ゲヘナ学園 園芸部の死神   作:やーなん

13 / 78
いつの間にかお気に入り500件越え!?
二話前には400件だったはずなのに。

作者のブルアカへの愛が読者の皆さんへ伝わったものだと思います。
より一層、続きを書いていきますので、これからもご愛読下されば幸いです。



宣戦布告

 

 

 

「…………」

 

 カンナの語る、ミコトのヴァルキューレ警察学校への宣戦布告。

 その経緯に先生は絶句していた。

 

「ご存じの通り、ヴァルキューレは完全な公営学校。

 ゲヘナやトリニティのように、事業を運営して資金にする能力を持ちません。

 完全に連邦生徒会から下賜される予算によって運営されています。

 なので、うちは万年武器弾薬不足です」

「“……公務員が副業禁止なのは、どこも同じなんだね”」

 

 当然それは公平性の維持の為には必要なことだと、先生は理解している。

 

「連邦生徒会はあくまで各学校の行政機関。

 悪事を行う企業を直接的に罰する機能は持ちません。精々罰金や、経営者の交代を命じる程度でしょう。

 実際、ブラックマーケットで検挙された大人の大半はキヴォトスを追放されたと聞きます」

 

 そういった背景もあり、長年の癒着に対する自浄作用をヴァルキューレは有していなかった。

 

 経済は大人たち企業が。

 行政は学校の集合体である連邦生徒会が。

 そうやって、キヴォトスは分業によって成り立っている。

 学校で部活として商売をしている生徒も多数存在しているが、それの目的はあくまで学習の為である。そういう建前が存在している。

 生徒達の本分は学業なので、それは当然のことだ。

 

 問題なのは、生徒達はどんなに長く見積もってもキヴォトスに二十年ほどしか在籍できないことである。

 大人たちと違って、新陳代謝の速度が違うのだ。

 

 そう、悪党たちはちょっと我慢すれば、彼らの悪事を子供たちは忘れてしまう。

 そういう歪な構造が、キヴォトスの社会なのだ。

 

「今でこそ、幾つかの工業高校と提携してある程度賄えるようには成りました。

 ですが、それまでは第三者による“善意の寄付”によって運営が成り立っている部分も大きかったのです」

 

 善意の第三者。言うまでも無く、キヴォトスの経済を支える大企業達である。

 彼らの支援物資は大変ありがたかったのである。

 たとえそれが、因果を含むモノであっても。

 

「だから、ミコトに暴れられればヴァルキューレの立て直しは非常に困難になる。

 ミコトの“圧力”は、我々に致命的だったのです」

 

 タケノコのように、無から物資は生えてこない。

 ギャグマンガのように、次のページでは壊れた建物や怪我人が何事も無く元通りになるわけではない。

 

「何より、彼女の勝利を我々は警察として許すわけにはいかなかった」

 

 カンナの言う通り、警察組織が個人に敗北したなんて、赦されない。

 それはつまり、同じことが出来る生徒に、ミコトと同じことを出来ると思われてしまうからだ。

 

 そうなっては、秩序の崩壊だ。

 キヴォトスは完全な無法地帯と化し、力が全ての暴力がモノを言う世界になる。

 

「たとえそれが、我々の正義と誇りの為の戦いだとしても……」

 

 カンナは物憂げに、ぬるくなった烏龍茶の水面を見下ろした。

 

 

 

 

 

「ミコト、そんなことは許されない!!」

 

 カンナは涙を流しながら、ミコトに銃を向けた。

 

「お前の挑む相手は我々などではない、それは連邦生徒会への挑戦だ!!」

 

 彼女には分かっていた。

 ミコトは大人たちによって踏みにじられた、彼女達ヴァルキューレの正義と誇りの為に戦うつもりなのだ。

 

 例えそれが、秩序の崩壊への序章だとしても。

 

「なるほどな」

 

 ミコトは頷いた。笑ったまま、楽しそうに。

 

「お前らの次は、連邦生徒会か」

「そう言えば、最近なんとかって言う特殊部隊の学校が出来たらしいわね。

 ねえ、ミコト。そいつらに勝たなくても良いの?」

「ぎゃはッ、ぎゃははッ、ぎゃははははは!!」

 

 ユエは全部わかっていて焚きつけている。

 SRT特殊学園は連邦生徒会長直属の特殊部隊。

 連邦生徒会長の下知でのみ動く。

 

 それはつまり、全ての学園の生徒会長と敵対することと同義だ。

 

「連邦生徒会に勝ったら、お前らの予算を増やせって言っておいてやるよ」

 

 まるでオモチャのように、手錠を引きちぎってミコトは言った。

 ヴァルキューレなど前哨戦。

 ミコトは連邦生徒会、このキヴォトスの学生社会へ挑戦するつもりなのだ。

 

「そんなことをすれば、お前は良くて退学、矯正局行きは間違いないんだぞ!!」

「だからどうした。矯正局ってのは指折りのワルを捕まえてんだろ?

 そうなったら俺はそいつらの中でも最強だって証明するだけだ」

 

 もうミコトの中で、全ては決定事項。

 誰の言葉でも、彼女は止められない。

 

 カンナの計算では、ミコトは連邦生徒会に()()()()()()

 

 連邦生徒会は結局のところ行政機関で、別に直接的な武力を保有しているわけではないのだから。

 有事の際、各学園に協力を要請するか、危急の事態にはヴァルキューレを動かすだろう。

 

 つまり、個人で動くミコトに比べ、対応が圧倒的に遅すぎるのだ。

 

 しかもその上で、彼女は先にヴァルキューレを潰してからサンクトゥムタワーへと向かうだろう。

 カンナは涙で滲む目でユエを見た。

 

 彼女はただただ微笑んでいる。

 あの魔女も、カンナと同じ計算結果を当然弾き出しているようだった。

 

「何をしてるお前達、ミコトを止めろ!!

 キヴォトスを暴力が支配する無法の世界にしても構わないのか!!」

 

 カンナはもう、周りを包囲している警備局の面々に頼るしかなかった。

 

 しかしながら、彼女達も困惑していた。

 警備局の隊員はヴァルキューレでも精鋭のエリート。

 少なくとも無傷でミコトを通すわけがない。

 

 その中の一人が、こう言った。

 

「じ、自分は、実は彼女に妹を人質に取られてるっす!!」

 

 そう言った彼女は、武器を捨てた。

 

「実は、自分も、寮に爆弾を仕掛けてるって言われてて……」

「う、うちは登校中に襲うって脅されてて!!」

「うううッ、今日の昼飯の食べ合わせがわるかったのか、お腹が急に……」

 

 そして次々と、彼女達はミコトの“圧力”に屈した。

 彼女達も、別にこの逮捕に納得がいっているわけではなかった。

 そもそもここに居る彼女達は、ブラックマーケットで戦うミコトを見ている。

 

 そしてそれ以前に、警察としての正義と誇りを穢す相手と、それを守ろうとする相手のどちらかに従うのか?

 

 彼女達は、──自分の魂に従った。

 彼女達とて、犯罪者を擁護する為にエリートになったわけではない。

 

 暴力ではなく、カリスマでミコトは彼女達を制したのだ。

 

「なんだ、戦わねぇのか。つまんねーな」

 

 ミコトは、マジで気合が入ってねー連中だな、としか思っていない。

 その様子を、カンナは愕然と見ていることしか出来なかった。

 

「んじゃ、行くか。確かあっちだったよな」

「そうね」

 

 ミコトが歩き出す。戦意喪失した戦乙女を置いて。

 

「頼む、待ってくれ。お前がしようとしていることは、キヴォトスを、この世界の秩序を破壊する行為なんだ……」

 

 もうカンナはそんな彼女の足に縋りついて懇願するほか無かったのだ。

 

「なあユエ、なんでカンナはこんなに必死なんだ?」

「多分、ミコトが連邦生徒会を倒しちゃったら、別の輩が同じことをしてしまうって危惧してるんじゃないのかしら?」

「ふーん、じゃあそれってつまりよぉ」

 

 それでも、ミコトは笑って言った。

 

「俺と同じことができるほど強い奴が現れるってことだよなぁ!!」

 

 彼女は徹頭徹尾まで、喧嘩の事しか興味が無かった。

 

「最高じゃねーか。そいつも俺が倒してやるよ!!」

「そうなったらいいわね」

「そうなんなきゃつまんねーんだよ」

 

 自然と、カンナは手を放していた。

 ミコトは悠然と、ユエを連れ添って歩き出す。

 

 彼女の歩む道は破滅の未来か、はたまた希望の道筋なのか。

 そんなこと、未来など予知できぬカンナには分からないことだった。

 

 

 

 

 

 ヴァルキューレ警察学校の正面玄関。

 

 そこはもう学校と言うより、役所の受付か何かにしか見えないだろう。

 実際、D.U.に住まう大人たちが生活安全局の窓口に相談しに来ているので、その役割を持っているのも確かだ。

 

 待合席で雑談をしている老人たち。

 近所に現れた不良に対するクレームを言いに来た住人。

 お婆ちゃんに受付のタッチパネルの使い方を教えているヴァルキューレの生徒。

 忙しそうに書類を手配し右往左往している生徒も居る。

 

 連邦生徒会の下部組織としての、彼女達の一面であった。

 ここでは忙しくも平和で、充実した時間が流れていた。

 

「たのもー!!」

 

 そんな中に、嵐が吹き荒れる。

 平和な時間が、終わりを告げた。

 

「てめえらに逮捕状を出されたゲヘナのミコトってもんだがよぉ。

 こっちから出向いてやったぜ!!」

 

 ミコトは銃を天上にぶっ放した。

 無力な住人達は悲鳴を上げ、逃げ惑う。

 

「な、なんですかあなたは、いきなり!!」

「戦う奴は掛かってこい。戦わねえ奴は銃を床に置け」

「ひ、ひいぃ」

 

 生活安全局の生徒達は、ミコトに銃を向けられ悲鳴を上げた。

 そして両手を上げたり、地面に顔を伏せたりしている。

 

「……なんだか弱い者いじめしてるみてーだな」

「どちらかというと銀行強盗の現場かしら」

 

 軟な態度の彼女達に、いまいち気分が乗らないミコトは思わず自分や周囲の様子をスマホで撮影しているユエにそうぼやいた。

 

「生活安全局の生徒達は射撃訓練を受けていても、実戦なんてほとんどしませんからねー」

 

 その時である。

 警備局の部隊を引き連れたロングコートの生徒が現れた。

 

 彼女は警備局の局長。

 ヴァルキューレの武力を一手に担う責任者だった。

 

「いやぁ、本当に一人で……いや、二人なのかな?」

「あ、私は気にしないで。趣味で録画してるだけだから」

「生放送とかやめてくださいねー」

 

 歩く弾薬庫兼撮影係に徹しているユエは、盾役(ポイントマン)としてもミコトに加勢するつもりは無いようだった。警備局長は溜め息を吐いた。

 

「ここで暴れられると本当に困るんで、どうにか帰ってくれませんかねー?」

「舐めてんのかてめぇ、逮捕しに来てんだろうが。掛かって来いよ、ヴァルキューレってのマジで腑抜けの集まりなんかよ、ああ!!」

「我々だって命令なんすよ……」

「わかった、じゃあ表出ろや」

 

 校舎を倒壊されるよりはマシか、と警備局長は肩を落としながらミコトに続いて外へと向かった。

 仮にミコトが大暴れして本校舎が倒壊したら、再建する予算なんてない彼女達の涙ぐましいお願いだった。

 

「とりあえず、形だけでも抵抗しておく?」

「うん、私達は頑張りましたーってことで」

「イヤだなぁ、あの人メッチャ強いし……」

「ねえ私達もあの人に“圧力”掛けられたってことにしとこうよ」

 

 なお、警備局の警備部隊の士気も最低だった。

 彼女達も、何百ものブラックマーケットの自治組織の兵隊と戦車を蹴散らす彼女を直接見ているのである。

 あの戦いは彼女達にとっても“正義”の戦いだった。

 

 令状も何も無しで、しがらみ無く戦える数少ない爽快な出来事だった。

 お陰で単純計算でキヴォトスの二割の犯罪が消滅したのである。犯罪資金の循環という悪循環が断たれたので、将来的な話に成れば彼女に救われた人数はもっと多いだろう。

 

 死体が見つかって現場に現れる名探偵も死神呼ばわりされるだろうが、犯罪を未然に防ぐことこそ警察や名探偵の至上命題なのである。

 そう言う意味では、ミコトは彼女達にとっても英雄だった。

 

 彼女達の上層部は、そんなミコトに騒動の責任を押し付けようとしている。

 じゃあ自分たちが活躍したら、同じ目に遭わないという保証は誰が出来るというのか? 他校の、身内以外ならそれでもいいというのか?

 正義の為に戦って、責任を押し付けられるために、彼女達はエリートになったわけではない。

 

「じゃあ、装備が損傷しない程度にってことで」

「そうしよ。壊したら申請書書かないといけないし」

「自分、盾置いてきた方がいいかなぁ」

 

 のろのろ、と警備部隊の面々も上司の後を追う。

 こうして、至上もっともぐだぐだなヴァルキューレ本校舎防衛戦が始まった!!

 

 

 

「じょ、冗談じゃないぞ……」

 

 公安局の局長は焦っていた。

 自分が命令して逮捕しろと言った相手が、直接乗り込んできたからだ。

 

 ヴァルキューレ警察学校には生徒会が無い。

 キヴォトスにおいて生徒会とは言わば自治組織であり、統治機構である。そう言う意味では連邦生徒会そのものがヴァルキューレの生徒会とも言える。

 

 そして当然ながら、公安局そのものに武力は無い。

 勿論職員全員が銃を抜いて戦うことは出来るだろうが、それは言ってしまえば生活安全局も同じである。

 

 公安局の仕事は、キヴォトスの安全を脅かす組織などを捜査し、適切に逮捕する根拠を警備局に説明し、仕事を割り振って与えることだ。

 

 逆上した犯人が単身武力で直接乗り込んでくるなんて、そんなバカげたことはヴァルキューレ警察学校創設以来初めての事だった。

 

 想定していないことは対応できない。

 それがお役所仕事と言うものだ。

 

 ……いや、いったいどこの誰なら、連邦生徒会のお抱えの警察組織に一人で戦いを挑もうと言うのか。

 

 彼女にできることは、上司に助けを乞うことだった。

 

「こ、こちら公安局です!! ぼ、防衛室長、ミコトです、あの女が乗り込んできました!!」

 

 電話で彼女は連邦生徒会の防衛室長に訴えかけた。

 

『ああ、そうですか。そう来ましたか。

 それは困りましたね……』

「私は、そちらの指示に従いました!!

 このままではあの女に、ヴァルキューレが制圧されてしまいます!!」

『うーん、分かりました。それでは』

 

 防衛室長はこう言った。

 

『この件は明日、議題に上げさせてもらいますね』

「……へ?」

『一週間もあれば、ゲヘナ学園に働きかけて彼女の退学申請書がこちらに届くでしょう。

 まあ、それで手打ちとしてください』

 

 他に何かありますか、と向こうのとぼけたような声に公安局長は唖然となった。

 

「あの、そういうことではなく……」

『ええ勿論、貴女の経歴に傷をつけないようにはしますよ。

 せっかく公安局長にまでなったんですからね♪

 ……ですので、分かっていますね?』

「……はい、各学園の治安維持組織に呼びかけてみます」

『そうですね。貴女は()()()()()()()方なので、卒業まではお互いに良い関係で居ましょうね♪』

 

 はい防衛室長、と公安局長は備え付けの電話の受話器を置いた。

 そしてすぐに、彼女はゲヘナの風紀委員会に電話を掛けた。

 

『はい、こちらゲヘナ学園風紀委員会』

「こ、こちらヴァルキューレ警察学校の公安局です!!

 そちらの生徒が当校に侵入して、大暴れを!!」

『あー、はいはい。わかりました。すぐ部員を派遣します。

 ところで、その生徒の名前は分かりますか?』

「逢坂 ミコトです!!」

 

 がちゃん、つー、つー。

 

 ガチャ切りだった。

 彼女はもう一度、風紀委員会に電話を掛けた。

 

『えーと、只今担当者不在につき、あと万魔殿からこれ以上仕事を増やすなと言われているので、お電話に出れません。悪しからず』

「嘘つけ!!」

『じゃあ万魔殿に文句を言ってくださいよ!!』

 

 逆切れであった。

 がちゃん、つー、つー。

 

 仕方ないので公安局長は万魔殿に電話を掛けた。

 

『はい、こちらゲヘナ学園生徒会万魔殿。現在多忙につき、用件は手早くお願いします』

「こちらヴァルキューレ警察学校の公安局です!!

 そちらの生徒が当校に侵入して、大暴れをしているので、風紀委員会の派遣を!!」

『あー、なるほど。では風紀委員会に直接連絡してください』

「こちらはたった今そちらに連絡してくれと言われたんですよ!!」

『はぁ、わかりましたよ。それで、誰が暴れているんですか?』

「逢坂 ミコトです!!」

 

 がちゃん、つー、つー。

 ガチャ切りであった。

 

 公安局長はもう一度電話を掛ける。

 

『お掛けになった電話番号は、現在電波の届かない──』

「く、くそッ!!」

 

 仕方ないので、彼女はトリニティに電話を掛けた。

 

『はい、こちらトリニティ総合学園、正義実現委員会です』

「こちらヴァルキューレ警察学校の公安局です!!

 ゲヘナの生徒が当校に侵入して、大暴れをしているので対応をお願いしたい!!」

『なるほど、それは大変ですね。

 今すぐ応援を向かわせます』

 

 これには、公安局長はほっと胸を撫で下ろす。

 最近は同盟がどうのこうの言っていたが、所詮長い間いがみ合っていた両者である。

 今度こそ、戦力を出してくれそうだった。

 

『それで、どの生徒が暴れているのかわかりますか?』

「逢坂 ミコトです!!」

『……あー、えーと、失礼。少々お待ちを』

 

 そして十数秒後、電話の相手は戻ってきた。

 

『申し訳ありません。只今我々は先の作戦で制服が煤で汚れておりまして、クリーニングが終わるまで他校に出向くことが出来ません。悪しからず』

 

 かちゃん、つー、つー。

 そして一方的に電話を切られた。

 

「そ、そんな、馬鹿なッ、着ていく服がないだって!?」

「なんだ、トリニティの連中は来ねえのか。つまんねーな」

 

 公安局長が入り口に意識を向けると、欠伸をしているミコトがそこに居た。

 

「おら、待っててやるから、誰でも呼べよ」

「け、警備局の部隊は……」

「全員〆た」

 

 ミコトは端的に答えた。

 それはもう、全員。一人残らず。

 

「おめえだよな、俺を逮捕しろって言ったのは」

「こ、これには事情が!!」

「わーってるよ。圧力があんだろ?」

 

 こくこく、と公安局長は涙目で頷いた。

 別に彼女だってあんな命令をしたくてしたわけではないのだ。泣きたくもなるだろう。

 

「おいユエ、勝利宣言をすっぞ」

「わかったわ」

 

 ミコトの言葉に、廊下からスマホを構えて撮影を続けているユエが現れた。

 

「それじゃあ、始めっぞ」

 

 

 

 

 その日、その時間、キヴォトスの動画サイトやSNSで数百万もバズった動画が投稿された。

 

『いえーい、俺はゲヘナ学園の逢坂ミコトだ。

 俺を逮捕しろって圧力掛けたとか言う企業の連中、見てっか?』

 

 公安局長の肩に腕を回しながら、ミコトはカメラに向かってそう言った。

 

『今日から俺もてめーらと同じように“圧力”掛けっからよ。

 こいつとはダチになったんだ、そういや、俺を逮捕しろって、お前が命令したんだっけか?』

『そ、そんな事実はありません……なにかの、手違いです』

『まあ、そう言うこった』

 

 ぱんぱん、とミコトは公安局長の肩を叩いた。

 

『お前は俺の舎弟だ。次から俺とどこかの企業、どっちの“圧力”に従うんだ?』

『い、イヤだなぁ、警察は個人や企業の圧力になんて屈しませんよ』

『だとよ』

 

 公安局長の方を向いていたミコトが、もう一度カメラを見た。

 

『もし次に誰かからやりたくねーことをしろって言われたら、俺が“圧力”をかけてやるよ。

 おめえが別の圧力に従うならよ、俺がもう一回ここにカチこむ。良いよな?』

『すぅぅ──。よくはないっすね』

 

 公安局長は真っ青な顔で言った。

 

『そういや、お前面白い事言ってたよな。自分は言われたようにしただけだって』

『ひ、それは……』

『わかってるよ、ワリーのは連邦生徒会だろ? 俺を退学にさせるって言ってたもんな。

 でもよ、ふとーな逮捕しろって言う奴が連邦生徒会に居んなら、そりゃあ任命責任ってのあるんだよな、ユエ』

『そうなるわね』

 

 撮影してるユエが言った。

 

『んじゃ、これから連邦生徒会にカチこむぜ』

 

 これは勝利宣言。そして、宣戦布告。

 

『連邦生徒会長、俺に土下座しろ。てめぇの部下の不手際だろうが!! 今からそっちに行くからよ、首洗って待ってろや』

 

 ミコトがカメラに怒鳴り散らし、指を差した。

 

『それじゃあ、SRTとかっていう奴らのデリバリーを待ってるぜ』

 

 それで、動画は終わった。

 

 

 

「やべーよ、ミコトさん、サツどもを〆ちまった!!」

「これから連邦生徒会にカチコむんだってよ、うちらも行こうぜ!!」

「また祭りだぁ!」

 

「おい、なんで私らに居場所をくれたミコトさんが退学にされんだ?」

「連邦生徒会の奴ら、ふざけやがって!!」

「許せねぇ、うちらもカチコミに参加すっぞ!!」

 

「やっぱり連邦生徒会は私らに何もしてくれねえ!!

 それどころか、ミコトさんを逮捕しようとしやがったのか!!」

「なあ、ミコトさんに加勢しようぜ!!」

「ああッ、あいつらの横暴を許すなッ!!!」

「連邦生徒会長を土下座させろッ!!」

 

 極大の嵐が、キヴォトスに巻き起ころうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 





SRTと戦いたいから連邦生徒会長に喧嘩を売るヤベー主人公。
本当にそれ以外に何も考えてない模様。自分の影響力も、その結果も。

あと、感想で昔のシスターフッドに解釈違いを誰も起こしてないの笑いましたww
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。