「お、ドラコ!ちゃんと売れたらしいじゃん!」
おかげで
「…………誰だよお前!」
嘘だろ!?冬休みを挟んだだけで俺を忘れたのか!?俺ってそんな影薄いの!?
「違う!明らかにおかしいだろ!」
何が?
「お前、なんかデカくなってるだろ!」
「そうなんだよ。みんないないから暇すぎてさ」
暇すぎてつい2cmほど背が伸びたし、体重も8kgくらい増えた。*1
「つい……?お前、そんな感覚で大きくなるのか?本当は巨人の血とか入ってるんじゃないか?」
「いやいや、もしそうだったらもっとデカくなってるよ」
信じられないものを見る目で俺を見るドラコ。
魔法があるんだから、これくらい普通だろ。
「………………」
「…………」
生徒と教師が向かい合う。どちらも何も言わないが、ただ向かい合っているわけではない。
「(へえ、こんな魔法が。………『におい』って、そういう仕様なのか)」
開心術が使えない限り、この
「(………あ、いいとこだったのに)」
当然、ただ知識を見せるだけではない。
類稀な閉心術の使い手である両者は、どの知識を見せるか選べる。
「そ、ソーン君。君はじゅ、純血主義について、どど、どう、思っていますか?」
だからこそ、彼の質問は突然だった。
「………どう、と言われても」
「き、君は、とても優れた魔法使いです。才能があり、た、弛まぬ努力をする」
「そうですね。大抵の同級生よりは真面目に授業を受けてます」
「だ、だからこそ。血筋によって、き、君は
………意外だった。
優秀ではあるが、臆病で愚か。それが、俺から見たクィレル先生だった。
「き、君は、
「
その程度で、俺は怒らない。
「な、何故です?あなたの努力が、否定されている。生まれという、ただ一つの理由で!」
「
本当に、可哀想だ。
「………は、はい?かわいそう?」
「純血主義には、限界があります。新しい者を『穢れた血』として認めず、
「ホグワーツが出来てから千年。純血は苦しい状況にいます。次の千年を迎えられないほどに」
「彼らが誇る
当然の事ではある。マグルの王家も、ギリギリのところがある。
純血達は、数百年遡って親族がほとんど魔法族なら、
多少怪しくても、気にしない。
つまり、
完璧な純血主義は、もはや不可能に近いと。
「実際、真に純血主義を掲げたスリザリンの末裔、ゴーント家は滅びました」
彼らは
確かに相続などで問題が起きたらしい。
それでも彼らは純血で、しかし他の純血は彼らを助けなかった。
「純血主義は、次の千年に
彼らは、滅びてしまう。
「だから
ああ、本当に。
「哀れだ」
「…………」
それでも、クィレル先生は腑に落ちないという顔だった。
「何か言いたげですね」
「き、君の考えはわかりました。で、ですが今はまだ、純血主義は健在です」
「そうですね。だから?」
「今君が受ける屈辱を耐える理由には、ならないはずです」
「………まあ、そうですね」
その通りだ。いつか滅びる彼らを憐れむことと、今の侮辱を耐える事。
これらは、関係ない。
「もし俺が弱ければ、恨んで、怒って、
だが、俺は強い。
「見下してるわけじゃないんですけど、正直俺の方が
俺たちには力の差がある。
「多少不快になることはありますが、その程度です。精神的にも、肉体的にも。もちろん魔法的にも、俺のほうが上なので」
強さ故の余裕。結局、それが理由なのだろう。
「………………」
クィレル先生は、言葉を探している。
「あなたは、何か得意なことはないんですか?」
「………は、はい?」
「これなら負けないと、自信を持って言える何かは、ありますか?」
開心術の影響で、彼の心を、俺は知っている。
「………トロールの、扱いは」
「なら誇るべきです。魔法族は、基本的に魔法生物に興味を示さない。その中であなたは、更に興味を示さないトロールという存在を知っている」
彼は特別を求めた。誰かに誇れるような自分を。
「ですが、トロールなど………」
「じゃあトロールを題材にしたクイズをしましょう。ほら、問題を出してください」
「………………」
「いやあ、負けました。ここまで詳しいとは」
「しゅ、趣味の延長です。き、君がやろうと思えば私を越えられるでしょう」
ああ、確かにそうだろう。
彼は力がなく、資格もない。
それでも。
「二度目です。人生で負けたのは、二度目です」
「そ、そうですか」
「一度目は、ダンブルドアでした」
「!」
「今までダンブルドアしかできなかった偉業を、あなたはトロールという狭い分野ではありますが、成し遂げました」
「あなたは、誇るべきだ。今までのあなたの努力は、無駄ではなかった」
それでも、彼は特別だ。
誰もそれを見ようとしなかった。知ろうとしなかった。
ただ、それだけなのだ。
クィリナス・クィレル
吃音とその性格で友達はいなかった。
トロールに関することなら誰にも負けないが、誰もトロールなんかに興味を示さない。
彼は特別を求め、ある噂を聞き、そして。
彼は、闇に負けた。