『魔王』 アルバート・ソーン   作:アーっr

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その教えが、彼を助けた。


秘密

 

 

 「【スリザリンよ。ホグワーツ四強の中で最強の者よ。 われに話したまえ】」

 

 「ハリー、これを!」

 

 ハリーに俺のローブ(・・・・・)を渡す。

 

 「俺がいいと言うまで、目を開けるな!」

 

 「【あいつを殺せ!】」

 

 トム(・・)の命令に従って、バジリスクが動く。

 

 まずは目を潰さなければいけない。見るだけで相手を死に至らしめる光線は、俺でも危険だ。

 

 「行くぞフォークス!」

 

 杖を使わずにバジリスクを『失神』させるようなことは今の俺には出来ない。

 つまり、頼れるのは自分の体だけだ。

 

 「どうする、アルバート?ドラゴンに変身すれば、足手纏いも潰れるぞ?」

 

 「ハッ!考えが甘いんじゃないか、トム(・・)!」

 

 目を閉じたまま、走る。

 バジリスクは強力な魔法生物だ。故に、その気配は見なくてもわかる(・・・・・・・・)

 

 シュー、シューという蛇の鳴き声と、何かがのたうち回るような音が聞こえる。

 どうやら、フォークスがバジリスクの右目を潰したようだ。

 

 なら、俺も(・・)

 バジリスクの顔にしがみつき、そして───

 

 「――――ウゥゥウオオオオォォォォォッッッ!!」

 

 全力で、バジリスクの左目を引きちぎった(・・・・・・)

 

 

 

 

 

 

 「ハリー!目を開けろ!」

 

 ハリーが言われた通りに目を開けると、バジリスクの両目は潰れ、見えなくなっていた。

 

 「ハリー、杖は持ってるな?よし、ハリーはトム(・・)と戦ってくれ。俺はバジリスクをなんとかする!」

 

 「わ、わかった!」

 

 

 

 

 

 

 

 「·········僕を、馬鹿にしているのか?君如きが、この僕と?」

 

 「武装解除呪文(エクスペリアームズ)!」

 

 「フッ!」

 

 ハリーの呪文をトムは難なく弾く。

 

 「殺しはしないさ。生きたままバジリスクに食わせるけどね。失神呪文(ステューピファイ)

 

 お返しとばかりに、トムが呪文を放ち───

 

 「───えっ?」

 

 「これは───」

 

 盾の呪文(プロテゴ)に防がれた。

 

 「そうか、ローブの魔法………忘れていた。なかなか面白いことになってきたじゃないか」

 

 

 

 

 

 

 

 走る。走る。

 

 バジリスクは目を失って、匂いで俺を探している。マグルの蛇が持つようなピット器官*1は持っていないようだ。

 

 これは助かる。匂いで探そうにも、近くを飛んでいるフォークスに気を取られて、俺を見つけられていない。

 

 「【やれ、バジリスク!】」

 

 「………あ?どこを、狙って──」

 

 バジリスクが、ハリーに襲いかかった(・・・・・・・・・)

 まずい、バジリスクの毒はとんでもなく強い!

 あのローブでも防げない────!

 

 「アルバート!」

 

 「ぐ、がぁ………っ!」

 

 「ふ、ふふふ。そうだよね、アルバート。君は、その足手纏いを見捨てられない。だから、負けるんだよ」

 

 ハリーを庇って、バジリスクに噛まれた。俺の体が、バジリスクの牙に挟まれている。

 

 「ぐ、おおおおおっ!!」

 

 「【噛み砕け!】」

 

 毒がどうこう言える段階じゃない!このままでは、バジリスクに噛み砕かれる!

 なんとかして脱出しなければ、俺は死ぬ。

 

 「こんなところで、終わるわけには──!」

 

 『スリザリンの継承者』として、トム(・・)を止めなければならないのだ。

 

 

 

 ───ふと、古い組み分け帽子を見た。ハリーの足元に落ちている、それを。

 

 ()が見えた。剣の、柄だ。

 

 「───っ!ハリー、帽子だ!帽子の中に剣がある!俺に投げてくれ!」

 

 「───アルバート!受け取って!」

 

 「させないよ!」

 

 ハリーが銀の剣を引き抜いて、俺に投げた。

 宙に浮かんだその剣に向かって、トム(・・)が呪文で引き寄せようとして───

 

 「───は?」

 

 魔法が弾かれた(・・・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

 卵ほどの大きさのルビーの柄。

 純粋なゴブリン銀の刀身。

 

 まさしく、ゴブリンの名工ラグヌック1世の最高傑作。

 すなわち────

 

 「────ゴドリック・グリフィンドールの剣」

 

 

 

 

 

 

 「ッ……ゥ、ゥウ――ッ……――ゥゥウウウォォオオオ――!!」

 

 牙が内臓に届き、さらには毒までもが体内に入って、まさに命の危機。

 

 最後の力を振り絞って、バジリスクの口腔の中に剣を突き立てた。

 

 

 

 

 

 

 息絶える。千年生きた『怪物』は、とうとう永遠の眠りについた。

 だが、代償は大きい。

 

 「あ、アルバート!」

 

 少年の体には、『怪物』の牙が刺さっている。出血か、あるいは毒か。

 いずれにせよ、死ぬだろう。生身で『怪物』と戦った勇者は、相打ちになるのだ。

 

 「は、りー。牙、を………」

 

 「喋らないで!絶対助かる!もう良いから!」

 

 少年は『怪物』の牙を少女に渡す。

 『怪物』の毒なら、『日記』を破壊できるのだ。

 

 あの、美しい旋律(うた)が聞こえる。

 不死鳥(フォークス)が、日記を運んできたのだ。

 

 「………やれ(・・)!」

 

 「──うん!」

 

 そして、少女が『日記』に牙を突き立てたようとし────

 

 「死の呪文(アバダケダブラ)!」

 

 「武装解除呪文(エクスペリアームズ)!」

 

 呪文は、ぶつかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「──な、ぜ、()、を………」

 

 「………『先生』の杖だ。使うつもりはなかったが、助けられたな」

 

 杖を盗んだ。換えはなかったはず。

 そんな疑問に、答える。

 

 ハリーが『日記』に牙を突き立てた。これで、

先輩(・・)は滅びるだろう。

 

 「………あーあ。先輩(・・)が『誓い』を破ったせいで、俺の杖爆散してもう粉じゃん」

 

 『ホグワーツにいるすべての生き物を殺さない』という誓いを立てたのにも関わらず、死の呪文を放った。

 

 『破れぬ誓い』を破った代償と、単純な魔法の押し合いの結果、俺の杖は爆散した。

 

 「あ、アルバート··········」

 

 「なに?懺悔か、命乞い?」

 

 「愛してる(・・・・)

 

 ──そう言って、先輩(・・)は消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 ばたん、と倒れる。

 

 正直もう限界だ。内臓はいくつか潰れ、毒は全身に周り、疲労している。

 このままでは死ぬ。

 

 「············フォー、クス。泣いて、くれるのか」

 

 不死鳥の涙は、あらゆるものを癒す。

 だが、これは流石に無理だ。バケツ一杯分の涙があれば話は別だが。

 

 「あ、アルバート!何か、何かないの?助かる方法が、なにか············」

 

 「い、ま、俺は············怪我と毒で、死にかけてる。怪我は············フォークスの涙で、塞がるかもしれないが、毒は、もう、全身に············」

 

 フォークスの涙は足りない。出血が止まっても、解毒しきれない。

 

 ············つまり、毒さえなんとか出来れば、死なない············?

 

 

 

 

 「············ぐ、ああっ!ふぐぅぅっ!」

 

 全身に力を入れる。変身(・・)すれば、まだなんとかなるかもしれない············!

 

 今ここでバジリスクの毒の解毒剤は作れない。そんな時間はない。

 だが、そんなもの、不要だ。俺は魔法使いなのだから。

 

 毒を持つ生き物は、自分の毒で自滅しないようになっている。

 バジリスクはバジリスクの毒に耐性がある(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

 全身を変身(・・)させる必要はない。血液などを、少し置換すれば良い。

 そうすれば───

 

 「───げほっ、がはっ!」

 

 毒は、無害になる。

 

 助かった。動物もどき(アニメーガス)を習得していなければ死んでいた。

 ああ、本当に───

 

 「───ありがとう、先輩(・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

 「爺さん、悪かった。ちゃんと言わなくて」

 

 「良いのじゃ、アルバート。君は周りの人間に、友に相談し、助けを求めた。それで良いのじゃ」

 

 結局あの後、フォークスに捕まってホグワーツに戻り、事件の顛末を説明した。

 

 グリフィンドールとスリザリンはまた同時優勝だったらしい。俺は医務室に監禁されてて居なかったが。

 

 「·············『先生』の杖に、助けられたよ」

 

 「おお、ニコラスも喜んでおるじゃろう。自分の半身とも言える杖が、自分の弟子を助けたのじゃ」

 

 本当に助かった。あのまま死の呪文が放たれていれば、俺はバジリスクのせいで。ハリーは死の呪文で死に、先輩(・・)も『誓い』の代償で死んだだろう。

 

 まあ、俺の杖は消し飛んだが。

 

 「·············それで、爺さん。図々しいのは分かってるんだけど、また頼みがあるんだ」

 

 「ほう。今回はどんなことじゃ?」

 

 「ゴブリンの鍛治技術。それを学びたい」

 

 

 

 

 

 

 

 「·········ふむ。それは、少し難しいじゃろうな」

 

 だろうな(・・・・)。ゴブリンは自分達の技術を魔法使いたちに教えようとはしない。

 それと同時に、魔法使いたちもゴブリンに杖の秘密を教えようとしない。

 

 種族的な価値観の違い。ゴブリンと魔法族は近いが、しかし相容れないのだ。

 

 「方法は、あるよ」

 

 「一体どんなことじゃ?」

 

 「ゴドリック・グリフィンドールの剣を、   ゴブリンに返還(・・)する」

 

 かつてのゴブリンの王、ラグヌック一世が作った剣を、ゴドリック・グリフィンドールは盗んだ。

 事実はどうあれ、ゴブリンはそう思っている。

 

 文化的に、魔法族は『金を払えば自分のものになる』が、ゴブリンは『金を払ってもそれは貸しているだけ』だ。

 

 このような蟠りも、ゴブリンと魔法族の対立の一つになっている。

 

 「·············しかしのう、アルバート。グリフィンドールの剣はあくまでホグワーツに帰属するものじゃ。たとえ真のグリフィンドール生が剣を引き抜いたとしても───」

 

 「だから、俺を信じてくれ(・・・・・・・)

 

 「───一年だ。俺が四年生になるまでに、グリフィンドールの剣を俺が作る(・・・・)

 

 必ず、代わりになる物を作ってみせる。

 

 「本物を返して、俺が新しい本物を作る。そうすれば、ゴブリンとの仲は良くなるし、真のグリフィンドール生が困ることにはならない」

 

 「俺を、信じてくれ」

 

 「··············良いじゃろう。それはさておき、

ゴブリディグック(ゴブリン語)は話せるのかね?」

 

 「フランス語は三日で話せるようになった。多分話せる」

 

 

 

 

*1
赤外線探知器官。獲物の熱を見分けることができる




『愛』をまた失った。
それでも、友がいる。
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