『魔王』 アルバート・ソーン   作:アーっr

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それは炎から生まれた。




 

 

 「君の純血に対する考え方はわかってるさ。今のままでは純血、ひいては純血主義に未来はないと」

 

 その通りだ。あと三代(百年)もすれば、純血はほぼいなくなるだろう。

 千年先に純血はいない。先輩(・・)の思想は破綻する。

 

 「だが、それは今のまま(・・・・)の話だ」

 

 「俺様が、純血に栄華を齎す。俺様の力があれば、千年先にも純血は存在し続ける」

 

 夢のような話だ。

 だが、先輩(・・)なら出来るだろう。

 

 「純血がいなくなるのは勿体無いだろう?」

 

 「受け継ぐべきだろう?この尊い血筋を」

 

 出来るなら、そうするべきだ。

 純血は長い歴史を持つ。その刻の中で生まれた技術や道具もあるだろう。

 

 無くすには惜しい。

 

 「そういえば、そこの小娘も一応は(・・・)純血の血筋を引いているんだったな」

 

 先輩(・・)がハリーを見る。

 その眼には、複雑な感情があって───

 

 「そう、そうだ………見逃そう(・・・・)

 

 「アルバートが、()の右腕として働くなら、その小娘を見逃そう」

 

 ───信じられない。

 あの先輩(・・)が、生き残った女の子(ハリエット・ポッター)を見逃すなんて。

 

 「悪い話じゃないはずだ、アルバート。君はその小娘のことを───」

 

 先輩(・・)が一瞬、言葉に詰まった。

 

 「………愛して、いるんだろう?」

 

 「………まあ、そうですね」

 

 その通りだ。

 俺は、ハリーを愛している。

 そして、同時に。

 

 「『日記』の()とは、仲が良かったみたいだね」

 

 ………仲が良かった、程度ではない。

 俺は───

 

 「分かってる(・・・・・)。君との記憶(思い出)は、()の中にある」

 

 「アルバートが()をどう思っていたのか。どうして()と戦ったのかも」

 

 「全部、分かってるよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「()は次に繋がない、だったかな?」

 

 それは、二年前に俺が言った言葉。

 俺が先輩(・・)を拒絶した理由。

 

 「確かに、前までの俺様ならそうだった」

 

 「でもアルバート。今の()は違う」

 

 「デルフィーニ()がいる。才能に満ち溢れ、それでいて努力を忘れない、優秀な魔女が」

 

 「デルフィーニなら、我が娘なら。俺様(・・)を受け継ぐことができる!」

 

 ………確かに、デルフィーニは優れた魔女だ。

 あと数年もすれば、俺や爺さん、そして母である先輩(・・)の領域に足を踏み入れることができるだろう。

 

 「でも………嗚呼。悲しいね、アルバート」

 

 「君を受け継ぐ存在はいない(・・・・・・・・・・・・)

 

 「君は優れている。だからこそ、君を受け継ぐことが出来る存在がいない」

 

 ………………。

 

 「()みたいに子供を作るかい?悪くないね。君の子なら、きっと優秀だろう」

 

 「でも、ちゃんと受け継げるのかな?君の力を、君の知識を、君の心を」

 

 ………………。

 

 「ねえアルバート。デルフィーニなら出来るよ(・・・・・・・・・・・・)

 

 「君と()がちゃんと育てれば、きっと受け継ぐことが出来るよ」

 

 ………………。

 

 「()と一緒に、次に繋げないか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ハ───ハハハッ」

 

 男が笑う。

 女は、思い出した。

 

 あの時、賢者の石を目前にして裏切った時も。

 男は、こんなふうに───

 

 「『闇の帝王』ともあろうお方が、ずいぶんと

───小さい考え(・・・・・)ですね」

 

 「───なんだと?」

 

 あの時と同じように、男は女を嘲笑う。

 

 「受け継ぐ存在がいない?一体何を言ってるんですか、『先生』」

 

 女の間違いを、男が笑って訂正する。

 

 「いるでしょう、そこら中に。数えるのも馬鹿らしくなるほど多く」

 

 「なぜ一人に全て受け継がせようとしているんです?それぞれに素質があるでしょうに」

 

 小さな考えを持つ女に、男は夢を語る。

 

 「俺の力も、知識も、心さえも」

 

 「必ず誰か(・・)が受け継ぐ。顔も名前も知らないような存在であっても、受け継ぐことができる」

 

 女が考えもしなかった夢を語る男。

 

 「───どうやってそれを為すつもりだ!そんなことは魔法を使っても不可能だ!」

 

 女は反論する。

 魔法を極め続ける女が考えても、不可能だ。

 魔法にも、限界はあるのだ。

 

 だが───

 

 「本当に老いぼれましたか?魔法など使わなくても、この夢は実現できます」

 

 「は───?」

 

 できる。男は断言した。

 

 「まあ、確かに難しい道です。常人では不可能に近いでしょう」

 

 「立場も、資金も、発想も必要です。手始めに、そうですね………」

 

 男は、夕飯の内容を思いつくような気軽さで──

 

 「────王になります」

 

 

 

 

 

 

 

 

 「────というわけで、先輩(・・)のしもべにはならない。悪いね」

 

 「君は、本当に………!」

 

 先輩(・・)が怒ってる。

 でも俺しもべにはなりたくないし。それにハリーのこと好きだし。

 

 「分かってるだろ。たとえ仲間になっても、俺たちは戦わなきゃいけなくなる」

 

 お互いに譲れないものがある。

 そして、それは致命的な違いになる。

 一方が生きる限り、他方は生きられない。

 

 「………手足を捥ぐ。動けないようにして、服従させて、()のものにしてやる………!」

 

 「相変わらず、思想が過激だな………!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 開戦。

 

 「逃げるぞハリー!」

 

 「え、ええーー!?」

 

 嘘でしょ!?あんなにかっこよく啖呵を切ったのに、逃げるの!?

 

 「走れハリー!」

 

 アルバートがドラゴンに変身する。

 あまり大きくない。そのまま、ハリーを掴んで急いで翼を広げて飛び立つ。

 だが………。

 

 「終われ(フィニート)

 

 「うお………うおおおい!?」

 

 「アルバート!?落っこちてるよ!?」

 

 ヴォルデモートがアルバートの変身を解く。

 空中で解かれた変身。そのまま落下する。

 

 「死の呪文(アバダケタブラ)!」

 

 「盾の呪文(プロテゴ・ホリビリス)!」

 

 その隙を見逃す闇の帝王ではない。空中で身動きが出来ないところに、死の呪文を放つ。

 死の呪文はアルバートに当たった。

 アルバートは死───

 

 「───っ!いってぇな!」

 

 「───ハハッ!相変わらずの魔法力だね!」

 

 死なない。

 閉心術の応用、感情の保存。

 保存していた感情を燃焼させ、アルバートの魔法力は爆発的に向上した。

 

 魔法は、両者の魔法力に大きな差があれば正しく作用しない。

 感情を燃焼させる一瞬。一瞬ではあったが、アルバートとヴォルデモートには大きな差が生まれた。

 

 だが、無傷ではない。

 

 「アルバート!燃えてる!」

 

 「くっそ、めちゃくちゃしやがる───!」

 

 ヴォルデモートが放った死の呪文は、アルバートが張った護りの呪文を貫き、彼が着ていた魔法のローブすら破壊した。

 

 「悪霊の火(ペスティス・インセンディアム)!」

 

 息つく間もなく、今度はデルフィーニが悪霊の火を放つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「面倒だな………!」

 

 爺さんと戦ったときの反省を生かし、変身術を戦闘に使えるように訓練してきた。

 実際、あの頃よりスムーズに変身出来るし、変身後の疲れも少なくなってきた。

 

 まさか変身を解かれるとは。確かに、直接攻撃するより効率的だ。

 思いつかなかった俺が馬鹿だったな。反省だ。

 

 「死の呪文(アバダケタブラ)!」

 

 「武装解除呪文(エクスペリアームズ)!」

 

 ハリーと先輩(・・)が押し合っている。

 今のうちに死喰い人達を黙らせるか。

 

 「失神呪文(ステューピファイ)!」

 

 1、2、3、4 ………光線が次々と死喰い人を貫き、失神させた。

 

 「火よ………!」

 

 「火遊びはほどほどにしろよ!母親(先輩)に言われなかったのか?」

 

 だがデルフィーニは失神呪文を防ぎ、悪霊の火を放ち続けている。

 あれなら、俺の分霊箱(杖であり鍵)を破壊できる。

 

 まあ問題ない。あれくらいなら、避け────

 

 「ふふっ………開け(アロホモラ)

 

 「ごふ────ッ!?」

 

 「アルバート!?」

 

 ハリーと押し合いをしている状態で、先輩(・・)が俺に魔法をかけた。

 

 二年前の、ハリーを庇ってバジリスクに噛まれた時の傷が、開いた(・・・)

 くそ、相変わらず嫌な手を打ってくる………!

 

 突然のことで、一瞬動きが止まった。

 止まってしまった(・・・・・・・・)

 

 「燃えなさい!」

 

 「あっつ!終われ(フィニート)!」

 

 先輩(・・)が作り出した隙に、デルフィーニの悪霊の火が俺を燃やす。

 連携が上手い。流石に母娘だな。

 

 「アハハハハハハ!!アルバート!早くなんとかしないと、小娘が死ぬよ!」

 

 「チッ………武装解除呪文(エクスペリアームズ)!」

 

 先に悪霊の火を消そうとしたが、ハリーはもう限界だ。ハリーに加勢する。

 

 「死の呪文(アバダケタブラ)!」

 

 デルフィーニも先輩(・・)に加勢した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「くっそ………あつい………!」

 

 「大変そうだねアルバート!」

 

 煽られる。先輩(・・)は美しい満面の笑みだ。

 

 実際大変だ。

 ドラゴンへの変身、死の呪文の直撃。

 死喰い人の盾の呪文をぶち抜く失神呪文の行使。

 開いた傷口。そして、まだ燃えている悪霊の火。

 

 正直悪霊の火を消したい。

 だが、杖の時に鍵は使えない。

 

 ここで俺が離れれば、ハリーは死ぬ。

 ………やるしかない。

 

 「………呼び寄せ呪文(アクシオ)

 

 「おっと」

 

 先輩(・・)がしている指輪を動かす。

 あまり効果はないが、イラつくだろ。

 

 「そんなに欲しいなら………射出呪文(デパルソ)

 

 カウンターが帰ってきた。

 俺の呼び寄せと、先輩(・・)の射出によって弾丸並みのスピードになった指輪が、突っ込んできた。

 

 まあ、キャッチするけど。

 

 「ぐ、おおお───ッ!!」

 

 「へえ………!」

 

 感情を爆発させ、押し込む。

 4人の繋がりが、断ち切れて───

 

 「ハリー!優勝杯を!」

 

 「分かった!」

 

 ハリーに優勝杯をとってもらう。

 その間に、左手で『鍵』を頭に押し付ける。

 

 「「死の呪文(アバダケタブラ)!!」」

 

 「動け石像!(ロコモーター)

 

 仲良く死の呪文を放ってきたので、ハリーを拘束していた石像を動かし、盾にする。

 

 記憶を遡る。───これだ。

 

 「掴まれハリー!」

 

 「うん!」

 

 ハリーが俺の腰を掴む。

 準備は、完了だ。

 

 右手で、指を鳴らして───

 

 「─── 死の呪文(アバダケタブラ)!!」

 

 バチン、という音とともに。

 

 「おめでとう!」

 

 「勝った!ハリーが勝った!」

 

 「おい、あれ………」

 

 「嘘だろ!?」

 

 ホグワーツに、帰ってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「良かった、帰ってきた!アルバート、ありがとう。………アルバート?」

 

 どさり。

 

 「───え?」

 

 アルバートが倒れた。

 よく見ると、左腕がない。

 何故かはわからないが、遠くにある。火が燃え上がっているようだ。

 

 そして、血を、吐いている。

 

 「アルバート………アルバート!」

 

 「退けポッター!早く処置しなければ死ぬぞ!」

 

 「先生、ソーンが僕に薬を………」

 

 息をしていない。

 心臓が、止まっている。

 

 「やだ………やだやだやだ!」

 

 離れてしまう。

 

 「いやだよ、一人にしないで………」

 

 母さん達のように、離れてしまう。

 

 「行かないで………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「………あ?」

 

 家にいる。なんでだ?

 さっきまで、墓場にいたのに。

 

 とりあえず、ドアを開ける。

 ………開かない。立て付けが悪いのだろうか。

 窓も開かない。

 一体、何が───

 

 「おかえりなさい、アルバート」

 

 「───かあ、さん?」

 

 

 

 

 

 

 「ここはなんなの?どうして………」

 

 目の前の女性は、間違いなく俺の母さんだ。

 だが、おかしい。

 母さんは、俺が殺したんだから。

 

 「ここは………そうね、休憩所よ。あなたが休む場所で、いつか旅立つ場所でもある」

 

 「だって、ここは家でしょう?遊んで、休んで、帰ってくる場所」

 

 「なら、(母親)がいるわ」

 

 

 

 

 

 

 「母さんは………俺のこと、嫌い?」

 

 ずっと、聞きたかった。

 

 「あら、どうして?」

 

 「だって、俺が母さんを………殺した」

 

 あれは、正しいことだったのか。

 母さんにとって、良いことだったのか。

 

 「アルバート」

 

 名前を、呼ばれる。

 

 「私は、アルバートがどんなことをしても」

 

 「いつだって、あなたを愛しているわ」

 

 

 

 

 

 

 「アルバートは、どうしたい?」

 

 「どう、って───」

 

 「私と一緒に行きたい?それとも、元の場所に帰りたい?」

 

 ………俺は───

 

 『行かないで………』

 

 「………ハリー?」

 

 声が、聞こえた。

 

 「………ごめん、母さん。俺は、帰るよ。まだ、一緒にはいられない」

 

 「いいのよ。あなたが頑張る様子を、ずっと側で見てるわ」

 

 あれ、でも………

 

 「どうやって帰るの?」

 

 「玄関のドアを開ければいいのよ」

 

 当然のことのように、母さんは言った。

 でも、ドアは開かなかった。

 

 「大丈夫。もうすぐあの人が帰ってくるわ」

 

 ガチャ、と。ドアが開いた(・・・・・・)

 ドアの外は、光に溢れている。

 

 「さあ、行きなさい」

 

 「………うん!」

 

 ドアに向かう。

 外から、誰かが開けているようだ。

 

 「覚えているか?」

 

 「………はい!」

 

 「ならいい。俺たちは、自由だ(・・・・・・・・)

 

 顔は見えない。でも、わかる。

 

 「───行ってきます」

 

 ドアを開けている彼に向かって、言った。

 

 「………行ってらっしゃい」

 

 男が、そう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 アルバート・ソーン・ジュニアは死んでいる。

 

 心臓は動かない。呼吸は止まっている。確認していないが、おそらくは脳も働いていないだろう。

 

 今世紀最も偉大な魔法使いと呼ばれた老人はこの事実を認め、しかし抗っている。

 

 アルバートが事前に用意した薬(体成薬)

 闇の魔術に詳しい魔女(セブルス・スネイプ)

 歴戦の看護師(マダム・ポンフリー)

 

 その他、さまざまな要素がアルバートを生かすために動いている。

 だが、足りない。

 

 何か、別の要因が必要だ。

 それこそ、御伽話の魔法のような………

 

 シュッ。青い光線が、老人を襲った。

 持っていた杖が、アルバートの右手に収まった。

 

 左腕だ。姿あらわしによってばらけたアルバートの左腕。

 悪霊の火によって燃やされ、分霊箱である杖ごと真っ黒な炭になっている。

 

 最後の抵抗として、武装解除呪文(エクスペリアームズ)を放ったのだろうか。

 

 ふと、アルバートの右手を見る。

 

 そこには、石がはめ込まれた指輪が、あった。

 あのマークが刻まれた石が、アルバートの手の中にあった。

 

 「ハリー、ハリー!」

 

 「いやだ………アルバート………」

 

 「聞くのじゃハリー!今すぐマントを持ってくるのじゃ!アルバートのために!」

 

 「アルバートの………?」

 

 「急ぐのじゃ。一刻も争う!」

 

 何かに、突き動かされた気分だった。

 

 ニワトコの杖、蘇りの石。

 間違いなく、死の秘宝の二つだ。

 

 そして、ポッター家に受け継がれるマント。

 あれこそ、『死』が自らのマントを切ってイグノタスに渡したと言われる、死の秘宝。

 死から隠れる(・・・・・・)透明マントだろう。

 

 「持ってきました!」

 

 「アルバートに被せるのじゃ!」

 

 死の秘宝。

 三つを手にする者は、死を制する。

 

 もしかしたら。そんな、魔法のようなことがあるかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 上手く行った。とても喜ばしいことだ。

 我が君に救われ、その命に従い、マッドアイに成り変わった。

 

 ゴブレットに錯乱の呪文を掛け、ハリエット・ポッターの名前をゴブレットに入れた。

 様々な手助けをし、ハリエット・ポッターが我が君の元へ行くよう、移動鍵(ポートキー)を作った。

 念の為、帰りの移動鍵(ポートキー)は解除しておいた。

 

 ハリエット・ポッターは生きているが、いい。

我が君は復活した。邪魔者のソーンは死んだ。

 

 俺が、ここでハリエット・ポッターを始末すれば、あの方は褒めてくださるだろう。

 

 「ポッター、離れるのだ。今はここにいない方が───」

 

 そんなことを言って、ポッターを孤立させ、始末しようとした。

 

 ポッターに、触ろうとして───

 

 「俺の女に触るな」

 

 ───『死』が、俺を見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 『死』が、立ち上がる。

 

 「アルバート………?」

 

 失った左腕が引き寄せられ、くっつく。

 その腕は黒く、爪は鋭く、何より蒼く妖しい炎が燃え盛っていた。

 

 開いていた傷口は閉じ、流れていた血が戻る。

 

 右手に指輪と杖が。

 そして、透明なマントを着ている。

 

 暴け(レベリオ)

 

 「う、ぐぐううううううっ!」

 

 『死』が、男に杖を向けた。

 男の義眼は外れ、義足は弾かれる。

 

 「やあ、ジュニア。元気そうだな」

 

 「俺をその名前で呼ぶな!」

 

 変身が解けた。

 バーティ・クラウチ・ジュニア。

 3人目の召使いにして、復活の影の立役者。

 

 「もう俺の目的は果たした!『闇の帝王』は蘇ったのだ!俺は英雄として迎えられる!」

 

 「闇の、あのお方の支配する世界が、訪れる!」

 

 熱に浮かされたように、夢を語るように話した。

 

 「その世界は訪れない」

 

 『死』が、それを否定する。

 

   「なぜなら」

 

   「俺たちは、自由だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「アルバート、良かった───!」

 

 医務室。なんだかんだで、俺は生きている。

 

 「ごめんねハリー。痛かったでしょ?」

 

 ナイフでハリーの腕を切りつけた時のことを謝った。やりたくなかったけど、必要だった。

 

 「いいよ。ちゃんと守ってくれた。ちゃんと帰ってきてくれた」

 

 「全部、許すよ」

 

 「ハリー………」

 

 ハリーは本当に優しい。

 自分を切りつけたやつを許すなんて。

 

 「わん!わんわん!」

 

 「パッドフット(もふもふ)!ちょっと痩せた?ちゃんと食べないとダメだぞ?」

 

 もふもふが帰ってきた。

 生きていけるか心配だったけど、良かった。

 

 「そんなことはない!『闇の帝王』が復活したなど、そんなことはありえない!」

 

 「コーネリウス、現実を見るのじゃ。我らは協力して闇と戦わなければならぬ」

 

 言い争っている。

 阿呆らしい。人の上に立つには弱すぎる。

 

 まあ、どうでもいい。

 

 「爺さん」

 

 「おお、アルバート。あまりにも眠りが長いのでこのまま優勝パーティも寝坊するかと思ったが」

 

 流石にそこまでねぼすけじゃない。

 

 「俺、決めたよ」

 

 「おや、何を?」

 

 「───俺が、王になる」

 

 覚悟を決めた。

 

 俺が、この魔法界を治める。

 人の上に立って、俺を受け継がせる。

 

 俺が、先輩(・・)を───

 

 




闇の帝王を打ち破る力を持った者が───
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