 

 タイタンからマイティへと戻ったクウガの声が静かに響く。

 

 

 それと同時にフェニックスが、胸を抑え始めた。

 

 

『……なっ、グ、ぁ、ア! な、なんだ……!? なぜ癒えない? 傷が、治らない!?』

 

 フェニックスは胸の傷口を抑えた腕を開き、傷を確認する。

 

 そこには、フェニックスの炎をかき消す、赤く光る封印の古代文字。

 

 

「クウガの力は、封印。確証はなかったけど、お前にも通じるみたいだ」

 

 

 グロンギを封印する力、驚異的な再生力を持つ彼らに傷を与えるクウガの封印エネルギーは、フェニックスの体を構成する魔力に対しても有効打になり、彼の体へと真に刻みつけていた。

 

 

『そんな……ばかな! 魔法使いでもない野郎に、俺の力が!?』

 

 

 2度斬りつけたときに流し込まれた封印エネルギーは、彼の体を蝕み終わらない痛みを与え続けている。

 

 

『バカな……! この俺様が……、こんなとこで……!』

 

 ダメージが残りふらついているクウガを起こすのを手伝い、ウィザードは指輪を付け替える。

 

「これで、フィナーレだッ!」

 

【ルパッチマジックタッチゴー!】【ルパッチマジックタッチゴー!】

【キックストライク!】【サイコー!】

 

 

「ここでお前を逃すわけにはいかない。終わらせる……ッ!」

 

 

 クウガは腰に手を当て、狙いを定めるように右手をフェニックスへと向ける。

 

 アマダムが赤く光、エネルギーが迸る音が鳴り響く。

 

 

 

 ウィザードとクウガが同時に駆け出す。

 

 ウィザードはその勢いのまま途中から地面に手をつき、体を宙に跳ねさせ、体操選手のように宙返りを繰り返す。

 

 クウガは右足裏に封印エネルギーを集中させ、トップスピードに到達したところで、空中へ跳ぶ。

 

 

 

 ウィザードとクウガ、二人の仮面ライダーは同時に宙へ跳び、高く空へ舞い上がる。

 

 

 ウィザードは右足に多重展開された魔法陣を。

 

 クウガは右足に限界まで圧縮集中させた封印エネルギーにより燃えるように輝きを放つ。

 

 

 

 

『こんなとこで、俺が、フェニックス様が負けるわけねぇだろォ!』

 

 

 

 フェニックスは空からこちらへと迫りくる仮面ライダーに向けて、大剣に炎を込めて、振りかぶる。

 

 

 

 二人の仮面ライダーが空に赤い軌跡を残しながら、渾身のライダーキックを放つ。

 

 それに合わせて大剣で迎え撃つフェニックス。

 

 

 3つの赤い光がぶつかり合った瞬間、勝敗は決した。

 

 

 フェニックスの大剣は甲高い音を響かせながら、真っ二つに折れ、仮面ライダーのライダーキックは、フェニックスの胸をくだき、フェニックスは吹き飛び、地面に倒れる。

 る。

 

 

 クウガとウィザードは、フェニックスへ放った蹴りの勢いのまま反転宙返りし、そのまま元の位置に戻る。

 

 肩で息をしながら立ち上がった二人の足からは白煙が立ち昇り、その威力を静かに物語る。

 

 

『み、認めねぇ……』

 

 仰向けの状態から、立ち上がろうとするフェニックス。しかし、二人の仮面ライダーによる渾身の一撃が効いているのか、立ち上がろうと地面につく腕は目に見えるほど震えており、体の制御が効いていないのか全ての動作が精細さを欠いた大振りなものになっている。

 

 

『もっと燃やしてぇ……壊してぇ……闘いてぇ……』

 

 

 折れた大剣を地面に突き立てるも、もはや半分となった刀身は杖の代わりにもならず、そのままうつ伏せに倒れ込んでしまう。

 

『……そうだ、闘いたいんだ、もっと。指輪の魔法使い……テメェともっと殺し合いてぇ……ッ! もっと! もっと……!』

 

 最後の力を振り絞ったフェニックスは立ち上がり、ふらふらになりながらも一歩、また一歩と二人の仮面ライダーに近づいていく。

 

 クウガはそれを見て、もう一度構えるが、ウィザードがそれを手で制した。

 

【コネクト】【プリーズ!】

 

 ウィザーソードガンを剣にして、ウィザードも同様にフェニックスへと歩き出す。

 

 お互いの間合いが、剣1本分まで近付く。

 

 

『俺の不死身の力は、もう使えない、今なら俺を殺せるぜ、魔法使い』

 

「俺は……、皆から平和と笑顔を奪ったお前なんかこのまま死ねばいいと思ったよ、フェニックス」

 

『ハッ! マジシャンを名乗るくせに物騒な事言うじゃねえか』

 

「……あぁ、そうだ。俺はマジシャンだ。種も仕掛けもある見せかけの魔法使い。だから、ショーの幕引きは、この戦いの終わりは俺が締める」

 

 “さぁ、ショータイムだ! ”

 

 あぁ、そうだ。きっかけは奇跡、巻き込まれたのは偶然。それでも、このショーは俺が始めた。

 だから、フィナーレは俺がきっちり締めくくる。

 

 

 ウィザーソードガンを両手で持ち、構える。

 

 

 折れた大剣を持ち、体から噴き出す炎を刃に纏わせた、文字通りに最後の一撃に全てをかけたフェニックスが大剣を大きく振りかぶる。

 

 

 

 勝負は一瞬。

 

 

 

 振り下ろされた刃は、炎を纏ってウィザードの体を飲み込むほどに大きな棍棒のように迫りくる。

 

 

 それに対してウィザードは、種も仕掛けも使わない。

 

 

 前傾姿勢のまま、倒れるようにフェニックスの懐へと入り込み、ウィザーソードガンの剣先を突き立てた。そのままウィザーソードガンを捻りそのまま横一文字に一閃。

 

 ウィザードが懐に入り込んだことで最後まで振り下ろせなくなった腕は大剣を落とし、力なく垂れる。

 

 

 体から吹き出ていた赤い炎が徐々に小さくなり、炎によって抑えられていた封印エネルギーがクモの巣状にフェニックスの体を包み込む。

 

 そして、体中にヒビが入るように迸るエネルギーによりフェニックスの体は爆発を起こす。

 

 

 

 火柱が立ち昇り、彼の体に内包されたエネルギーが全て放出されてようやく爆発の炎と煙が収まった。

 

 

 

 

 爆発の中心に立っていたウィザードは、黒い魔法衣を焦がし、身につけた宝石状の装甲がひび割れながらも、その場に立っていた。

 

「これにて……閉幕……。……なんて、ね」

 

 クウガはぼろぼろになったウィザードを見て息を呑んだ。散ったフェニックスの炎により生まれた陽炎で輪郭がぼやけているが、それでも、先程の爆発に巻き込まれたらひとたまりもないだろう。

 

 

 そのまま、ウィザードは晴の姿に戻り地面に倒れ込む。

 

 

 変身が解けた彼に、クウガが慌てて駆け寄った。体には切り傷もあれば、今の爆発による火傷も見受けられる。

 

 

 

 息はある。血だらけだが、何故か見た目よりも傷が浅いように見える。

 

 

 

 

 〈初めての戦いで、不死鳥を乗り越えるとはな。その勇気と偉業を称えて、今回は俺の魔力で傷を癒やしてやろう。〉

 

 

 彼の指のフレイムウィザードリングに反射した風景にドラゴンが写ったことに気付くものはいなかった。

 だが、誰に気づかれなくとも、ドラゴンの力で晴の命は繋ぎ止められた。

 

 〈お前には……いや、お前達にはまだ乗り越えなきゃいけない壁がある。それまでは、ゆっくり休むといい。〉

 

 

 クウガに肩を貸してもらいながらなんとか歩いている晴は、指輪に視線を落とす。

 

 ドラゴンの声は、彼に届いてはいない。

 

 だが、体の中を駆け巡った燃えるような魔力は、きっとドラゴンのものだろうという確信があった。

 

 

 色々考えたいこととか、ドラゴンに聞きたいことはある。

 

 しかし、今は後にしようと晴は全ての思考を頭の隅の方へとしまった。

 

 とにかく、今はただ眠りたかった。地獄のような戦いと、夢のような時間の2つを抱いて、ただ、眠りたかった。

 












おっと、そうだ。最後に僕の夢を教えとこうかな。

皆覚えておくといいよ。これは、名前も覚えてない誰かに馬鹿にされて、肉親にさえ取り合ってもらえなかった哀れな子どもの末路なんだからね。


そう、皆が気になるであろう僕の夢はね。


テレビで見た仮面ライダーに変身できる、本物のアイテムを作りたかったんだ。


どう?くだらないって思った?そんなことって思っちゃった?皆は何を思ったかな?きっと皆がこれを聞いて思ったこと、それがある意味でこの実験の解だよ。くだらないなんて馬鹿にされちゃったけど、僕は今見事にやり遂げて、そして叶えたよ。
ただ願うだけじゃ変身できない、仮面ライダーを現実にするマシンを作った。もちろん、仮面ライダーと言えば怪人も出ないと駄目だからね、街も人もめちゃくちゃにできるように現実に描き足すよ。

お膳立ては全部してあげたからさ、是非とも仮面ライダーに変身して、僕の夢を完成させてくれたまえよ。
できなきゃ皆死ぬだけだよ。
僕くらいイかれてる奴がどれだけいるか知らないし興味ないけど、まぁせめてシリーズ分はコンプリートしてくれないかなぁ。日本の人口は一億人はいるんだからさ、そのうち数十人くらいはそうあってくれない?

あぁ、おかあさん、待って、泣かないでよ。大丈夫だよ、これで皆死ねば、ぼくはおかあさんが願った通り世界一の天才児になるから、皆死んで世界が終われば、僕のあとなんていない。世界一の発明家のままでいれるよ。よかったね夢が叶って。おかあさんの夢も叶えることができて僕は本当に嬉しいよ。これが親孝行ってやつかな?


それじゃあ、改めてみんな頑張ってね。こんな現実で仮面ライダーになれるくらいにイカれた人間が一人でも多いことを祈って明日の朝日を願うといいよ。
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