『魔王』 アルバート・ソーン   作:アーっr

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メンタルが回復してきたアルバート君。


選択と責任

 

 

 

 「【アルバートの『先輩』って呼び方、好きだよ】」

 

 いきなり、先輩(・・)はそう言った。

 

 「【………なんで?】」

 

 「【だって、僕が自分の名前を嫌ってることを気遣ってくれてるでしょ?やっぱり、アルバートは優しいね】」

 

 

 

 

 

 

 

 「ロックハート先生。また相談があります」

 

 「おやソーン君。私のアドバイス通りにやりましたか?」

 

 「はい。俺も覚悟を決めました。ですが、問題が出てきて。その………。先輩との関わり方が、わからなくなってしまって………」

 

 「どうすれば仲良くなれるかわからないと!

ええ、ええ。確かに女の子の心は難しいものです。わからないのも無理はないでしょう。ですが、私はわかりますとも」

 

 「女の子と近づきになるために必要なもの。君に足りていないもの。それは………」

 

 「それは?」

 

 「余裕(・・)です!私のように自信をもって!堂々と!そうすればきっと、君の先輩も振り向いてくれるでしょう!」

 

 「なるほど。ありがとうございます」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 余裕。

 確かに、今の俺には余裕がない。

 

 二年生が始まる前から疲れてたり、『鍵』を作るために焦っていたり、先輩(・・)とどう関わるべきか迷ったり。

 

 楽しさより義務感が前に出ている気がする。去年までは、そうじゃなかったはずだ。

 

 出来ないことが出来るようになる事が楽しくて。知らない事を覚えていくことが楽しくて。

 

 なのに今は、“やらなきゃいけない”という焦りが、俺を苦しめている。

 

 違うはずだ。俺は、もっと。もっと··············

 

 「俺たちは、自由だ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「あ、ハリー。どうしたんだ?」

 

 冬休みに入って、人が居なくなったホグワーツ。

 

 俺が雪の中、杖も日記も持たずにドラゴンの血肉に込められた魔法を解析していると、去年と同じように、ハリーが何か聞きたそうに会いに来た。

 

 「その………誰が『継承者』か、知らない?」

 

 「知ってるよ」

 

 「知ってるの!?」

 

 知っているとも。

 

 「でも言えない。ごめんな」

 

 「な、何で止めないの!?このままじゃ、もっと大勢犠牲に────」

 

 「止めてはいる(・・・・・・)。その証拠に、死人は出ていないだろう?犠牲者が石化程度(・・)だったのは、俺がある程度止めたからだ」

 

 わざわざ『破れぬ誓い』まで使ったからな。代償は大きかったが、死人が出るよりマシだ。

 

 「………何で、襲う事自体を止めないの?」

 

 「俺にも事情があるんだ。『継承者』を名乗る者を許す代わりに、俺にある程度の利益を齎している以上、止めるわけにはいかない」

 

 「爺さん(ダンブルドア)はちゃんと分かってる」

 

 具体的なことは言っていないが、どうせわかってるだろ。

 俺が『日記』を持っていることも、それを利用していることも。

 

 「でも、『継承者』が捕まれば、噂も………」

 

 「ああ、ハリーが『継承者』って言う、あの?

馬鹿らしいよな。ハリーを知ってる奴なら、すぐに違うって分かる」

 

 ハリエット・ポッターが『スリザリンの継承者』だなんてことはありえない。

 

 これは、俺が真の『継承者』を知っているからではなく、ハリー自身の性格的な話だ。

 

 「でも、みんな噂してる。僕を見て、今度は自分が襲われると思い込んでる」

 

 「………まあ、そうだな」

 

 確かに、ハリーは蛇と話せるらしい。

 サラザール・スリザリン自身が【蛇語(パーセルマウス)】だったという、有名な話を連想させるものだった。

 

 しかし、ハリエット・ポッターが『継承者』であると言われたのには、別の………本人の資質とは関係のない部分もある。

 

 

 

 

 

 

 

 「え?どういうこと?」

 

 「………純血主義者は、ヴォルデモートを信奉していた。必ずや『闇の帝王』が純血の、魔法界における地位を高めてくれると期待したからだ」

 

 だが、『闇の帝王』は敗れた。

 

 「純血主義者にとって、まさに青天の霹靂だった。あり得ざる『闇の帝王』の失脚は、彼らを大いに動揺させた」

 

 一体どれほどの衝撃だっただろう。

 

 去年の、亡霊のような存在ではなく。

 日記の、先輩(・・)よりもさらに研鑽を積んだ存在。

 

 圧倒的かつ絶対的。

 『今世紀最も偉大な魔法使い』以外には負けないだろうと、そこまで言われた存在が。

 

 たった一夜にして、消え去った。

 それも、赤ん坊のせいで。

 

 「彼らは理由を考えた。“何故、あれ程の存在が赤子に負けたのか”」

 

 『闇の帝王』は、まさに不世出の大魔法使いだ。

 ならば。

 

 「“赤ん坊のハリエット・ポッターは、生まれながらにしてそれ以上の闇の魔法使いだったのだ”、と彼らは考えた」

 

 「────え?」

 

 当然だ。俺だってその可能性を考えた。

 

 「まあ、今のハリーを見てそんな事を言う奴はいないと思うが」

 

 問題は、『生き残った女の子』は隠されたのだ。

 誰も、ダンブルドアなどの例外を除けば誰も、

ハリエット・ポッターを知らなかった(・・・・・・)のだ。

 

 「ハリーは魔法界の英雄だ。そんな英雄を、どうしてマグルの中で育てるのか。多くの者は疑問に思っただろう」

 

 当然、そこには爺さんの思惑があったはずだ。

 だが、それを知る者もいなかった。

 

 「そしてそれは、“ハリエット・ポッターはとても危険で強大な闇の魔法使い”という説を、補強しうるものだった」

 

 つまり、手に負えないから隔離する、という話。

 事実とは全く違うのだが。

 

 「だから、純血主義者は期待した。『闇の帝王』を遥かに上回る、新しい『帝王』を。君こそが純血主義の先頭になってくれると、そう期待した者が少なからず居た」

 

 俺はマグル生まれだから正確なことは分からないが、少なくともドラコの父親。ルシウス・マルフォイはそう考えただろう。

 

 「去年、ハリーは入学した。成績こそ他に優秀な者が多く居たが、それでも。『石』を守るために、勇気を持って『闇』に立ち向かった」

 

 結局、『生き残った女の子』は英雄だった。

 

 「だが、今年。『スリザリンの継承者』を名乗る者がホグワーツで石化事件を起こした」

 

 そして。

 

 「君が蛇と話せることに皆が気付いた」

 

 「そこで、あの説が再燃した」

 

 やはりハリエット・ポッターは強大な闇の魔法使いである、という説が。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「………実は、ロンやハーマイオニーにも言わなかったんだけど」

 

 「組み分けの時、“スリザリンに行けば偉大になれる”って言われたんだ」

 

 「………ねえ、アルバート。僕は、スリザリンに行くべきだったのかな………」

 

 「いや、それは違うだろ」

 

 そんなわけない。

 

 「………え?」

 

 「自分が進む道を決めるのは、自分だ。才能とか素質の問題じゃなくて、自分がどうしたいかだ」

 

 確かに、才能のある分野に進んだ方がいいかも知れない。

 

 「それでも(・・・・)、何をするかを決めるのは自分だ。自分で、決めるんだ」

 

 「自分で………」

 

 自分で決めなきゃ、絶対後悔する。

 自分の人生は、自分で決めるのだ。

 

 「そして、決めたら責任を持たなきゃいけない。自分が決めた行動に、責任を持たなきゃいけない」

 

 俺は責任を持って、先輩(・・)と決着をつける。

 

 「………僕がグリフィンドールに来たのは、僕が帽子に頼んだんだ」

 

 「なら、それがハリーの決めた道だ。他人がどうこう言えるもんじゃない」

 

 まあ、他人に迷惑をかけてたら駄目だが。

 

 「────アルバート、ありがとう」

 

 「ああ。頑張れよハリー」

 

 自分で決めた以上、やり遂げろ。

 文句を言う奴がいたら、黙らせてやる。

 

 

 

 




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