「やあドラコ。よくぞ来た」
「………お前は、相変わらずだな」
医務室。その中にあるベッド。
アルバート・ソーンは、そこにいた。
「お前が倒れたと聞いて、耳を疑ったよ。『錯乱の呪文』を掛けられたかと思った」
「いやぁ、最近頑張りすぎてさ。結構無理しちゃって、限界きちゃった」
ベッドの中にいるこいつを見ても、まだ信じられない。
こいつは同世代どころか、教師すら越えるほどの実力と知識がある。
こいつが、倒れるなんて。
「そりゃあ、俺も人間だしな。食べるし、寝るし、疲れる」
「………そうだな」
僕の中で、こいつは絶対に倒れず、圧倒的な力を持っている、絶対的な存在だった。
たまに変な行動をすることもあるが、それはある意味人間らしい部分だった。
………こいつも、人間だ。
「というわけで、はいドラコ」
「………は?」
「
何してるんだこいつ。ベッドに居たんじゃないのか?外に出ればマダム・ポンフリーが黙っていないはずだ。
「普通にここで作ったよ。材料さえあれば魔法を掛ければすぐだし」
「………マダム・ポンフリーは?」
「隠れてやってた。まだバレてないから、早く
持ち帰ってくれ」
頭おかしいんじゃないか?倒れたからベッドにいるのに、なんでまだ仕事してるんだ。
「もう5分経ちました!さっさと………」
「あ」
「あ」
「何をしているんですか!!貴方は怪我人なんですよ!?」
「はい………」
「安静にしていなければいけないんです!!分かっているのですか!?」
「ごめんなさい………」
バレた。まったく、ドラコめ。
さっさと持って帰っていれば………
「聞いているのですか!?これからは 面会も禁止です!!」
「そんなぁ」
「ひま。ひまひまひ〜まひま」
「パッドフット〜!もふもふ〜!」
暇だ。マダム・ポンフリーにめちゃくちゃ怒られて、魔法すら使えない。もふもふが恋しい。
───と、普通なら言うのだろうが。
残念ながら、俺は諦めない。最後の一仕事をやるのだ。
見えないように、透明に。
壊れないように、強固に。
傷つかないように、優しく。
俺の、今年最後にして最高の作品。
「どうも、スネイプ先生」
「………これはこれは。実験のしすぎで倒れたと聞いたが?」
「元気になりました!心配をおかけしました」
心配などしていない。この悪童は、必ず立ち上がり、“いや〜失敗でしたね!”とでも言う。
「そう!実はプレゼントがあるんです!」
「……………」
怪しい。絶対にまともなものではない。
この、好奇心に満ちた笑顔。
悪戯をする子供のようにも思える、顔。
「───我輩は貴様を嫌悪する。その自己中心性、傲慢さ。我輩の嫌いなあの男に似ている」
だと、言うのに。
「…………なぜ笑っている?」
「いやぁ、嬉しくて。先生、思ってることをちゃんと言わないでしょう?隠して、押さえ込む。なのに、俺には本音で話してくれてる」
「先生も、自由になって来ましたね」
「……………」
………勝手に心に入ってきて、好き勝手に暴れて、勝手に、またどこかへ行く。
イラつく。静かにしていられないのか。じっとしていられないのか。
最もイラつくのは、こんな奴に、少し過去を知っているだけの小僧に影響されている自分だ。
「はい、先生。俺からのプレゼントです!」
「これは─────」
黒い、ローブ。
明らかに高度な魔法がかけられている。
それに、この素材は───
「
結構貴重ですよ。大事にしてください」
「………お前、まさか───」
あり得ない。
自分で言うのもなんだが、勝手に他者を重ねて、挙句胸ぐらを掴んできた女のために、ここまで?
薬で心臓を生やせるとはいえ、摘出する時に麻酔を使ったはずがない。しかも、自分で心臓を───
尋常ならざる痛みが、苦しみがあったはずだ。
なぜ、
「だって、先生は優しい人ですから」
「は─────?」
「自習で先生の私的な資材を使っても、怒りは
したけど許してくれましたよね。どれだけ俺が好き勝手にやっても、先生は一度も俺を見捨てたりしませんでした」
「確かに、それに見合う結果を出しているから
許してくれていましたが、それでも」
「先生の優しさに、とても感謝していますよ」
「ねえ、セブ。スリザリンに友達は出来た?」
「………いや。半純血は立場が低いんだ。それに、あんまり話すのは得意じゃない」
「えー、残念。セブはこんなに優しいのに!」
「───い。先生。スネイプ先生」
「まったく、またですか?いつになったら前を見てくれるんですか」
「………我輩がどう思おうと、我輩の勝手だ」
「困ります。だって、俺は先生の前に居るんですから。前を向いてくれないと、先生と顔も合わせられないです」
本当に、ああ言えばこう言う。
リリーに似ているというのは、気のせいだ。
「というか、着てくださいよ、ローブ。頑張って作ったんだから、先生が着たのを見たいです」
「我輩は貴様の着せ替え人形ではない」
「えー、絶対似合うと思うんだけどなぁ」
何故似合うかを気にするのだ。
服装など、ある程度常識に合ったものを着用すれば良い。
特に、貴様の前で着てやるものか。
「よっしゃぁ!やっぱり俺の眼に狂いはなかった!めっちゃ似合ってますよ!」
「………黙れ」
なんだかんだ着てくれる。やっぱり優しいね!