「【スリザリンよ。ホグワーツ四強の中で最強の者よ。 われに話したまえ】」
「ハリー、これを!」
ハリーに
「俺がいいと言うまで、目を開けるな!」
「【あいつを殺せ!】」
まずは目を潰さなければいけない。見るだけで相手を死に至らしめる光線は、俺でも危険だ。
「行くぞフォークス!」
杖を使わずにバジリスクを『失神』させるようなことは今の俺には出来ない。
つまり、頼れるのは自分の体だけだ。
「どうする、アルバート?ドラゴンに変身すれば、足手纏いも潰れるぞ?」
「ハッ!考えが甘いんじゃないか、
目を閉じたまま、走る。
バジリスクは強力な魔法生物だ。故に、その気配は
シュー、シューという蛇の鳴き声と、何かがのたうち回るような音が聞こえる。
どうやら、フォークスがバジリスクの右目を潰したようだ。
なら、
バジリスクの顔にしがみつき、そして───
「――――ウゥゥウオオオオォォォォォッッッ!!」
全力で、バジリスクの左目を
「ハリー!目を開けろ!」
ハリーが言われた通りに目を開けると、バジリスクの両目は潰れ、見えなくなっていた。
「ハリー、杖は持ってるな?よし、ハリーは
「わ、わかった!」
「·········僕を、馬鹿にしているのか?君如きが、この僕と?」
「
「フッ!」
ハリーの呪文をトムは難なく弾く。
「殺しはしないさ。生きたままバジリスクに食わせるけどね。
お返しとばかりに、トムが呪文を放ち───
「───えっ?」
「これは───」
「そうか、ローブの魔法………忘れていた。なかなか面白いことになってきたじゃないか」
走る。走る。
バジリスクは目を失って、匂いで俺を探している。マグルの蛇が持つようなピット器官*1は持っていないようだ。
これは助かる。匂いで探そうにも、近くを飛んでいるフォークスに気を取られて、俺を見つけられていない。
「【やれ、バジリスク!】」
「………あ?どこを、狙って──」
バジリスクが、
まずい、バジリスクの毒はとんでもなく強い!
あのローブでも防げない────!
「アルバート!」
「ぐ、がぁ………っ!」
「ふ、ふふふ。そうだよね、アルバート。君は、その足手纏いを見捨てられない。だから、負けるんだよ」
ハリーを庇って、バジリスクに噛まれた。俺の体が、バジリスクの牙に挟まれている。
「ぐ、おおおおおっ!!」
「【噛み砕け!】」
毒がどうこう言える段階じゃない!このままでは、バジリスクに噛み砕かれる!
なんとかして脱出しなければ、俺は死ぬ。
「こんなところで、終わるわけには──!」
『スリザリンの継承者』として、
───ふと、古い組み分け帽子を見た。ハリーの足元に落ちている、それを。
「───っ!ハリー、帽子だ!帽子の中に剣がある!俺に投げてくれ!」
「───アルバート!受け取って!」
「させないよ!」
ハリーが銀の剣を引き抜いて、俺に投げた。
宙に浮かんだその剣に向かって、
「───は?」
魔法が
卵ほどの大きさのルビーの柄。
純粋なゴブリン銀の刀身。
まさしく、ゴブリンの名工ラグヌック1世の最高傑作。
すなわち────
「────ゴドリック・グリフィンドールの剣」
「ッ……ゥ、ゥウ――ッ……――ゥゥウウウォォオオオ――!!」
牙が内臓に届き、さらには毒までもが体内に入って、まさに命の危機。
最後の力を振り絞って、バジリスクの口腔の中に剣を突き立てた。
息絶える。千年生きた『怪物』は、とうとう永遠の眠りについた。
だが、代償は大きい。
「あ、アルバート!」
少年の体には、『怪物』の牙が刺さっている。出血か、あるいは毒か。
いずれにせよ、死ぬだろう。生身で『怪物』と戦った勇者は、相打ちになるのだ。
「は、りー。牙、を………」
「喋らないで!絶対助かる!もう良いから!」
少年は『怪物』の牙を少女に渡す。
『怪物』の毒なら、『日記』を破壊できるのだ。
あの、美しい
「………
「──うん!」
そして、少女が『日記』に牙を突き立てたようとし────
「
「
呪文は、ぶつかった。
「──な、ぜ、
「………『先生』の杖だ。使うつもりはなかったが、助けられたな」
杖を盗んだ。換えはなかったはず。
そんな疑問に、答える。
ハリーが『日記』に牙を突き立てた。これで、
「………あーあ。
『ホグワーツにいるすべての生き物を殺さない』という誓いを立てたのにも関わらず、死の呪文を放った。
『破れぬ誓い』を破った代償と、単純な魔法の押し合いの結果、俺の杖は爆散した。
「あ、アルバート··········」
「なに?懺悔か、命乞い?」
「
──そう言って、
ばたん、と倒れる。
正直もう限界だ。内臓はいくつか潰れ、毒は全身に周り、疲労している。
このままでは死ぬ。
「············フォー、クス。泣いて、くれるのか」
不死鳥の涙は、あらゆるものを癒す。
だが、これは流石に無理だ。バケツ一杯分の涙があれば話は別だが。
「あ、アルバート!何か、何かないの?助かる方法が、なにか············」
「い、ま、俺は············怪我と毒で、死にかけてる。怪我は············フォークスの涙で、塞がるかもしれないが、毒は、もう、全身に············」
フォークスの涙は足りない。出血が止まっても、解毒しきれない。
············つまり、毒さえなんとか出来れば、死なない············?
「············ぐ、ああっ!ふぐぅぅっ!」
全身に力を入れる。
今ここでバジリスクの毒の解毒剤は作れない。そんな時間はない。
だが、そんなもの、不要だ。俺は魔法使いなのだから。
毒を持つ生き物は、自分の毒で自滅しないようになっている。
全身を
そうすれば───
「───げほっ、がはっ!」
毒は、無害になる。
助かった。
ああ、本当に───
「───ありがとう、
「爺さん、悪かった。ちゃんと言わなくて」
「良いのじゃ、アルバート。君は周りの人間に、友に相談し、助けを求めた。それで良いのじゃ」
結局あの後、フォークスに捕まってホグワーツに戻り、事件の顛末を説明した。
グリフィンドールとスリザリンはまた同時優勝だったらしい。俺は医務室に監禁されてて居なかったが。
「·············『先生』の杖に、助けられたよ」
「おお、ニコラスも喜んでおるじゃろう。自分の半身とも言える杖が、自分の弟子を助けたのじゃ」
本当に助かった。あのまま死の呪文が放たれていれば、俺はバジリスクのせいで。ハリーは死の呪文で死に、
まあ、俺の杖は消し飛んだが。
「·············それで、爺さん。図々しいのは分かってるんだけど、また頼みがあるんだ」
「ほう。今回はどんなことじゃ?」
「ゴブリンの鍛治技術。それを学びたい」
「·········ふむ。それは、少し難しいじゃろうな」
それと同時に、魔法使いたちもゴブリンに杖の秘密を教えようとしない。
種族的な価値観の違い。ゴブリンと魔法族は近いが、しかし相容れないのだ。
「方法は、あるよ」
「一体どんなことじゃ?」
「ゴドリック・グリフィンドールの剣を、 ゴブリンに
かつてのゴブリンの王、ラグヌック一世が作った剣を、ゴドリック・グリフィンドールは盗んだ。
事実はどうあれ、ゴブリンはそう思っている。
文化的に、魔法族は『金を払えば自分のものになる』が、ゴブリンは『金を払ってもそれは貸しているだけ』だ。
このような蟠りも、ゴブリンと魔法族の対立の一つになっている。
「·············しかしのう、アルバート。グリフィンドールの剣はあくまでホグワーツに帰属するものじゃ。たとえ真のグリフィンドール生が剣を引き抜いたとしても───」
「だから、
「───一年だ。俺が四年生になるまでに、グリフィンドールの剣を
必ず、代わりになる物を作ってみせる。
「本物を返して、俺が新しい本物を作る。そうすれば、ゴブリンとの仲は良くなるし、真のグリフィンドール生が困ることにはならない」
「俺を、信じてくれ」
「··············良いじゃろう。それはさておき、
「フランス語は三日で話せるようになった。多分話せる」
『愛』をまた失った。
それでも、友がいる。