暫く歩みを進めると、大きな黒染めの門が立ちはだかる。高さは凡そ5m弱、材質は銅だろうか?門前には槍を手に持った屈強な門番が立っている。当たり前だけど寝てないんだな。当たり前だけど
「待て、其処の者」
「ん?何だ?」
「とぼけるな。此処は貴様の様な悪しき者が入って良い場所出はない」
「...?何処が?」
「その尾と獣耳、貴様は妖獣だろう。話が通じるようならば、今此処から去れば見逃してやる」
「何で話が通じるのに和解しようとは思わないんだ?」
「そういう決まりなのだ」
「妖と和解は出来ない決まりか?」
「そうだ。解ったならさっさと立ち去れ」
「なら俺は、穢れの無い人間だ。厳密に言えば元だけどな」
「嘘を付くな!それではその人とはかけ離れた容姿、どう説明する?」
「妖獣に取り憑かれた」
「......如何にも現実味がないが、証拠は?」
「霊力を操れる」
「それだけでは証拠にならん」
「そうか...それなら、此処に妖獣の首を持ってくる」
「ふむ...良いだろう。只し、四半刻で、だ」
「判った、また会おう」
「はぁ...まさかこんなことになるなんてな」
『「まあ...うん...そうだね。せめて人里に入れるだけ...まし......なのかな?」』
生首なんてコンプラ的にヤバそうだから割愛(メタ)
「門番、これでいいか?」
「うむ...確かに、獣の首だ。僅かに妖力を感じる。しかし...」
「しかし?」
「どうやったら...その...こんなに酷く醜い死体になるんだ」
「ああ、妖獣に情は無いと行動で示した」
「...限度が無いか?......まあ、いい。この里への侵入を許可する。...と言いたいところだが......いや本当は言いたくないんだが」
「何だよ?まだ何かあるのか?」
「里長に最終確認を行ってもらう」
「......まさかとは思うが、その里長って門の上で腕を組んでるあいつか?」
「はあ?この後に及んで何を...里長!?」
あ、やっぱり里長なのね、あれ。凄いなんというか...風紀を感じる?いや少し表現がおかしいか。風紀じゃなくて......あ、思い出した威厳だ。威厳を感じる気がしなくもないが...
(天音、あいつ知ってる?)
『(知らない)』
じゃあ出身は東方じゃないと...こいつ百貨辞典だな
「其処の獣の少年、伺っても宜しいか?」
ならせめて降りてこいよ...上から目線物理だし。飛んで目線合わせようかな。やんないけど
「さっき言ってた里長って奴か。何だ?話って」
「貴様...言葉使いを慎「良い」」
「話...と言うよりかは、最終面接と言った方が近いだろう」
「危害を加えないと誓えってか?元からそんなつもり無いけど」
「そんな堅苦しい会話をするつもりは微塵も無い。ただ君の素性を知っておきたいと思ってな」
「俺か...俺は言うところでのキメラだな」
「キメラ?」
「ああ、三種の合成獣、それが俺だ。この体も、3割り程は獣の物かもしれない」
「となると残りの二種は?」
「うーん...俺と俺の中の俺だな」
「中の...まさか多角人格の持ち主かい?」
「ああ、そうさ。だからこの獣と二人の俺でキメラってこと」
「珍しい者も居るものだ。まあ里へ入ることを許可しよう」
「...え?良いのか?」
「勿論、お主が嘘をついているようにはわしには見えんかった」
「そうか。じゃあ、ありがたくお言葉に甘えさせてもらうよ」
「里長、良いのですか?」
「ああ、活きの良い若者は大歓迎だ」
こうして俺達は、新たな住居を得た。まあ、すぐ転々とするんだろうけど
「地淡君、と言ったかな?君にはこの空き家を貸そう」
里長は、門を潜り俺達を少し林の繁っている、崖に沿った空き家を教えてくれた。小さく波の音と、潮風の匂いもする
「ここまでの気遣い、感謝してもしきれないよ。すぐにここを発つだろうから、短い時間だがご贔屓に」
「此方こそ宜しく頼むよ、二人とも」
「里長、多角人格と言うことはやはり...あれですかね?」
「恐らく、そうじゃろうな。あの少年は知らなかったようじゃが、伝承との関係は少なからずあるだろう」
二人はまだ知らなかった。数百年後に英雄として語り継がれることを、その伝承、半妖志転隔録という物を
余談ですが、以前生えた尾は六角形を連ならせた鱗で先を尖らせており、耳は左片方が柔らかい多くの羽毛で包まれた大きな耳。右片方は平たく、エルフ耳の様に先を尖らせていた