『魔王』 アルバート・ソーン   作:アーっr

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確かに、純血主義ではあった。
だが、ホグワーツが危険に晒されることを、彼は望んだのだろうか?


継承

 

 

 むしゃむしゃ。ガチャガチャ。

 腹が減る。燃料が足りない。

 

 ………やはり、足りない(・・・・)

 

 すでにかなりの量を食っている。おおよそ三千人前だ。*1普通に生きるだけなら十分だ。

 それでも、俺が全力で動く為にはもっと栄養が欲しい。特に、ドラゴンに変身して血を大量に摂るのは負担が大きいのだ。*2

 

 ………量で補うのは、難しいか。

 

 

 

 

 

 

 

 「爺さん。畑を作りたいんだけど………」

 

 「おお、良いとも。ハグリッドの小屋の近くにいい場所があったはずじゃ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 畑。すなわち、農作業。

 このアルバート・ソーン、初体験である。

 

 「えい、えい」

 

 持ち前の筋力で、耕すのは簡単だった。

 

 「確か、種を蒔いたりする前に一度肥料を散布した方がいいんだよな」

 

 だが、肝心の肥料はどうしようか。

 マグルが使う普通の肥料で、俺が満足出来るものが作れるだろうか………

 

 

 「───あ」

 

 ある。肥料が。

 魔法的に大きな価値があり、しかも俺はそれを大量に持っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ドバドバ〜。良い土になれ〜」

 

 ドラゴン()の血液を畑に掛ける。

 魔法の肥料を撒いた方がいいのだろうが、ここで育てるのは俺専用の野菜なので、俺の血を混ぜた土なら親和性が高まるのではないだろうか。

 

 実際、動物の血を乾燥させて粉にし、肥料や土壌改善のために撒くことがマグルでもあるらしい。*3

 

 「混ぜ混ぜ〜混ぜ混ぜ〜」

 

 血と土を混ぜる。ついでに、畝を作る。

 ちゃんと植物に栄養や空気が届けばいいが。

 

 「よし。こんなもんだろ」

 

 

 

 

 

 さて、種を蒔く。

 育てるのは小麦。パンの材料として試しに育ててみることにした。

 

 「………ちゃんと育つのか?」

 

 正直不安である。というか、失敗する可能性の方が高い。

 まあ、失敗したらそこからまた考えればいい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「うーん。やらかしたな」

 

 あれから三日たった。たった三日で、小麦が育っていた。200〜300日かかるはずの小麦が。*4

 

 まず間違いなく、ドラゴン()の血のせいだ。

 水をやる感覚で血を大量に撒いたのは失敗だったかもしれない。

 そのせいで、なぜか小麦が動き出している(・・・・・・・)

 

 暴れ柳やマンドレイクなど、魔法的な植物は動くものもあるが、種は普通の小麦だったはずだ。

 

 急いで柵を作った。まさか外からの侵入者では無く、中の植物の危険から逃れるために柵を作ることになるとは。

 なにが起こるかわからないものである。

 

 

 

 

 

 

 

 「………さて、食うか」

 

 数分格闘したが、無事に収穫出来た。

 その後、しもべ妖精に頼み、俺の小麦でパンを焼いてもらった。

 

 「───〜〜〜〜〜!?!?!?」

 

 なんだこれ!?なんか、なに?

 久しぶりに炭酸水を飲んだ時、炭酸に驚いて、まるで喉が攻撃されたような感覚になる。

 下手な例えだったが、そんな感じだった。酒を飲んだらこうなるのだろうか?

 

 痛いわけではないが、今まであまり感じたことのない、違和感。

 おそらくドラゴンの血をそのまま吸ったせいで、小麦にもその魔力が入ったのだろう。

 

 だが、うん。

 

 「美味いな。成功だったんじゃないか?」

 

 美味いし、体にエネルギーが入った感覚がある。十分だな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「生徒は全員、それぞれの寮にすぐに戻りなさい。教師は全員、職員室に大至急お集りください」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ジニー・ウィーズリーが『継承者』に攫われたらしい。

 ちなみに爺さんはいない。停職処分がどうたらとドラコが言っていた。

 

 ───時が、来たのだ。

 

 先輩(・・)と俺は、確かに近しいものがあった。

 だが、俺たちは似ているだけで、同じじゃない。

 

 結局、目指すところは違ったのだ。

 ああ、だが。俺は───

 

 ───俺を『愛してる』と言ってくれたあの魔女を、殺せるのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『秘密の部屋』の入り口がどこなのかは、先輩(・・)から聞いていない。

 まあ、聞かなかったし。

 

 そのことを考えながら、適当に歩いていると。

 

 「アルバート!?なんでここに!」

 

 「───やっぱり俺、運がいいな」

 

 

 

 

 

 

 

 「へえ。ここが入り口かぁ」

 

 「多分ね。それで···········」

 

 「そ、ソーン君!助けてください!」

 

 「···········うるさい。詐欺をしてみんなを騙してたんだから、これくらいお似合いだよ」

 

 「···········ああ、ハリー達も気づいたのか」

 

 ギルデロイ・ロックハートの書いた作品は、その全てが他人の話。彼が忘却術と、ハンサムさと会話の上手さで他者から奪い取ったものにすぎない。

 

 ちなみに、俺は初対面の時から気付いていた。

 去年が『闇の帝王』だったから、今年は大丈夫か開心術で確かめた。

 

 「··········じゃあ、先に降りて」

 

 「ねえ、君たち、それがなんの役に立つというんだね?」

 

 ロックハート先生は焦ってそう言う。

 

 「偵察として、十分すぎる役割でしょうね。少なくとも、降りてすぐバジリスクがいるかどうかはわかる」

 

 ああ、『部屋』の中の怪物はバジリスクだ。

 数百年という年月を生き、とても強力な毒を持つ、毒蛇の王。

 

 スリザリン(蛇寮)に相応しいと言える。

 

 「ほんとうになんの役にも__」

 

 「ほら、いけ!」

 

 ロンが背中を押して、ロックハート先生は下に落ちる。さて、俺達も行くか。

 

 

 

 

 

 

 「いやあ、やっぱおっきいな」

 

 「こんなに大きいの············?」

 

 脱皮した後の、6mほどある抜け殻があった。

 脱皮した抜け殻がこれということは、更に成長する本体はもっと大きいだろう。

 

 

 「坊やたち、お遊びはこれでおしまいだ!私はこの皮を少し学校に持って帰り、女の子を救うには遅すぎたとみんなに言おう。君たち三人はズタズタになった無残な死骸を見て、哀れにも気が狂ったと言おう。さあ、記憶に別れを告げるがいい!」

 

 ああ、全く気にしていなかった。

 まあ───

 

 「忘れよ!(オブリビエイト)ウワ〜!」

 

 杖が爆発し、情けない声を上げながらロックハート先生は倒れた。

 天井から、岩が落ちてくる。

 

 

 

 

 

 

 

 「ローン!」

 

 「大丈夫か、ロン!」

 

 「僕は大丈夫だ。でもこっちのバカはダメだ__杖で吹っ飛ばされた」

 

 分断されてしまった。杖があれば良かったんだが、杖なし呪文だと更に被害が大きくなるかもしれない。

 ··········しょうがない。

 

 「俺とハリーは先へ進む!ロンはこの岩石をどうにかしてくれ!」

 

 

 

 

 

 

 

 先へ進み、また蛇語で扉を開けると、そこは薄暗い、蛇の彫刻がある部屋だった。

 

 その部屋の奥。

おそらく、魔法使いの巨大な彫刻と思われるものの足元に、ジニー・ウィーズリーはいた。

 

 「ジニー!起きてジニー!死んじゃだめだ!」

 

 「その子は目を覚ましはしない」

 

 ···········久しぶりに聞く声だ。

 冷たく、しかしどこか暖かさも感じさせる声。

 

 「やあアルバート。久しぶりだね。ハリエット・ポッター君も」

 

 「き、君は···········ゴーストなの?」

 

 俺から離れてハリーに接触していたのか。

 ハリーも先輩(・・)のことを知っているようだ。

 

 「記憶だよ。偉大なる、『スリザリンの継承者』としての僕。その記憶を日記に込めたんだ」

 

 

 

 

 

 

 「そんな、じゃあ···········君が?」

 

 「ああ、苦労したんだよ、ハリー」

 

 「最初、僕はジニーの良い友達として、持ち運べる親友として接していた」

 

 「だが、ある時ジニーでは無くなった···········アルバートが、ジニーから日記を盗んだんだ」

 

 闇の魔法がかかってたし···········

 

 「ああ、ここからが僕の最大の誤算だ」

 

 「僕とアルバートには似ているところがあった。僕とアルバートは共感し、理解し合った」

 

 「そのせいで───『愛』という呪いにかかってしまった」

 

 「利用するのでは無く、一緒に、対等な存在として在りたかった」

 

 「一緒に、この魔法界を支配したかった」

 

 ··············。

 

 「だが、アルバートはそれを望まなかった」

 

 「僕たちは似ていても、道は違った」

 

 「『誓い』をある程度果たして、僕はアルバートから離れた。僕のやりたいことは、アルバートの許さないことだ」

 

 ああ、そうだな。

 

 「だが、もういい(・・・・)。邪魔なハリエット・ポッターを殺す。放っておいても、『誓い』に従ってアルバートが動く」

 

 「ハリエット・ポッター。『生き残った女の子』。邪魔な君をここで始末すれば、あとは楽になる」

 

 「どうして僕を狙うんだ!」

 

 「ああ、ハリー。君は知らなかったね」

 

 先輩(・・)が俺の杖を上げる。

 

 「ヴォルデモートは」

 

 TOM MARVOLO RIDDLE(トム・マールヴォロ・リドル)

 

 「僕の過去であり、現在であり、未来なのだ…、ハリー・ポッターよ」

 

 I AM LORD VOLDEMORT(わたしはヴォルデモート卿だ)

 

 「学生の頃からこの名前は使っていたんだ。穢れた(マグル)の名前ではない、いつか魔法界の全てが恐怖することになる、最も偉大な魔法使いの名前を!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「·············違う」

 

 ハリーは、声を上げた。

 

 「なにが?」

 

 先輩(・・)はイラついている。

 

 「世界一偉大な魔法使いはアルバス・ダンブルドアだ」

 

 「ダンブルドアは僕の記憶に過ぎないものによって追放され、この城からいなくなった!」

 

 いや、それは違う。

 

 「ダンブルドアは、君の思っているほど、遠くに行ってはいないぞ!」

 

 ああ、そうだとも。留守を任された俺がいる。

 それだけではない。

 

 どこからともなく旋律(うた)が聞こえてくる。

 まさに天上の調べ。美しい歌だった。

 

 「この、旋律(うた)は───」

 

 「不死鳥············ダンブルドアのペットか?」

 

 「フォークス!」

 

 そして────

 

 「『古い組み分け帽子』────」

 

 先輩(・・)が甲高い笑い声を上げる。

 

 「ダンブルドアが味方に送ってきたのはそんなものか!歌い鳥に古帽子じゃないか!」

 

 「いいや(・・・)。これで十分だよ、先輩(・・)

 

 「···········へえ?勝てると思うのかい?杖も無く、足手纏いと一匹の鳥。それに、ボロ切れのような帽子」

 

 「この僕、『スリザリンの継承者』に勝てると?」

 

 違う。

 

 お前(・・)は『継承者』じゃない」

 

 「お前のやっていることはただの自己満足だ。 サラザール・スリザリンの意思を受け継いだわけじゃない」

 

 「俺こそが『スリザリンの継承者』だ。彼の意思を受け継ぎ、ホグワーツに危険を齎すお前(・・)を、止める!」

 

 「俺は覚悟を決めたぞ、トム(・・)!」

 

 

*1
ホグワーツ全校で約千人、朝昼夜の三食で三千人前。つまりホグワーツ全体の一日分

*2
新宿駅より大きいと思われるホグワーツ城よりさらに大きいドラゴンがその程度なら燃費はいいと思われる

*3
本当にある手法。血粉肥料というらしい

*4
種類や気候などによるが、おおよそこれくらい




『継承者』vs『継承者』&『生き残った女の子』
ファイ!
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