それぞれの業
グリンゴッツ魔法銀行。
ゴブリンが管理する銀行であり、魔法界唯一の銀行でもある。
通常の──つまりマグルの──銀行と同じく、両替や融資、金庫番などを行っている。
ゴブリンはとても優れた、まさに
ゴブリンはその技術に誇りを持ち、その業によって造られた『作品』は作者
だからこそ、ゴブリンはその鍛治技術を魔法族に教えようとはしない。
「それでは、『剣』を返還し、その代わり『アルバート・ソーン・ジュニア』ただ一人に鍛治技術を教える、という事でよろしいかの」
「条件の追加を。教えられた業を、決して他者に伝えないことを約束してもらいたい」
「分かりました。あなた方が認めない限り、誰にもあなた方の業を教えません」
というわけで、ゴブリンの鍛治技術を教えてもらうことになった。
「………………」
「………………」
とは言っても、直接ああしろ、こうしろと教えられているわけではない。
鍛治師の後ろで、その様子を見ているだけだ。
作品を作る過程、そして完成品を多く見ることが出来たが、やはりあの『剣』には及ばない。
………やってみるか。
「すいません。ちょっと打たせてくれませんか?」
「………あなたが?」
「はい。余った素材を少し分けてください」
「………一度だけです」
「ありがとうございます」
うーん。やっぱり冷たい。
ゴブリンからすれば業を盗む輩だから、しょうがないんだが。
打つ。考える。
俺は、完成形。すなわち『剣』を見て、触ったことがある。
先程までの見学で、基礎はわかった。
打つ。考える。
鍛造を10段階に分けるとするならば、1〜3の基礎。そして、10の完成を知っている。
つまり、10から逆算して4〜9を理解すれば、『剣』を作れる。
「うーん。そこそこですね」
やはり難しい。ゴブリン達と比べても7、8割ほどの完成度だ。
「なかなか筋は良いですね。研鑽を積めば、更に良い作品を作れるでしょう」
「こんにちは、オリバンダーさん」
「おお、ソーンさん。あなたのことはよく覚えている。樫の木にドラゴンの琴線。37cm」
「実は、杖を失ってしまいました」
「おや、なんと。では、新しい杖を買いに?」
「
魔法使いの杖。
様々な魔法の使用を補助し、魔法使いの半身とも言われる物。
杖と魔法使いには親和性があり、これを杖作り達は『杖が魔法使いを選ぶ』と言う。
昔から
もっとも、優秀な杖作りが作った物が世に出てからは、そういう文化は消えていった。
だが、自分で作った杖の親和性の高さは事実である。故に────
「杖作りの業を、教えてください」
「やはり、不死鳥の尾羽根は最高の素材だ。ユニコーンのたてがみやドラゴンの琴線も捨てがたいが、それでも不死鳥は格別の存在なのです」
確かに、不死鳥は強い魔法特性を持っている。
それなら───
「不死鳥…………不死鳥に匹敵するほどの魔法生物を素材に使ったらどうなるんでしょう?例えば……バジリスクとか」
「おお、ソーンさん。実は、バジリスクを素材に使った杖の『伝説』が、あるのです」
「それは、どういう…………」
大昔の伝説だろうな。そもそも、バジリスク自体を生ませないように魔法省は規制をしている。
もし杖が作られたとしたら、かなり前。それこそ、創設者達の───
「───サラザール・スリザリンの杖に、バジリスクの角が使われたという伝説です」
「…………へえ?」
スリザリンの末裔であるゴーント家。
その中でも、過激な純血主義者の魔女『ゴームレイス・ゴーント』が、『マグルと仲良くしている』という理由で、親戚一家を殺害。姪であるイゾルテを攫った。
攫われたイゾルテは監禁され、闇の魔術を教えられていたが、叔母であるゴームレイスの杖を奪って新大陸に逃げた。
イゾルテはそこで魔法を教え、それが今のイルヴァーモーニー魔法学校となった。
その後、イゾルトはゴームレイスが「眠らせ」た後に自身が創設したイルヴァーモーニーの庭に埋めた。
のちにそこから杖の材料であるスネークウッドと類似した樹木が生え、切り落とすことができないがその葉には強力な薬効が備わっていた。
「参考になりましたかの?」
「───なるほど」
[業]
仕事。方法。技術。
また、善悪の行いのこと。