呪いの解除は、かなりの労力を必要とする。
簡単な呪文──
しかし、古い魔法。特に結界や、肉体に作用する呪いは強く、解除するのは困難だ。
グリンゴッツには『呪い破り』という、専門の職業まである。
だから思ったのだ。
もし、呪いを解く『鍵』があれば、どれだけ楽になるだろう。
直接解呪出来なくても、呪いを解く条件でも分かれば。
まるで
「ふふっ。優しいね、アルバート」
「………外に出る許可は出してない。さっさと『日記』に戻れ」
「ジニー?どうしたんだ?」
「あ、あれ?日記が………」
ジニー・ウィーズリーが、明らかに闇の魔術が込められた日記を持っていたので、
「………なんだ、これ」
寮に戻って見てみたが、俺も見たことがないような、とても深い闇の魔術だった。
「………保管、するか」
本当は先生に渡すべきなのだろうが、そもそも他人の持ち物なので、気が引けた。
それと同時に、予感がした。
“これは、俺の助けになる”、と。
闇の欠片はより強大になり、熱は衰える
二つは惹かれ合い、反発する
友こそが、未来を決める『鍵』となる
「………なんだ今の夢」
変な夢を見た。……まさか、予言か?
「………………」
俺の助けになる、のだろうか?
『やあ、アルバート。悩んでいるね』
「!自我があるのか。本当に高度な魔法だな」
日記に文字が浮かんできた。
遠隔操作、というわけでもなさそうだ。
『僕と契約しないかい?君の悩みを、僕と一緒に解決しよう』
「それで、お前は何を求めるんだ?」
『はっきり言おう。君の力を、僕に吸わせて欲しいんだ』
………これは闇の契約だ。明らかに良くない結果を生み出す事になる。
「………お前が俺の悩みを解決出来る保証がない。顔の見えない相手は、信用出来ない」
『なら見せよう。僕の姿を』
「あ………?ホグワーツ、じゃないな」
どこだここ。日記が原因のはずだが………
「やあ、アルバート。僕の
「………お前が、日記の中身か」
そこにいたのは、スリザリンの生徒。
肩まで伸びた黒い髪。夜を削ったような黒さで、サラサラと緩やかに動いている。
妖しい光を灯した黒い目は、見た者の心を魅了するだろう。
優しく、どこか仄暗い熱を感じさせる声は、つい聞き惚れてしまうほどだった。
「僕がこの日記の作成者、トム・リドルだ。よろしくね、アルバート」
「………ああ、よろしく」
今まで感じたことがない感覚。警戒するべきなのに、会話を続けてしまう。
「さて。君が思った通り、僕は闇の魔術で成立している。そして、僕が
「なんでそれで俺が許可を出すと思ったんだ?」
「だって、君は誰よりも『力』を求めている」
───開心術か。それも、かなりの練度。
闇の魔術もそのサポートをする性質があるのか。
「その冷静な頭脳。本当に素晴らしいね」
「·········答えになってない」
「そうだね。ちゃんと話さなきゃ」
異常だ。今までこんなことはなかった。
二ヶ月も不眠不休で勉強したせいか?
心が、落ち着かない。
「君に見せよう。僕の人生を」
見た。見た。
自分が特別だと信じた。特別じゃない自分の名前が、男のようなこの名前が嫌だった。
死はヒトの弱点だと思った。母が本当に魔女なら、死を回避出来たはずだと思った。
父親こそが魔法族だと信じた。だから男のような名前なのだと、そう信じた。
平凡な名前が、特別な血に由来するものだと思いたかった。
違った。裏切られた気分だった。
母が魔法族であり、父は穢れたマグルだった。
母は『愛』などという、ふざけた理由で、自分に穢れた
父の名前を受け継いだ自分の名前が嫌いだった。
母の容姿を受け継いだ自分の姿が嫌いになった。
名前を変えた。姿を変えた。
「君なら分かるだろう、アルバート」
「僕たちは、似ている。父と同じ名前を、『愛』という理由で付けられた」
ああ、クソ。まさか、こんな時に。
「僕たちは、才能に溢れ、努力を重ねている」
子供の頃のように、
「僕たちは、偉大になる存在だ」
閉心術が暴走している。
留めていた感情が吹き出す。
「アルバート。僕らが協力すれば、もっとより良く出来る。助け合うべきだ」
確かに、助け合うべきだ。
でも、それでも。
「お前は
「··················ふうん?そこまで言うなら、いいよ」
··········は?一体、何が───
「───『破れぬ誓い』をしよう』」
「············何を、誓う」
「君を······いや、ホグワーツにいるすべての生き物を、
「そして、君の手助けをしよう」
「············何を、求める」
魔女は、美しく笑って。
「君の力を吸わせてほしい」
「そして、
────。まさか、そんな。
「そうだなぁ············二年後。二年後までに、
「··········っ!それを、俺が認めると────」
「僕の手助け無しで、『鍵』は作れるのかい?」
·····················。
「『鍵』がなきゃ、アストリア・グリーングラスの『血の呪い』を解くのは難しいだろうね」
「君の母のように。あるいは、僕の母のように、彼女は死ぬだろう」
やめろ。
「ああ、ダンブルドアに頼むかい?」
「でも、彼は忙しいね。生徒を大事にするけど、それ以上に大事なことがある。だって───」
「大いなる善のために、動いているんだから」
やめてくれ。
「さあ、どうするアルバート?大いなる善のために、僕の提案を断るかい?」
でも、それは。
「君の怠惰で、
「───分かった」
魂を分割し過ぎて衰えた本体とは違い、日記の美人なリドル先輩はマジで魔女。