カルラディア帝国戦記   作:カルラディア帝国

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ポルトメルシアに寄港する事を決定した放浪艦隊…
しかし、未知の銀河の未知の惑星という事もあり、惑星の資源調査の為、特別編成の調査隊を先行しポルトメルシアに降下させていた___

これは、その調査隊隊長"ウィンブライ・インザール"の物語…


-side story-  蒼き杜に芽吹くもの

子どもの頃、いつもおとぎ話に出てきた星がある。

 

はるか昔に輝いた星がいて、その星の祝福が航海に出る人の道標になった。故郷の星に近くて、その傍で輝いているその星を、人々は航路の神“ハーマリア”と呼んだ。

 

ハーマリアは、いつも航路を見守っていた。だけども、人々は故郷の星へ帰る時の道標にしか思っていなかった。

 

いつしか故郷の星に嫉妬したハーマリアは、有り難みを理解させようとして巨大な輝きと霧の海で故郷の星への航路を覆ってしまったのだ。

 

それで、人々は故郷に帰れなくなってしまったのだと…。

 

 

今、私の目の前にあるのはそのハーマリア星。そして、真下にあるのはハーマリアの惑星“ポルトメルシア”。最近になって発見された惑星は、当初予測されていたより安定した温度の星だった。

 

観測によると、ハーマリアは原始星からTタウリ型星になったばかり。つまるところ、原始星末期に起きた出来事が神話として記録されたのだろう。つい、歴史学肌の私はそう帰結させてしまった。

 

だけども、現実の冒険というものは常に私の予想を超えてくる。それはセカンドオーダー成立以降の私の目の前で起きたことを総括しての帰結だ。

 

滅びに瀕した民族を憂い閣下に率いられた我々の一行は、さらに険しい道に踏み入れていた。そして、やっと見つけた光明が神話に出てきたハーマリア星だった。

 

私の経歴は社会科教員から官僚になり、そしてまさかの冒険家になった。ハーマリア星系第3惑星をポルトメルシアと名付けた閣下に、不確定だが先見の名を感じてしまった。星系の主はまだ原始星から毛の生えた程度で、もっと隕石とか散乱してるはずなのだ。

 

だけども海があり、人が住めるだけの大気がある。

 

これがどれだけの恵みか、惑星科学の基礎が絡む歴史科まで教えてきた者としては、ここで子どもたちに授業を開きたい程だった。

 

だけど、調査隊としては子どもたちを生かせられない。先生が安全確認をしなければならない。これ以上仲間に空腹や渇きで苦しんでほしくない。

 

調査隊に志願した私と、小さな小鳥の艦長は一隻のハイ級を率いポルトメルシアに降りた。

 

 

大気にぶつかった時に起きる熱と輝き、いつも降下する時は肝を冷やす。されどそれが終わった時の、一種の重圧から解放された感覚は自分がまだ無事であることを証明している。

 

「艦隊各部、異常はないですか?」

「機関室、正常です」

「第一から第七ブロック、異常ありません」

「外の様子は?」

「外気温23°C、惑星大気圧1008hPa。大気組成も観測通りです」

 

姿勢を安定させ、前人未到のこの大気に船を委ねる。

 

肩に乗っていた小鳥が羽ばたいて、私の上…艦橋の窓で旋回する。本能的に「美味しいものがある!」と感じ取ったのか、外に出たがっている。

 

「副長、着水準備」

「え、えー!?」

 

全員をシートベルトに縛り付けたのちに、船を着水させる。この衝撃も久々なもので、辺境惑星の修学旅行の帰りを思い出す。

 

だけとも、目の前の鮮やかな青い海と明るい空はどの星でもみたことはない。何か、いいことが起きる前兆の様に思えた。

 

「あ、こら!」

 

ちゅりりり、と言葉を残して小鳥の艦長は空に羽ばたく。やはり鳥には船は狭すぎたのか、彼とは学生時代からの付き合いだった。

 

旅に別れは付きものと、強引に帰結した私は彼が行った先を眺める。甲板に上がって、この星の大気を吸った。

 

「空気、水…命…綺麗な空」

 

ふと見上げると、ハーマリアが私たちを見守っている。清々しい気分だ。全員に外に出るように告げて、調査隊を編成。レーダーで一番近い土地を策定し、舵を取る。ゆっくりと、古のクルーズ船の様に。

 

合間に、この海が飲用に耐えるのかを確認する。

 

「先生、これ!」

 

かつての教え子が、私についてきてくれていた。彼は科学者になっていて、水の分析を行ってくれている。彼の元に行くと、大はしゃぎで私に近寄ってきた。

 

「今は先生じゃないんだけどな…」

「先生、これ…有機化合物の痕跡はありますが、濾過すりゃ飲めます!」

「有機化合物だと!?」

 

汽笛が鳴る。間も無く陸地に到着する合図だった。

 

陸地が迫り、私は目を疑った。もう、植物があるのだ。ある惑星では、原始惑星から生命の誕生まで30億年以上はかかると研究が出されていた。つまり、この星は短期間でかなりの進化を遂げていた可能性がある。

 

「先生…これ」

「半舷上陸、準備して」

 

あわよくば、我々にとって有用な…食べれたり薬用になるものはないのか、船の指揮を副長に預けかつての教え子と共に上陸をする。

 

「いやぁ、すごいですね!」

「まさかな…検査してみろ、まずこれは本当に植物なのか?」

「はい、今しがた検査しましたが…紛れもなく植物です」

「だとしたら、せめて湿布になるものは持ち帰らないとね」

 

長い艦内での生活、時に採集のため惑星に寄ることはあっても大手を振って空気を吸って歩くことはなかった。ここは足元を覆うように草花が生え、楽園のようとはまさしくこのことだった。

 

「失われた、理想郷…だなぁ。薬用になる植物とか、あっただろうか?」

「先生!」

「ど、どうした?」

 

私の後方をついて来た部下がついに空腹の余り、そこら辺の草を片っ端から食べて吐いてしまったようだ。急いで救護班を呼びつつ、どうにか応急キットの中を漁る。

 

「なけなしの水…だがもう、我慢しなくていい!」

 

思いっきり水を飲ませ、解毒を試みる。だが、少年は顔を真っ白にしてのたうち回るしかなかった。

 

「先生…救護班、恐らく間に合いません」

「わかった…介錯の準備を」

 

震える手で銃を構える。狙うは頭、全ての感覚を司る所。せめて苦しまずに逝かせてあげる事が、彼へのせめてもの弔いだろう。私も民間上がりだが、彼もよくやってくれた。

 

引き金を引こうとした瞬間、なにかが私の視界を横切った。

 

「ちゅりりり!」

「艦長!?無事だったか!」

 

艦長が咥えていたのは、小さな木の実。私の手にそれを落とすと、勇敢な小鳥の艦長は頬擦りをする。

 

「まさか、これ…」

「イチかバチかです、あげてみましょう」

 

木の実をすり潰した顆粒を、少年の口に飲ませて元生徒が持っていた水で喉に流す。すると、少年は苦しそうな顔から一転、すーすーと寝息を立てた。

 

「先生…!」

「あぁ、よかった。」

「隊長殿!」

「救護班か、頼む…彼を船に」

「隊長殿は?」

「もう少し、艦長と優秀な教え子とポルトメルシアを探検する。夕方には帰るから、後よろしくね」

 

ちゅりりり、と小鳥の艦長も意気揚々と鳴くと、より奥へと3人で足を進める。

 

………

 

少し深い森の中、人食い植物とか毒を出す植物がいる危険性を加味しつつ入ってゆく。どうにも、この星はまだ動物種は存在していないらしい。

 

有機化合物の報告と照らし合わせると、腐葉土はあるかもしれない。そこから微生物を検出できれば、この星での感染症のリスクも把握できる。

 

「その点、我々は帰還即除染対象だろう。艦長も」

「じゅりりり!」

 

少し怒りの表情を露わにしたのだろうか、けたたましく鳴いている。以前、私も艦長も受けた処置。高音の熱湯やら強風やらかけられて、かなり大変な事だ。

 

「だけど、それだけこの任務は重要なものさ。」

「ですね、少年が可食と有毒を分析してくれましたし、艦長が解毒になる木の実を持って来てくれましたもの」

「今度は君も受けるんだよ?」

 

少し唖然とした表情で、私をみている。小鳥の艦長も、また私の肩から離れている。

 

「せ…先生」

「ん?そんなに不満?」

「いや…違くて」

「ちゅるりら!」

「ん、なんか暗い…え!?」

 

素っ頓狂な声を出してしまった。

私たちは、大きな船が墜落しているのを見つけてしまったのだ。

 

「少なくとも、ガミラスではございません」

「見たらわかる。艦長、はぐれるなよ」

「ちゅりり!」

 

船の入れそうな所を探し、ハッチであろう場所を叩く。だがどうにもパワーが足りず、銃で強行突破する。よく考えれば、この辺りの木だけ少し若い。逆算すれば、周囲の木々が育つサイクルを少し遅れてやっている。年輪の周期が分かれば、どうにかなる。

 

教え子に年輪を確認するように言うと、私は巨木と腰のベルトをロープで繋ぎ、船内に突入する。

 

船内は、周囲とは空気が違った。戦場のピリ付いた空気。

軍手を付け直し、銃を構えて慎重に内部に入る。

 

「妙に、静かだな…」

 

ガコン、何か遠くで音がした。咄嗟にその方向に銃を向けるも、何もいない。思い切って、そちらの方向に行くと、小さな原生生物を発見した。

 

「君たちは…?」

 

明らかに原生生物じゃない、もふもふな変な生き物。それが何か、明らかに白骨化した死骸に木の実を与えている。小鳥の艦長も、お供物を食べる気にはならない。

 

「そうか…ご主人様だったんだね。」

 

この船の守り人に深く敬礼をしたが、ご主人様だったものが横たわっている大きな構造体に目が行ってしまった。

 

「これは…おーい!」

 

その構造体は、明らかに我々のものとは違った大砲。カノン砲、といった所だろうか。

 

墓荒らしにならない様に、気をつけて生徒と二人で検証した。口径はハイ級の3倍位か、そして増幅機構が付いた薬室。かなり技術の高い文明の産物である、と言えるだろう。

 

だとしたら、ここに墜落したのは何年前か分からなくなる。というより、文明の発展なんてどこが先かなんて分からない。年輪によれば、少なくとも300年前には墜落しているのだとか。

 

「だとしたら、君は実に健気だな…。私も少し、分けてくれないか?」

 

そのご遺体に花を手向けた後、自分たちに最大限に出来る、検証とスキャンを行い後方から来るキャンプ隊と合流。母船に日暮までに帰る事は出来なかった為に、キャンプで一晩を明かす。

 

「いやぁ、久々に惑星でのキャンプですな」

「そうだね、今日は豪勢にやろうか」

 

久々にエネルギーバーではなくサンドウィッチを食べれる。それも、ポルトメルシアの野草と干し肉のサンドだ。美味しい開拓メシだ。

 

「いやぁ大手柄ですな、隊長殿」

「え、そうなの?」

「上の連中、隊長のおかげで一等航宙艦以上の主砲を作れる!だの今のビーム砲より仰角上げれる!だの、食料問題解決!だのと騒いで仕方なかったんすよ」

 

例の沈没船のデータと、食用植物のデータは既に上…即ち軌道上に残る艦隊に送られていた。ふと、かつての神話を思い出した。

 

「その星の祝福が航海に出る人の道標になった…か」

「隊長殿?」

「先生?」

「ちゅりり?」

 

故郷の星、そしてハーマリアを道標にした人々もまた…こうやって住める惑星を、開拓していったのだろうか。




執筆:ウィンブライ・インザール/宮島織風

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