第一話 日本の蝶はテキサス州で竜巻を起こすか?
「う、うーん...」
目が覚めると、最初に視界に入り込んできたのは相変わらず紅色に染まった赤一色の天井
背中を受け止めている羽毛は僅かな浮遊感を覚えるほど柔らかく、左肩から心臓辺りを通り、腰まで包帯が巻かれていた
『(あ、地淡起きた!?良かった~...)』
「...?ここは?」
『(あ、多分紅魔館の客間の一つ)』
「失礼します」
部屋の戸を静かに開けて入ってきたのはメイド長、咲夜だった。
「あ、起きられましたか」
「嘘でしょ!?ちょっと待って!」
うわぁ...外がものすごい騒がしい
「ちょっと貴方!傷は大丈夫なの!?」
そう言いながら、意外にも取り乱して部屋に入ってきたのはレミリアだった
「...レミリア、一つ、質問をしてもいいか?」
「え、な、なによ...良いわよ...」
「どうして俺達を助けた?というより、魔理沙は無事なのか?」
「............はぁ...そんなことを聞かれるなんてね。理由?そんなの簡単よ。ただ貴方が勝負に勝ったのに、そのまま死んでしまうことが許せなかったの...あ、べ、別にただの自己満足だからね!?貴方のためを思ったことじゃないからね!?」
「......ハハ...アハハハハハハハ!そんな理由で助けたのか?吸血鬼が聞いてあきれるぜ」
「もう一回殺すわよ?」
「すいません嘘です調子乗りましたどうかお許しを」
『(地淡、実はまだ紅魔郷は...この物語は終わっていないんだ)』
(は?どういうことだそれ。レミリアにも勝ったし、異変も解決した)
『(ううん、そうじゃないんだ。実はこの物語にはアナザーストーリー、いわゆる後日談が登場する)』
(ほーん...で、その内容は?)
『(レミリアの妹...フランドール・スカーレットに弾幕ごっこで勝利し、外に出す)』
(あー...そういえばさっき妹がどうとか言ってたな。でも外に出すってどういうことだ?)
『(それは...フランの強大な力...【ありとあらゆるものを破壊する程度の能力】のせいで495年間地下に幽閉...いや、自らの意思で引きこもるようになってしまったんだ。自らの制御ができない力を恐れて、レミリアや咲夜などの側近に危害が及ぶことを恐れて...)』
(そうか、じゃあ早速出るぞ)
「レミリア、済まん、用がある。介抱して頂き感謝する」
「え、ちょ、ちょっと待って!まだ話は終わって...「止めるな!レミリア、これはお前のためにやることだ。無駄なお節介でも余計なお世話でもありがた迷惑でも俺はやる...いや、俺は止まらねえ。精々吉報を心待ちにしてな」そう...判ったわ。貴方が何をしようとしているのかは判る。けど...」
______フランをお願いね
彼女が別れ際、最後に放つ言葉だった
『(地淡、フランの部屋は地下の大図書館からあくせすできるよ)』
天音にそう言われたので、とりあえず地下へ
数分さ迷っていると、一つだけ赤ではなく濃い藍色をした扉があった
『「ここが大図書館だよ。パチュリーだけ一面が真っ赤だと嫌らしいんだ。まあそれが普通の感性だね」』
「まあ確かにな。失礼する、小悪魔なる者は居るか?」
「誰ですか...って、さっきここに来た...貴方がここにいるということはまさか...」
「ああ、異変を解決してきた。今は侵入者としてではなく客としてここに来ている」
「でも「小悪魔、通しなさい」...はい。こちらへどうぞ」
パチュリーの鶴の一声で小悪魔がエスコートを始めた。対応変わりすぎだろ。従者なんてそんなものだろうけど
......小悪魔は従者じゃなくて遣いか?
「さて、何の用かしら?もとネズミ」
「その呼び方やめろ。俺がここに来たのはお前の友達の妹に面会するためだ」
「......フラン?」
「ああ、だからここを通してくれると「ダメよ!絶対に。これだけは譲れない」...どうしてだ?」
「あの子は...人間がどうにか出来るものじゃないのよ」
「じゃあお前なら手を打てるのか?」
「私ならできるけど...手は貸さないわよ?」
「じゃあお前に勝った俺にもできるだろ」
「...っっっ!」
「とっとと道を開けてくれ。それともそこの遣いを使って裏でも取りに行くか?」
「......ええ、そうね。小悪魔」
「はい!少々お待ちください!」
「...よしっと、これで手は打てたなこれで小悪魔が戻ってくれば通してくれるだろ?」
「まあ小悪魔の報告にもよるけどね」
「...帰ってくるまで話でもしようか」
____話?とパチュリーは目付きを鋭くして問い返す
「そんな警戒することもないだろ。ただ話をしようといってるだけだぜ?」
「...それもそうね。過剰に反応して悪かったわ。それで、話って何?」
「んあ?そんなもん決まってんだろ。どうフランを抑えるか、これに尽きる」
「...まさか、何も考えていなかったの?」
「まあな」
「誉めてない」
「知ってる」
「じゃあ何でよ...フランの抑え方ならいくつかあるわ」
お、急に話戻してきたな。と言うことは口には出さないでおこう
「顔に出てるわよ」
ダメでした
「まず一つは流水ね。水は吸血鬼の弱点とも言えるわ」
「じゃあプリンセスウィンデネとかか」
「スペル名覚えてるのね」
「まあな」
「こっちは誉めてる」
「知ってる」
「パチュリー様ー!」
「あらお帰り、小悪魔。どうだった?」
ヤバイ二度目のテンプレ茶番やってたら帰ってきちゃったよ。まあいいか
「レミリア様が、許可すると...」
「......行ってきなさい、地淡。そこを真っ直ぐいったところの手前を右よ」
「結構近いんかい。てか何で一緒に来てくれないんだ?」
「出来れば私も関わりたくないのよ」
「そんなになのか?」
「そんなになのよ。......生きて帰って来なさいよ」
「判ってる。死ぬつもりは毛頭無い」
「...ここか」
『「多分ね」』
「...天音」
『「なあに?」』
「.........カウントしてくれ」
『「どうして?」』
「......正直言うと...恐いんだ」
『「何が?」』
「......この壁の向こうから感じる...強大な殺意が」
『「...そっか......判った。それじゃあ不公平だから一緒にやるよ?」』
「判った」
スー...ハー...スー...ハー...スー...ハー...スー...ハー...スー...
『「いつまで深呼吸してんのさw」』
「いやホントに心の準備が」
『「行くよ、せーの...」』
「あーもう!」
3.2.1...
ゼロ、という直前で急な浮遊感を覚えた。重力に身を委ね、落ちていくような浮遊感が
「...ん?」
俺達の足元が、深い暗がりに包まれた
『「っ!地淡、飛べる!?」』
「無理!諦めて落ちるぞ!受け身だけ取れ!」
次の瞬間、視界が暗転し...
その次の瞬間、世界が色で包まれた
見上げると青い空、見下ろすと森の木々、下から吹き付ける風、同じ高さを飛ぶ野鳥
絶賛落下中だった
『「......!?地淡!下に弾幕!」』
「...!了解!」
渾身の力を込め、真下へ弾幕を放つ。もちろんハデスの雷みたいな自爆弾ではない。少しでも威力を殺さないと、そうしないと......死ぬ
突然目の前に現れた死に対しても、天音は冷静だった
『「地淡!下に森がある!大の字で受け止まるように落ちて衝撃を分散!」』
正直これがないと死んでたと思う。魔下に弾幕を放ち、体を大の字に広げる。地面に衝突する寸前、浮力を操れることを思い出した
「......時すでに遅し」
皆さんは、バタフライエフェクをご存じですか?バタフライエフェクとは、日本の蝶の羽ばたき一つで、地球の反対側にあるテキサス州では竜巻が起こるのか?という例を用いた【過去の小さな事象で未来が大きく変わってしまう恐れがある】という意味を持つ言葉です