ゲヘナ学園 園芸部の死神   作:やーなん

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本日二回目の投稿です!!

先ほど最新情報を確認したところ、なんというかその、被っちゃったなぁって思いました。
まさかこんなドンピシャなタイミングだとは。しかもハイランダーとは。

というわけで、アオバの名前は→アオマに変更します。
元々出番はあんまりない予定でしたけど、一応ね。


ブルアカVol1「開催委員会編」その3

 

 

 

 15:再起と破壊

 

 

 怪我が治った便利屋四人は自分たちの事務所で今後について話し合っていた。

 彼女らはゲヘナ学園に戻ることも視野に入れるが、風紀委員会はカヨコは恐れるに足らずと豪語する。

 恐ろしいのは、ヒナだけである、と。

 

 カヨコが彼女らの話を持ち出したのは、アビドスの面々にそれぐらいの脅威度と考えているからだと語った。

 

 結局のところ、アルは学校に戻るつもりは無いと断言した。

 その後四人は昼食に向かうことになった。

 

 アル達四人は彼女の強い希望で、柴関ラーメンへとやってきた。

 

「ここで再起を図るわよ!!」

 

 とはアルの談。

 

「それより、アビドスへの攻撃は終了で良いんだよね?」

 

 カヨコが確認するように尋ねた。

 

「……そうよ。だから成功報酬も受け取ってきたじゃない」

「そうじゃないと、ここに食べに来れないじゃん。さっきまですっからかんだったし」

「一応確認だよ」

 

 カヨコは二人にそう言った。

 

「でも、このお金はアビドスの子たちに渡すわ……」

「え、マジ?」

 

 アルの決断に、ムツキは目を剥いて驚いた。

 

「あの御方ならそうする。法律や規範だけでなく、お金さえもあの御方は執着しなかった……真のアウトローになるには、自分達で自分たちの失態を拭うしかないわ」

「そもそも、彼女達の事情は知ってるけど、依頼主の方は全然わからないからね。お金を渡すにしても、両方の言い分を聞くべきだと思うけど」

「そ、それもそうね……!!」

 

 カヨコはアルの行動に何も言わず、指針を示す。

 

「あ、アル様、せっかくですし大将に聞いてみたらどうでしょう……」

 

 ハルカがおずおずと意見を述べる。

 

「それもそうね、ちょっと早めに来たから、今の時間は空いているし。話を聞いてみましょう」

 

 そして、四人は柴大将からいろいろな話を聞くことになった。

 

「れ、列車砲の解体だって!? それを請け負うのが寄りにもよって、あのカイザー!?」

 

 商工会の住民向けの説明会に参加したという柴大将が齎した情報は、カヨコを動揺させるには十分だった。

 

「マズい、社長!! 奴らが来る!!」

「え? どういうこと?」

 

 カヨコは言った。

 

「ゲヘナの風紀委員会が、アビドスに大挙してやってくるって言ってるのさ!!」

 

 

 

 16:立ち込める暗雲

 

 

 商工会での協議の翌日、アビドス高校の生徒会室は通夜のように静まり返っていた。

 先生がなんとか元気づけようとしたが、焼け石に水だった。

 

 今後についての対策を話し合うも、その日は有効な手立てもなく終わってしまった。

 

 そして、その下校時刻。ホシノは独り市街地のオフィス街にある、どこかのビルへと吸い込まれるように入って行った。

 

 その先で待ち受けていたのは、黒いビジネススーツの異形の大人。

 ホシノを呼び出したのは彼だった。

 

 彼はホシノに契約書を差し出し、選択を迫るのであった。

 

 

 

 16:風紀委員会、登場!!

 

 

 いち早く帰ってしまったホシノ以外の面々は、鉛のように体が動かなかった。

 住人達と学生との決定的な溝を感じた彼女達は、失意の底にいた。

 

 しかし、状況は常に変わるモノであった。

 

「“あれ、このメールは……”」

 

 それはシャーレの業務用のメールアドレスだった。日付は今朝である、色々あって気づくのが遅れてしまった。

 そこには、『風紀委員会 天雨アコ』という件名で内容が綴られていた。

 

 要約すれば、アビドスにいらっしゃるそうなので、ついでにそちらに伺います、とのことだった。

 

 そして或いは、それを読むのを見計らったように、アヤネの使う機器に反応があった。

 

「皆さん、謎の武装集団が市街地に大挙しています!!」

 

 これには皆も驚き、大慌てで現場に向かうことになった。

 

 

 

 そして現地では、便利屋の四人が何者かに榴弾攻撃を受けていた。

 容赦のない爆撃に、倒れ伏す四人。

 

 風紀委員会の擲弾兵が双眼鏡で効果を確認し、上官に便利屋の無力化を告げた。

 

「なんか目の前に指名手配の奴らが現れたから攻撃したけどさ、目的地はずっと先なんでしょ?」

「ええ、イオリ。一応そうとは聞いています」

「……なのに車両が用意されてないのはなんで?」

「歩いて行けと言うことなのでは」

「だとしたら、冗談キツイよ、アコちゃん……」

 

 そんな会話を繰り広げるイオリとチナツを前に、ホシノを除くアビドス生徒会の面々がやってきた。

 

「だ、誰よ、あんた達!!」

「あそこに便利屋の皆さんが倒れてます!! 彼女達と争ったんでしょうか……」

 

 セリカが市街地で展開する風紀委員会を見て、動揺する。

 ノノミも状況が呑み込めないようだった、

 

 前線指揮官である二人と彼女らには距離があるので、イオリ達は冷静に状況を分析する。

 

「新手が増えましたよ、イオリ。どうしますか?」

「えーと、アレ、ここの自治区の生徒……アビドスだっけ?

 そんなの当然、公務の執行を妨害する輩は全員敵だ」

 

 彼女達は正式な任務でここに来ている。その説明が先ではと後輩のチナツが進言するが、先輩のイオリは必要無いと断じた。

 

「連邦生徒会には話は通ってるはずだ。何も問題ない。それにこれから歩くのに、無駄な労力を掛けてられるか」

「……」

 

 チナツはその方が労力がかかるんじゃ、と言いたげだったが立場は相手が上なので何も言わなかった。

 

『あれは、ゲヘナ学園の風紀委員会です!!』

「な、何? 風紀委員会が便利屋を捕まえに来たってこと!?」

『まだわかりません。……しかし私達に友好的とは判断しかねます』

 

 アヤネが敵勢力を断定すると、セリカが困惑した声を挙げる。

 

「確かに、でも民間人に退避勧告もなしで砲撃をした。生徒会としては見過ごすことは出来ない」

「そんな……」

 

 シロコの言葉に、ゲヘナ学園の正規部隊がそんな蛮行をするとは信じられずに言葉を失うノノミ。

 

 憤るセリカに、しかしノノミは対応を間違えれば政治的紛争になると不安げに諫めた。

 なのでホシノに連絡を取ろうとするが、アヤネはまだ連絡が取れないと言った。

 

「わかりました、私が副生徒会長として対応しますね」

「お願い、ノノミ先輩!!」

「これ以上好き勝手はさせない」

 

 先生も一応、便利屋を引き渡せば帰るんじゃないか、と提案するも、シロコは他に選択肢はない、と言った。

 

 アヤネも、こうして相手が戦術的行動をした以上、もう紛争は生じていると語る。

 便利屋がアビドス自治区で問題を起こしたのは事実だが、それでアビドス高校に許可もとらずこんな暴挙を許して良いわけではない、と断じたのだ。

 

 そうして、彼女達は戦闘を行う構えを取った。

 

 向こうが戦闘をする構えを取ったのを見て、風紀委員会も攻撃の意志を固める。

 しかし先生の存在を民間人と見たチナツが彼の姿を確認すると、動揺するもイオリに停戦を進言する。

 だがチナツの言葉も空しく、戦端が開かれてしまうのだった。

 

 

 バトルパートが終わると、イオリが動揺を示した。

 

 数十人の風紀委員会の部隊が、たった四人に蹴散らされたのだ。

 イオリとチナツの二人との接近に成功するアビドス生徒会と先生。

 

 チナツと面識のある先生が、彼女に声を掛けた。

 彼の指揮能力を知るチナツがこの結果に後悔していると、アヤネが自らの所属を名乗り相手の誰何を行った。

 

「それは……」

『それは、私から答えさせていただきます』

 

 その時、中継用のドローンが前に出て、一人の立体映像を映し出す。

 彼女は堂々と自らの所属と立場、名前を名乗った。

 

『こんにちは、アビドスの皆様。私はゲヘナ学園所属の行政官、アコと申します』

 

 彼女はこの状況について、説明すると告げた。

 

 そうして状況が進む裏で、憎悪に塗れて動く小さな影に誰も気づかず。

 

 

 

 

 

 二章 ホルスの戴冠、そして伝説は舞い戻る

 

 あらすじ:

 失意と窮地に陥ったアビドス生徒会。

 アビドス高校を揺るがす陰謀の数々。

 その戦いの行方とは……。

 

 

 01:列車砲の真実

 

 

 睨み合う両陣営。

 その後ろでこそこそと動き回るハルカと目が合ってしまった先生は、とりあえず見ないことにした。

 

 アヤネは行政官と名乗ったアコに、風紀委員会の事実上のナンバー2の登場に驚くも、彼女はただの委員長の秘書みたいなものだと謙遜した。

 

 しかしシロコが彼女の登場にまだ後ろに控えている風紀委員の部隊も含めて、目の前の二人が緊張していることを指摘する。

 

『素晴らしい洞察力です。たしか、砂狼シロコさんでしたか?

 アビドス高校の生徒会は五名と聞いていますが、あのホシノさんはいらっしゃらないので?』

『今はおりません。所用で席を外しております』

「行政官、私が副生徒会長としてお話を伺いますよ」

『なるほど、貴女が十六夜ノノミさんですよね?

 小鳥遊にはかつての借りを返したかったのですが、居ないなら残念です』

「借りですか?」

『ああいえ、お気になさらず。個人的な話ですので』

 

 アコは取り繕うように首を振った。

 そしてノノミが銃を突き付けられては話が出来ない、と述べると、アコは風紀委員達に銃を下ろすように命じた。

 

 しっかりと統率が取れていることに驚くアビドスの面々だったが、アコはすぐに先ほどまでの戦闘行為の件を謝罪した。

 

「なッ、私は命令通りにやったんだけど、アコちゃん!?」

『避難勧告もなしに、市街地で擲弾の雨を振らせろと? この私が命令したのですか?

 それに今は便利屋なんて小物は後回しにしてください。任務の希求性を理解していないのですか?』

「い、いや、状況を鑑みて──」

 

 イオリはぶつぶつと反論をしていたが、アコには受け入れられなかった。

 

『アビドスの自治区内なのですから、その辺りを考慮するのが当然でしょう?』

「ううう……」

『失礼しました。我々ゲヘナの風紀委員会はあくまで、突発的な指名手配者への攻撃をしてしまっただけのようです』

 

 とりあえずやむを得なかった、と長々と語ったアコは最後にそう締めくくった。

 

『我々は公務でやってきました。ご理解いただけますか?』

『先ほども言いましたが、そうはいきません!!

 他の学校が他の自治区で勝手に戦闘行為をするなんて、自治権の観点からして、明確な違反です!!

 ついでにあそこにいる便利屋の処遇も我々が決めます!!』

 

 決断的にアヤネはそう答えた。

 

「ありがとう、アヤネちゃん。私も生徒会として同じ意見です。

 風紀委員会へ正式に抗議し、即座の撤退を要請します」

 

 ノノミもそれを引き継ぎ、そう言った。

 

『あら、我々が自治権を侵害していると、そう仰るのですね?』

「その通りじゃない!!」

『なるほど。これほどの兵力に囲まれながら少しも怯まないとは。

 これだけ自信に満ちているのは、やはり信頼できる大人の方が居るからでしょうか? ……ねえ、先生』

「“今朝のメールはどういう意味かな?”」

『おや、先生は連邦生徒会から聞いておられないのですか? ──あんなものがこの自治区に存在するのに』

 

 だからこんな小さな学校に来ているのだと思っていましたのに、とアコは言った。

 

「なに、先生。何の話?」

『おやまさか、そちらの生徒会長、ホシノさんから聞いておられないのですか?』

「何が言いたいのかわからない、ハッキリ言って」

 

 セリカとシロコが、アコにそう詰めた。

 

『わかりました。一から説明しましょう。

 イオリとチナツ以外、百メートル後退』

 

 アコが命じると、風紀委員会の面々が後退していく。

 

「え、どうして急に兵隊を引かせたのですか?」

『これは、それだけデリケートな問題なのですよ』

 

 アコはそのように、念を押した。

 

『先ほどそちらのアヤネさんは、我々の行動が違反だとそう仰りましたね?

 ですが、それは今回のような場合に限り、連邦生徒会から承認をうけているのですよ』

『どういう、ことですか?』

「先生!!」

 

 困惑するアヤネ。縋るようなセリカの視線に、先生もすぐにシッテムの箱を使って確認を取った。

 

「“本当だ、ゲヘナ学園はアビドス自治区で作戦行動が承認されている”」

「そんな、どうして!?」

『全ての始まりは、二年前でした。そうですよね、カヨコさん?』

「……」

 

 水を向けられ、気絶した振りをしていたカヨコが、顔を上げる。

 

『あなた達は列車砲シェマタをどういうモノだと聞いていますか?』

「まさか、あんた達の狙いは列車砲だって言うの!?」

『私の質問に答えてください。そうでないと話が進みません』

 

 気炎を上げるセリカに、アコは真剣な表情で言った。

 

「あれは、アビドス高校最盛期の遺産だと、そう聞いています」

『やはり、真実は伝わってはいませんか。

 当然ですね。あれはゲヘナの汚点。その事実を消し去ることで、我々はあの兵器の存在を許容することにしたのですから』

「まるで、あの列車砲があなた達のモノだった、みたいな言い方だね」

 

 シロコの物言いに、まさか、とアコは首を横に振った。

 

『あれは、我々のモノですらなかった。

 そう、あれは、かつてゲヘナに君臨した前政権の暴君。今や"雷帝”として異名だけが残る存在の、常軌を逸した発明品なのですから』

 

 アコの語る事実に、生徒会の四人は驚愕の表情を浮かべた。

 

『あの列車砲はアビドスの大昔の遺産なのではなく、たった二年前に建造された非対称兵器なのです。

 かの雷帝がアビドスの地で密かに建造させた、彼女の遺産。それが、あなた達が大事に抱え込むデカブツの正体なのですよ』

「そ、そんなの、嘘よ!!」

「嘘じゃないよ……」

 

 その時、よろよろと立ち上がったカヨコが言った。

 

「この事はミレニアムの生徒会長も、当時あの場に居た小鳥遊ホシノも承知している。

 ゲヘナの暴君、その雷帝の遺産を破壊しようとした万魔殿と風紀委員会を黙らせ、我が物としたのがあの“アビドスの鉄拳”と小鳥遊ホシノを始めとした当時のアビドス高校生徒会。

 私も、アコも、当時その場に居たからね」

『ええ。あの時のカヨコさんは輝いていました。まさか便利屋なんていうチンピラに身を落とすなんて。私は残念でなりませんよ』

「そっちこそ。私は行政官でも現場に出てこそだって教えたはずなんだけどね。安全な室内で悠々と長話をするなんて、嘆かわしいよ」

『技術の進歩はそれだけ早いと言うことですよ』

 

 顔見知りらしい二人は、その場に居る面々をそっちのけで嫌味の応酬を始めた。

 

『当時、あの列車砲を手に入れる為に何でもした、とホシノ先輩は仰っていましたが、まさかゲヘナ学園と敵対までしたなんて』

『ゲヘナ側にもメリットはありました。

 現政権は、雷帝の遺産の全てを消し去ることを決め、しかしあの列車砲を見逃す代わりにありとあらゆる自治区で、彼女の遺産の破壊の為の活動が容認されたのです』

「まるで、シャーレの先生並みの法外な特権……。当時の連邦生徒会がそれを認めたのですか」

『それほど、かの雷帝は恐れられていたのです。

 私も当時を知る身として、粛々とあの暴君に従う他なかったほどですから。

 そして唯一見逃された列車砲シェマタは、ゲヘナの雷帝の遺産と言う事実を消し去り、あなた達の手元に残った』

 

 それが、列車砲に隠された秘密だった。

 

『我々は当然アビドス自治区での異変を察知しています。

 あの列車砲は常に我々ゲヘナ学園が監視していますから。

 聞けば、あの列車砲はカイザーの一派が解体を要求し、それに乗じて我がものとしようとしているのでしょう?』

「それが、あなた達の暴挙の理由ですか……」

『ええ、あの兵器が破壊を振りまくモノとして世に出ることは決して認められません。

 あなた達以外に悪用されるなら、我々がその前に破壊するまで。

 我々はあなた達が、あれを持つ資格が無いと判断しました』

 

 まさしく鬼の首を取ったように、アコは特権を掲げてそう言った。

 

「誰であろうと、列車砲を破壊しようとするやつは許せないわ!!」

「ん、私も同感」

「ええ、あれは私達の希望なんです!!

『その通りです。列車砲の正体なんて関係ありません!! 私達は、私達の為に、あれを誰にも譲る気はありません!!』

 

 そして、それが、アビドス高校生徒会の全員の意志だった。

 

『そうですか。これは困りましたね。……うーん、仕方ありませんね。まあこうなると分かっていましたが』

 

 アコが指を鳴らす。

 ザッザッザ、と軍靴の音と共に風紀委員会の包囲が始まる。

 

『──ヤるしかなさそうですね?』

 

 

 戦端が開かれそうになったしかし、その時、包囲の外側から銃声が迸る!!

 そして狂乱したハルカが包囲の内側へと突破し、イオリに呪詛を吐きながら強襲を仕掛けた!!

 

『あら?』

「口だけは上手くなったね、アコ。

 そんな説明、彼女達にする必要なんてなかったでしょ?

 あんたが説明したところで、反発されるなんて分かってるはずだ」

 

 しかも砂漠用の車両も無いし、とカヨコはアコの言葉を戯言と切って捨てた。

 

「最初からあんたが狙ってたのは、列車砲なんかじゃない」

『カヨコさん……』

 

 アコは、不良に身を落としても変わらぬ先輩をどこか遠い目で見ていた。

 その間に、他の便利屋の面々が包囲を抜けてアビドス一行のところに辿り着いた。

 

『……面白い話をしますね、カヨコさん』

「さっきそこのラーメン屋で聞いたんだ。アビドス自治区の商工会が列車砲の解体を望んでいる、って。しかもそれを主導しているのが、よりにもよってあの“鉄拳”が列車砲を運用する為に敵対した、カイザーグループだって言うんだからさ。

 それを聞いて、私ならそれを口実にすると思っただけだよ。

 それに、こんな非効率的な運用……ヒナ委員長は関わっていないし、恐らく万魔殿にも話は通していないんだろう?

 つまり、アコ。これはあんたの独断的な行動に違いない」

『…………』

「私達が偶然ここに居合わせたのは、あんたにとっては幸運だっただろうね。わざわざ自分達から目的のモノをおびき寄せる口実になったんだから。

 じゃあそこまでして、アビドスなんて小さな学校でほしいモノとは?」

 

 カヨコは、アコにそれを突き付けた。

 

「シャーレの先生。アコ、あんたの目的は最初から、先生を狙ってここまで来たんだ」

 

 これには、アビドスの面々も驚いた。

 

「“私?”」

 

 先生もまさかの事態に、目を見開いている。

 

『ふふッ、なるほど。やはり暢気に雑談なんてしてる場合ではありませんでしたね。

 カヨコさん、我々風紀委員会の汚点。私達を、私を裏切った罪は重いですよ?』

「裏切り? アコ、あんたが私の何を知っているって言うのさ」

 

 アコが指を鳴らすと、更なる包囲網が形成され、増援が無数にやって来る。

 

『しかし先ほどの回答では満点はあげられませんね、カヨコさん♪

 折角ですし事の次第を話しましょう。きっかけは、ティーパーティーでした』

 

 暢気に雑談なんてしてる場合ではないと言っておきながら、そんな話を始めたアコ。

 

 今更そんなことをだらだらと描写するのは正直めんど……賢い読者の皆様は知ってるはずなので割愛する!!

 

「……」

「……どうする、社長。戦闘が始まったら、もう後戻りできないよ」

「お互いの事情は、分かったわ」

「そうだね」

 

 アコがだらだらと長話を続けている横で、アルとカヨコがそんな会話をしていた。

 

「ねえカヨコ、あの御方ならどうする?」

「もう分かっているでしょう、社長」

 

 カヨコは肩のガンホルダーから愛銃を取り出した。

 

「ふ、ふふふッ、ええ、そうね。流石カヨコ。私の事よくわかってるわね」

 

 憧れの人が成した全てを知り、アルは笑った。

 

「今度は、あの御方が守ったモノを、私達が守るわ。……あと、あとで一緒に謝ってくれる?」

「いつものことでしょ、社長」

 

 カヨコはいつもと変りなく、淡々とそう言った。

 

「あはー!! やっとエンジン掛ったね、アルちゃん!!」

「アル様、やはり素敵です!!」

 

 ムツキも、ハルカも、ヤル気だった。

 例え勝てなくても、勝算が無くても。

 

「あの御方はいつも弱い者の味方だった……。どんな強い相手にでも、どんなに数が多い相手でも、どんな権力や規範を強いても!!

 理不尽に晒される相手に手を差し伸べてきた……」

 

 アルは知っている。かの死神と接してきた人たちの話を、何人も聞きに行った。その場所に行ってみた。そして感じた。

 自分も、彼女のような本物のアウトローになるのだと!!

 

「アビドスの皆!!」

「わわ、急にどうしたのよ」

「この間は悪かったわね。事情は聞かせて貰ったわ」

 

 アルが前に出る。その後ろに彼女の部下たちが追従する。

 

「風紀委員会を倒せないくらいじゃ、あの御方を超えるなんて到底無理!!

 ……償いは、させて頂戴」

「……なら、挟み撃ちにするわよ!! あいつらコテンパンにしてやるわよ!!」

「なら先生の盾になって」

「先生を皆で守ります、いいですね?」

 

 話が早くて助かるな、とカヨコは思った。

 

「あははは、任せて!! 弱きを助け、強きを挫く!!

 誰にも縛られず、惑わされず、仁義の為に悪の華道を征く。それが便利屋68よ!!」

 

 バトルパートが、始まる!!

 

 

 

 リザルト画面が終わっても、戦闘は継続中だった。

 

『第三陣、来ます!!』

 

 先生の指揮の下、軽く百人以上倒しているのにまだ包囲をする人員が揃っている風紀委員会。

 

 カヨコは、これはアコの動かせる権限を越えていると言うが、それは風紀委員長の存在を便利屋たちに思い起こさせるには十分だった。

 

 これ以上の専断は反省文ものだと、アコが覚悟をしていた時。

 

 遠くからバイクのエンジン音が聞こえてきた。

 

「こ、このエンジン音は!!」

「あッ、あいつだ、あいつのバイクだ!!」

 

 急に風紀委員達が動揺し始めた。

 

「や、ヤバいよ、アコちゃん……」

「ああ、あの人が、来る」

 

 チナツは身体を震わせ、言った。

 

「死神が、来る!!」

 

 

 その時、先生達を包囲する風紀委員の一部に高速でバイクが突っ込んできた!!

 

 何人かが轢かれ、ボウリングのピンのように吹き飛ばされる。

 その包囲の中心で急停止すると、バイクに乗っていた一人がヘルメットを捨ててバイクから飛び降りた。

 

「いやぁ、みんなゴメンね。遅くなったよ」

「ホシノ先輩!!」

 

 バイクには操縦者ともう一人、ホシノが搭乗していた。

 

「もう、大丈夫だよ」

 

 ホシノが、ゆっくりとバイクを下りるもう一人を見る。

 

「よう、アコの助。おもしれーことしてんな」

『ひッ』

 

 安全な位置に居る筈のアコが、思わず腰を抜かした。

 いや、どこに居ようと安全な場所なんて無い。

 

 死神の訪れは、誰にとっても平等なのだから。

 

「あ、貴女様は、み、ミコト様ぁ!!」

 

 アルが歓喜の声を挙げた。

 

 ヘルメットを取ったそこから現れる、中性的な美貌の女。

 美男子と言えばそれで通用してしまいそうな、ある意味倒錯的な妖しげな魅力。

 

 暴力の権化、破壊神。そして、“アビドスの鉄拳”。

 

 

「この数だけじゃ足らねえな。──ヒナを呼べよ」

 

 逢坂ミコト。伝説が、また戻って来たのだ。

 

 

 

 

 

 





今朝の話は割と力作だったのですが、低評価がニ連続だったので悔しくて頑張って書きました。
私はブルアカの魅力の一つは、悪役にあると思っています。
ゲマトリアの面々もそうですし、カイザーもプレジデントやジェネラルも一貫した悪役って感じで推しですね。
なのでちゃんと作中で知能デバフなんてそんなこと、推しにはできません。ちゃんと強敵として、悪役としてそれを貫き通して貰います。

それではまた、次回!!

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