新たに、生まれる。
新月
満月。それは、狂気の具現。俺が解放され、人狼としての力を十全に発揮できるようになる。
夜天で最も大きい星、月こそが、俺の象徴だ。
人間どもは、人狼は死に値すべきと曰う。
ふざけた話だ。俺たちはただ、本能のままに動いているだけだ。
お前達だって、家畜を殺すだろう。生きるためではなく、楽しいからという理由でも、殺すこともあるはずだ。
お前達と俺たちの何が違う。いたずらに傷付け、犯し、殺す。同じことだろう。
ただ本能のままに。取り繕うことはしない。
闇が、かつての時代が帰ってくる。
なんと喜ばしいことだろうか。
女子供を噛み、奴らが忌み嫌う
人狼としての自分を解放できる、あの時の喜びが帰ってくるのだ。
ああ、考えるだけで笑みが溢れる!
あの時俺を見て『死に値する』などと言った男の息子を噛んでやった時も、言い表せない程の悦びがあった!
今回も、また!
多くの血を流して─────
「◾️◾️◾️ ──────」
嗅覚が、人狼としての本能が俺に囁く。
思考で、人間としての理性で理解する。
目の前の、黄金の毛並みを持ったこの人狼は。
同族ではあるが、同類ではない。
俺───
満月に吼えるのだ。昼ではなく夜。
闇に紛れて生きる者。
陽の光を反射する
それが、
だから分かる。これは、異端だ。
これは、輝いている。それも、自ら。
あり得ないことだ。
闇にありながら、自ら輝くなど。
こいつは、きっと。
いつでも、こうなのだろう。
朝も、昼も、夜も。
いつでも、自分を解放できる。
いつでも、吼えて。傷付け、犯し、殺す。
それが許される。これは自由だ。
こいつは、あらゆる存在の血を流す権利がある。
「◾️◾️◾️ ──────!」
「ぁ───アオオオオオォォォォン!!」
太陽が吼えた。空気が震える。
人狼は、同族の遠吠えに応える。
ならば。
この太陽に呼応すれば、俺も。
「───── ◾️◾️◾️!」
「ぐ、あああああーーッ!!??」
噛んだ、咬まれた!
嗚呼、分かる。
呪いが、流し込まれている。
人狼とは、呪いの感染症なのだ。
魔法使いが人狼に噛まれることによって、新しい人狼が生まれる。
ああ、分かるとも。
今までさんざんやってきたことなのだから。
死ぬのだろうか?わからない。
少なくとも、今までに噛んでやった獲物だったら、弱いやつはこれだけで死んだ。
少し噛んで、呪いを流し込んだだけでもマグルなら必ず死ぬ。
魔法使いでも、力が弱い女子供なら即死しかねない。
太陽と
死んでも、おかしくない。
「あ───グ、◾️◾️ ───」
変身していく。月などないのに。
痛みが、苦痛が、俺を襲う。
でも、だが。
太陽に近づくのは、少し、心地良い ───
「───── 」
「………………」
白い、否。銀色の毛並み。
以前までの、月明かりのない夜のような黒さの毛並みは、銀色に染まった。
それを、例えるならば。
太陽の光を反射した、
「───── 」
──── ああ。
月明かりのない、こんな夜に。
「「◾️◾️◾️ ──────!」」
ガチャン。ブオン。ギギギ。
異音の爆発。魔法には似つかわしくない、科学と工学の音。
しかし、これは魔法だ。
使われている素材すら、
「我輩としては、認めたくないものだがな」
まあ、そうだろう。
この工場で作っているのは様々な魔法薬。
手動ではなく自動で。
そこには才能も研鑽も必要ない。
魔法薬を作る者からすれば、こんなものは認められないだろう。
だが。
「これが作る薬は、きっと多くの人を助けます」
俺の手が届かないところでも、工場があれば勝手に助かる。
俺が居なくても、人は救われる。
「だろうな。でなければ、お前がこんなものを作るはずがない。お前が作れば良いのだから」
流石は魔法薬学の教師。
工場の弱点、質の悪さをすぐに見抜くとは。
「我輩やお前と比べて、という話だ。そこらの凡人や生徒が作る物と比べれば、百倍マシだ」
そうでしょうそうでしょう!
工場を作るために、どれだけの労力をかけたか!
「だが、ここまでやる必要があったのか?」
ありますよ。此処は、これからの戦いで必ず役に立ちます。
「だが、こんな………『街』まで作るとは」
巨人は血の気が多く、同族同士で殺し合い、絶滅寸前である。
理性はあるが、知性は少ない。
ただ、血を。争いを求め、戦う。
力が全ての、おおよそ文明的でない、蛮族のような生物だった。
あの、『王』が現れるまでは。
角の生えた頭は星々に摩するほど高い。
その腕を伸ばせば、
その左腕は黒曜石のように妖しく光る黒で、夜明け時のような、曙色の焔が燃えている。
天地は鳴動する。巨神の歩みは、ただそれだけで小さきものを蹴散らし、踏み潰し、軋ませる。
せいぜいが7メートルほどの巨人から見たら、それこそが巨人だった。
「 ─────従え」
巨神の命が下った。ならば、その通りに。
己より強きものに従うことこそ、巨人の本能なのだから。
「あー疲れた。巨人の躰って重いなぁ」
当然、ただ変身するだけであんなの大きくはなれない。普通に考えて無理だ。
『街』で作った、
巨人の外殻を再現し、変身をサポート。
巨人という鎧を着ているのと同じ状態だ。
しかし、その鎧が重すぎてまともに動けない。
巨人たちを脅すのには十分だったが。
「というか、あいつら蛮族にも程があるだろ」
ただひたすらに血を求める。肉を求める。
殺しこそ、巨人の誉だ。バカじゃねぇの?
王になって、まず同族で殺し合うことを禁止にした。争いはいいが、殺しは駄目だ。
そうすると、だんだんストレスが溜まってきた。しょうがないので、肉体労働をさせた。
おかげで『街』も少し発展した。力加減が下手でぶち壊された時もあったが。
何体かの、(巨人にしては)優秀な頭脳を持つ者に対しては、技術を与えた。
そしたら、コロシアムみたいなものを作りやがった。マジで戦いしか頭に無いのか。
俺が居なくなった後が不安になった。ので、俺が来るまで長だった巨人に俺の血を与えた。
武器は奪われる。故に力を。
力に振り回されないように、命令を。
偉大なる巨神から、その血を受けた者に。
『殺すな。壊すな。それ以外はいい』
なぜならば。
『俺たちは、自由だ』
(太)陽キャのアルバートだって!?
解釈違いだ!
アルバートはもっとこう……陰気で何考えてるかわかんなくて気持ち悪いマザコンなんだよ!