カルラディア帝国戦記   作:カルラディア帝国

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国内で様々な事が進められる中、海賊艦隊と戦闘の有った宙域を調査していた第二艦隊第二一駆逐戦隊が、未知の技術を使用する敵艦と遭遇。
これを巧みな戦術で拿捕し、本国へ移送する事に成功したのだった____



国と民

ハーマリア近傍の、静寂に満ちたとある小惑星帯に、カルラディアから"海賊"と扱われている存在が集っていた。

この中の、ある小惑星は海賊たちの拠点として整備され、彼らはここから海賊行為を働き、またある時は雇い主である■■■国の密使と密談を行っていた__

 

 

「我々の艦体が壊滅しただと!?」

 

海賊の首魁と思われる人物が、広間でそう叫ぶ。

逃げ帰ってきた艦隊からそう報告を受け、幹部たちからも強い動揺が顕になる。

 

「辺境の弱小国家の筈では無いのか!」

「帰還してきた旗艦含めた複数艦を除き艦隊は壊滅、残留していた次元艦との通信も途絶しました…」

「ポルトメルシアで追い返す事が出来たのがまるで奇跡の様だな…」

「■■■の使者よ、どうか今一度、貴方がたのお力をお貸し願えないだろうか」

 

この日この小惑星には、カルラディア襲撃を依頼したとある国家の密使が、その成果報告を受ける為に訪れていた。

海賊達が潤沢な資材を蓄えられていたのも、全ては陰ながら支援してきた■■■国のおかげであった。

 

「馬鹿も休み休み言え!嘗て軍務から逃げた貴様らを拾い上げたシアクヴァヌスⅡ世陛下の恩寵も、最早ここまでだ!」

「三流の貴様等に、我が国が危ない橋を渡ってまで支援してやったのは、貴様等があの宙域を知り尽くしているからだと豪語したからでは無いか!!」

「貴様等の言葉を信じ、最後の情をかけてやったにも関わらずあの惨敗、何とも嘆かわしい限りだな?そうは思わないか?」

 

密使からの言葉に、海賊の首魁達が押し黙る。

彼らがこれまで依頼を失敗した事は殆ど無く、仮に失敗しても必ずと言っていいほど挽回に成功してきた。

しかし今回の任務に於いては、相手の戦力を見誤ったが為か、その挽回も叶わず、近年落ち続けていた彼らへの信用も、遂に今回の失敗で底に落ちたと言える。

 

「………」

 

「陛下は既に貴様等を見限った。以後、我が国から貴様等への施しは無いと思え。」

 

その余りに冷酷無慈悲な伝言に、海賊の首魁達はさらに動揺を強くする。

事前に通達があったわけでが無いが、この依頼があった時点で最後通告である可能性は否定できなかった。

しかし、海賊の首魁には唯一挽回の秘策があった。

 

「おお、お待ち下さい!!我らに策がございます……」

 

「その策とやらが、貴様らの大失敗を覆せる程の物なのか?」

 

「む、無論です…。しかしながら時間がいります。一度、私の方から陛下へ上奏を賜りたく…」

 

「陛下は貴様らとは会わん。会わんが……、まぁ宰相閣下であれば聞き届けてくれるやもな。」

 

「さ、宰相閣下ですと!?」

 

首魁が驚きを隠さずにいう。

何しろ彼の国、海賊達が嘗て軍人として属して居た国の宰相とは、悪名高く、人を人とも思わぬとして有名であったからだ。

 

「なんだ?不満か?取次がぬでも良いのだぞ?」

「い、いえ。問題のおございます。ど、どうか宰相閣下へお取次ぎを…」

「承知した。これで挽回できねば貴様らの明日は無いと知れ」

 

■■■国から最後の情けをかけられた海賊達は、首魁達の宰相との面会を経て、カルラディアへの復讐の為に力を蓄え始めたのであった__

 

    *    *

 

カルラン暦元年3月26日。彼ら旧セカンド・オーダーがヴィルディアへ入植してから、既に2ヶ月が経過していた。

この日、内務卿マリウス=トイアーは帝都の開発状況報告の為、総統臨時官邸の総統執務室を訪れていた。

 

「この星に入植して2ヶ月余り、帝都は順調に都市化が進んでいる様だな、マリウス。」

「はい。帝都開発に併せ、地方の開墾計画も総統府麾下の交通省・総務省の合同で進めている状態です。」

「素晴らしい。早く完成した帝都を見たいものだ!」

 

マリウス=トイアー内務卿の率いる総統府とシュルーフタ・ユーヴァニ交通大臣率いる交通省、そしてアルノルフ・ヴァルター総務大臣率いる総務省の3組織が合同で帝都・地方の開発計画を策定、ヴィルディア全域へと開墾、開発を進めていた

 

クルークへの開発状況の報告を続ける中、突如として帝都全域へ非常警報のサイレンが鳴り響く。

 

「会談中、失礼致します!!」

 

政権の幹部が、総統執務室へ血相を変えて入室してきた。

先程のサイレン含め、ただならぬ気配が帝都全域を覆っていた。

 

「何事か!」

「クルクラシア近郊に大型不明生物接近中。敵性生物の可能性大!現在、帝都第6開発区画へ向け進行中との事!」

「第6開発区だと!?」

 

幹部からの状況説明を聞いたマリウスが悲鳴をあげる。

帝都第6開発区は、今現在最も新しい開発区であり、工事の為の建設業者に務める多くの労働者達がその区画でキャンプを作り寝泊まりをしていた。

 

「偵察隊の報告によると、目標の予想進路は帝都中心部。―此処との事です!!」

「っ!トイアー、陸軍へ出動要請だ!」

「はっ!直ちに!」

 

トイアーの指示を受け、帝国陸軍が出撃。

敵性生物出現時より即応体勢を整えていた陸軍は、速やかに第6開発区画へ向け進発。

展開する陸軍部隊の中には、急遽投入された新型主力戦車"ルバリアス"の姿も有った。

宇宙軍に対し部隊整備の遅れていた陸軍支援の為、宙軍陸戦隊にも出撃命令が下る。

臣民へは非常事態宣言を発し、各地区所定の避難所へと即時避難誘導が行われた。

 

「ルバリアス三両及びサルバーS−IV型戦車八両、配置完了!」

「砲兵隊及び各歩兵部隊配置完了!」

「CPよりHQ。各部隊の展開完了、以後の指示を待つ。送れ」

 

前線司令部が、展開部隊の配置完了を受け、仮設状態の陸軍司令部へと情報を伝達する。

 

「HQよりCP。先程総統より目標への攻撃許可が降りた。第6開発区画の民間人の退避は完了し既に無人だ。速やかに駆除されたい。送れ」

「了解。これより防衛計画に則り目標へ攻撃を開始します。おわり」

 

陸軍総司令から前線司令部へと攻撃許可が伝達され、目標に対しての駆除行動が開始される。

 

「CPより各隊、攻撃許可が降りた。戦闘開始、繰り返す、戦闘を開始せよ」

 

前線司令部からの戦闘開始の指示を受け、展開した各隊が攻撃に備える。

 

「敵性生物捕捉!」

「戦車隊へ伝達"即時攻撃の要を認"」

「はっ!」

 

「CPより無電!"即時攻撃の要を認"です!」

「よし、新型の性能をお見舞いしてやる!全車、試射用意!」

「目標、進路・速度変わらず。距離二五〇〇、全車照準合わせ………照準良し!」

「撃ーー!!」

 

前線指揮官からの指示を受けた戦車部隊長が、展開している全11両に砲撃指示を下す。

新型戦車は従来のサルバーS-VI型戦車に代わり砲身が2門と数が減ったものの、その分口径が大きくなった事で威力が上がり、絶大な破壊力を得ることに成功していたのであった。

 

「初弾命中!目標、被害軽微!」

「全車、効力射!目標に撃ちまくれ!!」

 

初の実戦だからか、戦車の砲撃に当てられたのか、若干のコンバット・ハイ気味に戦車部隊長が攻撃指示を下す。

その一方で、目標への被害は軽微と言わざるを得なかった。

 

「戦車隊は大分気合が入っているみたいだな」

「何しろ"あの"新型のお披露目ですから」

「まぁ、気が昂るのも判るな。戦車隊の状況を見つつ、砲兵隊に射撃用意を指示せよ」

「はっ!」

 

一の矢が不発…とは言わないまでも、期待されていたほどの成果を得られなかった為、二の矢である砲兵隊に攻撃用意の命令を下す前線司令部。

一方で戦車隊は、目標の片腕、左腕を落とすことに成功していた。

 

「目標の表皮は想定以上に硬いようです、明確な損害は片腕を落とした程度で…」

「目標との距離は」

「距離一八〇〇、進路・速度は依然変わらず!」

「進行速度から考えても潮時だな。CP、こちら戦車隊。目標は射撃限界へ近づきつつ有り、攻撃を砲兵隊へ切り替えられたい送れ」

『CP了解。戦車隊は速やかに後退、最終的防衛ラインにて待機せよ。おわり』

「各車、後退!最終防衛ラインへ転換する!」

 

新型戦車を含む11両の戦車隊は、目標への砲撃を中断し、規定の最終防衛ラインへ後退を進める。

戦車隊の後退開始と同時に、砲兵隊からの攻撃が始まった。

迫撃砲や対戦車砲、ミサイル等の装備を用いて攻撃を加えた砲兵隊は、目標の弱点を見出す事に成功する。

 

目標の弱点それは、―"口内"であった。

 

情報を受けたCPから、転換の完了した戦車隊へ連絡が行き、口腔内への一斉砲撃が加えられる。

生物というのは弱点が見つかると脆い物で、再攻撃開始から目標の駆除までは30分と掛かる事なく、その戦闘は無事終了したのだった――

 

「CPより各隊、対象の沈黙を確認。戦闘終了、撤収せよ。尚、当該目標の死骸については、政府が別途回収班を手配する事になった。以後の対応は陸警隊へ引き継ぐ。おわり」

 

回収された死骸は、経済産業省管轄の科学技術庁へ周され、解剖が行われる事となった。

解剖の結果を受け、以後も脅威になり得ると判断した総統は、陸軍を動員し1ヶ月かけて同型の生物を絶滅へと追いやったのであった。

 

    *    *

 

所謂「怪獣騒動」から5年の月日が経過したカルラン暦6年1月15日、カラーディ星系の9番惑星であるハーデッシュベルトは、帝国軍独立機関『技術開発局』専属の技術研究用惑星として開拓が進められる中で、ヴィルディアの第一衛星、"大きい月"ことイスヴィアで回収されたイスカンダル型ゲシュ=タム・コアの研究と、5年前に拿捕した海賊次元潜航艦を研究していた

 

「いつ見てもすごい技術だな、この馬鹿でかい箱だけで次元断層を行き来できる力があるとは。この技術を確立出来れば我らに敵無しと云った所だろう」

 

そう呟いたのは、技術開発局装備開発課課長のクシェフ・ヴァエト技術中佐。

彼はガミラス大公国軍の兵器開発廠に勤めていた技術士官であり、現在の帝国軍に於いては、各種軍用装備品の開発に取り組む装備開発課にて、局長の抜擢を受け課長の座に就いている。

 

「課長!亜空間ケーブルという特殊ケーブルの技術獲得が完了しました!」

「亜空間ケーブル、鹵獲品に元からついていた特殊ケーブルの事か。使用方法は?」

「まだ全てが判明している訳では無いのですが、内務卿より直接の指示があり、最優先で研究せよと」

「内務卿直々にか?まぁ良い、獲得できたのならあとは研究を進めるだけだ」

「はっ!」

 

「誰か僕の噂をしていたかな?」

 

ヌッと現れてきたのは、総統府を取る仕切るトップの内務卿、マリウス・シュトラス=トイアー。

視察の為にハーデッシュベルトを訪れていたのだ。

 

「内務卿!実は、この亜空間ケーブルの使い道が判らず。無論研究は続けているのですが……」

「何、簡単だよ。これは、―"目"だよ」

「"目"、ですか?」

「そうだ、"目"だ。我々は今、次元の狭間に潜る艦を作ろうとしている。そこは通常の宇宙とは別の空間だ。別の空間だということは、間に壁があるも同然。敵や味方の動きをどうやって見る?」

 

「―そうか!通常空間に観測用の装置を残し、それを亜空間ケーブルで接続すれば潜層状態でも外の様子が見える!」

「つまり、浮上による直接攻撃だけでなく、潜伏したままの奇襲攻撃が可能ということですか!」

 

理解の早さに満足したように、マリウスは笑みを浮かべながら頷

く。

 

「そうだ。潜層状態での攻撃は、おそらくあの海賊ですら実現していない。我々が銀河最先端になれるかもしれないぞ!」

「総統閣下はそこまで見越しておいでだったとは…」

 

この頃のカルラディア帝国は、帝国軍独立機関の技術開発局と総統府麾下の科学技術庁がそれぞれに機関の改修を進めていた。技術開発局はゲシュ=タム機関を、科学技術庁はゲシュ=バム機関をもとに改良型機関の研究を進めており、カルラン暦3年(2192年)に科学技術庁は、独自機関であるゲシュ=ネル機関の開発に成功している。しかしこの機関は、ワープの度に次元断層に落下するという謎の特性を持った、所謂「ポンコツ機関」であった。

その特性に利用価値を見いだしたのが総統ロドルフ・クルークである。「次元の狭間に潜る海賊船」の報告が上がったときからクルークは、次元潜航の実現を目論んでいた。

 

「ところで、箱の研究はどうなっている?」

「順調です。もうすぐ”宙ぶらりん潜伏”も終わりにできますよ!」

「そうか!それは待ち遠しい。ただしきちんと戻って来られるように頼むぞ?」

「もちろんです!」

 

「箱」とは多次元位相バラストタンクのことである。拿捕した海賊船に装備されており、このタンクを用いる事で潜航・浮上を行っているようなのだ。

技開局はこの超技術の研究に相当苦労しており、二年前に試作したものは半潜航行(軍曰く"宙ぶらりん潜伏")しかできないものであった。

この二年間、帝国軍は半潜航行に合わせて改良した「半潜用改ゲシュ=ネル機関」と「試作多次元位相バラストタンク」を装備した潜層実験艦を運用してきた。

しかしその段階もまもなく終わりを告げる。機関、タンク、ケーブルともに研究は最終段階であり、導入が秒読み段階である。

 

    *    *

 

トイアーがハーデッシュベルト軍研究所を訪問して居る合間、シュティーア・シャーフが総統執務室にて、軍に関する重要な報告をしていた。

 

「総統閣下、この度は私の為にお時間を頂き…」

「そういうのは要らんよ、私と君の仲だ。それに、ここには私達しか居ない。」

 

親しき仲にも何とやらという言葉がある様に、久しぶりの総統との対面と言うこともあり、恭しくお辞儀をしながら挨拶をするシャーフ。

しかしながら、総統は執務室に2人しかいない事からその様な気遣いは無用だと告げる。

 

「ありがとうございます。早速ですが、私の方から2点報告が」

「聞こう。話してくれ」

「はっ。まず、閣下よりご指示のありました、"新型戦艦"についてです。こちらは、つい先日設計が完了し既に建造を開始致しました。」

「何と!本当か!」

 

目を輝かせる、とは今の閣下の様子を言うのかもしれないなどとシャーフは考える。それほどに報告を受けたクルークの表情は明るくなったのだ。

話に上がった『新型戦艦』とは、まだ建国間もない頃にシャーフがクルークから受けたイスカンダル製ゲシュ=タム・コアを使用する戦艦の事であった。

 

「はい。現在の見立てでは2年後に完成・就役が可能と見込みが立っております。又、既に解析の完了したイスカンダル製コアも、量産試作品第1号が完成し、その出力も申し分無く。予定通り新型戦艦へ搭載される予定です。」

「そうかそうか、それは素晴らしい。しかし、純イスカンダル製コアは搭載しないのか?」

「それについては、2点目のご報告と併せて失礼します。」

「うむ、聞こう。」

 

報告の前に軽く咳払いしたシャーフは、そのまま着座姿勢で背筋を張り姿勢を正す。

 

「この度、我が技術開発局は現行のロドルフィアに変わる新型の総統座乗艦の設計を完了致しました。」

「なんと!本当か」

 

最早眩しいと言っても差し支えのないほどに表情が明るくなるクルークに、若干目を細めながらシャーフが続ける。

 

「はい。我々は便宜上"ロドルフィアⅡ世"と呼称しています。」

「ロドルフィアⅡ世か、良い響きだ……。それで、そのロドルフィアⅡ世に純正コアを搭載すると言うことかな?」

「流石閣下、その通りです。我が方で製造したコアよりも超大な出力を持つイスカンダル製のコアを搭載し、その圧倒的な力を持って軍を率いる。我が国に於いて絶対的な権力を持つ総統に相応しい力かと」

「私の権威を示す上でも有用と云う事か」

「建造は、閣下からの承認を頂ければ今日直ぐにでも開始できます。ご認可いただけますでしょうか?」

「無論だ、シャーフ君。最優先で頼みたい」

「はっ!建造は、新型戦艦の1番艦と同じくハーデッシュベルト建造工場で行います。お時間がありましたら、相当も是非ご視察へい越し下さい。」

「判った。君はこれから、どうするのかね?」

「当面私はハーデッシュベルト建造工場で、新型戦艦とロドルフィアⅡ世の建造の指揮を行う予定です。…本星を開けるのは忍びないのですが。本星での艦艇建造指揮等は副局長に一任致します。」

「承知した。しかし、なぜハーデッシュベルトなのだ?」

「ハーデッシュベルトは、既に技術研究惑星として開拓が進められており、あそこであれば万が一の事態にも対処が容易であるからです。本星で事故などを起こした暁には被害が想定できませんので…」

「なるほど、委細承知した。時が来れば視察に行こう。」

「お待ちしております。報告は以上ですので、私はこれにて失礼致します。」

 

そう言い、席を立とうとしたシャーフをクルークが静止した。

何でも、国営放送で今日面白い物が放送されると言うのだ。

 

「もうすぐ時間だ、少し付き合ってくれ」

「閣下が仰られるのであれば、お断りはできませんね。お付き合い致します。」

 

そう言ってシャーフが改めて着座すると、クルークは執務室に備え付けられていたモニターの電源を付け、チャンネルを併せた。

そこに写っていたのは、民間人へのインタビュー映像であった____

 

    *    *

 

帝都近郊でいち早く開墾が進められた地方都市、ヴィラーディ。

農業を基幹産業とするこの地方のとある畑の一角で、アナウンサーやカメラマンといったテレビクルーは撮影を行っていた。

 

「本日私は、ヴィラーディ地方に来ています。 ここヴィラーディはつい2年程前に開拓が完了し、今は農産地として発展を始めています。それでは、こちらで農業を営んでいるコルツ・ナタリウスさんにお話を伺いたいと思います。本日はよろしくお願いします。」

「こちらこそ、よろしくお願いします。」

 

紹介を受けた男性は、若干緊張した面持ちでマイクを向ける女性アナウンサーと対峙していた。

コルツ・ナタリウス。彼はクルークの離反に追随した多くの民間人の一人であり、現在は妻と2人の子供と共に農業を営み生計を立てている。

 

「早速なのですが、この時期はどのような作物が収穫できるのでしょうか?」

「この時期はディリコンシュ(大根)ですね。」

「ディリコンシュですか!私大好きなんです!」

「そう言ってもらえると農家としては嬉しい限りです。」

「ナタリウスさんは、日頃どの様な思い出作業に務められているのでしょうか?」

 

事前の打ち合わせに無かった質問を投げ付けられナタリウスは若干驚いたが、それを表に出すことは無かった。

 

「この国の人達の食卓が少しでも賑やかになっればと思いながら日々作業しています。」

 

―否、若干動揺は隠せていなかった。

 

「そうでしたか、私達が美味しい野菜を食べられているのも、ナタリウスさん達のおかげですね!因みに、帝都クルクラシアとはだいぶ離れてますが、交通の便とかどうですか?」

「そうですねぇ、建国した当初は何も無くて本当に大変でしたが、今は様々な交通機関が整備されたのでかなり快適になりました。」

「そうですか。正に政府のお陰と言うわけですね。」

「はい、本当にその通りだと思います。」

「税金とかはどうでしょうか?」

「何かを切り詰めなければならない程高額、という訳でもないですし、我々農業従事者には定期的に農業支援の補助金も支給されているので、想像されていよりも快適だと思います」

「そうなんですね!本日はありがとうございました。」

「ありがとうございました。」

 

中継が打ち切られ、スタジオに映像が戻る。

ナタリウスはこの後、家で中継を観ていた家族に、動揺の言葉詰まりをいじられるのであった。

 

「地方の農業従事者も、政府の適切な施策によって、十分な生活が送れており、それによって私たちの日々の食卓も豊かになっている様でしたね」

 

クルークの、ある種我儘で行われた国営放送のインタビューは、自然と政府への礼賛に繋がり、ある種のプロパガンダに近い物となってしまったが、この映像を受けたクルークを含む政府職員等は、国策の成功に安堵すると共に、次へ向けて気合を入れ直すのであった____

 

放送から6日後のこと……

同じ国営放送の同じアナウンサーが、帝都郊外の高台へ設置された、空軍管轄となる対空防御用のある兵器の元を訪れていた。

 

「本日は本土防衛の要、『高出力陽電子砲台』の見学に来ています!えーこちらはですね、カルラン暦3年、つまり2年前に完成したものなのですが、公開はこれが初めて、ということになっているんですね。それでは本日お話をお伺いするのは、帝国軍技術開発局装備開発課副課長のファーブリック=ヴァッヘンドラーさんです!ヴァッヘンドラーさん、よろしくお願いいたします。」

「はい、本日はよろしくお願いします」

 

ファーブリック=ヴァッヘンドラー技術大尉は、クシェフ・ヴァエト技術中佐が課長を務める装備開発化において副課長を務めており、今回のインタビューでは、メディアに写りたくないという理由から役割を押し付けられ、約2日かけてこの為だけにハーデッシュベルトからヴィルディアへと訪れていた。

 

「早速なのですが、目の前にありますこちら、非常に大きな装置なのですが、これは一体どう言ったものなんでしょうか?」

 

アナウンサーが示したのは、成人男性2人分にもなるであろう高さを誇り、高出力陽電子砲の直下、制御室の真近に置かれた直方体の装置のことである。

 

「こちらはですね、砲台の電源装置になります。今私達が居ますのが地下およそ10mの地点なのですが、周囲を強固な壁で囲っておりまして、衝撃に強い構造の中に設置しています。」

「こちら、"高出力陽電子砲"と呼ばれている訳なのですが、どういった仕組みで出力の高さを実現しているのでしょうか?」

「こちらはですね、単純に電源の出力をすべてこの砲台に回しているということです。通常の軍艦ですと、エンジンから生成されたエネルギーを艦内の照明や空調、そして多数の砲熕兵器の制御等に出力を割いている訳なのですが、この砲台はそれと同等の出力を1門の大砲に全て割いているわけです。そのため、従来の砲よりも威力を上げることができたと云う訳なんですね」

「なるほど。そしてですね、今この高出力陽電子砲に関して新たな試みが行われていると言うことで」

「そうなんです。詳細は軍事機密故にお話しする訳にはいかないのですが、今、この高出力陽電子砲を艦艇に搭載出来るようにすると云った試みが行われているんです」

「艦艇に搭載!それは、実現すると防衛力向上に繋がりますね!完成が楽しみです!それでは、本日は"高出力陽電子砲台"初公開ということで現場からお伝えいたしました!ヴァッヘンドラーさん、ありがとうございました」

「ありがとうございました」

 

この高出力陽電子砲、ガミラスでは後に反射衛星砲として開発される兵器である。

斯くして、カルラディア帝国の力はみるみると伸びていく―

 

    *    *

 

高出力陽電子砲の一般へのお披露目から一週間、総統ロドルフ・クルークは統合軍令部作戦司令室に居た。

兼ねてより政府内にて計画されていた、ハーマリア星系領有化計画を実行に移す為である。

 

帝都クルクラシアの宇宙軍港では、メルトリア級メルトラーデンを旗艦とする第二艦隊が集結し、出撃の準備を整えて居た。

 

『第二艦隊の諸君、総統ロドルフ・クルークである。諸君等は、兼ねてより計画されていた、ハーマリア星系の領有化計画の先鋒に選ばれた。ポルトメルシアは海賊共の根城の可能性がある。そういった敵を迅速に殲滅し、速やかにハーマリアを抑え我が物とする事を切に願う。』

 

「作戦発動の暗号を受信。」

「よし、全艦発進!ハーマリアへ向かう!」

「機関始動、離床!」

 

宙軍中将クルルク・デルニラッツェを司令とする第二艦隊が帝都宇宙軍港を発進する。

その様子を、クルークは中央作戦司令室のモニターから眺めて居た、その胸中には、言い知れぬ不安が纏わりついていた____




遂にハーマリア星系領有の為に乗り出したカルラディア帝国。
しかし、その背後から大きな影が迫りくる―

次回、第6話「戦火の帝都」

築かれた平和が崩れ去るのは、ほんの一瞬に__
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