カルラディア帝国戦記   作:カルラディア帝国

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カルラン暦元年(地球暦2190年)カルラディア帝国が建国された。
新国家の建国直ぐに、ハーマリア星系で遭遇した敵海賊艦隊が襲来。
クルーク指揮の元、これを返り討ちにしたのであった____




栄光と技術の躍進

ーーー惑星ヴィルディア 表彰式ーーー

 

海賊との戦闘が終結して3日、先の戦闘で特に優秀な活躍をした士官数名に対し、勲章の授与が行われる事が決まった。

式典は総統府臨時庁舎にて執り行われる。政府幹部・軍幹部出席の元、宣伝省主導で国民にも同時中継が成される事となった____

 

「諸君、先日の戦闘、ご苦労であった。此度の戦闘では、諸君の活躍により敵を撃退する事に成功した。それに加えて敵戦闘艦の拿捕、多数の捕虜を取ることが出来た。お陰で奴らが何者であるか、それを調べられる。皆の活躍に心から礼を述べたい。ありがとう。そして、諸君等の中でも特段の活躍をした者達に、"特別戦功勲章"を授与したく思う。」

「これより、総統閣下から選ばれた勲章授与者の名前を呼ばせて頂きます。呼ばれた方より順に、壇上へお上がり下さい。」

 

「宙軍参謀本部長、コドルヴォ・ナタ・シナノ。航宙艦隊司令、ベルンシュタイン=フクス=セト。艦隊旗艦ロドルフィア艦長、ヨルゼナーフ・ゲルベリウス。デストリア級デストロイ艦長、シュッツ・ベルンハルト。以上の4名は、壇上へ」

 

名前を呼ばれた者達がシナノ参謀長を先頭に順々に壇上へ上がり、クルークの前へと並び、先頭から順に勲章を授与して行く。

 

「コドルヴォ・ナタ・シナノ宙軍参謀長、貴官が立案した作戦は極めて効果的な物で有った。あの作戦が無ければ我が方が負けていた可能性もある。これからも、我が帝国の為に尽くして欲しい。受賞おめでとう。」

「ありがとうございます、総統閣下。一層奮起し、帝国の為に尽くします!総統万歳!」

 

「ベルンシュタイン=フクス=セト艦隊司令。奇襲艦隊への的確なタイミングの指揮、素晴らしいものだった。あの奇襲攻撃が成功し無ければあそこまでの戦果は獲られなかっただろう。これからも我が軍をよろしく頼む。受賞おめでとう。」

「ありがとうございます。今後より一層励みます。総統万歳!」

 

「ヨルゼナーフ・ゲルベリウス大佐。貴官の的確な指揮によって、艦隊は敵を一網打尽にする事が出来た。心より感謝を捧げたい。受賞おめでとう。」

「ありがとうございます。受賞光栄です。」

 

「シュッツ・ベルンハルト大佐。貴官の的確な偽装突撃のお陰で、後の行動が上手く行った。危険な役だったが、それを良く完遂してくれた。受賞おめでとう。」

「ありがとうございます。今後も、私にお任せ下さい。」

 

「今の4名に勲章は渡したが、今渡すことのできなかった諸君等も、受賞するに相応しい資格は十分に持っていると私は考えている!今後とも、我が国の為に励んで欲しい。」

 

特別戦功勲章の受賞式典は無事に終了した。

勲章を貰えた4名は勿論のこと、貰えなかった多くの者達も、今後のカルラディアの為に奮起する事を改めて誓うのだった____

 

ーーー総統臨時官邸ーーー

 

受賞式典が終わり一息ついているクルークの元に、ガミラスにて近衛師団第一師団長を担っていたマーク・アンジェロ大将が訪ねてきた。

 

「ご休憩中に失礼します。総統。少しお時間宜しいでしょうか。」

「久しぶりだね、マーク。構わないよ。掛け給え。」

「ありがとうございます。失礼します。」

 

着席を促されたアンジェロがクルークの対面に位置する椅子へ腰を掛ける。

それとほぼ同じくしてクルークが紅茶を用意し始める。

 

「閣下!その様な事は私が致します故…」

「構わないさ、君は客人だ。私と君の仲でそういうのは無しだよ。もう少しフランクにいこう。お硬いままだと俺も疲れるしな」

「総統…いや、ロドルフ。お前は変わらないのだな…」

「いや、変わったさ…。変わらなくちゃいけなかった。民を導く為、征く道を示し導く為に……。さぁ、温かい内に飲むと良い。ヴィルディアの3月はまだ寒いからね」

「すまない、頂こう」

 

こうして、クルークの淹れた紅茶を飲みながら、昔話に花を咲かせていると、要件を思い出したアンジェロが、クルークに話を切り出す。

 

「すっかり昔話に夢中になっていたな…。ロドルフ、突然ですまないが俺に…"総統親衛隊"を組織させてくれないか。」

「親衛隊?」

「あぁ…。この国はまだ産まれたばかりだが、大方お前の考えている事は想像できる。権力者になれば野望(・・)と云うのは抱く物が世の常だ」

「………」

「まだ領土は狭く、そんな恐れも無いが、これから領土が広くなれば何が起こるかわからない。そんな時総統の身近に、総統へ"絶対の忠誠"を誓った者達が居れば、そういった(・・・・・)対処も可能だろう」

「なるほど…。直ぐに組織できるのか?」

「近衛師団に居た奴らには既に話を通している。ある程度の人員は確保出来た状態で始動できる見込みだ。」

「判った。親衛隊に関しては君に一任しよう。内務卿には俺から話を通しておくよ。"事後承認"と云う形には成ってしまうがな」

「すまんな、我が儘を通して貰って」

「気にすることは無いさ。俺が(・・)必要と感じたから認めた。それだけだよ。」

「どうやらこの3ヶ月で、大分総統が板についてきたらしい。……少し長居し過ぎたな、部下が心配する。俺は戻るよ。」

「……マーク、暇な時で良いから顔を出してくれ。こう見えて意外に暇な時間が多くてね、大分退屈しているんだ…」

「!…総統閣下から直々のお頼みとあらば、親衛隊長官としては、お応えしない訳には参りませんな。」

 

クルークの言葉を受けたアンジェロはとても嬉しそうに笑いながら総統執務室を後にした。

 

アンジェロが提案し、クルークが承認した親衛隊の件は、直ちに内務卿マリウス=トイアーへ話が伝わり、その日の内にマーク・アンジェロを親衛隊長官とする"カルラディア帝国総統親衛隊"の設立が認可された。

設立へ向けて事前に事を進めていたアンジェロ達旧近衛師団員等は、認可が降りると同時に親衛隊の中枢となる"親衛隊本部(後の親衛隊中央司令部)"を設置し、隊則の制定や組織の振り分けに加え、民間人からの新規入隊希望を募り、人員の確保を始めたのであった__

 

ーーーカラーディ星系 第九惑星ハーデッシュベルトーーー

 

戦闘の余波を受ける事の無かったハーデッシュベルトの技術解析陣は、アンジェロの親衛隊設立交渉の際もゲシュ=タム・コアの解析を進めていた____

 

「このゲシュ=タム・コア、イスカンダル純正なのも相まって、研究すればするほど新たなことがわかる……これだけの研究成果を見ると、味の消えない”ガム”を噛んでいる様だな…」

「”ガム”ですか…言い得て妙ですね…」

「まだまだ味がしそうですね、この”ガム”は」

「あぁ、虫歯(・・)に気をつけて噛み続けるとしよう」

 

「「はっ!」」

 

ガムに例えられたゲシュ=タム・コアの解析は、取得から2ヶ月近く経過する今尚、それまでガミラスが持っていなかった情報・技術を多く吐き出してくる。

それと同時に解析陣は、ゲシュ=タム技術に底しれぬ恐ろしさを僅かながら抱き始めていた____

 

ーーーヴィルディアーーー

 

アンジェロの親衛隊設立から1週間。クルークにはある考えが有り、秘書の1人を呼びつけていた。

 

「お呼びでしょうか、閣下」

「帝国軍技術開発局長のシャーフ君を呼んでくれ。少し話したいことがある」

「最優先でお呼びする形で宜しいでしょうか?」

「あぁ、頼む。」

 

秘書がシャーフを呼びに行って凡そ30分。

技術開発局から大急ぎで来たのだろうか少し息が上がっているシャーフが総統執務室を訪ねた。

 

「閣下、最優先でのご用とは何でしょうか。」

「いきなり呼びつけてすまなかった。実は、現行の軍の整備に関して意見したくてな」

「軍の整備計画に何かご要望があるということでしょうか?」

「そうだ。我が軍に新型の戦艦(・・・・・)を配備したい。その為の設計開発を頼みたいのだ。」

「新型戦艦、ですか…」

「我が軍の艦艇を確認すると、駆逐艦クラスは十分にある。巡洋艦クラスも十分とは言えないが配備はされている。しかし、戦艦クラスはロドルフィアとメルトラーデンの2隻のみ。この状況を見れば、新型戦艦の開発は急務であると考えるが、君はどうだ?」

「実を言いますと、技術開発局全体でもそういった考えがかなりありました」

「やはりか。いい機会だ、新型戦艦は取得したイスカンダル型のゲシュ=タム・コアを使って欲しい。我らの野望(・・)を成すための第一歩として。」

「承知致しました。コアの完全な解析にはまだ時間がかかると思われます。その影響でイスカンダル型小型コアの開発にも少々時間がかかりますが、やりましょう。」

「おお!やってくれるか。」

「期限などは設けられますか?」

「当面の間は国家基盤を整える為、優先して経済政策を取るつもりだ。軍備増強は5年後を目処に開始する。新型戦艦は今から5年後を目処に建造が開始出来るように進めてもらえると助かる」

「承知しました。コアの解析と同時に設計開発も進めて参りましょう。」

「すまない、宜しく頼む。」

 

こうして、総統からの要求を受けた技術開発局は、コアの解析と並行して新型戦艦の設計開発を進める事となった。

最新鋭艦の開発計画と言う事も有り、軍部としては極極秘扱いとする予定であったが、総統より"国威発揚の為開発計画を公表せよ"との勅命が下り、新型戦艦開発計画は全臣民へ宣伝省を通じて伝えられる事となった____

 

国内で勲章授与式典や親衛隊設立、新型戦艦開発計画が進められる一方で、戦闘終結直後より第二艦隊に総統から調査任務が命ぜられ、ハイ級駆逐艦ハイベルトを旗艦とする、第二艦隊所属第2二一駆逐戦隊が海賊技術の調査回収任務に当たっていた____

 

ーーー第二一駆逐戦隊旗艦 ハイ級 ハイベルトーーー

 

「艦長、レーダーに感!展開中の調査部隊周辺に僅かながら敵と思しき反応があります!」

「敵だと?詳細は」

「反応が微弱で、詳細な位置は不明です」

調査宙域、我が方の艦艇以外に確認できず、敵艦見受けられず」

「通信士、調査隊に緊急無電、"敵ノ反応検知、即時帰還ノ用意シツツ警戒サレタシ"」

「はっ!ハイベルトより調査隊、ハイベルトより調査隊、応答されたし__」

 

ーーー調査部隊ーーー

 

「隊長!ハイベルトより緊急通信が!"敵ノ反応検知、警戒サレタシ"です!」

「敵だと?どこにも居ないじゃないか」

「又、非常事態に備え即時帰還の用意を整えられたいとの事です!」

「そうか…。全員、帰還の用意だ!こんな所で敵と鉢合わせれば、生身の俺達は即お陀仏だ!急げ!」

 

隊長が撤退準備の指示を出すと同時に、まるで海中から浮上する潜水艦の様に、敵艦がその姿を表した…

 

「隊長!か、海賊が!」

「落ち着け!俺達には気がついていない!直ぐにハイベルトに連絡しろ!」

「は、はい!」

 

(突然出現した…ジャンプをしてきた様には見えなかった…一体どこから)

 

ーーーハイベルト 艦橋ーーー

 

「敵艦出現!」

「なんだと!」

「出現座標、調査隊付近!」

「調査隊より入電!”敵ハジャンプ成ラザル方法デ出現、警戒強化サレタシ”!」

「こちらでも、ジャンプによる空間歪曲が確認できませんでした。最早突然現れたという他…」

「敵の考察は今は良い!全艦戦闘体勢、2番艦に調査隊の回収を命令!本艦と3番艦及び4番艦は敵艦を迎撃する!」

「了解!」

「敵艦に動きあり!ほ、本艦に突撃する模様!」

「特攻か…。全艦取舵一杯、回避行動!主砲攻撃用意!」

「回避行動に入る!と〜りか〜じ!」

 

(敵はジャンプとはまた別の方法で出現してきた…。仮に次元の狭間に潜れるのだとしたら、その技術は我が国をより発展させるはず…)

 

「各艦に通達!目標への対処を撃沈から拿捕へと変更する。主砲、照準は敵艦ノズル付近!砲撃用意!」

「砲撃用意良し!」

「敵艦、射程に入った、照準良し!」

「主砲、撃ち方始め!」

「主砲、撃ち〜方〜始め!」

 

ハイ級3隻から赤色の閃光が、敵艦へと延びる。

砲撃がノズル付近に複数発命中し、敵艦の脚が止まる。

運悪くバラストに直撃した様で、潜ろうとする様は見せるが、潜航できず、一見すると藻掻いている様な雰囲気さえ感じられた。

 

「戦闘班、白兵戦用意!敵艦に乗り込み艦を拿捕せよ!」

 

艦長の指示を受けハイベルト戦闘班員等が白兵戦の用意を整えの脚の止まった敵艦へ乗り移って行く。

戦闘班突入から30分弱、戦闘班長より敵兵降伏、捕虜多数確保及び艦の拿捕成功の報が入った…。

 

「通信士、本国司令部に打電。"ワレ、調査作業中二敵艦ト遭遇セリ。当該敵艦ノ拿捕二成功。コレヨリ調査ヲ一時中断、帰還ス"」

「はっ!本国に打電します!」

 

この時拿捕した敵艦は、調査隊の帰還後直ぐに技術開発局にて解体解析が始まった。

 

この敵艦を手に入れた事で、次元潜航という新たな概念、そして技術を得ることと成った帝国は、その技術を躍進させ、徐々に他の星間国家から目を付けられるようになって行く___




海賊を退け、新たな技術を手に入れたカルラディア帝国は、徐々に力を付けていく…
しかし、マティウスの理想を忘れることのないクルークは、共に移住した臣民達の事も忘れてはいなかった__

次回、第5話「国と民」
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