『魔王』 アルバート・ソーン   作:アーっr

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時間が無い。犠牲を払ってでも、前に。


炉心

 

 

 「うーん。どうしたもんかな」

 

 今、必要の部屋にいる。鍛治が出来るとしたら

ここしかない。

 

 鍛治を行うには、当然火が必要だ。

 火が必要なら、それを扱うための炉が必要だ。

 

 特にゴブリン銀などはマグルの金属と違い、特殊な炎で鍛造を行わなければならない。

 

 

 しかし困ったことに、鍛造のための炉がない。

炉がなければ鍛造は行えず、『剣』を作ることは出来ない。

 というわけで、まずは炉を作ったのだが………

 

 「出力、足りなくね?」

 

 『鍵』の時もそうだったが、また出力が足りない。これでは良い作品は作れない。

 炉自体は、もっと高い出力に耐えられる。後は火力を上げるだけなのだ。

 

 ………考えが、ないわけではない。

 だが、危険だ。俺は死ぬかもしれない。

 

 「………しょうがない。やるか」

 

 危険だったとしても、やらなければならない。

 俺には時間が無いのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「──………っ!あ゛〜〜っ!!し゛ぬ゛!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 「………よし。これで完成だ」

 

 炉が出来上がった。これからまだ鍛造の練習をして、ゴブリン銀でも同じことが出来るか試して、

『剣』を作りあげる。

 それでようやく爺さんとの『契約』は終わる。

 

 「まあ、やるしか無いか」

 

 先は長いが、とりあえず一歩先へ進めた。

 ドクン(・・・)ドクン(・・・)と脈打つ『炉心』を見て、俺は

そう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「あ゛〜〜、まだイッテェ。やらかしたなぁ」

 

 ハナハッカを始めとした魔法薬や呪文などで怪我はある程度治ったが、バジリスクに噛まれた時くらいの致命傷だった。

 

 「はあ!?お前、僕の見舞いに来たんじゃ無いのか!?」

 

 「それはそれとしてまだ傷が痛いんだよ」

 

 ドラコはヒッポグリフに喧嘩を売ってボコボコにされた。自業自得だ。可哀想とは思わない。

 まあ、それを言うなら、俺の傷も俺のせいだが。

 

 「ほどほどにしとけよ。いつまでも痛いフリをするのは情けないからな」

 

 「───出てけ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 3年生になって初めての闇の魔術に対する防衛術は、まね妖怪だった。

 

 「さあ、ザビニ。君の恐れるものが現れるんだ。必要なのは『笑い』だよ」

 

 ルーピン先生がそう言うものの、ザビニは緊張していた。

 

 「ザビニ、三つ数えてからだ。いち、に、さん、それ!」

 

 まね妖怪が、何か……黒く、何かを叫びながら蠢く何かになった。

 

 「り、リディクラス!」

 

 ザビニが唱えると、黒いそれ(・・)は綿のように白く、ふわふわになった。

 

 「よくやった!さあ、次!どんどん行こう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれから何人もまね妖怪の前に立ったが、みんな、あの黒いものに変身した。

 あれはなんだろうか?

 

 「ドラコ!やってみよう!」

 

 お、ドラコの番だ。

 

 ドラコが前に立った途端、まね妖怪はまた姿を変えた。

 

 「……あれ?」

 

 ドラゴンのものと思われる角。

 2mに迫る巨体。

 なにか黒い、モヤのようなものを纏っているが、これは…………

 

 「俺じゃん」

 

 ギラギラとした目つきで『俺』はドラコを睨んでいる。俺ってそんなに怖く見えるのか?

 

 「リディクラス!」

 

 角が引っ込む。体が小さくなる。

 怒りに満ちた顔は笑顔になっていた。

 

 ドラコ……俺の笑顔が好きなのか。

 

 「さあ最後だ、アルバート!」

 

 

 

 

 

 

 

 笑っている『俺』が変身する。

 

 「…………あ?」

 

 眩しい。しかし、黒い。

 眩しい闇の中で、誰かがこちらを見ている。

 

 その右手には『賢者の石』が、左手には『剣』が握られている。

 頭に生えているドラゴンの角の先には、『日記』が刺さっている。

 蛇のような瞳孔を持っているその男が、一言。

 

 「俺()、自由だ」

 

 「リディクラス(ばかばかしい)

 

 

 

 変わる。闇から、光へ。

 

 極光を背に浴びる誰か(・・)は、こう言った。

 

 「俺たち(・・・)は、自由だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「占い学へようこそ」

 

 「あたくしがトレローニー教授です。たぶん、あたくしの姿を見たことがないでしょうね。学校の俗世の騒がしさの中にしばしば降りて参りますと、あたくしの『心眼』が曇ってしまいますの」

 

 ずいぶんと、独特な雰囲気だな。

 

 「みなさまがお選びになったのは、『占い学』。魔法の学問の中でも一番難しいものですわ。初めにお断りしておきましょう。『眼力』の備わっていない方には、あたくしがお教えできることはほとんどありませんのよ。この学問では、書物はあるところまでしか教えてくれませんの…」

 

 「いかに優れた魔法使いや魔女たりとも、派手な音や匂いに優れ、雲隠れ術に長けていても、未来の神秘の帳を見透かすことはできません」

 

 ………そうだろうな。魔法全体が、座学だけでなく本人の資質に左右される。

 その中でも占い………『予言』は、才能が全てだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 いろいろあって(要領を得ない発言があったが)

とりあえず茶葉から未来を読み解くことになった。

 

 「子どもたちよ、心を広げるのです。そして自分の目で俗世を見透かすのです!」

 

 教科書を見ながら、読み解く。

 

 「あー、ドラコ。教科書と俺が見た茶葉によると、お前の計画は叶わないらしい」

 

 「なんだよそれ!」

 

 言葉の通りだ。

 

 「じゃあ、僕の番だ………」

 

 今度はドラコが茶葉を見る。

 

 「………あー。うーん」

 

 「分かってなさそうだな」

 

 「うるさい!」

 

 まあ、ドラコは俗世に塗れてる感じするから、こういうのは苦手なんだろう。

 

 「あたくしが見てみましょうね」

 

 おっと、トレローニー先生が来た。

 

 「これは………あなた、苦難の道を辿ってらっしゃるのね」

 

 「ええ、まあ」

 

 自分の心臓を抉り出すくらいには苦難だ。

 

 「そして………ええ。あなたはとても傷付くでしょう。その身を引き裂かれるほど」

 

 「ああ、そうですか」

 

 もう自分で引き裂いてるけど。

 

 「まあ、あなた………おお__かわいそうな子__いいえ__言わない方がよろしいわ__ええ__お聞きにならないでちょうだい……」

 

 「なんです?一体何が?」

 

 トレローニー先生は動揺している。

 

 「………とても、残酷な運命。あなたはいつか、愛する者を守って……死ぬでしょう」

 

 「………お、おお」

 

 まじか。まさかこんな直接『あなたは死にます』なんて言われるとは。

 

 「恐れる気持ちもわかります。ええ、とても、口にするのも難しいほどでしょう」

 

 「確かにそうですね」

 

 なんて言えばいいかわからない。ホグワーツに入ってすぐの、会話に慣れていない時のようだ。

 

 

 

 

 「みなさまが幸運でありますよう………」

 

 結局授業はそれで終わった。なかなか刺激的だったな。

 

 




死の運命が迫っているとしても、足を止める理由にはならない。
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