ゲヘナ学園 園芸部の死神   作:やーなん

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希望の光

 

 

 

 アビドス砂漠、某所。

 

「これが、列車砲……」

 

 リオはその巨大な鉄の走駆に、圧倒されていた。

 格納庫に偽装されていた開発基地としか言いようのないその施設は、ほぼ完全に放棄されていた。

 

「動かせるのか?」

「わからないわ。どう見ても未完成だもの」

「なるほどな」

 

 アビドス生徒会一同も、その巨砲を見上げる。

 それを乗せる列車に、名前が刻まれていた。

 

「シェマタ……嫌な偶然ね」

「あー、シェマタってあれだろ、昔アビドスで最強だったっていう」

 

 ええ、とユエはミコトに頷いて見せた。

 

「私、こんなのを作る書類にサインしちゃってたの……?」

 

 実物を見ると、ユメも愕然としていた。

 

「まあ、ユメ先輩は話によると騙されたようなもんじゃないですか」

 

 一応ホシノも同情的で、フォローをしていた。

 書類一枚でこんな怪物のような兵器が産まれるなど、誰だって信じられないだろう。

 

「私は頓挫したはずの鉄道計画も、アビドスの歴史として記念に残したかっただけなのに……」

「二人共、私はユメ先輩を見てるんで」

「おう、任せた」

 

 格納庫から、ホシノはユメを連れ出す。

 

「どんなもんなんだ、リオ」

「現時点ではなんとも。けど、エンジニア部のマイスターを呼んで、必ず動かして見せるわ」

 

 とても一人では整備もできない大きさだった。

 リオは内部機関を開けて見てみるが、開発用の機材も引き上げられており本格的な道具が必要そうだった。

 

「どうにか、なりそうなのか?」

 

 ミコトにしては、不安そうな声。

 リオは、先日の会談を思い返した。

 

 

 

 学生たちが利用するカラオケの一室。

 ミレニアム自治区にあるその店で、無作為に選んだ部屋に三人は移動していた。

 

「超高温の、プラズマ兵器……」

「ああ、俺が奴の軍事基地で見たのはそれだった」

 

 リオは絶句していた。

 ミコトも作戦に参加した一人として、そのカタログスペックぐらいは聞いていた。

 

「とんでもない距離までデカい爆弾を撃てるなんて話だったが、実物はもっとヤバいものだった。

 多分、それと同じモノだと思う」

「それを手に入れて、どうするつもり?」

「決まってんだろ」

 

 ミコトは逡巡なく、答えた。

 

「そいつで、砂嵐が出たら吹っ飛ばすんだよ」

 

 その発想に、リオは息を呑んだ。

 

「不可能よ」

 

 そして、即座に返した。

 

「無理なのか?」

「規模にもよるかもしれないけど、川の中に石を投じるようなものよ。

 プラズマは瞬間的な物に過ぎない。砂嵐に対抗なんて、現実的とは言えない」

「なんだ、期待外れかよ」

 

 はあ、とミコトは溜め息を吐いた。

 

「……いえ、そうでもないかもしれない」

「なに?」

「超高温の熱で上昇気流を発生させ、砂嵐を逸らすことは出来るかもしれない」

 

 論議の余地があるとして、リオは一旦常識を置いてそう言った。

 

「それこそ荒唐無稽じゃない」

 

 科学に疎いユエでもそう断じた。

 

「そうね、とにかく実物を見ないことには」

「わかった」

 

 ミコトは立ち上がって、そう言った。

 

「マコトパイセンを騙すようで気分ワリィが、どこにあるのか特定できないか聞いてみる」

「……本当に良いのね? ゲヘナ学園を裏切ることになるのよ」

「ダメだったらダメだったらで、黙ってりゃいいんだよ。そん時はぶっ壊すだけだしな。あと、このこと内緒な?」

 

 言えるわけないじゃない、とリオは答えるしかなかった。

 

 

 

「スゴイ!! 大艦巨砲主義の塊のようなロマンを体現している!!」

「ああ、これを現実に創ろうと思えるその発想が凄まじいな!!」

「これを動かせないなんてもったいない!! 必ず動かしてみせます、次期会長!!」

 

 エンジニア部のマイスター達は、列車砲に大興奮していた。

 

「言うまでもないことだと思うけど、この兵器の情報や設計を漏らした場合、退学の上にキヴォトスを退去してもらわなければならないわ」

「はいはいわかりました。さあ皆の衆、こいつを動かすぞ!!」

「了解、部長!!」

 

 リオの言葉など口うるさい母親の注意程度に受け止め、マイスター達は飛びつくように嬉々として作業に取り掛かる。

 

「これを設計した人間が、ゲヘナ学園の生徒だなんて信じられません!!」

「絶対サイエンス系の学校でも天下取れてたよ」

「どういう発想したらこんな内部機関を発明できるんだろう!!」

「改造、改造しよう!! 自爆装置も付ける!!」

「それ賛成!!」

「お願いだから今は余計なことしないで」

 

 リオは自分も内部機関を検分しつつ、テンションの高いマイスター達にそう言った。

 

「……どうにかしてくれそうだな」

「そうね」

 

 とりあえず二人は様子を見ることにした。

 

 そして、一晩明けた。

 

「ぐがー」

「すぴー」

「むにゃむにゃ」

「すーすー」

 

 生徒会の四人は一枚の毛布に包まって寝ていた。

 抱き心地が良いのか、ミコトとホシノはユメに抱き着いていたが。

 

「四人とも、起きて」

 

 リオの声に、四人は瞼を起こす。

 そして、彼女は言った。

 

「なんとかなるかもしれないわ」

 

 

 

「シミュレーションによると、仮想敵を砂嵐とした場合、単純な砲撃では水面に石を投げるのと同じ結果になりました」

 

 エンジニア部の部長がそう言った。

 いくら常識外れの破壊兵器でも、災害には意味が無い、と。

 

「ただ、内部機関には常識では考えられない、異常な装置が一部使用されていました。

 それを取り外し、検証してみた所、プラズマ投射装置と連動して数分ほど恒常的なプラズマ弾頭を発射できる可能性があります」

「あり得ないわね」

「なにがどうあり得ないんだ?」

「熱力学の法則に反しているということよ」

 

 リオは端的に答えた。

 

「つまり、どういうことなの?」

 

 全く科学に疎い四人だったが、ユメが代表してそう言った。

 

「エアコンを付けて部屋を暖めても、電源を切れば寒くなるでしょう?

 これは熱エネルギーが周囲に分散してしまうことが原因なのだけど」

「これは数分ほどではありますが、それを防ぐことが出来る可能性があると言うことです。

 つまり、発射後瞬間的に燃え尽きるはずの太陽が、数分維持できるかもしれないということです」

 

 リオの言葉を引き継いで、マイスター達がそう答えた。

 

「これはエネルギー革命を起こせますよ!!

 早く帰ってリバースエンジニアリング部と検討したいなぁ!!」

「だから、これは最高機密だといっているでしょう」

 

 心底楽しそうにウキウキしているマイスター達を、リオは呆れたように諫めた。

 

「つまりよぉ、砂嵐をぶっ飛ばせるってことでいいのか?」

「実際に撃ってみないことにはわかりませんが、砂嵐を押し返したり逸らしたり、少なくとも勢力をかなり減退することが出来るのは確実でしょう」

 

 彼女達の部長は、そう断言した。

 

「気象条件などのデータから、砂嵐の発生をその地域までほぼ100%予測可能です!!」

「雷に川の氾濫……そして砂嵐。人類はまた一つ、災害を克服できるかもしれません!! その歴史的瞬間に立ち会えるとは、感無量です!!」

「砂嵐は磁気を帯びる。電磁波発生装置を組み合わせればより効果的かもしれませんよ!!」

「理論的には台風にも応用できる可能性が高い……それが成された時、雷帝は、雷神と呼ぶしかなくなるでしょう」

 

 マイスター達は次々とアイディアを出していく。

 彼女達はどこまでも純粋に、科学の発展に喜んでいた。

 

「本当に、砂嵐をどうにかできるの?」

 

 その現実味の無い事実に、ユメが呆然と呟いた。

 

「うそ、嘘じゃ、ないんだよね、ほんとう、なんだよね……!!」

 

 その両目から、涙が流れる。

 幼い頃からアビドスに住んでいる彼女には、それこそ夢にまで見た出来事だろう。

 

「よかった、よかったよぉ」

「ユメ先輩……」

 

 ホシノも入学当初の校舎が砂嵐によって埋もれ、今の分校舎へと来た経緯を持っている。

 校舎と言う大型の建物が、あっさりと砂に沈むという恐怖と無力感は彼女も知っているのだ。

 

「お前ら!! これで、ぶっ潰してやろうぜ!!」

 

 希望が、そこにはあった。

 

 

 

「やはり、そういうことだったか」

 

 だが、その時格納庫の扉が開いた。

 

 羽沼マコト、そして彼女の率いる万魔殿の軍勢がそこに居た。

 

「その兵器が現実的に運用できる。その事実を見過ごすわけにはいかない」

「マコトパイセン……もう来ちまったのか」

「ああ、お前はこの場所を特定した我々に場所を聞いた時いち早く、すぐに確認に向かう、と言ったな」

 

 マコトは鼻を鳴らした。

 

「私が知るお前なら、ぶっ壊しに行く、と言ったはずだ。

 貴様がこのマコト様を出し抜けると思ったか、間抜けめ」

 

 そして彼女は、ミレニアムの生徒達を見やる。

 

「どことも知らぬ学校と手まで組みおって。その猿山に情でも湧いたのか? どこまでも貴様らしいな」

「マコトパイセン、騙して悪いとは思ってたけどよ、こいつは──」

「そこを動くなよミコト。外は風紀委員会が包囲している。

 この建物に、いつでも榴弾の雨を降らせられるのだ」

 

 マコトは冷徹な瞳を、ミコトに向けた。

 

「お前が大好きな喧嘩で我々に勝利したいのならすればいい。

 ただし、そのデカブツだけは破壊する。何が有っても消し去る。風紀委員にも、我々のことは気にするなと言ってある」

「やべぇ、今日のマコトパイセンはあの時みたいにガチだ……」

 

 ミコトはかつて雷帝に挑んだ時の、冷徹な策略家として本気で彼女を潰しにかかったマコトを思い返した。

 当時マコトは、ミコトを捨て駒にし、廃電車で爆弾ごと特攻させた。天才的な戦略家だった雷帝を倒すには、そこまでしないといけなかったのだ。

 

「そこのお前もだ。小鳥遊ホシノ、暁のホルス」

 

 隙を伺っていたホシノも、あっさりと見咎められた。

 

「お、お願いです、この列車砲を壊さないでください!!

 あれはアビドスの希望になるかもしれないんです!!」

「それはできない」

 

 ユメの訴えを、マコトは拒否した。

 

「その兵器は禍根を産むだろう。小さな学校には過ぎたるものだ」

「私達は悪いことに使ったりしません!!」

「そうだな、お前たちは人に向けて使わないだろう。

 だが次代は? その次の世代は? 十年後のアビドス生徒会に、野心が産まれないという保証は?

 その兵器は中規模の学校と自治区を丸ごと火の海にできるんだぞ?」

 

 そうなってからでは遅い、とマコトは言う。

 

「こ、この子には罪はありません!!

 この子はただ作られただけです!!」

「そ、そうだ、科学の発展が掛かってるんだ、この子に犠牲に成れって言うのか!!」

 

 マイスター達もすっかり列車砲に情が移り、そんなことを言い出した。

 

「ああ、兵器に罪が無いのは当然だ。

 だが、それを使うヒトには罪がある。

 罪の無い人間など、うちのイブキくらいなものだ」

 

 どんなに説得されても、マコトはまるで取り合わない。

 

「そう、この兵器の存在は、ゲヘナの罪になるのだ。

 それだけは許せん。故に消し去る。それは決定事項だ」

 

 そう言って、マコトは部下たちに目配せした。

 

「もうすぐ爆薬の準備が完了します」

「そうか。お前達、一緒に爆破されたくなければ、早くここから出ていけ」

 

 マコトの、最後通告。

 

「やれやれ、交渉の余地は無いようだね」

 

 先輩達と一緒に来ていたウタハが言った。

 

「ミコト会長」

「なんだ、ウタハ」

「榴弾くらいでは、いくら直撃してもこの子はビクともしない。我々のことは気にするな」

「ッ!!」

 

 次の瞬間、ミコトは銃を取った。

 

「させるな!!」

 

 マコトの号令が飛ぶ。

 彼女の連れてきた兵隊が、一斉に銃を構える。

 

「させないよ!!」

 

 だが、その集団にホシノが特攻した。

 隊列が乱れる。

 

「悪いな、マコトパイセン!!」

 

 そこに、ミコトが飛び掛かる。

 そのまま二人は兵隊たちを薙ぎ払い、外へと飛び出して行った。

 ユエもその後に続いて弾薬と盾を背負い向かった。

 

「我々も戦うぞ!!」

「科学の未来を守れ!!」

 

 マイスター達も、徹底抗戦の構えだ。

 

「まさかゲヘナとこんなにも直接的に事を構えるなんて……」

 

 列車砲の内部に避難したリオが溜め息を吐いた。

 外ではドカンドカンと爆音が鳴り、銃声が響く。

 さらに攻撃を加え続ければ、榴弾が炸裂して格納庫が揺れ、壁や天井に穴が開く。

 

 だがそれも、すぐに沈黙した。

 

 

「…………やはり、こうなったか。ミコトが関わるといつもそうだ」

 

 忌々しげに、マコトはそう言った。

 壊れた格納庫の壁から、ミコトとホシノが現れた。

 外に居た二百人の風紀委員は、全員のびていた。

 

「マコトパイセン、あんたの気持ちは分かるよ。

 俺も生徒会長なんて、大層な役職をやってみてあんたの責任って奴がよくわかる」

「なにを、今更!!」

「でも俺にも、うちの連中を守る責任ってのがあるんだ。この場は引いてくれ」

「ならん!!」

 

 マコトは、ミコトに怒鳴り返した。

 

「ゲヘナ学園の総力を結集してでも、この兵器は存在を許さん」

「そうか、残念だ」

 

 本当に、本当に悲しそうに、ミコトはマコトに銃を向けた。

 

 その時、その時であった。

 ミコトのスマホに、着信があった。

 

「あーはいはい、もしもし」

 

 こんな修羅場の最中に、ミコトは暢気に電話に出た。

 

「マコトパイセン、あんたにだ」

「なに?」

 

 マコトは、近づいてきたミコトからスマホを受けとって、耳に当てた。

 

「き、貴様は、連邦生徒会長!?」

 

 そこから聞こえた声は、まさしく全ての生徒会長の長の声だった。

 

「マコト議長、次期ミレニアムサイエンススクール生徒会長の調月リオです」

 

 マコトが混乱しているのに乗じて、リオが名乗り出る。

 

「これだけの兵器です、運用方法に厳重な管理とプロセスが必要であるとして、事前に連邦生徒会に報告をしておきました」

 

 マコトは目が白黒している。

 

「なんだ、そうだったのかよ」

「それでなぜ、貴女のスマホに電話がかかってくるのかは謎だけれど」

「まあ、ちょっとした顔見知りなんだよ」

「どういう人脈なのよ……」

 

 各学校の生徒会長なら、連邦生徒会長に会うのは可能だろうがミコトはまだ着任してひと月も経っていないので、リオも理解不能な人脈だった。

 とにかく、リオは先手を打っていたのである。

 

「……いいだろう、貴様がそこまで譲歩すると言うのなら」

 

 マコトはスマホの通話を切り、ミコトに投げ返した。

 

「奴は今後、あの女の発明品に関する取扱いの全権をゲヘナ学園に任せると約束した。

 そう、どんな自治区であろうと、学校内であろうと。破壊する前提ではあるが」

「とんでもない権限ね、幾らでも悪用できそうだわ」

「無論、事前に連邦生徒会に報告するのが前提だそうだがな。その辺りは今後、調停室を通じ正式に協議の必要があるだろう」

 

 少なくとも、アビドスの件はそれで手打ちになった、とマコトは言った。

 

「元々奴も、あの女を警戒していたと聞いていたが、このような手を打ってくるとは。

 お前はどんな切り札を隠し持っているかわからんな」

「すまねえな、ホントに悪かったよ、マコトパイセン」

「知るか。そこに在る鉄くずはゲヘナとは何の関係も無い。これが万魔殿の公式見解だ」

 

 引き上げるぞ、とマコトは部下たちに命じた。

 ミコトとホシノにボコボコにされた彼女達は、のろのろと立ち上がって撤退を開始した。

 

「我が校の校是は自由と混沌。忘れていないな? ミコト」

「……うっす」

「では勝手にしろ。全く、無駄足だった」

 

 マコト達は去った。

 

「な、なんとかなったね!!」

「ユメ先輩は突っ立ってただけじゃないですか」

「ねえねえ、皆で記念撮影しよう!!」

「浮かれ過ぎですよ」

 

 と言いつつ、ホシノも顔をほころばせていた。

 

「万魔殿と風紀委員会の撤退を確認したわ。

 あら、記念撮影? いいじゃない。せっかくだし」

 

 そして今になって格納庫に戻ってきたユエも、乗り気だった。

 

「じゃあ、記念撮影すっか!!」

 

 ミコトが音頭を取ると、ミレニアムの生徒達も良いねと言い始めた。

 それで、記念撮影が始まったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 二年後、砂祭りの会場。

 

 先生はオアシス横の温泉宿の二階にやってきていた。

 その部屋はミレニアムの生徒が作業をしていたらしく、数多の機材が置かれていた。

 

『皆さん、間もなくメインイベント、“シェマタの鉄拳”の実演を行います。お客様におかれましては、屋内への避難をお願いします』

 

 アヤネの声で、アナウンスがされる。

 露店をしている生徒はカバーを掛けたり、アビドス生がお客さんを屋内施設に誘導している姿を先生は二階から見下ろしていた。

 

「“ついに始まるんだね”」

「うん。ここまで来るのに、二年も掛かったんだ」

 

 感慨深そうに、ホシノは先生に頷いて見せた。

 

「こちらミレニアム、リバースエンジニアリング部。

 ハイランダーのCCCへ。応答お願いします」

『……はい、こちらハイランダー鉄道学園中央コントロールセンター(CCC)

 列車砲シェマタの起動キーの差し込み完了』

「了解、ミレニアムの起動キー、差し込み完了」

『こちらアビドス生徒会。起動キーの差し込み完了しました!!』

 

 ノノミの声が、彼女らの無線の最後になった。

 

「ハイランダー、ミレニアム、そしてアビドスの三つの物理キーを差し込まないと起動しない仕組みになっています。

 それ以外の方法で動かそうとすると、列車砲内部に仕込まれた爆弾が起爆するようになっているんですよ。

 仮に予期せぬ起動が確認された場合、連邦生徒会の方で強制停止できるシステムも構築しています」

 

 ミレニアムの生徒が、先生に解説した。

 決して悪用されないように、厳重な管理と運用が徹底されていた。

 

「疑似砂嵐発生装置、スタンバイ完了。実行します」

 

 そして、今回の模範演習の標的は、実際に砂嵐だ。

 

「“うう、トラウマが……”」

「あれでも実際の砂嵐の規模からすれば微々たるものですよ」

 

 十分後、二階のガラス扉の向こうから見える景色から、科学の力で再現した砂嵐が立ち上るのが見えた。

 以前砂嵐に見舞われ、遭難してしまった先生の心の傷が痛む。

 

「エネルギー充填完了、弾道シミュレーション完了、誤差5メートル以内です!!」

「了解。弾種は“シェマタの鉄拳”──恒常型プラズマ弾頭弾、装填完了」

「全行程オールグリーン。列車砲シェマタ、発射!!」

「発射!!」

 

 どごーん、とどこからか青白く輝く弾頭が飛来する。

 ホシノは祈った。成功を。希望の成就を。

 

「…………3,2,1,弾着、今!!」

 

 爆音が、鳴り響く。先生はあらかじめ渡されたサングラスを掛けた。ホシノも同様だ。

 地響きが、粉塵が、津波のようにオアシスとその周辺の建物を呑み込み、過ぎ去っていった。

 

「プラズマ弾頭弾、臨界状態を維持!! およそ3分42秒後に消滅します!!」

「弾頭を中心に超高温と急激な上昇気流の発生を確認。全行程、順調です」

 

 先生の目に、砂嵐の中で輝く何かが砂を押し上げているのを見えた。

 

「砂嵐の勢力、およそ発生時の40%の減退を確認!!

 およそ32秒後に消滅すると見込まれます!!」

「所詮実験用の再現装置だ。これくらい簡単に退けて貰わなければ困る」

 

 と、機材で観測を行っているミレニアムの生徒達は言った。

 

 そして彼女達の言う通り、三十秒で砂嵐は消滅した。

 未だ燃え尽きぬ、太陽の如き光を残して。

 

 先生の耳にも、歓声の声が聞こえた。

 

「やった、やったよ、ユメ先輩……」

 

 ホシノの瞳から涙が零れ落ちる。

 それは先輩達から引き継いだミレニアムの生徒も同じだった。

 

「本物の砂嵐はこんなものではありません。自然の暴威は、常に我々の想像を超えている。

 でも、それでも!! 我々はそれに対抗する足掛かりを得たのです!!」

 

 感涙を流すこのミレニアムの生徒達の部長がそう言った。

 

 放送ではアヤネが興奮した声で、演習の成功を知らせている。

 砂埃が収まった外にお客さん達が興奮した様子で出て行き、未だ燃える輝きをその眼で見ようと躍起になっている。

 すぐに肉眼での視認は危険だと、訴えるアナウンスが流れた。

 

「“よかったね、みんな。本当に、よかった……”」

 

 先生はホシノにそう言って、ハンカチを差し出した。

 

 

 

 

 

 

 




プラズマ兵器で砂嵐をかき消せるのか、AIチャットでしばらく議論して出した内容なので、キヴォトスの超科学で何とかなったとふわっと思っておいてください。作者は科学がさっぱりですので。あしからず。

アビドス編も残りわずか。最後に片付けるのは勿論、借金です。

一年生編も大詰め。ではまた、次回!!
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