『魔王』 アルバート・ソーン   作:アーっr

43 / 45
見えずとも、在る。
新たに、生まれる。


不死鳥の騎士団
新月


 

 

 

 満月。それは、狂気の具現。俺が解放され、人狼としての力を十全に発揮できるようになる。

 

 夜天で最も大きい星、月こそが、俺の象徴だ。

 

 

 

 

 

 

 人間どもは、人狼は死に値すべきと曰う。

 

 ふざけた話だ。俺たちはただ、本能のままに動いているだけだ。

 お前達だって、家畜を殺すだろう。生きるためではなく、楽しいからという理由でも、殺すこともあるはずだ。

 

 お前達と俺たちの何が違う。いたずらに傷付け、犯し、殺す。同じことだろう。

 

 ただ本能のままに。取り繕うことはしない。

 

 人狼(俺たち)こそ、人の血を流す権利がある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 闇が、かつての時代が帰ってくる。

 闇の生物(人狼)としての嗅覚が、時代のうねりを感じさせた。

 

 なんと喜ばしいことだろうか。

 女子供を噛み、奴らが忌み嫌う同類(人狼)に貶める。

 

 人狼としての自分を解放できる、あの時の喜びが帰ってくるのだ。

 

 

 ああ、考えるだけで笑みが溢れる!

 あの時俺を見て『死に値する』などと言った男の息子を噛んでやった時も、言い表せない程の悦びがあった!

 

 今回も、また!

 

 多くの血を流して─────

 

 

 

 

 「◾️◾️◾️ ──────」

 

 

 

 

 太陽があった(・・・・・・)

 

 嗅覚が、人狼としての本能が俺に囁く。

 思考で、人間としての理性で理解する。

 

 

 目の前の、黄金の毛並みを持ったこの人狼は。

 同族ではあるが、同類ではない。

 

 俺───俺たち(人狼)は、月だ。

 

 満月に吼えるのだ。昼ではなく夜。

 闇に紛れて生きる者。

 陽の光を反射する()を象徴とする者。

 

 それが、俺たち(人狼)なのだ。

 

 

 だから分かる。これは、異端だ。

 

 これは、輝いている。それも、自ら。

 

 あり得ないことだ。

 闇にありながら、自ら輝くなど。

 

 

 こいつは、きっと。

 いつでも、こうなのだろう。

 

 朝も、昼も、夜も。

 いつでも、自分を解放できる。

 

 いつでも、吼えて。傷付け、犯し、殺す。

 それが許される。これは自由だ。

 

 

 こいつは、あらゆる存在の血を流す権利がある。

 

 

 「◾️◾️◾️ ──────!」

 

 「ぁ───アオオオオオォォォォン!!」

 

 

 太陽が吼えた。空気が震える。

 ()も吼えた。

 

 人狼は、同族の遠吠えに応える。

 ならば。

 

 この太陽に呼応すれば、俺も。

 

 ()にも、血を流す権利があるはずだ。

 ()も、こいつと同じに───

 

 

 「───── ◾️◾️◾️!」

 

 「ぐ、あああああーーッ!!??」

 

 

 噛んだ、咬まれた!

 ()が人間どもにしたように、太陽は俺を噛んだ!

 

 

 嗚呼、分かる。

 呪いが、流し込まれている。

 

 人狼とは、呪いの感染症なのだ。

 魔法使いが人狼に噛まれることによって、新しい人狼が生まれる。

 

 ああ、分かるとも。

 今までさんざんやってきたことなのだから。

 

 

 死ぬのだろうか?わからない。

 少なくとも、今までに噛んでやった獲物だったら、弱いやつはこれだけで死んだ。

 

 少し噛んで、呪いを流し込んだだけでもマグルなら必ず死ぬ。

 魔法使いでも、力が弱い女子供なら即死しかねない。

 

 太陽と()には、それだけの“差”がある。

 死んでも、おかしくない。

 

 

 

 「あ───グ、◾️◾️ ───」

 

 

 変身していく。月などないのに。

 

 痛みが、苦痛が、俺を襲う。

 でも、だが。

 

 太陽に近づくのは、少し、心地良い ───

 

 

 

 「───── 」

 

 「………………」

 

 

 白い、否。銀色の毛並み。

 

 以前までの、月明かりのない夜のような黒さの毛並みは、銀色に染まった。

 

 それを、例えるならば。

 太陽の光を反射した、満月()のようで。

 

 

 

 「───── 」

 

 

 

 ──── ああ。

 

 月明かりのない、こんな夜に。

 月すら隠れる(新月の)こんな夜に。

 

 

 

 「「◾️◾️◾️ ──────!」」

 

 

 

 満月()は、生まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ガチャン。ブオン。ギギギ。

 

 異音の爆発。魔法には似つかわしくない、科学と工学の音。

 しかし、これは魔法だ。

 

 動力源(エンジン)も、動いている装置(システム)も。

 使われている素材すら、魔法()なのだから。

 

 「我輩としては、認めたくないものだがな」

 

 まあ、そうだろう。

 この工場で作っているのは様々な魔法薬。

 

 手動ではなく自動で。

 そこには才能も研鑽も必要ない。

 魔法薬を作る者からすれば、こんなものは認められないだろう。

 

 だが。

 

 「これが作る薬は、きっと多くの人を助けます」

 

 俺の手が届かないところでも、工場があれば勝手に助かる。

 俺が居なくても、人は救われる。

 

 「だろうな。でなければ、お前がこんなものを作るはずがない。お前が作れば良いのだから」

 

 流石は魔法薬学の教師。

 工場の弱点、質の悪さをすぐに見抜くとは。

 

 「我輩やお前と比べて、という話だ。そこらの凡人や生徒が作る物と比べれば、百倍マシだ」

 

 そうでしょうそうでしょう!

 工場を作るために、どれだけの労力をかけたか!

 

 「だが、ここまでやる必要があったのか?」

 

 ありますよ。此処は、これからの戦いで必ず役に立ちます。

 

 「だが、こんな………『街』まで作るとは」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 巨人は血の気が多く、同族同士で殺し合い、絶滅寸前である。

 

 理性はあるが、知性は少ない。

 ただ、血を。争いを求め、戦う。

 

 力が全ての、おおよそ文明的でない、蛮族のような生物だった。

 あの、『王』が現れるまでは。

 

 

 

 

 

 角の生えた頭は星々に摩するほど高い。

 その腕を伸ばせば、この島(ブリテン島)の端から端まで届いてしまうだろう。

 

 その左腕は黒曜石のように妖しく光る黒で、夜明け時のような、曙色の焔が燃えている。

 

 天地は鳴動する。巨神の歩みは、ただそれだけで小さきものを蹴散らし、踏み潰し、軋ませる。

 

 せいぜいが7メートルほどの巨人から見たら、それこそが巨人だった。

 

 

 「 ─────従え」

 

 

 巨神の命が下った。ならば、その通りに。

 

 己より強きものに従うことこそ、巨人の本能なのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「あー疲れた。巨人の躰って重いなぁ」

 

 当然、ただ変身するだけであんなの大きくはなれない。普通に考えて無理だ。

 

 『街』で作った、魔法外套(ファンタジスタ・ガウン)の最新作にして、俺以外には使えない専用服(オーダーメイド)

 

 巨人の外殻を再現し、変身をサポート。

 巨人という鎧を着ているのと同じ状態だ。

 

 しかし、その鎧が重すぎてまともに動けない。

 巨人たちを脅すのには十分だったが。

 

 「というか、あいつら蛮族にも程があるだろ」

 

 ただひたすらに血を求める。肉を求める。

 殺しこそ、巨人の誉だ。バカじゃねぇの?

 

 王になって、まず同族で殺し合うことを禁止にした。争いはいいが、殺しは駄目だ。

 

 そうすると、だんだんストレスが溜まってきた。しょうがないので、肉体労働をさせた。

 おかげで『街』も少し発展した。力加減が下手でぶち壊された時もあったが。

 

 何体かの、(巨人にしては)優秀な頭脳を持つ者に対しては、技術を与えた。

 そしたら、コロシアムみたいなものを作りやがった。マジで戦いしか頭に無いのか。

 

 

 俺が居なくなった後が不安になった。ので、俺が来るまで長だった巨人に俺の血を与えた。

 

 武器は奪われる。故に力を。

 力に振り回されないように、命令を。

 

 偉大なる巨神から、その血を受けた者に。

 

 『殺すな。壊すな。それ以外はいい』

 

 なぜならば。

 

 『俺たちは、自由だ』

 

 

 

 




(太)陽キャのアルバートだって!?
解釈違いだ!

アルバートはもっとこう……陰気で何考えてるかわかんなくて気持ち悪いマザコンなんだよ!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。