あの事件の日から数日経った。
今日はママの車に乗って舗装された道を郊外に向かって進んでいる。
今日はお姉ちゃんの墓参りに行くと聞いて私はすぐに準備して車に飛び乗った。
ここ数日塞ぎ込んでいたせいか、ママからの心配が隣からひしひしと伝わってくるけど、車内は相変わらず静かなまま道を進んでいく。
しばらくしてフェンスが見えてくると、漸くママは喋り始めた。
「ごめんね、シオン。このことはいつかあなたに絶対に言わなきゃいけないと思ってたの。でもユリが生きていると信じて止まないあなたを見ているとね…どうしても、言いづらくて…」
「……」
「今年こそここに連れてきて全てを伝える。なんて考えてた時に、まさかこんなことになるなんて…着いたわ、行きましょう」
あの日買った花束を持って車を降り、フェンスと石碑に近づいていく。
フェンスにはそこかしこに花束が置いてあったり、括り付けられたりしていた。
手書きのメッセージカードや写真なども沢山貼り付けられている。
それらがフェンスが続いているずーっと先の向こうまで同じように。
「ここが大地溝帯。そしてこれが慰霊碑だよ」
石碑にはおびただしい数の人の名前が書かれてあり、その中にお姉ちゃんの名前があるのを見つけて、私は息を呑んだ。
ママはお姉ちゃんの名前が彫られた場所を淋しそうにそっと撫でていく。
「そういえばあの時も、この前みたいにお買い物をしている時だったわね…」
「…ママ、どうしてお姉ちゃんは亡くなっちゃったの?」
「…やっぱり、あんまり覚えてないのね。…あの日は3人でお買い物に行ってたんだけど、その途中で急に大きくなったホロウに私たちは巻き込まれたの。
気づいた時にはあなた達と逸れてた。ホロウは危険な場所だって分かってはいたんだけど、声を上げてあなた達を探し回ったわ。
そうして声が枯れそうになった頃にやっとあなた達を見つけたの」
「でも、見つけた時にはユリはもう既に手遅れだった」
「身体の一部がエーテルに侵食されていたの。
あの子はあなたをおんぶしていて、私を見つけた途端安心したように笑っていたわ。
辛いでしょうに…痛いでしょうに…なのにあの子は一切苦しそうな顔を見せなかった。
多分、私が相当酷い顔をしていたんでしょうね…不安を和らげるように明るい口調で私との再会を喜んで、身体の心配までしてきて…」
『私は多分もうダメだからこの子を、シオンを連れて逃げて』
『必ず、ここを出て』
『生きて』
「それからの事は、よく覚えてないわ。あなたを抱えて、涙をボロボロ流しながら出口も分からないホロウの中を無我夢中で走った。
あの子に託されたあなたをなんとしてでも生きて外に出すために。
そうして駆け回っているうちに私はいつの間にかホロウを脱出していた。
すぐに保護されて、私たちは事なきを得ることができたの。
私たちの様に自力で脱出に成功したのは極わずかで、正に奇跡だとも言われたわ。
でも、そんなことどうだっていいの」
「私はユリを…愛しい私の娘を、あのホロウの中に置き去りにした!」
「あの日買い物に行っていなければ、あの時逸れていなければ、あの時無理を言ってでも一緒に逃げていれば、あの子は助かっていたかもしれない…!」
「一度はあなたと一緒に心中することも考えたわ。
でも、私はユリに『生きて』と言われた。言われてしまった。
本当にどこまでも家族想いな子…後を追うことも許さないなんて」
「ママ…」
「今でも夢に見るわ……ユリを置き去りにしてしまった時のことを。
一人ぼっちになって、不安で不安で仕方なくて、泣きじゃくってるあの子を…。
実際にそれを見た訳じゃないけど、多分あの子はそうなってたわ。
だって…」
「だってあの子本当は、寂しがり屋さんの、大の泣き虫だったもの…!!」
ママの号哭が辺りに響き渡る。
ママの瞳から溢れた涙が指の間をすり抜けて地面を濡らしていく。
こんなに感情を爆発させているママを見るのは初めてだった。
私はどうするべきか分からなくて、何となく後ろから抱きついて寄り添うことしか出来なかった。
「ありがとうね、シオン。みっともない姿を見せちゃったわ…」
「ううん、こっちこそありがとう。こんな辛いこと喋らせちゃって…でも、そっか…お姉ちゃん、本当に亡くなってたんだ…」
じゃああの時出会ったお姉ちゃんはなんだったんだろう?
お姉ちゃんに会いたいがために私が見た幻だったんだろうか?
それとも他人の空似?
「…実は今あなたの使ってる髪留めはね、別れる時にユリに付けてもらった物なのよ」
「えっ、そうなの?」
「『ママ、今までありがとう。シオン、ママのことをお願いね?愛してる。どうかママとシオンがホロウから無事に抜け出せますように』…。
最後にそう言って願いを込めてその髪留めをあなたに付けてたわ。
もしかしたら先日のホロウ脱出も、本当にユリが力を貸してくれたのかもしれないわね」
「お姉ちゃん…」
髪留めをそっと外してまじまじと見る。
これが、お姉ちゃんの遺した最後の忘れ形見…。
思わずギュッと握ると、ふと裏側になにか傷があるのを感じた。
不思議に思って裏を見てみると薄く何か彫られていた。
───── シオン 大好き! ─────
短くそれだけ。
だけどそのたった一言の愛の言葉で、目頭が熱くなった。
私は思わず顔を上げてフェンスに駆け寄って大声で叫んだ。
「私も!大好きーー!!愛してるーーーっ!!!!」
私の愛の言葉はほんの少しだけ反響した後、だだっ広い空間に溶けて消えていった。
それから程なくしてお墓参りを終えた。
郊外から帰る車の中、インターノットを見ていると私はある1つのトピックスに目がいった。
それは…
「もう一度だけ会いたい人に会えるかもしれないホロウ…?」
────────────────────────────
はいやほやほーどうもどうもゆーまちゃんです。
あれから1~2週間ほど経ちました。
突然ですがここまでのハイライト見ていきましょう!
『本当に、いた…!』
『やあ、奇遇だね。どうしたの?そんな狐につままれたような顔をして』
『あの時助けられなくてごめんなぁ…』
『そんなしょぼくれんなよ、お前は精一杯やれることをやったって』
『結局、私は間に合わなかったんだ…』
『でも、あなたはそれが分かっていたのに、それでも駆けつけてくれたじゃない』
『最後に、俺と一緒に遊んでくれないか?』
『うん!遊ぶー!何して遊ぶ?鬼ごっこ?隠れんぼ?』
───────ハイライト終了
うーん重い、重くない???
なんか変な噂が広がってるのか知らないけど最近僕目当て?の人がホロウに入ってくることが後を絶たないんだよね。
え、ホロウに入るのって本当に危険なの?っていうくらい入ってくる。
いやまぁ人に会えて交流できるっていうのは僕にとってはヒジョーにありがたいことではあるんだけど、ちょーっと良くないのかもなぁと最近思ってたり。
というのもですよ。
ホロウに入るのってとっても危ないことっていうのはもうわかってるじゃないですか。
それなのにわざわざ入ってきて、会いたい人に会うために僕を探すわけですよ。
ここで僕は勘づきました。
わざわざホロウに入ってまで会いたい人って、外の世界ではもう会えないいわゆる逝っちゃってる人なんじゃないかって。
それならここに危険を冒してまで入ってくるのも納得いきます。
しかしこれによって今僕は良心の呵責に苛まされてるわけですよ。
これが会いに来た人にとって踏ん切りをつけるためのものであればいいんですが、人の心というのは弱いもの。
心のどこかでここならいつでも会えるからとか甘えた思考をしてしまうと思うんです。
こうなると良くないんですよね。
こんな事のために二度も三度も危険を冒すなという話です。
これで僕が人類を誑かす危険因子として排除されちゃったらどうするんですか!!
まあそれに、嬉しいですがあまりいい気分でもありませんしね。
やってることは死者への冒涜に近いですから。
勝手に故人になりすまして勝手に来た人を慰めて満足して帰ってもらう。
うーむ偽善ですなぁ。
まあもう身体は人じゃないんで多少倫理観とか捨てちゃってもいいかとか考えてますし、このままこういうビジネスやっちゃってもいいかもね!(よくない)
今は…このままやり続けますか。
はいでは話を切り替えまして、そういえばお前何で外出てないんって思ってる方もいらっしゃると思います。
そりゃそうですよねぇ?出口どこにあるか分かってたのに、あんなに外に行きたそうにしてたのにって。
いやぁ…流石にバケモノを外に解き放つのは、ねぇ?(冷静)
精神人間、自己自認も人間ですが身体がどう足掻いてもバケモノですからね、変身できるとはいえバレた時がまずい。
あと仮に自分をエーテリアスだと仮定した場合、外で擬態して人間と変わらない態度で接してるってある意味ホラーなんですわ。
それで人間に友好的なエーテリアスがいるってなると色々問題が起こるわけでぇ…あれ、そうなると今やってる活動もかなり…いや、幽霊ってことで押し通せばええやろ!ガハハ!
てな感じで今はまだその時ではないということです。
出るにしてももうちょっと目処が立ってからかな。
はぁ…早いところ人間社会に帰りたいなぁ…。
とか考えてたら今日も来客ですか。
今回の人も護衛?の人までつけて周囲のエーテリアス薙ぎ払ってきちゃって…。
さてさて今回のオーダーはっと……。
いやこれこの前のユリお姉ちゃんやんけぇ!!!!
ゆーまちゃん(腹は空かんけどそろそろジャンクフード食べたいなぁ…)