『魔王』 アルバート・ソーン   作:アーっr

11 / 45
錬 とは
 (金属などを)きたえる。ねる。
 (薬などを)ねる。
 念を入れて良いものにする。ねりきたえる。


秘密の部屋


 

 

 「ぐぐぐ、ぐはぁ」

 

 「さあアルバート。次はドラゴンの血についての研究じゃ!楽しくなってきたのう」

 

 やばい!死ぬ!

 

 

 

 

 

 

 

 「アルバート・ソーンです。この度は俺のわがままを聞いてくれて、ありがとうございます」

 

 「いやいや、まさか私が誰かに教える時が来ようとは。ぜひ思うように学んでくれ、アルバート」

 

 ニコラス・フラメルは骨と皮と、少しの肉で出来た体で俺に錬金術を教えてくれた。

 

 「まず、錬金術の基礎は『等価交換』じゃ」

 

 「金剛石(ダイヤモンド)を石に変換することは出来るが、その逆は難しい。上から下はあるが、下から上はないのじゃ。川の流れのように」

 

 「ですが、魔法なら川の流れを変えられますよね?」

 

 「おお、そうだとも。私もこれには苦労したが、まあざっと三百年くらいで慣れた」

 

 まず、何百年も生きてるせいで、時間感覚がおかしい。まあ、それくらいしないと錬金術を極めるほどにはなれないのだろう。

 

 「その最たるものが賢者の石じゃ。金属を純金に変換し、不老不死の命の水を精錬することができる」

 

 「本当にぶっ飛んでますね。等価交換の原理にまったく当てはまってないです」

 

 何で有限✖️有限=不老不死 が成立したんだよ。

 

 「これは錬金術のなかでも最も難しいことじゃ。まずは基礎からやってみよう」

 

 「はい!」

 

 ニコラス・フラメルの数百年の研鑽。

 何としても、俺が受け継いでみせる!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ニコラス・フラメル氏の授業(・・)はとても素晴らしく、しかし何よりも過酷なものだった。

 

 「さあアルバート。まずは錬金術における金属やその他魔法的存在の特性について覚えてくれ」

 

 「───まさか、ここにある全てが?」

 

 「いやいや、全てではない。まだ書庫に本はあるが、まずはこれを覚えて欲しいんじゃ」

 

 これが全てじゃないの!?もうホグワーツの図書館みたいになってるのに!?

 

 「わ、わかりました。覚えます」

 

 やるしかねえ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 「───覚えました」

 

 「おお、若いと覚えも早いの。良いことじゃ」

 

 魔法で本を浮かせて、本が傷まないような速さでページを捲った。

 読んではいないが、思い出せる。

 

 「では次に、実習といこうかの」

 

 

 

 

 

 

 

 「先生、これってどうしてこうなるんですか?」

 

 「おお!よくぞ聞いてくれた。これは私も苦労したものじゃ。まずはこの金属の───」

 

 「先生、これって──────」

 

 「これはだな──────」

 

 ホグワーツは7月に修了、9月にまた学校が始まるので、7、8月の二ヶ月でニコラス・フラメルの数百年を学ぶ必要があった。

 

 異常··········狂気とも言えるペースで学習は進んでいった。

 

 そもそも、ニコラス・フラメルは食事や睡眠など、研究の邪魔になる活動をしない。

 それに追いつくため、俺も不眠不休で学んだ。

 

 「ぐぐぐ、ぐはぁ」

 

 「さあアルバート。次はドラゴンの血についての研究じゃ!楽しくなってきたのう」

 

 キツイ!頭が壊れそうだ··········!

 

 腕に力が入らない。ずっと立ってるせいで脚が棒のようだ!

 まさか錬金術を学んでて肉体労働をすることになるなんて、考えていなかった!

 

 「ホグワーツに行ったら、筋トレしよ··········」

 

 二か月立ってても大丈夫なように、自分の体の強度を高める必要があるな。

 

 そして、時は来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「··········アルバート。今まで錬金術の弟子を取ったことはなかったが、初めての弟子が君で良かった」

 

 「君は才能があり、努力を惜しまない、良き少年じゃ。まるで、我が子のようじゃった」

 

 「私の今までを受け継ぐのが君で、本当に良かった。私は安心して眠ることが出来る」

 

 「アルバート、ありがとう」

 

 ───あなたの今までの研鑽は、必ず後世に残します。俺で止めないように。

 

 本当に、素晴らしい日々だった。

 未だ彼の領域には達していないが、俺はこれからも高めていく。

 

 必ず、いつか。

 あなたの数百年の、その果てに。

 

 「───必ずあなたに追い付きます。そして、追い越してやりますよ(・・・・・・・・・・)、『先生』」

 

 「あなたに教わることが出来たのは、俺の人生でも最高の幸運でした」

 

 「本当に。ありがとうございました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「やあアルバート。未だその熱量は衰えを知らぬようじゃな」

 

 「あ、爺さん。そりゃそうでしょ」

 

 追い越す(・・・・)って、言ったからな

 

 「そんな君に、ニコラスからのプレゼントじゃ」

 

 俺に?一体どんな·········

 

 「遺言状。私、ニコラス・フラメルは、所有している建物、及びその中に保管されている魔法道具、素材、本など全ての財産を」

 

 「我が最高の弟子、アルバート・ソーン・ジュニアに遺贈する」

 

 「私の教えを、うまく使いなさい」

 

 

 ──────先、生。

 

 「·············先生の母校のボーバトンとか、他の錬金術師とか、いろいろいると思いますが」

 

 「それでも。君はニコラスにとって良い弟子だったようじゃ」

 

 ·············ああ、クソ。

 この気持ちは、閉じ込められない。

 閉じ込めたくない。

 

 「それで良いのじゃ。感情を弄べば、何が本当の自分か見失うことになる」

 

 「·············これからも、辛く、苦しく、悲しい別れが幾度となくやって来るじゃろう」

 

 「その時は、友人と。愛するもの達と共に、乗り越えていけば良いのじゃ」

 

 

 ────ああ、本当に。

 

 素晴らしい、二ヶ月だった。

 

 

 

 




最高の師。
アルバートの人生を錬った。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。