『魔王』 アルバート・ソーン   作:アーっr

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『闇の帝王』を相手にタメ口で話せるくせに、後輩にビビる。


しわしわ角

 

 

 サラザール・スリザリン。

 

 純血主義を掲げ、マグル生まれを排斥し、選ばれた者だけが魔法を学ぶべきという考えを持っていた魔法使い。

 

 直系の子孫であるゴーント家は滅び、その血はほぼ残っていない。

 

 彼はゴドリック・グリフィンドールと対立し、決闘を行い、敗れた末にホグワーツを去った。

 しかし、彼はある部屋を残した。

 

 いつの日か、自分の意思を継ぐ者(・・・・・・・・・)が“相応しくない者”を学舎から追放すると、願って。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「読んだ事は有る? これ、あたしのパパが編集してるの。しわしわ角スノーカックの記事とか、とっても人気で話題なんだ」

 

 「···········まず、その被り物はおそらく校則違反だ」

 

 奇妙な少女に話しかけられた。

 ホグワーツ特急のコンパートメントは、毎年混むらしい。去年が特別では無かったのか。

 

 「···········で、しわしわ角って何?」

 

 「スウェーデンに住んでるンだよ。飛べないンだ」

 

 ···········『幻の動物とその生息地』を読んだことがあり、その全てを思い出せるが、しわしわ角スノーカックなる生き物は聞いたことがない。

 

 「何というか、曖昧だな。スウェーデンに住んでる飛べない魔法生物なんて、大量にいるだろ。もっとなんか、特徴ないのか?」

 

 具体性が無さすぎる特徴だ。しわしわ角、というくらいだから角が生えているのは分かるが。

 

 「……どうかしたか?」

 

 「ううん。だって、そんな事を聞いてくれた人は初めてなンだもの」

 

 そっかぁ。やっぱりみんな魔法生物とかには興味を持たないんだろうな。

 

 「よし。君、名前は?」

 

 「あたし、ルーナ・ラブグッド。今年から新入生なンだ」

 

 「アルバート・ソーン。父親も同じ名前だから、ジュニアだな。でもジュニアとは呼ばないでくれ。今年で2年生だ」

 

 握手をする。

 

 「魔法使いっていうのは、自分が興味を持たない事に対して、非常に、ひっじょうに冷たいんだ。俺の尊敬してる人は、トロールの研究をして馬鹿にされてた」

 

 「でも、そんな奴らに惑わされる必要はないよ。他人が知ろうともしないことを知ってるっていうのは、凄いことだ」

 

 本当に、彼は凄かった。

 

 「ありがとう。アルバートは優しいんだね」

 

 優しい?俺が?

 

 「いやぁ、それはちょっと違うな。俺はただ、『勿体無い』って思うんだ」

 

 「勿体無い?」

 

 そう、勿体無い。

 

 「だって、凄いじゃん。誰もやろうとしないことをやってるんだよ?確かに、実用性はないかもしれない。使わない知識かもしれない」

 

 それでも。

 

 「好きなものを頑張るって、かっこいいじゃん(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「じゃあ、またホグワーツで会おう」

 

 「またね、アルバート」

 

 ルーナと別れた。

 二年生からは馬車に乗るらしいが·········

 

 「················セストラル、か」

 

 セストラル。死を見た者だけが見ることのできる魔法生物。

 

 「まあ、確かに。死を見たけど·········」

 

 自分の手で殺めた母。

 ユニコーンの呪いと、護りの魔法によって滅びたクィレル先生。

 寿命を迎えたフラメル先生。

 

 俺は、死を見ている。

 

 「··············ネビル」

 

 「あ、アルバート!君にもこれ(・・)、見えるの?」

 

 で、あれば。

 

 「ああ。こいつはセストラルと言ってだな·········」

 

 この少女も、誰かの死を見たのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「レイブンクロー!」

 

 ああ、マジか。ルーナはレイブンクローに行ってしまった。

 まあ、道を決めるのは本人だ。

 寂しいが、死に別れたわけでもない。

 

 「·········さて、錬金術の続きでもするか」

 

 本当ならここで新入生と顔合わせをするべきなのだろうが、ドラコに止められた。

 

 「お前は刺激が強いんだ!新入生を怖がらせたらどうする!」

 

 俺って刺激強いのか·········。

 もしかして、友達ができないのもそれが原因か?

 

 「まあ、嘆いたってしょうがないか」

 

 フラメル先生が遺してくれた本はまだまだたくさんある。

 どんどん読んで、成長しなければ。

 

 「こんばんは、先輩」

 

 「·········うん?俺のこと?」

 

 知らない後輩が話しかけてきた。

 やばい緊張する。自分より年下の人間と関わったことなんてないぞ。*1

 ドラコ!今すぐ来てくれ!

 

 「アストリア・グリーングラスと申します。以後お見知り置きを」

 

 「·········アルバート・ソーン。成績は良いから、なんかあったら質問して良いよ」

 

 これで良いんだよな!?わからん!

 開心術を使えば、何を考えてるかわかるのに!

 去年で成長出来たと思ったのに、年下相手にはまだ緊張する。

 

 うーん。とりあえず、握手でもするか。

 

 「───あ?」

 

 この感覚を、俺は知っている。

 症状は違うだろう。原因も、違うはずだ。

 それでも、俺にはわかる。

 

 「なあ、何かの病気に罹ってるのか?」

 

 「は、はい?いえ、違いますが··········」

 

 「最近なんか大きなケガとかした?」

 

 「··········いえ、覚えがありません」

 

 この感覚は───

 

 「··········そっか。俺の勘違いだったみたい。ごめんね、びっくりさせちゃって」

 

 ───死に向かう、あの時の母と同じものだ。

 

 

 

*1
ルーナは年下だが、クィレル先生の影を重ねたのでうまく話せた




握手しただけで相手がどんな状態かわかる化け物。
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