もう何がなんだかわからない。
「ピーターだ!ピーターだったんだ!」
「シリウス!我が友よ………」
「復讐は蜜より甘い」
シリウス・ブラックとルーピン先生は仲間で、ルーピン先生は狼人間で、スネイプは二人を捕まえようとしてて………
「ああ、お前を殺すことをどれほど夢見たか」
「リリーの追っかけの次は俺か?浮気症なんだな、スニベリー!」
「待ってくれセブルス、シリウスじゃなかったんだ!」
「おやおや、頭まで獣に成り下がったのか?」
ハリーは何を信じて良いかわからなくなった。
ああ、こんな時アルバートがいてくれたら!
「もういい………ブラック、お前を
「やれると思うのかスニベリー!」
「
スネイプは、魔法を放って───
「───は?」
───弾かれた。
「貴様───!その首輪をどこで拾った!」
「どうしたスニベリー?お得意の魔法が通じなかったことがそんなに驚きか?」
「僕も聞きたい!だって、それは───」
秘密の部屋でアルバートが貸してくれた、魔法のローブ。
トムの魔法から僕を守ってくれた、あのローブと同じものだ。
「これは、あるスリザリン生がくれたんだ。
“野良犬と間違われないように”と言ってな。正直
恥ずかしかったが、あの子は俺をとても大切に思ってくれていた………」
「クルックシャンクスがあの子を連れてきた。
初めて会った時、警戒したさ。あの子はスリザリン生だったし、俺は指名手配犯だ」
「だが、あの子は………優しかった。とてもスリザリンとは思えないほどに」
「腹を空かせた私を見かねて、厨房から料理を持ってきてくれた。少し、デリカシーが無かったが………優しい子だった」
「ああ、そして。彼は君の話をしてくれたんだ、ハリー」
「僕の?」
「一年生や二年生での冒険、普段の授業、クィディッチの話………」
「話を聞いて、そして実際に見て、確信した。君は確かに、ジェームズとリリーの子供だ」
アルバートが、そんなことを。
アルバートが首輪を渡したということは、シリウス・ブラックを信用したということ。
だったら、もしかして、本当に───
「だからなんだ。アルバート・ソーンは、貴様らに負けず劣らずの不良で、後先考えない
あれが貴様を信用したところで、貴様が無実ということにはならない」
「で、ですが先生。アルバートは私よりも成績が良くて、真面目で───」
ハーマイオニーがスネイプに言う。同学年で唯一、アルバートに迫る頭脳を持っている彼女は、
ブラックを信用するべきと考えているようだ。
「黙れグレンジャー。この駄犬も成績こそ良かったが、非行に走ることは日常茶飯事。理不尽とは何たるかを我輩によく教えてくれた───!」
「でも、アルバートは違う!」
ハリーは思わず言い返した。
アルバートは、僕を助けてくれた。
迷っていたら考え方を教えてくれて、危なかったら手助けしてくれる。
同じ歳ではあるが、誰よりも………アルバス・ダンブルドアすらも超えるほど頼りになる。
「あの小僧はな、ポッター。お前の父親によく似ている。傲慢で、身勝手だ」
「他者を気遣っているふりをしながら、その裏では自分と、自分が決めた一部以外を気にしない。
必要ならば盗み、奪い、そして殺すだろう」
確かに、アルバートにはそういう部分がある。
『継承者』が誰か分かっているのに止めなかったように、大事なことでも隠したりする。
そして、その間の考えはハリーには分からない。
でも。
「でも、アルバートが間違ってたことは無い。
確かに、何を考えているのかは分からないけど。
………せめて、なんでそうしたのかアルバートに聞いてみませんか?」
「ポッター。残念………そう、非常に残念だが、ソーンは医務室にいる。そして、面会謝絶だ」
「治っていないにも関わらずベッドを抜け出し、我輩に会いに来たのがマダム・ポンフリーにバレたのだ。間違ったことがない、だったか?」
ええ………何してるの、アルバート。
「じゃあ、せめてスキャバーズが
「………いいだろう。
スネイプが呪文を唱えた。
スキャバーズが、大きくなって───
ネズミは、小太りの女になった。
「やあピーター。12年前できなかった殺しを、
アズカバンから実行しに来たぞ!」
「待て、シリウス。こっちの言い分も聞こう」
今にも殺そうとするシリウスを、ルーピン先生が止める。
「そう!そうなんだよリーマス!ブラックが、僕を殺そうとしてるんだ!」
「だが疑問が残る。何故シリウスがアズカバンに入った後、正体を表さなかった?」
「怖かった!もし他の死喰い人に狙われたら!」
「だろうな!お前が流した情報を信じた結果、ヴォルデモートが消えた!奴らはお前が罠にかけたと思っただろう!」
「ああ違うんだ………リーマス、信じてくれ」
ピーターはルーピン先生に縋る。
「悪いがピーター、君の話は信じられない」
「そんな………セブルス!」
今度はスネイプに近づく。
「君は信じてくれるだろう?私がそんなこと、
できるわけがないと知っているだろう?」
「確かに、貴様は自分から裏切ることすら出来ない臆病者だが、保身のためならすぐに売るだろう」
バッサリと、切り捨てる。
………少しかっこいい。
「ああそんな………お嬢さん、ロン!君たちは信じてくれるだろう?指一本傷つけなかった!」
「ああ、ハリー。君は信じてくれるよね?僕はジェームズとリリーの友達だったんだ!」
「何を考えてる!?ハリーに話しかけるなど!!お前は裏切ったんだぞ!お前のせいでジェームズとリリーは死んだ!」
シリウスの怒りが爆発した。
ピーターは縮こまる。
「しょうがなかったんだ!あの『闇の帝王』に命令されて!シリウス、君でも───」
「俺がジェームズ達を裏切るだと!?そんなことをするくらいなら、死を選んだ!」
「ああ………ああああ!!」
ピーターはただ震えるだけだ。
もう、何も出来ないだろう。
思い出す。
「やあピーター。元気そうだね」
シリウスが追って来たことが分かって、逃げようとした時。
「君にもわかるだろう。君を追う者がいる。怖いね。見つかったら、タダじゃ済まない」
「シリウス・ブラックか、死喰い人か、あるいは魔法省か。みんな、君を追うだろう」
「そこで、俺から提案したいことがあるんだ」
「もし………もし俺の手助けをしてくれるんだったら、助けてあげよう」
「シリウス・ブラックからも、死喰い人からも逃してあげよう。ああ、もちろん───」
「───アルバス・ダンブルドアからも」
「もし手助けをする覚悟が決まって、逃して欲しければ」
「
「ちなみに、この記憶は君がピンチになるまで思い出さないように
「───もう良いだろう。ネズミは我輩が連れて行く。ルーピンも駄犬も、全員着いてこい。
公の場で確かめなければ」
「いや………いやだ!僕は
この期に及んで、ピーターは暴れる。
「黙れ!……眠らせるか」
ピーターは何も持っていない。杖も、首輪も、
魔法のローブも。このまま、失神するだろう。
「頼みます!なんでもします!あなたの手助けも、命令も聞きます!だから───」
「
「
───魔法が、防がれた。
ピーターが
「さっさと止めろスニベリー!」
「やっている!だが、
「杖を、セブルス。私も加勢───」
満月が、昇っている。
「ルーピン、貴様、まさか───!」
「しまった───逃げろ───!」
ルーピン先生が、狼人間になって───
「まずい、
「逃げろハリー!逃げろ!」
「………ここ、は?」
「やあハリー。俺の医務室へようこそ」
アルバート………ああ!
「シリウス!シリウスのこと知ってたの!?」
「………?何が?」
とぼけているわけでは無い。
本当に、知らなかった………?
「おお、ハリー。目が覚めたようじゃな」
「先生、シリウスは無罪なんです!ピーターが真犯人で───」
「おお、聞いたとも。じゃが証拠がない。このままではシリウスは処刑されるじゃろう」
「そんな!」
シリウスは無実なのに!
「シリウスを助けることは儂には出来ぬ。しかし、君たちがそれを望むのならば、救える」
「どうやって?」
「それは、君の友が教えてくれるじゃろう」
「いいのか、爺さん。分かってるんだろ?」
「それは君が、ピーターを助けたことかの?
それとも、シリウスのことをハリーに隠したことかの?」
「………どっちもだ。俺は、俺の勝手な理由で、シリウスが冤罪を晴らす機会を奪った」
「そうじゃな」
「そして、ピーターは俺の命令通り、ヴォルデモートを復活させるだろう」
「その通りじゃ。しかし、君がやらなくとも結果は同じじゃった。シリウスは罪を着せられたまま、ピーターは逃げてみせたじゃろう」
「でも、俺がやった。俺のせいだ」
「………爺さん。俺と、決闘しよう」
「いいとも。君の成長を、楽しみにしておる」
自分の都合で、他者を貶めた。
意識的でなくても、それは………