『魔王』 アルバート・ソーン   作:アーっr

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それは、一冊の本だった。


純血

 

 

 

 「『純血一族一覧改訂版』……?」

 

 教科書を買うためにフローリシュ・アンド・ブロッツ書店に足を踏み入れたドラコ・マルフォイは、その本を手にとった。

 

 純血一族一覧とは、約六十年前に作られた、『間違いなく純血』の一族──聖28一族を示した本だ。

 

 本当に純血かはわからない。しかし、ある程度──数百年──の間、純血を保ち続けた一族がそこに載っている。

 

 当然、『マルフォイ』もそこに載っており、ドラコはそれを誇りに思っている。

 

 しかし、これは改訂版。確かに、載らなかった者たちは常々『純血一族一覧』を不完全だと非難していたが、新しく作ったのか?

 

 ふと、表紙を見た。

 

 「蛇………S?」

 

 そこには、真ん中に銀色の鱗を持つ蛇が描かれていて、アルファベットの“S”の形をしていた。

 

 確かに、銀と緑はスリザリンの象徴的な色であり、蛇もまた、偉大なるサラザール・スリザリンの象徴である。

 

 純血一族一覧を新作するにあたって、スリザリンに縁のある物を使うようにしたのだろう。

 

 「………買ってみるか」

 

 興味が出た。

 

 現在まで純血であり続けたマルフォイ家の長男として、そして好奇心で、ドラコはその本を買った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 はじめに

 

 この本は、筆者が調べた情報を元に作成されています。もしかしたら、皆様が知るものとは違う部分があるかもしれません。

 

 始めに断っておきますが、この本は改訂版であり、旧版よりも情報量、その正確性を真剣に精査し、信頼できる『事実』を載せたものです。

 悪戯に作ったものではありません。

 

 この本に異議を唱えたい方がいらっしゃるかもしれませんが、それは筆者が信頼できない情報であった可能性があります。

 

 また、スクイブについてですが、本書では魔法族として記載しています。

 

 以上のことを踏まえて、『純血一族一覧改訂版』を読んでいただきたい。

 

 

 

 

 「フン。予防線か?」

 

 流石に、批判を予想して予防線を張るという考えはあったらしい。

 

 次のページを見る。

 

 

 

 

 1章 間違いなく純血である一族

 

 

 ここでは、数百年にわたって純血であり続けた一族を紹介させていただく。

 スクイブも純血として数えている。

 

 また、現在その血筋を受け継ぐものがいない、あるいは受け継いでいるが純血では無い場合は、3章以降に記載されている。

 

 

 エイブリー家

 

 ブラック家

 

 カロー家

 

  ・

 

  ・

 

  ・

 

 

 

 「………へえ。聖28一族の中からいくつも消すとはね」

 

 確かに、アボット家などは存命の、最後に生まれた一族は半純血だし、バーク家などは受け継ぐものがいないが、ここまでやるとは。

 

 普通、こういう時は遜ったり、媚を売るために嘘でも純血と書くのだ。

 

 この筆者は、重度の純血主義者なのだろう。

 

 

 ドラコも、もし自分の家の名前が消されていたらここまで落ち着いていなかっただろうが、しっかりとマルフォイ家の名前はあった。

 

 

 

 

 2章 歴史ある純血

 

 

 ここでは、1章で挙げた家の来歴を、個人情報の保護を優先させながらではあるが紹介させていただく。

 

 また、本人達が主張する歴史と食い違っている部分があると思われるが、今回は信頼できる事実だけを載せた。

 

 

  ・

 

  ・

 

  ・

 

 

 

 

 マルフォイ家

 

 起源は大陸、フランスに遡る。

 

 少なくとも、1692年の国際魔法使い機密保持法の頃には既に存在していた。

 その頃はマグルと取引をしていたこともあったようだが、機密保持法の制定を機にそれをやめた。

 

 それからは純血主義者の代表的存在として名を馳せ、現在でも莫大な寄付を魔法省に送り、政治的影響力を持ち続けている。

 

 ここでは、著名な人物について紹介する。

 

 

 アーマンド・マルフォイ

 

 ウィリアム1世に加勢し、その報酬として領土を得た、マルフォイ家初代当主。

 

 彼が得た領土は、その後10世紀にわたって彼の子孫が住み続けることになる。

 

 

 ブルータス・マルフォイ

 

 17世紀の魔法使い。

 反マグルの雑誌『ウォーロック・アット・ウォー』の発行者・編集長。

 

 『マグルびいきの魔法使いは魔法力が弱い』という無根拠な説を広め、マグルへの偏見を増長させた。

 

 

 ルシウス・マルフォイ

 

 現当主。

 

 死喰い人の疑いをかけられたが、無罪判決を受ける。

 

 その後も多額の寄付を行い、魔法省で確固たる地位を築き上げている。

 

 

 

 

 「………まあ、嘘では無いが………」

 

 マルフォイ家の長男として、当然自家の歴史は知っている。

 

 そんなドラコをして、間違いはなかった。

 

 「………ん?これは───」

 

 そして、次の章こそ、ドラコを驚愕させるものだった。

 

 

 

 

 

 

 3章 ほぼ純血の一族

 

 ここでは、150年ほどを目安に、歴史は浅いが純血であり続けた一族。

 また、純血の家系ではあったが、現在存命の者が半純血などである一族について紹介する。

 

 なお、存命している者がいない場合は、4章に記載されている。

 

 

 アボット家

 

  ・

 

  ・

 

 ロングボトム家

 

  ・

 

 ポッター家

 

  ・

 

  ・

 

  ・

 

 

 

 

 「………こんな、こんなことを、誰が」

 

 ドラコは、これを書いたのは重度の純血主義者なのだろうと思っていた。

 

 だが、それではおかしい。

 真に純血主義を掲げるのならば、血の一滴までも純血である一族以外には目を向けない。

 

 3章は、1、2章よりも遥かにページ数を使っている。その中には数百の、気が遠くなるような数の家が記載されており、ドラコが聞いたこともないような家すらあった。

 

 ここまで調べる労力を、純血主義者が、純血でないものに使うだろうか?

 

 さらに、4章も。

 

 

 

 4章 純血だった一族

 

 ここでは、純血ではあったが、その血を受け継ぐ者がいないことで無くなってしまった一族について紹介させていただく。

 

 なお、一部の、議論の余地がある一族については、最終章である5章に記載している。

 

 

 バーク家

 

  ・

 

  ・

 

 クラウチ家

 

  ・

 

  ・

 

  ・

 

 

 

 「………ここまで、調べたのか」

 

 ドラコは、この本の作者の思惑を考えていた。

 

 

 最初は、ただ自分の家を純血として知らしめたかった者がやったと思った。

 

 しかしそれでは、ここまでやる必要はない。

 

 次に、重度の純血主義者で、血の保全のために作ったのだと思った。

 

 だが、ここまで調べる必要がない。

 

 一体、どんな人間が、どんな考えの元この本を作ったのか。

 

 「………議論の余地がある一族って、なんだ………?」

 

 今まで、『事実であること』を重視していたこの筆者が、『議論の余地がある』と評する家。

 

 一体、どんな───

 

 

 

 5章 議論の余地がある一族

 

 ここでは、議論の余地がある一族について紹介させていただく。

 

 とはいえ、該当の一族は一つしかない。

 

 

 ゴーント家

 

 サラザール・スリザリンの直系の末裔である一族であり、死の秘宝の一つ『蘇りの石』を作ったペベレル三兄弟の次男カドマスの子孫と婚姻しているため、ペベレル家の血も引く家系である。

 

 ゴーント家は純血を重んじるあまり、いとこ間などでの近親婚を繰り返した。

 

 栄華を誇ったこの名家も、精神的に不安定な者達が資産を浪費するようになったせいで、純血主義者たちの間での威信を失う。

 

 暴力衝動を抱えた彼らはマグルに対する犯罪行為にも安易に手を染め、ついには次期当主が魔法法執行部隊に逮捕されるまでに凋落していった。

 

 その後、最後の当主がアズカバンで獄中死し、ゴーントの家系は潰えた。

 

 新大陸にはゴーント家の血を引く者であるイゾルテ・セイアが渡ったが、子を成すことはなく、ゴーント家の血筋は他に残っていない。

 

 

 では何故議論の余地があるかというと、かのヴォルデモート卿こそがゴーント家の血筋を引く者だからである。

 

 彼女は1981年に当時3ヶ月程のハリエット・リリー・ポッターを襲撃し、しかし返り討ちに遭ったことで肉体を失った。

 

 そして1995年6月。闇の魔術など、さまざまな技術を用いることで肉体を復活させた。

 

 しかし、復活後の肉体には、かつてのヴォルデモート卿にはなかった要素が組み込まれている。

 復活する前と後を同一視するかで、血族的な差異が生まれるかもしれないのだ。

 

 同一視するならば、ゴーントの当主はヴォルデモート卿ということになる。

 

 しないのならば、やはりゴーント家は滅亡したと言える。

 

 なお、ヴォルデモート卿以外にもゴーントの血を引く者がいるが、それも議論の余地があるので、今回は省くことにした。

 

 

 

 

 「───は?」

 

 『闇の帝王』がかのサラザール・スリザリンの血を引く者という話は───噂程度ではあるが───知っていた。まさか、本当だったとは。

 

 しかし、それ以上に───

 

 「何故ここまで知っている(・・・・・・・・・・・)───!?」

 

 『闇の帝王』の復活は、まだ分かる。ポッターやダンブルドアなどがそう主張していた。

 

 復活の詳細をここまで知るということは、まず間違いなく死喰い人のはずだ。

 ドラコですら父親───ルシウスにここまで教えられていないのだ。

 

 だが、死喰い人が帝王の秘密をこんな形で暴露するだろうか。

 

 まさか───!

 

 「“S” ───サラザール・スリザリン!?」

 

 まさか、筆者は、『闇の帝王』本人───!?

 

 

 

 

 さいごに

 

 

 ここまで本書を読んでくれた方、ありがとうございます。

 

 『ここがおかしい』『本当なのか』という声もあるとは思いますが、それはみなさまがそれぞれお確かめください。

 

 純血であろうとも、無かろうとも。そこに個人としては違いがありません。

 

 ただ、その家の歴史は、積み重ねてきたものは、各家で差があることでしょう。

 

 魔法族として、みなさまには誇りを持って、次の世代に繋げていただく。

 

 それこそが本書の役割であり、筆者の思惑であります。

 

             穢れた血のA・S

 

 

 

 「穢れた血のA・S ………あ、あいつ───!」

 

 

 




ちなみに、アルバートのミドルネームはサクス。
アルバートもサクスも、由来は実在する同じ人。
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