trueルートその後 作:幸森
カゾルミア中央病院
未だ病床にいる身の私に、急に最高指導者が面会に来ることが決まった。医者やライカたちはまだ怪我が治っておらず、電熱線の使用から来る不調が残る彼女が面会することに反対したが、連絡役の将校からは確定事項であり、直ちに命令に従うように言われた。
不思議な命令であり、怪我を隠すどころが包帯や点滴を見やすい服を変えさせられ、より広い重傷患者向けの病床へと送られた。このような重傷でありながら国に忠誠を誓う兵士の絵面が欲しいのだろう...また、まだ、国にいいように使われるのか...
私は疲れてしまっている。
身体はボロボロだが、そこじゃない。妹とは離れ離れにされてしまった、大事な戦友たちとの再会は出来た。出来たがこの国は変わらず、私を、私達を利用し、使い捨てようとする。妹と会うのも絶望的だ。私の身体は革命軍を倒せるまで持つだろうか... いや難しいだろう。
愛する戦友たちと残り少ない余生を生きたいなどと後ろ向きな気持ちが心を蝕んでいる。
「もう間もなく、閣下が来る。失礼の無いように」
将校が冷や汗をかきながら私に念を押す。当たり前だ、粗相をして元捕虜という立場の悪い仲間たちの身が危うくなるような真似を誰がするだろうか。
数分としないうちに、取材班がやってきてカメラを回す。やっぱりプロパガンダか...これを信じる国民がどれほどいるのだろうか。最高指導者達の頭の中にしか、もういないだろうに。
扉を叩く音が聞こえ、金髪の将校が入ってきた。階級章を見ると大佐...また、立派な肩書のエスコート役が来たものだ。その後ろにこの国の最高権力者、本名をアドルフ・ジュガシヴィリ...最高指導者ハイツォルが一般的に知られている...が姿を現した。自身に満ちた顔で病室へとズカズカと入り込んでくる。
「マルフーシャ、これまでの献身。そして、死の淵を彷徨いながらもその弛まぬ愛国心から奇跡の復活。一中級国民では成し得ないことを成してきた。3年前の東部戦域から上級国民へと階級を昇級させ目をかけた甲斐があるというものだ」
「は、ありがとうございます。これも最高指導者の指導あってのものです」
何が目をかけただ、恩着せがましい。
「そうだろう、そうだろう。奇跡の復活を果たし、これからも国に尽くす英雄に3等級という階級はもはや役不足だ。私の命により2等級へと昇級を許す。これからも職務に励み給え。この国は優秀なものは何処までも上に上がっていける国だ。階級がないと言いながら固定されて、硬直し堕落した右派帝国主義を隠さぬ愚かな連合国とは違う」
「は、過分な恩寵。ありがとうございます」
今更、階級なぞになんの意味があるのだろう。これが褒美になるなんて考えているのは一部の上流階級だけだ。
「マルフーシャ、誰もが羨む2等級へと昇級した記念にプレゼントだ。大佐が君の望むものを用意してくれたそうだよ。喜ぶといい、おい!オージェ陸軍大佐!」
「はあ?」
思わず声が出てしまった、言い訳をしながらいたが、この粗相をハイツォル最高指導者は許し、後ろの金髪の将校に声をかけた。
その将校が扉に寄り、ノックをして入れと声を掛ける。
はい、と返答があり扉が開けられ、灰色髪の女性兵士の顔が見えた...? いったい誰、だ....
あの...
兵士の...
後ろには...
ス...スネ...ジンカ...
スネジンカ!!
私は、飛び起きようとし、力が入らずベットの上で前のめりに倒れてしまう。
「姉さん!」
スネジンカが、スネジンカが駆け寄る。夢ではない、幻でもない、走馬燈でもない。間違いなく私の愛するスネジンカだ。あの時と...変わらない。いや、少しやつれたか。
「姉さん!」
「スネジンカ...!」
「姉さん!ごめんなさい!ごめんな"さ"い"」
「スネジンカなの...!どうして...革命軍にいるんじゃあ...」
「ごべん"な"さ"い"、ね"え"ざん"を"じんじれなぐでぇ、ま"でな"ぐでぇ、う"っ"でえ"」
「ごべん"な"さ"い"、ごべん"な"さ"い"、ごべん"な"さ"い"...」
スネジンカは私の膝の上に顔をうずめ、壊れたラジオのように泣き続け、謝り続けている...私がスネジンカをこんなになるまで...
「スネジンカ、違うのよ!私が悪いの!貴方をずっと独りにした私が...泣かないで...スネジンカ...泣かないで...、お願い...」
最高指導者のそばにいた金髪の将校が近寄り、泣いているスネジンカの背中をさする。スネジンカは泣き続けている。18歳では耐えきれない経験の連続です今は泣かせてあげましょう、一緒にいてあげてくださいと将校が背中をさすってあげるよう伝えてきた。
背中をさする。とても小さな背中だ。とても18歳で革命軍の英雄に祀り上げられた人間とは思えない...私の大事な妹、私の数少ない肉親、私のスネジンカ...これからはずっと一緒に居てあげるからね...
ほろりと涙が溢れてきた...これまで溜まっていたものが、感情が...止め処なく溢れ出てきた。
2人は静かに泣きながら、再会を噛み締め合った...
パチパチと拍手がする。最高指導者だ...
「感動の再会となった訳だ。大佐から2人の話を聞いて私は愕然とした。お互いを愛する姉妹が革命軍の手によって引き裂かれ、お互い争わされるように仕組まれた。
我々の努力がなければ2人は永遠の別れとなったであろう...許されない!革命軍は...許してはならない!このような家族の仲を裂く悲劇は...
打ち倒されなければならない!邪悪な連合国は...我々は再び団結し姉妹を家族を国家を裂こうとする奴らを殲滅しなければならない!マルフーシャ!再びの献身を期待する!しばらくは姉妹の再会を噛みしめると良い。
カゾルミアと姉妹に栄光あれ!」
「カゾルミアに栄光あれ!」
「「カゾルミアに栄光あれ!!」」
周囲の兵士、将校達は敬礼をし、病院に声が響く。この巨大な病院の1室でカメラは回り続ける。虚構と事実を織り交ぜながら...
カゾルミア報道局
とんでもない事実がわかりました。革命軍にいた救国のスネジンカは革命軍の謀略により、英雄マルフーシャと争うよう仕向けられ、その姉妹の仲は引き裂かれておりました。
しかしながら、その事実を知った偉大なる最高指導者はスネジンカを救出。聴取の結果、革命軍のプロパガンダは全くの事実無根であり、いたいけな少女は革命軍のリーダーに騙されて姉に対するこのような蛮行をやってしまったのだとわかりました。
我々は、悲劇の少女スネジンカの再来を、このような家族の仲が裂かれる不幸を二度と許してはなりません!国を裂こうとする革命軍を、連合国を、許してはなりません!皆さん、ともに祖国を、家族を守りましょう!
カゾルミアに栄光あれ!!