魔法薬学担当教授、セブルス・スネイプ。
「ソーン。残るように」
「·········それで、先日の件はどうなりました?」
「ダンブルドア校長の許可も得た。これからは我輩の監視の元、魔法薬学の
そう。魔法薬学はホグワーツの授業の中で最もと言っていいほど才能に左右される。
他の教科は最悪杖を振れば何とかなる。物相手に練習していれば上手くなるのだ。
だが魔法薬学は違う。そもそも、使う素材に金が掛かるし、失敗したら目も当てられないような被害になる。
座学·········工程を知っているのは
俺は図書館の本は(禁書以外は)全て制覇した。
だから寮監であり魔法薬学の教授であるスネイプ先生に頼んだ。
「それで、何を作るつもりだ?」
「そうですねぇ。·········まずは、脱狼薬を作ってみたいですね」
脱狼薬。
人狼の凶暴性を失わせ、呪いの感染を防ぐ薬。
主な材料は猛毒トリカブトであるため、調合に失敗すると劇物に変身してしまう、危険な魔法薬。
調合の難しさ故に非常に高価な魔法薬でもあり、大抵の狼人間は自分で調合することが出来ない。
だからいつまで経っても人狼は差別される。
「·········人狼の知り合いでもいるのか?」
「いません。俺は友達は少ないんです」
これは社会貢献の一種だ。
もし俺が脱狼薬の簡単な調合方法を見つけたり、別の素材でも調合可能なことを突き止めれば、魔法界の人狼に対する扱いは変わる。
純血達は、恐れている。自分が、あるいは子供が人狼に襲われ、万が一。感染し、人狼になったら。
ヒトではいられなくなる。満月に変身し、誰かを襲う怪物に変わる。
その血脈は、絶たれる。
だから、その不安を解消してやる。
人狼に襲われる可能性を減らして。
人狼であってもヒトとして生きていけるように。
「現実を知らない子供の考えとしか言えんな」
「·········あなたはそう言うでしょうね。まあ、楽しみにしていてください」
魔法薬を作るにあたって、俺はマグル的考えを持ち込むことにした。
すなわち、
ある魔法植物の種を使う時。
1 細かく刻む
2 押し潰して汁を使う
の二つの手段の違いを用意し、これらで完成した魔法薬にどのような影響が出るか、調べた。
結果として、2番の方が完成度が高かった。
どれくらいかと言うと、スネイプ先生が文句を言わなかったほど。
つまり、今回重要だったのは植物の中身の部分だったのだ。
·········ここまでやって、分かった。
これ総当たりみたいなもんじゃん!
「というわけで、総当たりした訳ですが」
「信じられん損失だ·········!一体どれほどの素材を使った!」
安心してください。ちゃんと研究結果はまとめてあります。使った素材も。
「·················」
不機嫌だ。不機嫌ではあるが、俺の研究結果に関心を寄せている。
「この調子で魔法薬学を進歩させましょう、スネイプ先生!」
「愚か者!当分自習は禁止だ!」
「怒られちゃった」
「お前·········ほどほどにしておけよ。僕まで寮監に怒られたくはない」
流石に素材を使いすぎたな。
俺の持ってる知識と感覚、寮監の今までの経験などを駆使して最高効率でやっていたんだが·········
「·········お前、何だこの羊皮紙の束は。また問題集でも作ってるのか?」
「いや、これは今日の研究結果のレポート。めちゃくちゃ素材使ったし、ちゃんとまとめて先生に出さないとな」
ホグワーツの倉庫にある物だけでなく、先生の私物の中からも使った。つまり先生の自腹である。
だが、それだけの価値はあった。
先生は自習を
逆に言えば、それだけ俺のやったことを認めているということでもある。
「·········お前、やりたい放題やってるな」
「人生なんてそんなもんだよ。勉強しなきゃいけない時に遊び呆けるよりはいいでしょ」
とは言え、マジでやりたい放題やった。使った素材の中には希少な物も多くあった。あれはだいぶ金が掛かる。
「·········金稼ぐか」
では考えよう。金稼ぎの方法を。
対象は·········大人の魔法使いだな。子供から搾り取るには限界があるし、しょぼい。
大人と言っても一括りだ。家庭で家事をしている魔法使いがいれば、魔法省で働くような魔法使いもいる。
·········魔法省相手に取引するか?
では何を売る?
大人の魔法使いが困っていること。あるいは、もっと楽になればいいと思っていること。
魔法省で問題視されているのは、異種族·········ゴブリンなどとの友好。
これはゴブリンと魔法使い全体の確執の話になるから、今回はダメだな。
なら·········魔法道具でも作って売るか。
では、どのような物を?
実用性があり、かつ信用される物でなければならない。闇の魔法からは程遠いと思えるような物を。
「───服か!」
「というわけで、ドラコ。着ろ」
「は?何の話だ?」
いいから。着ろ。
「·················おい、ただの布にボタンを付けただけじゃないか。どうやって着るんだ?」
「布をマントみたいに羽織って········そう。で、ボタンを閉じろ」
シュッ、という音と同時に、羽織っていた布がローブのようになる。
「ボタンを開ければ、元通りだ」
ドラコが言葉通りにすると、先程のマントのような形に戻った。
「········確かに、少し驚いた。便利ではある。だが、その程度だ。杖を振れば同じことが出来る」
おいおい、俺がこの程度で終わると思ったのか?
「何だと?」
「
「ウ、ウワーー!!」
落ち着け。無傷だ。
「お、お前········!」
怒るな。まだ商品を説明している途中だ。
「これがこの商品の真骨頂。何もしていなくてもある程度なら魔法を防げる」
驚いたかな?
「せめてやる前に一言あるだろう!」
悪かったって。で、どう?
「·····················本当に、癪だが。僕もここまでの作品を見たことはない」
魔法省に売れる?
「ああ。値段にもよるが、欲しがる人間は多いはずだ。特に闇祓いなら」
よし。じゃあこれを量産するか。名前は·············
「···············どうやってこんな物を作ったんだ?」
「聞きたいか。頑張ったんだぞ。何せ布すらなかったから、俺のローブを分解して作ったんだ」
「はあ!?これ、お前のローブのお下がり!?」
そうだ。糸を一本一本分けて、一本ごとに魔法を込めて、また自力で布に戻した。
手間は掛かったが、その分効果は高い。
「お前、裁縫出来たのか··········」
「母さんが病気で倒れてからは俺が家事を全部やってたしな。これくらいは出来る」
「·························」
どうした、ドラコ。
「何でもない気にするなこれからも頑張れ」
ああ、うん。
「フ〜〜。ハァ〜〜」
深呼吸をする。落ち着け、落ち着け。
危ない。いきなり爆弾が飛んできた。
あいつは母親の話になると化け物になる。
あいつの母親をバカにした先輩は、自分の発言のせいで死にかけた。
今でも思い出す。
「おいおい、穢れた血が何やってんだ?」
「おや、先輩。自習クラブですよ。先輩も入りますか?」
「俺はそんな落ちこぼれ共とは違う。そんなこともわからないのか?
直後、先輩は壁にめり込んだ。あいつが殴ったから、そうなった。
「ウゥゥウオオオオォォォッッッ!!」
黒い、モヤのような。闇そのものになったあいつは暴れた。
ああ、きっと。『闇の帝王』を見た父上もこんな気持ちだったんだろう。
あいつの目に映らないことが、最適解。あいつに跪くことが、正しい。
心の底からそう思えてしまうほど、あいつは『魔』だった。
「何をしている」
「················いえ、何も」
あいつは、寮監が来てすぐ元通りになった。
ああ、あの時。寮監が来なければ、先輩はどうなっていただろう?
ちなみに
透明化・防御・汚れにくい・大きさが変わる
など、結構すごい。