カルラディア帝国戦記   作:カルラディア帝国

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前カルラン歴6年(地球暦2184年)その日、ガミラス大公国を揺るがす大事件が起こる……

これは、カルラディア帝国が興る前の出来事___


-Prologue- 遥かなる航路(たびじ)

 

無限に広がる大宇宙__

 

静寂な光に満ちた世界__

 

死んでゆく星もあれば、生まれてくる星もある__

 

そうだ、宇宙は生きているのだ__

 

広大な宇宙に比べれば、我が国の繁栄など、ほんの一瞬の出来事でしか無いのだろう__

 

しかし、その一瞬の時を我らは生きている__

 

 

 

我らを育みし、母なるマゼラン……

 

大きく歪み始めた故郷(ガミラス)を見限り、この宇宙に飛び出して早5年……

 

全ては、ガミラスに変わる新たなる国を興す為……

 

今は亡き我が主(殿下)との約束(・・)を果たす為に……

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

前カルラン歴40年代後半(地球暦2140年代後半)、ランクルス・ヴェム・デスラー大公時代に、作られた組織、その名も国家保全機構(・・・・・・)

それは、行き過ぎた純血主義者や保守過激派を内政から隔離する為に作られた、所謂形だけの組織(・・・・・・)であった……

 

前カルラン歴35年(地球暦2155年)にランクルスが一線を退き、息子であるエーリク・ヴァム・デスラーに政が移ると世の流れは変わり始める。

 

彼は国家保全機構に隔離されていた職員に目を付けたのだ。

 

内政から隔離された存在と言えど、官僚にまで登り詰めていた彼らの能力は本物。

その能力を活用するための"とある方法"を思いついたのだ。

 

その方法とは、新天地の探索(・・・・・・)

 

滅びを定められし星ガミラスは、着々と滅びへの時計を進めている。

そんなガミラスに変わる新たなる大地を、彼らに探させようとしたのだ。

 

前カルラン歴32年(地球暦2158年)、エーリク大公は彼らに「セカンド・オーダー」と新たな名を与え、その組織の運用を開始したのだった__

 

一方でエーリク大公には、”最早混血もやむなし”と云う考えがあり、それ以前のガミラスの政策とは打って変わり、2等臣民や非純血主義者との融和政策を進め始めた。

 

前カルラン歴22年(地球暦2168年)、エーリクの融和政策は一定の成果を得ていた。

それは最早、成功と言っても過言では無い程に。

この成功受け、エーリクは遂にセカンド・オーダーの改革に着手する。2等臣民や非純血主義者を組織に配属したのだ。

 

しかし、そんな状態を保守派の塊とも云うべきセカンド・オーダーが早々受け入れる訳も無く、政府への反発が強まっていくこととなる__

 

前カルラン歴15年(地球暦2175年)、融和政策の実施から7年余りが経ったある日、セカンド・オーダーの過激保守派よる暴動未遂事件が発生した。

 

犯行グループの確保には成功したが、この事件を受けエーリク大公は、セカンド・オーダーの反乱を危惧。

彼らを抑える為、若干17歳にして政権幹部や軍部・臣民より広く信頼を得ていたマティウス・デスラーをセカンド・オーダーの"特別顧問"に就かせた。

そして彼の側近であった私、ロドルフ・クルークがセカンド・オーダーのトップである”大将軍”へ就任した。

 

幾ら次期大公と名高い殿下が居ようと、完全な部外者である我々が突然組織に割り込めば、今まで以上に強い反発を呼び、それこそ大公閣下の危惧していた”反乱”といった事態も考えられた。

しかし大公は、私たちが組織内の過激派を抑え、組織の改革に成功すると信じていた__

 

大公の確信にも似た思いは現実と成った…

私たちは着実に仲間を増やしていったのだ。

我らの考えに反対していた者達にも根気強く訴えかけ理解を求め、地道に支持を得ていた。

 

 

確かに支持を得ていたのだ……

だと云うのに…、だと云うのに何故あの様な事(・・・・・)に……

 

……、その日の事は今でも昨日の事のように覚えている

いや、決して忘れてはならない記憶だ

あの時私は、いつもの様に殿下と”交渉の成果”について話をしていた___

 

ー前カルラン歴6年《地球暦2184年》ー

 

「全く、あの石頭共(大バカ共)には困ったものです」

「そうぼやくな、ロドルフ」

 

1日の業務も終わり、殿下を大公私邸へ送り届ける帰り道、私はその日の保守派への交渉(・・)の愚痴を漏らしていた。

 

「しかし殿下、彼らは!」

「言いたい事は良くわかる。しかしな、我らが愚痴を言ったところで何も変わらないだろう?」

「それはそうですが…」

「根気強く交渉を続ければ、彼らもいずれ理解を示すさ」

「しかし、あの頑固親父共、聞く耳を持ちませんよ…」

「かもな。だが、既にセカンド・オーダーの6割が我らに理解を示し賛同してくれた。これは、”根気強い交渉”の成果だろう?」

「そう、ですね…。少し、頭に血が上っていた様です」

 

そんな話をすると、ふと殿下が私にある約束(・・)をしてきた。

 

「ロドルフ、私は後数年で公位を継ぐ」

「存じております」

「その時もお前は、私の傍にいてくれるか?」

 

少し不安げに殿下が問いかけてきたことを覚えている

 

「無論です。私はあなたに忠誠を誓った身。どこまでもお供しますとも」

「そうか…、それが聞けて良かった。…、ロドルフ、私は一つ約束しよう」

 

「私は、”民に寄り添った政治”を行う」

 

突然どうしたのかと思った。何しろ当時のエーリク大公は、十分すぎるほど民に寄り添っていたからだ。

だからこそ、私は聞いたのだと思う

 

「今も十分民に寄り添っていると思いますが…?」

「あぁ、確かに寄り添っているように思うよ。1等臣民(青い肌の民)には」

「では、殿下は…」

「私は、”1等臣民”だとか”2等臣民”なんてくだらないと思っている。だからこそ、等級の区別無く、ガミラスに住まう民達が皆平等に、そして平穏に暮らせる世界を作りたい。そのために私は”民に寄り添った政治”を行うのだ。」

 

目が覚める思いだった。

確かに殿下の言う通り、我ら青い肌の1等臣民はエーリク大公の政策によって、これまで以上に平穏に過ごせていた。

しかし、併合地域の2等臣民等への待遇は、確かによくない。

そんな彼らをも救おうというマティウス殿下は、やはり”王の器”なのだろうとさえ思った。

 

だがその直後、事態は一転した

我らが話に花を咲かせているときに、割って入ってきた者がいたのだ__

 

 

あの時、私がもっと早く気づけていれば……

 

 

「マティウス・デスラーだな」

 

唐突に名前を呼びつけた男は、フードを目深に被り、いかにも怪しい雰囲気を醸していた。

 

「何者だ!」

 

ふと嫌な予感がして、腰に着けていた銃へ手を伸ばした瞬間

 

「天誅‼」 

 

男が叫んだ

 

それと同時に、懐に隠していた銃から、破裂音が3回鳴った。

男が殿下に銃弾を撃ち込んだのだ

人が銃弾に勝てるわけもなく、撃たれた殿下はその場に倒れ伏した

紫の血を流しながら…

 

男は私にも銃を向け、殺そうとした。

しかし寸でのところで警察が到着し、男は走り去っていった。

後から分かった事だが、殿下を撃った犯人は、大公国軍の中でも指折りの保守過激派の人物だった。

すぐに駆け付けた警察は、偶然付近を警らしていた者達で、不審な破裂音を聞きつけ駆け付けたそうだ。

だが、殿下には遅すぎた。

 

殿下はその場で、息を引き取っていた__

 

その日、次期大公であったマティウス・デスラーは、26歳という若さでその生涯を終えた。

奥方と、お腹にいるお子を残して……

 

時に前カルラン歴6年(地球暦2184年)、春の出来事であった…

 

殿下の暗殺以後、ガミラスは明らかにおかしくなってしまった……

葬儀の日、示し合わせた彼の様に軍部・政財界、そしてセカンド・オーダーの保守派が合流し、一つのコミュニティを形成、1週間と経たないうちに保守過激派、純血過激派が政権内部に浸透するようになった…

 

マスメディアに圧力があったのかはわからないが、それぞれのメディアはこれらの出来事を好意的に報じ、やがて臣民達もその事に疑問を抱かなくなっていた__

 

しかしこれは明らかにおかしい!軍部政治、独裁政治に国が舵を取り始める前に何とか修正できないか模索した。

しかし、それもかなわず…

果てはセカンド・オーダーの融和派上級将校が謂れの無い罪で投獄されるといった事件が発生。

これを受けて私は、「ガミラスに未来はない」と断じ、ガミラスからの独立を求め半年にわたる激しい闘争に身を置くことになった__

 

ついぞ我らの願いはかなわなかった……

だからこそ私は、彼の国を離れる決断をしたのだ

我らに続いた者達を集め、臣民、軍部、政界問わず、今の政府に疑問を持つもの、融和派、旧マティウス派に結集を呼び掛けた

この国を離れ、新たなる国家を興すために……

 

そうして前カルラン歴5年(地球暦2185年)、セカンド・オーダーは、我らに続く者たちを従え、長い放浪の旅を始めたのだった……

どこへ行くとも知れぬ、長い放浪の旅を___




次回、第1話「我が航路に光を求めて」

大マゼランを飛び立ち5年…、新たなる銀河へ、彼らは足を踏み入れる__
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