ゲヘナ学園 園芸部の死神   作:やーなん

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連邦生徒会長

 

 

 

 ミコト達とFOX小隊の激突から翌日の早朝。

 

「病院のメシってマズいって聞いてたけど、普通に美味いな」

「栄養バランスも良いのもポイント高いわ」

 

 ミコトとユエは病院食を堪能していた。

 

「あいつら、暢気ね」

「本当にね……」

 

 クルミとニコはそんな二人に呆れていた。

 同じ部屋のベッドに放り込まれた四人。

 検査入院は終わり、いよいよ退院も秒読みと言ったところで。

 

「二人共、ここに居たのか」

 

 病室のドアを開けて、ユキノが入ってきた。

 

「あ、リーダー……」

「ユキノ……あの、ゴメンね」

 

 任務に失敗した二人が、負い目を抱いていると。

 

「誰だあいつ」

「お仲間みたいよ」

 

 暢気に朝食を食べてるミコトとユエは、同室なので遠巻きに見ていたのだが。

 

「叱責や敗戦の検討は後だ、それより、テレビを見ろ」

「テレビ?」

 

 ここに居る四人は一応病院ということで、スマホを自粛していた。自粛して電源を切ってなかったらあの部長が恐ろしい形相で何をしてくるかわからないからだ。

 だから、気づけなかったし、ユキノが同僚を見つけるのに時間が掛かってしまった。

 

 ユキノは病室に備え付けられたテレビのリモコンを手に取り、電源を入れた。

 

 丁度、ニュース番組が映った。

 

 

 

 

 

 同時刻、ゲヘナ学園生徒会室。

 

「すやぁ……」

 

 徹夜で作業していたマコトが、寝落ちしていた。

 高等部の生徒達もうつらうつらと寝る間も惜しんで書類仕事していた。

 

 ここしばらく、彼女達は激務の真っ最中だった。

 その原因はブラックマーケット跡地の再開発だったり、正式にゲヘナ学園の所領にする為に連邦生徒会と書簡を交わしたり、それ以外の数多の問題に直面していたからだ。

 ゲヘナ学園が新しい自治区を獲得するのは何十年振りで、慣れない作業に皆疲れ果てていた。

 

 つまり、大体ミコトの所為である。

 

 それでも一応マコトにもプライドがあるのか、中等部の後輩達は一応定時に帰らせていた。

 無論、高等部に上がったら容赦するつもりは無いのだが。

 

「マコト先輩!!」

 

 そうして早朝、イロハやチアキ達中等部の議員が生徒会室の扉を乱暴に開けて入ってきた。

 

「むにゃあ……ミコトの奴、次やらかしたら退学だぁ……」

「先輩、マコト先輩!! 大変です!!」

「……なんだ、どーせ、どこかでミコトが喧嘩したとかだろう」

「早く起きて、テレビを見てください!!」

 

 イロハやチアキがマコトの身体をガクガクと揺する。

 

「まったく、ミコトの奴、今度は誰と……──―」

 

 マコトは備品のテレビのリモコンのスイッチを入れた。

 丁度ニュースの中継がなされていた。

 

 

『皆さん、見てください!! 不良です、大量の不良が、D.U.の中心、連邦生徒会の総本山たるサンクトゥムタワー周辺を占拠しています!!』

 

 クロノス報道部の生徒が、真っ黒な地上をカメラで撮影する。

 

 そこには、黒い制服のスケバンや不良たちが何万と集結し、サンクトゥムタワーを包囲していた。

 彼女らは一様に、ドクロと大鎌の旗を掲げていた。

 

『今入った情報に寄りますと、首謀者はゲヘナ学園の生徒です!!

 首謀者の名前は逢坂 ミコト!! 彼女達は連邦生徒会長を出せと繰り返し要求し、警備隊と入り口で睨み合っています!!

 これは反乱です!! 連邦生徒会への、不良たちの反乱なのです!!』

 

 

 マコトの眠気は秒で吹き飛んだ。

 

 

『そして、あそこに居るのはゲヘナ学園の生徒達でしょうか?

 凄まじい数が集結しています!! これは万魔殿の総意なのでしょうか!?

 おっと、現場から中継が繋がっております』

 

 ヘリのリポーターから、画面が移り変わる。

 

『はい。こちら地上、サンクトゥムタワー前!!

 凄まじい怒声です、近づけません!! あちらのゲヘナ生に話を聞いてみましょう』

 

 現場にいるリポーターが、近くで声を挙げているゲヘナ生の集団に話しかけた。

 

『すみません、お話をよろしいでしょうか!!』

『わ、わぁ、どうしようムツキ!! テレビだわ!! 私映ってるの?』

『あはは、アルちゃん、はしゃぎ過ぎだよ!!』

『えーと、お二人はなぜこの騒ぎに参加を?』

『え、だって、ミコト様が連邦生徒会に退学させられそうなのよ!! 黙ってられないわ!!』

『アルちゃんはミコト先輩の大ファンだもんね』

『ここに居るみんな、同じ気持ちだわ!!』

 

 インタビューに答えた生徒以外からも、声が上がる。

 

『そうよそうよ、なんで悪い奴らと戦ってるミコトさんが退学にさせられるのよ!!』

『横暴よ横暴!! 私達は学校の校是に従って、抗議するわ!!』

『きっと連邦生徒会も誤解してるんです!!』

 

『連邦生徒会の刺客によって、同志ミコトは病院送りにされた!!

 報復せよ、革命だ!! 横暴な支配者を倒せ、ブルジョワを倒せ!!』

『そうだそうだ、休暇と労働の対価を寄越せ!!』

『革命だ、革命だ!!』

 

『えー、一部違う生徒達も混じっているようですが、以上現場からの中継でした』

 

 そして、中継からスタジオに戻った。

 

 

「……」

 

 テレビのコメンテーターが何を言っているのか、マコトの耳には入らなかった。

 

「……あれだけ騒がしいうちの校舎が、がらんとしてます」

「いやぁ、本当にミコトさんはスクープのネタに事欠かないですよね!!

 今週もネタを提供して貰わないと!! 今からでも私も行っていいですか?」

 

 イロハとチアキの対照的な態度に、マコトの身体が震え始めた。

 

「ま、マコトちゃん? 大丈夫?」

 

 当時一年だったサツキがマコトを気遣うが。

 

「……退学だ」

「え?」

「あのクソアホボケを退学にして、我々は万魔殿は一切関係無いと示せ!! これは我々の公式見解だ!!」

 

 血走った目でマコトが叫んだ。

 然もあらん、と言った表情をイロハはしていた。

 

「一応、申請はしますが……」

「とっととやれ!!」

「はいはい……」

 

 イロハは退学の申請書を取り出し、それにサインし対象者の名前を書いて、ファックスで送った。

 ただ、送り先は当然、絶賛包囲され中の連邦生徒会な訳だが。

 

 学校と自治区を治めているのは、各学校の生徒会である。

 停学や休学は各生徒会の判断でも可能であるが、退学となればそうはいかない。

 

 退学になった生徒は行政の恩恵を受けられなくなる。

 つまり、社会的に存在しない人間になるのだ。

 それほどまでの仕打ちなわけだから、それは全てのキヴォトスの生徒を管理する連邦生徒会の担当部署が判断を行う。

 そちらから承認の書類を貰い、一人の生徒が学生社会から消えるわけだ。

 

 そう、超法規的な権限でも無ければ、各学校の生徒会の判断だけで退学にすることは出来ない。

 

 そしてその連邦生徒会の担当部署と言うのが、防衛室である。

 防衛室は言わばキヴォトスという世界の国防を担う部署で、退学になるほど悪さをした生徒は当然キヴォトスの保安上の理由で排除されるのである。

 

 

 

 そして今現在、連邦生徒会の会議室では。

 

「防衛室長、これは懲戒ものですよ……」

 

 主席行政官、七神リンは同僚にそう告げた。

 その表情には色濃く疲労が刻まれている。

 

 会議室を占める各部署の行政官達は、彼女の言葉に異論は無いのか珍しく口を閉ざしている。

 

「分かっているとは思いますが、退学の判断は貴女個人の私的な事情によってなされるものではありません」

「べ、弁明させてください、主席行政官」

 

 当時の防衛室長は、額に脂汗を浮かばせながらそう言った。

 

「個人的で私的な事情と言うのは反論させて頂きます!!

 逢坂ミコトはブラックマーケットの一件の首謀者、彼女がキヴォトスの安全を乱しているのは今まさに証明されているではありませんか!!」

「ゲヘナ、トリニティ両学園の公式見解によりますと、あの作戦は学園として正規の作戦行動だったと回答がありますが?」

「それは事後承諾的な物に過ぎません!!

 各生徒会に利益があったから、結果的にそう主張しているだけです!!」

 

 彼女らはサンクトゥムタワーが包囲されているのに、そのように責任の所在を明らかにしようとしていた。

 それ自体は大事な事である。大事ではあるが、何とも政治家らしい鈍感さでもあった。

 

「私からも意見を述べてもよろしいでしょうか」

「どうぞ、カヤ次長」

「現防衛室長が企業に因果を含むように圧力を掛けられ、個人的で私的な判断を下したのは事実であります」

「ッ!? 不知火次長!?」

 

 防衛室長は部下の突然の叛逆に、目を剥いた。

 

「申し訳ありません、室長。

 今は貴女の首で早急に事態を治めるのが肝要かと」

「あ、あんなに目を掛けてあげたのに、この仕打ちですか!!」

「それに関しては感謝しておりますが、それとこれとは別です。

 なにせ我々は、防衛室なのですから」

 

 カヤ次長の細目は、失敗したお前が悪い、と語っていた。

 その時、行政官の一人が入室し、カヤの耳元で何かを囁いた。

 

「リン主席行政官。たった今ゲヘナ学園から逢坂ミコトの退学申請が届いたとのことです」

 

 防衛室長は、自分ではなくカヤにその連絡がされたことで、既に手が回されていると理解させられた。

 

「どうしますか、彼女を退学させて事態を収拾させますか?」

 

 カヤ次長の問いに、リン主席行政官は上座を見やった。

 

「会長、いかがいたしましょう」

 

 そこに座る連邦生徒会の長は、判断を下した。

 

 

 

「あ、今入った情報に寄りますと、ゲヘナ学園は逢坂ミコトを退学処分に──」

「危ない!!」

 

 ヘリコプターのパイロットが叫ぶがもう遅い。

 スティンガーミサイルの直撃を受け、ヘリは壊れたコマのように回転しながら墜落した。

 

 

「……うちらは本気だぜ」

 

 スティンガーミサイルの発射機を下ろし、不良達は言った。大勢の旗を持った仲間たちが、殺気立っていた。

 サンクトゥムタワー前には警備部隊が展開し、バリケードを張って徹底抗戦の構えだ。

 

「何度も言わせるな、ここから先は入れさせない!!」

「お前らがミコトさんヤッたって情報は入ってんだ。

 あの人の退学取り消さねえなら、中の奴らもお前ら全員ぶっとばしてやる」

「私らが姐御の仇取るんだよ!!」

「もう我慢できねえ、姐御に代わってあたしらが連邦生徒会長を土下座させてやろうぜ!!」

 

 不良たちが、おう、と黒いドクロの旗を掲げた。

 

「うちら“死神殺意頭蓋(デスサイズ)”の喧嘩、ミコトさんに捧げんぞ」

「このッ、大馬鹿どもが!!」

 

 一触即発の空気。

 今にも爆発しそうな、その時だった。

 

 

「おい、誰が誰にやられたって?」

 

 その時、海が割れるように生徒達が左右に引いて道ができる。

 その道をユエとユキノを伴って、ミコトが歩く。

 

「ミコトさん、無事だったんですね!!」

「姐御、よかった……」

「俺は最強なんだよ。ぶっ倒した奴らを病院に送ったら時間かかっちまった」

「さ、流石っす、姐御!!」

 

 今にも争おうとしていた不良たちが、ミコトの元に集まって無事を確かめた。

 

「あと、こいつは俺の喧嘩だ。お前らは手ぇ出すな」

「姐御!! でも……」

「今から連邦生徒会長と話付けてくる。何度も言わせんな」

「……うっす。必要になったら、いつでも呼んで下さい」

「ああ。頼りにしてる」

 

 ミコトは死地に来てくれたダチ達を抱きしめ、サンクトゥムタワーの正面に立った。

 

「お前らのヘッドに話あんだ。そこ退け」

「調子に乗るなよ、不良の分際で!!」

「待て、私はSRT特殊学園、FOX小隊所属の七度ユキノだ」

 

 ユキノが前に立って、警備隊に学生手帳を示した。

 それに警備隊は慄いた。

 

「連邦生徒会長が直接彼女を所望だ。道を開けて欲しい」

「了解しました……」

 

 バリケードを守っていた警備隊が左右に逸れる。

 

「会長がお呼びなのは逢坂ミコトだけだ。お前はここで待て」

「えー……まあしょうがないか」

 

 ユエは不満そうにしていたが、不承不承に頷いた。

 

「ほら、ミコト。連邦生徒会長に会いに行くんでしょう? 襟はちゃんとしなさい」

「おう」

 

 ユエはミコトの制服を整えると、彼女を送り出した。

 そしてすぐさまユキノがミコトの襟の裏から小型盗聴器を取り出し、捨てた。

 

「ちぇ」

「行くぞ、案内する」

 

 ユキノに先導され、ミコトはサンクトゥムタワーへと入っていく。

 

 

 中では行政官達が怯えながら、遠巻きにミコトを見ていた。

 

「なあ、連邦生徒会長ってどんな奴なんだ?」

「……不思議な方だ」

 

 道中、歩きながらミコトが尋ねると、ユキノはそう答えた。

 

「SRT設立もそうだが、メンバーの選定があまりにも早かった。まるで、あらかじめ決めていたかのように我々は声を掛けられた」

 

 そしてパズルがぴったりとハマるように、ユキノ達はFOX小隊として最高の相棒達と出会った。

 教材も設備も、装備も。最初からそうするつもりだったように、SRT特殊学園を瞬く間に運用可能にした。

 

「我らはかの御方に取り立てられた、その恩を返さなければならない」

「まあ、お前らは強かったよ。俺の方が強かったけどな」

 

 二人がエレベーターに乗る。

 扉が閉じると同時に、ユキノはミコトの胸倉を掴んだ。

 

「忘れるな、SRTは現在戦略を模索段階だ。来年以降の後輩達の為に経験と訓練を積み重ねている。

 次、我々と相対する時は今回のように行くと思うな」

「……知ってっか? 狐の鳴き声はワンワンって話だ」

 

 ミコトはユキノに額を突き付け、言った。

 

「あんた仲間思いだな。だが忘れてんじゃねえのか、お前は撃たれる側だ。()()()()()

「稲荷寿司の代金、六文銭は預けておく。お前が彼岸に渡る時に使うといい」

 

 二人がしばし、睨み合う。

 ちん、とエレベーターが目的地にたどり着いた。

 

 エレベーターのドアが開くと、何事もなかったように二人は外に出た。

 その階はまるまるひと階層連邦生徒会長の執務室だ。

 その扉の前に、ユキノは立った。

 そこには玄関にあるようなカメラ付きの通信機が設置されていた。

 

「会長、御命令通り、お連れしました」

『ありがとうございます、ユキノちゃん。

 下がって良いですよ、あとお話が終わるまで誰も近づけないでください』

「了解いたしました」

 

 ユキノが下がり、ミコトに入室を促した。

 

 ミコトが扉を開けて、執務室へ入った。

 第一印象は、こんなに広い必要があるのか、だった。

 

 材質も分からない青白い空間、まるで静謐で神聖な場所のようだった。

 

 ユキノがドアを閉じ、ミコトは広い室内を歩き出す。

 

 数十歩歩いて、ミコトは辿り着いた。

 この世界、キヴォトスの生徒達全ての長の前に。

 

「初めまして、あなたがミコトさんですね?」

 

 ミコトは、彼女から得体の知れなさを感じた。

 だがその理由を言葉にはできなかった。

 

「ああ」

「FOX小隊は私が知る限り最高の即時即応チームです。

 そんな彼女達を破った貴女に、興味が湧きました」

 

 執務机に座る連邦生徒会長は、穏やかな表情でそう言った。

 

「まずは、詫びの言葉が先なんじゃねえの?」

「ああ、そうでしたね。今回も私の監督不行き届きでしたね。申し訳ありません」

 

 彼女は、何の躊躇いもなく頭を下げた。

 

「……俺の動画見なかったのか? 土下座しろや」

 

 言葉は威圧的でも、どちらかというとミコトは相手の反応を伺うような、牽制の目的でそんな言葉を口にした。

 

「わかりました」

 

 彼女は椅子から立ち上がった。

 そして、僅かの逡巡も無く、ミコトの前で地面に頭を付けた。

 

「……もういい。あんたの誠意は分かった」

 

 嘘だった。罪悪感ではない。

 嫌悪感。ただただ気持ち悪かったのだ。

 この女を土下座させておくのは、どうしようもなく気味が悪いと感じたのだ。

 そう、まるで透き通ったような、透明なのだ。

 

「そうですか。担当者は然るべき処罰を与えますし、貴女の退学もこちらからゲヘナ学園に話を通しておきます」

 

 彼女が立ち上がると、ミコトと対面した形になる。

 思わず顔を背けたくなる、なんとなくの苦手意識がミコトの顔を逸らさせる。

 

「……なんで俺を呼んだんだ?」

「私があなたに会いたかったからです」

 

 連邦生徒会長は即答した。

 

「そいつはなんでだよ」

「言ったでしょう? ()()()だからですよ」

 

 ミコトは彼女が何を言いたいのか分からなかった。

 

「私も大概複雑な交差路を歩んできましたが、いよいよ迷い子になってしまったと痛感しました。

 貴女のような、生徒でありながら特異な存在は初めてです」

「……何が言いたいんだ?」

「お互いにとって、良い取引をしませんか?」

「取引だぁ?」

 

 ええ、と連邦生徒会長は頷いた。

 

「貴女は戦いを所望していると聞きました。

 私は貴女の満足できる戦場と、貴女に役に立てる情報を提供できます」

「それは、あんたの手駒に成れってことか?」

「まさか。これは対等な取引です」

 

 彼女は、淡々とそう答えた。

 

「予言は御存じですか? このキヴォトスの行く末を占うような、そんな予言が多くあります。

 ミコトさんはそう言ったオカルトは信じておられますか?」

「……まあ、実際に変なのを見たしな」

「ああ、彼らに会ったんですか。最初は驚きますよね」

 

 ふふふ、と連邦生徒会長は可笑しそうに笑った。

 

「SRTの創設も、それら予言の災厄に対抗する為です。

 ミコトさん、貴女はそれと戦いたいですか? それとも──」

 

 彼女の目が細まった。

 

「一市民として、我々に守られたいですか?」

「ふざけんな、舐めんじゃねえぞ」

「それが答えでよろしいですね?」

 

 連邦生徒会長はスマホを取り出した。

 

「これは私の直通の電話番号です。

 何かあれば連絡します」

「……あんたの言う予言が、実際に起こるって保証は?」

「では、私からも予言を一つ」

 

 連邦生徒会長はイタズラっぽく笑って、こう言った。

 

()()()()()()()()()()()()()()

「は? どこだ、そんな学校聞いたことないぜ」

「そろそろ生徒会長が代替わりしますが、その新会長はかなりやり手なんです。

 かの学校が台頭し、今年の暮れから来年にかけてキヴォトスの技術水準は大きく向上するでしょう」

 

 彼女は、見てきたように言う。

 

「ドローン技術が日進月歩し、戦場で見ない日は無くなるでしょう。防弾盾からバリアが出たりもするようになります。他にも戦闘で使用される技術は飛躍的な結果を遂げます。

 それに……あの学校はきっと、ミコトさんにとっても居心地がいい筈ですよ」

「わかった、その話が本当なら、あんたの話を考えてやってもいい」

 

 ミコトは彼女の電話番号を受け取ってすぐ、スマホで件の学校を検索した。

 ヒット。学校の概要やホームページが一番上に表示された。

 本当に、小さな学校だ。規模だけならゲヘナやトリニティの、足元にも及ばない。

 

「あと、最後にこれは私からのお願いになるのですが」

「なんだ? また予言か?」

「将来、連邦生徒会にある一人の大人が現れる筈です。出来れば、その人の助けになってあげてください」

 

 連邦生徒会は、もう一度頭を下げた。

 

「お願いします」

「……ああ、一応覚えておいてやるよ」

 

 ミコトは彼女に背を向けた。

 最後にドアを開け、彼女を振り返る。

 連邦生徒会長はまだ、ミコトに頭を下げ続けていた。

 

 

 

 

 

「お前ら、解散だ。連邦生徒会長は土下座して俺に詫び入れた。俺達の勝利だ!!」

 

 サンクトゥムタワーの外へと出て、不良たちにそう告げた。

 同時に、歓声が上がる。

 

 こうして、キヴォトスを揺るがしかけた大事件は終了した。

 

 のだが。

 

 

「ミコト、貴様どの面下げて戻ってきた……」

 

 ゲヘナ学園に生徒達が戻ると、鬼の形相のマコトが待ち受けていた。

 

「あ、マコトパイセン……」

「貴様は退学だ。それがゲヘナ学園の公式発表だ。二度とこの学校の敷居を跨ぐな」

「でもマコト先輩、退学の書類は承認できない、と連邦生徒会が」

「知るか!! 私が退学と言ったら退学なんだ!!」

 

 おずおずと事実を告げるイロハに、マコトは怒鳴り散らした。

 しかし、すぐにその表情は崩れる。

 

「う、ううッ、ううう、うわぁああん!!」

「ああ、泣いちゃった……」

「もう嫌だぁ、徹夜も、このバカの尻ぬぐいも、書類の山も!!」

「どうどう、書類はちゃんと処理しましょう」

 

 恥も外聞もなく大泣きし始めたマコトを、イロハや他の議員達があやし始めた。

 ミコトも、その周囲の生徒や不良たちも気まずそうにしていた。

 

「悪かったよ。しばらくは顔出さねえ、それでいいか?」

「すみませんミコト先輩。どうせ一週間もすればケロリとしてますんで」

 

 何気に失礼なことを言うイロハの言葉に背を押されるように、ミコトは校門から立ち去った。

 

 こうして世間的にはミコトは退学になった。

 少なくともそう認識されたし、ミコトもそう思っている。

 書類上では在籍していることになっているので、これにはミコトの退学に怒ったゲヘナ生や不良たちもどうすればいいのか分からなかったのである。

 

「ミコトさん、これからどうするんです?」

「まあ、やること無いんだよなぁ。次は誰と喧嘩すっか」

 

 とりあえず、学校というしがらみがなくなった、と思っているミコトはチームの面々とスラムで屯しながらそう言った。

 

「実はミコちゃんの退学撤回祝いに、情報部の毛玉から要注意生徒のリストを貰っておいたんすけど……」

「おい、なんでそれを言わねえんだよ」

「だって、結局退学? に成っちまったじゃないですか」

「まあ、そうだけどよ」

 

 そして、ミコトは仲間から要注意生徒のリストをぶんどった。

 

「へぇ、こいつらがまだ見ぬ強敵って奴か」

「ねえミコト、誰から挑む?」

 

 横からユエがそのリストを覗き込む。

 ミコトは派手な喧嘩にならなければ、或いは個人の喧嘩なら大丈夫だろ、と適当に思っていた。

 

「んじゃ、こいつで」

 

 ミコトは適当に指差した。

 

 

 そこに記された名前は──アビドス高校一年生 小鳥遊ホシノ。

 

 砂嵐によって荒廃したアビドスに、新たな嵐が到来しようとしていた。

 

 

 

 

 





連邦生徒会編はこれにて終幕。
次回から、一年生編最終部、アビドス編へと移行します。

でもどうしよう、見切り発車で書いた小説だから、二年生編なんてまるで内容を考えてないよぉ。
まあリオ会長とネルとはっちゃければ良いか!!(思考停止

ではまた、次回!!
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