辻開心術の餌食になった黒幕もビビるわ。
「クィレル先生。読みたい本があるのですが、禁書にあるので許可証にサインが欲しいんです」
「え、ええ。い、いい、でしょう」
クィリナス・クィレル講師。
闇の魔術に対する防衛術講義担当。
生まれつきと思われる吃音症とその臆病さで、生徒達から距離を置かれている。
彼はルーマニアで吸血鬼に襲われたとか何とかで周囲に怯えている。
まあ、
俺にとって重要なのは、魔法の研鑽と能力の向上。そして、良き友をつくること。
はっきり言って後頭部にいる誰かさんの事など、どうでもいいのだが···········
「『破れぬ誓い』をしましょう」
「···········は、はい?そ、ソーン君?い、一体なな、何を」
「先生ではなく、後ろの人と『誓い』を立てたいです。先生、仲介人になってくれませんか?」
「······················」
「何を誓う?」
声が、聞こえた。黒く、暗い声。
「あなたの復活。その手助けをします」
「それで、お前は何を望む?」
「知識を。あなたが知っている魔法に関する知識を、俺に教えてくれ、
·········沈黙。そして。
「───クィレル。手を出せ」
「は、はい、我が君」
俺とクィレル先生が手を合わせる。
───魔法の鎖が、俺たちを縛る。
「俺はあなたの復活を手助けする」
「その対価として、魔法に関する知識を、お前に与えよう」
よし、交渉成立。
クィレル先生の後頭部には、『闇の帝王』が憑いている。
あまりにも怪しいから初対面で開心術を使ってしまったが、とんでもない真実に危うく声が出そうになった。
『闇の帝王』は死んだと言われている。赤ん坊のハリエット・ポッターに敗れたのだ、と。
ここで疑問なのが、なぜハリエット・ポッターだったのか。
記録にも、父と母が直前に殺されていることがわかっている。なら、その夫婦が道連れにしたと考える方が自然だろう。
正直まだ答えはわからない。
死の呪文を受けて無事だったという『伝説』が正しいなら、考えられることは二つ。
一つ目は、両者に圧倒的な力量の差があった。
ホグワーツ一年生·········例えば、マルフォイが
それほどの力の差があるなら、死の呪文は効果を十分に発揮出来ない。
まあ正直これは無い。赤ん坊どころか、今の俺ですら亡霊のような『闇の帝王』の呪文を受けて無事でいられるか不安だ。
当然、今のハリエット・ポッターの魔法力では話にならないだろう。
二つ目は、防護魔法。
だが防護魔法でも、死の呪文を防ぐ事は出来ないはずだ。可能性があるとしたら古代の、失われた魔法だろうか。
まあ、完璧に守れないにしても威力の減衰を果たす可能性はある。
俺は二つ目の方があり得ると思っている。
重要なのは、ここから。
復活する手助けをすると言ったら、『闇の帝王』は俺を信じた。
ということは、あの亡霊のような状態から復活する手段があるということだ。それも、わざわざ
今のホグワーツに、復活する手段が存在しているということなのだ。
「··················ふーむ。むーん。いやぁ·········」
「独り言がうるさいぞソーン。何を唸ってるんだ」
「人体を作り出す魔法とかを考えてるんだけど、これがなかなか·········難しい」
「は?何でそんな魔法が必要なんだ」
別に必要では無い。
「今必要じゃなくても、いつか必要になるかもしれない。その時に後悔しないように、今のうちに学んでいるんだよ」
「··················」
黙っちゃった。
「にしても、何なんだろうな、復活の手段」
本当にわからない。古い闇の魔術などでそのような言及があったが、そんなのホグワーツじゃなくても出来る。
『闇の帝王』がホグワーツにいるのは、ホグワーツじゃなきゃダメだからだ。
「秘密の部屋、かなぁ」
サラザール・スリザリンが遺したとされる部屋。『闇の帝王』は確か、スリザリンの血縁を名乗っていたはずだ。
秘密の部屋に復活の手段があるのかも知れない。
あるいは、禁止されている廊下か。
「·········お手上げだな」
千年間見つけられなかった秘密の部屋を、俺がそんな簡単に見つけられるのだろうか。
見つけたところで、復活の手段が何なのかわかっていない以上、手助けもできない。
禁止された廊下に立ち入るのもまずい。バレたら退学だろう。
手助けできないまま『闇の帝王』が復活すれば、『破れぬ誓い』によって俺は死ぬ。
「·········しょうがない。地道に秘密の部屋でも探すか」
簡単に決めすぎたかなぁ。今更後悔して来た。
「ねえ、アルバート。聞きたいことがあるんだ」
「この声は·········ハリー?」
どうしたんだろう。授業でわからないところがあったのだろうか。
「
アルバートは本をたくさん読んでるってハーマイオニーが言ってたから·········」
「───ああ、そうなのか」
なるほど、それなら辻褄は合う。
正直
「え?知ってるの?」
「ああ。ニコラス・フラメルは錬金術で大きな功績を上げている人物だ。歴史の教科書に載ってるくらいだぞ」
「歴史に!?そんなにすごいの?」
「確か、600歳は超えている」
「へえ。すっごい長生きなんだね」
「当然それには理由がある。彼の人生最高にして、未だ他に成し遂げた者がいない
「飲めば不老不死になる水を生み出す魔法道具『賢者の石』の作成」
俺もいつか錬金術を学んでみたいものだ。
「賢者の石?」
「ああ。それがあればどれだけ瀕死の重体でも、全快するだろうな」
肉体がないような存在にも、効果はあるだろう。
例えば、亡霊のようなどっかの誰かとかにも。
「───そういえば、ダンブルドアはニコラス・フラメルと共同研究をしていたな」
そのつながりでダンブルドアが預かったのだろう。そして、あの禁止された廊下に隠されている。
「───ありがとう、僕、行かなきゃ!」
「ああ、ハリー。気をつけてな」
他の仲間達と情報を共有するんだろう。
───彼らが復活の邪魔をしたら俺はどうなる?
「··········まあいいや。何とかすればいいし」
何とでもなるだろう。だって、俺は魔法使いだ。
マジで大体何とかなる。