ゲヘナ学園 園芸部の死神   作:やーなん

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今回で、原作アビドス編は終了です!!
思いのほか、長くなってしまいましたが、皆さんを楽しませられたのなら幸いです。



ブルアカVol1「ホルスの戴冠編」その3

 

 

 

 09:忙しき日々

 

 

 三大学校を砂祭りに誘った翌日。

 

「ねえ皆──」

「ホシノ先輩、周辺自治区についての資料をまとめました!!」

「やっぱり皆困りごとはあるみたいです!!」

「先生と一緒に、色々と問題を解決するよ」

 

 生徒会室に集まった面々は、ホシノの言葉を遮るように次々とそう言った。

 

「足で稼ぐんですよね、ホシノ先輩」

 

 それを見ていたセリカも、呆れたような顔で追従する。

 

「……うん、そうだね」

「“頑張ろうね。みんな”」

 

 仕方なそうに頷くホシノと、彼女達の選択に先生は何も言わなかった。

 

 それからは、忙しい時間が過ぎて行った。

 アビドス自治区は砂漠も含めれば広大な場所だ。

 隣接する自治区の数は十以上存在する。

 

 彼女達はその全ての自治区にある学校に訪問し、説得を繰り返した。

 時には政治の話になり、時には信用できないからと言って面倒ごとを押し付けられたりもした。

 

 それでも、彼女達はめげなかった。

 時には治安改善を手伝ったり、時に列車砲と言う外交カードを駆使したり、時に先生の権力を使って解決したりもした。

 

 最初は門前払いもされたが、それも周りの自治区を説き伏せれば渋々と会談に応じてくれたりもした。

 

 最終的に十の自治区が一種の連合となることで、アビドスの列車砲の運用に対する監視を行う条約を、ミレニアム側の技術者も交えて協議を行い、締結した。

 

 砂嵐にも当然、強弱がある。その全てに列車砲をぶっ放せば電力がいくらあっても足りない。

 ミレニアムが作成した砂嵐の予報AIで、相当以上の脅威になりうる場合にのみ列車砲の稼働が許されるものと、条約は定めた。条約はそれ以外にも緊急時での戦力の要請など、条項は多岐に渡った。

 これをシェマタ条約と命名し、十一の校印が押された署名が成された。

 先生は連邦生徒会側の立会人として、調印を見届けた。

 

 そして当然、彼女らにも砂祭りの参加も呼び掛けた。

 一先ず自分たちに砲塔を向けられないことに安堵した周辺自治区の生徒会は、とりあえずの友好の証としてそれの参加を表明した。

 

 調印まで電光石火の二週間だった。

 それほどまでにホシノを始めとしたアビドス生徒会は精力的に周辺自治区へと打って出たのだ。

 

 或いは──。ホシノの口から何が語られるのか、それが恐ろしくて逃げるかのようでもあった。

 

 しかし、先送りもここまで。

 多くの学校の参加と、ミレニアムの手助けを経て、今度こそ商工会への説得を行う時が来たのだ。

 

 時は、その前日にまで迫っていたのだ。

 

「ねえ皆。そろそろ話してもいいかな。いや、違うかな。

 この気持ちを一人で抱えたまま、明日を迎えたくないんだ」

 

 ホシノの言葉に、ついに影を追い越されたような、バツの悪そうな表情が四人に浮かんだのだ。

 

 

 

 10:告白

 

 

「あの不気味な大人のことを、私は黒服って呼んでた。

 半年前くらいだったかな、あのアビドス歴史記念館の話が持ち上がった頃だった。

 その黒服に勧誘を受けてたんだ。カイザーPMCの社員として雇いたいって。

 その代わりに、商工会を始めとした街の大人たちを説得して見せるって」

 

 ホシノは生徒会の面々の前で、訥々と話し始めた。

 

「あの日は流石にもう断れない、そう思ってたんだ……」

 

 

 

 ホシノが黒服の差し出す契約書の前に立ち、ペンを取った時だった。

 

「なるほど、変人共。てめぇらが噛んでたのか」

 

 ドカッと扉を開けて、ミコトがその薄暗い部屋へと入ってきた。

 

「おや、これはこれは。ゲヘナの死神」

「ミコト!? どうしてここに……」

 

 驚く二人の前に、ずかずかとミコトは歩み寄る。

 

「忘れたのかまっくろくろすけ。

 俺はカイザーで偶に仕事してんだ。なんだかプレジデントには気に入られちまって、辺鄙な会社を任されたりしてんだ」

「おやおや、そう言えばそうでしたね」

「プレジデントからお前の話を聞いたんだ。

 それで、ここのカイザーのやり口を思い出した。最近の奴らのやり口じゃねえ。チンピラをけしかけるなんて、リスクにしかならねぇ」

 

 そう、カイザーにとってアビドス高校への嫌がらせは、資金を投入してまで必要な事項ではなかった。

 それは露見した時のリスクにしかならないからだ。

 

「てめぇの指示だな、黒助」

「ええ、正解です」

「一体なにをチラつかせやがった?

 カイザーどもは商売人だ。利益になるからやるんだ。

 しかも、アビドスなんて俺の古巣でだ。俺の機嫌損ねてまでやる理由ってのはなんだ?」

「もう既に、アタリは付いているのでは?」

「あの大げさな発掘現場だろ」

 

 ホシノは目を白黒させながら、二人の会話を見ていることしか出来なかった。

 

 クックック、と黒服は笑う。

 

「私の目的はホシノさんの身柄そのものですよ。ちょっとした実験を計画していただけです」

「あー……俺に試した奴だろ? 失敗した奴。俺に恐怖なんてものは無かったからな」

「私は失敗とは考えていませんよ。一つの結果として、考察の材料としては有意義な実験でした」

「俺に取っちゃ失敗だ。お前らはなんかタワーオブ何とかみたいな感じのパワーアップが出来るって触れ込みだっただろ」

「そこまで出かかってなんで肝心の単語が出ないんですか? あれは貴女が例外なのですよ」

「さよか」

 

 ふん、とミコトは鼻を鳴らした。

 

「くだらねーことしてんな。てめぇらを生かしてんのは、使えるからだ。それを忘れんな」

「ええ、今回の件は貴女が出張った時点で、もう一つの確認事項を把握できました。私としては最低限の収穫はあったと言うことです」

「……相変わらず回りくどい言い方しやがる」

「端的に言うなら、ホシノさんは諦めると言ったのです」

 

 黒服は、契約書を真ん中から破り捨てた。

 

「どうせ約束なんて守りゃしなかっただろ、お前」

「認識の相違があったかもしれないことは認めましょう」

「ほらな」

 

 ミコトは肩を竦めて、ホシノを見た。

 

「契約で願い事を叶えるってなら、せめてマスコットらしい見た目で出直してくるんだな。黒助」

 

 そして、いくぞ、とミコトは状況が把握できていないホシノを連れ出したのだった。

 

 最後に、振り返って彼女はこう言った。

 

「えー、あれだ、あれ、……そう、カラフルは俺がぶっ倒してやる。

 俺に倒してほしいなら、大人しくしてんだな」

「おや、それではまるで貴女に戦わないという選択肢があるみたいではありませんか?」

「揚げ足取んな。俺が言いたいこと、分かってんだろ」

「ええ、ですが我々は個人主義の集まり。お互いの行動に干渉しないのが我々なのです。なのでその時々によって、貴女がふさわしいと思った行動を取れば良い」

「吐いたツバ、飲めねぇかんな」

 

 そして、二人は建物の外に出た。

 

「……ねえ、ミコト。どういうことなの? 実験って」

「なんかよくわかんねーけど、めっちゃグルグルしてヤベー感覚が迫って来るんだ。俺はその感覚に勝てればパワーアップできんだと思ってたんだが、当てが外れちまった」

 

 なんで負けねえといけねぇんだよ、とぼやくミコトだった。

 

「あいつらはカイザーなんかじゃねえ。

 ゲ、ゲ、ゲルマニア? たしかそんな感じの組織だ。

 よくわからねぇことして喜んでる変人共だよ」

「カイザーじゃ、無い……私、また騙されて……」

「俺ら一応共闘みてぇなことしてんのに、これだから大人どもは油断ならねぇんだ。

 ……それよりお前、携帯鳴ってるぞ」

「あ、本当だ!!」

 

 ホシノはモモトークにアヤネが鬼メッセージを送っていることに気づき、ヤバぁ、となるのだった。

 

「場所はどこだ? 乗ってけ」

「う、うん」

 

 こうして、ヘルメットを受け取ったホシノはミコトのバイクに跨って市街地へと向かったのだった。

 

 

 

「よくわからないけど、あいつとその組織とミコトは何か関わりがあるみたいなんだ」

 

 ホシノはあの騒動の裏で起こっていた出来事について、全て話した。

 

「今の話ですと、利害の一致しているだけのようにも聞こえましたけど」

 

 アヤネはそのように所感を述べた。

 

「要するに、私達を襲わせたのも、そいつの指示ってことなのね!!」

「そうみたい。少なくとも、もうビリビリヘルメット団や便利屋みたいな連中は襲ってこないと思うよ」

 

 憤るセリカに、ホシノは力無くそう言った。

 

「そんなことは、どうでもいい」

 

 しかし、シロコはこう言った。

 

「なんで、私達に相談もしないで、そんな怪しい奴の話に乗ろうとしたの?」

「そうですよ、ホシノ先輩!!」

 

 二年生の二人は、強張った表情でそう訴えた。

 先生もその隣で深く頷いた。

 

「“ホシノが悩むのもわかるよ。でもホシノが居なくなって開催される砂祭りに、何の意味も無いんだ”」

 

 先生はホシノの気持ちに理解を示しつつ、そのように断言した。

 それに皆も頷いた。

 

「ゴメンね、先生。皆。

 おじさん、本当は大人なんて信じられないと思ってた。でも、実際は皆の事すら信じてなかったみたいなんだ。

 ミコトの言う通りだよ、おじさんは自分のこと何も分かってなかった……」

 

 それは、もはや懺悔の言葉だった。

 一同は沈黙し、何も言えなかった。

 

「自分で、自分を雁字搦めにしてた。

 正直、こんな自分は生徒会長に相応しくないと思った。いや、ずっと思ってた。

 おじさんの取り柄なんて、腕っぷしだけだからさ。

 いや、結局、あれほど余計な事しないでって呆れてたユメ先輩と大して変わらないってさ、あの人のこと言えないよね!!」

 

 ホシノは無理くり笑って、そう言った。

 

「いや、あの人は皆を馬鹿みたいに信じてたから、それ以下だね……いやぁ、ダメなどころだけ、真似ちゃってさ……」

「そんなこと言わないでください!!」

 

 ノノミが、沈痛な雰囲気を割くようにそう言った。

 

「ホシノ先輩だからこそ、付いてきた人たちは大勢います!!

 私達や、保安部の皆さん、他の生徒達だって、ホシノ先輩がいるから安心していられるんですよ!?」

「ん、それに今のホシノ先輩は今までの先輩とは違う」

 

 ノノミの訴えに、シロコも頷いて見せた。

 

「前を向くって決めたから、話してくれたんですよね?」

「このまま辞めるとか、言わないですよね……?」

 

 アヤネとセリカが、不安げにそう言った。

 

「……うん、おじさん、もう吹っ切れたよ。

 とりあえず、信じることから始める。それで騙されたなら、そうだね、ミコトみたいに暴れてみようか?」

「ふふふ、そう言うところは真似しちゃ駄目ですよ」

「ホシノ先輩、私は付き合うよ。新しいアビドス流を見せてやろう」

「シロコ先輩は余計な事しないでください!!

 本当に、この人が次期生徒会長で大丈夫なのかな……」

 

 笑い合うホシノとノノミの横で、シロコとセリカのやり取りに先生が反応した。

 

「“次期生徒会長は、副生徒会長のノノミじゃないのかい?”」

「あ、実は実家がハイランダー鉄道学園と提携をしてまして。

 私が生徒会長になると、ミレニアムとハイランダー、そして我々アビドスの所有する各三つの列車砲の起動キーのうち二つを事実上保有していることになってしまいますので」

 

 それでは意味が無くなってしまいますから、とノノミは気高い意志でそう決めたようであった。

 

「開催委員会も、シロコ先輩の功績の為に立ち上げた側面もあるんですよ」

「ん、任せて」

 

 アヤネの説明に、シロコは胸を叩く。

 セリカはジト目で殆どお飾りの彼女を見ていた。

 

「それでは、明日の説明会の準備をしましょう」

「関係各所に連絡を取らないと……」

「まだ今日は忙しくなりそうですね!!」

 

 全ての話が終わり、明日の準備に忙しくなる生徒会の面々。

 

「先生も連日お世話になりました。

 明日のこともありますので、今日はお休みください」

「“ありがとう。何かあったら遠慮なく言ってね”」

 

 先生は子供たちの厚意と配慮に、従うことにした。

 そうして生徒会室から廊下に出た先生は、窓ガラスに挟まった黒いハガキに目が付いた。

 

「“これは……”」

 

 そこには住所と、建物の名前が書かれていた。

 そして、先生宛に招待をする旨も。

 

 先生はその場所へと向かうことにした。

 

「……お待ちしておりました、先生」

 

 エレベーターを上がった先での薄暗い部屋で、黒服の怪人は待ち受けていた。

 

「あなたとは一度こうして、顔を合わせてお話ししてみたかったのですよ」

 

 そう語る怪人と、先生は対峙した。

 

 

 

 11:大人の戦い

 

 

 先生と黒服の、舌戦が始まった。

 お互いの大人としての立場の違い、価値観の違い。

 

 大人とは上位者として振舞う者だと語る黒服に対し、子供に寄り添いその責任を負う者とする先生との相違。

 視点が違う。解釈が違う。

 

 どちらの言い分も正しく、そして間違いでもある。

 黒服は大多数の大人が彼の言うところのルールを作る側ではないという視点が抜けているし、先生の言い分もまた若さゆえの未熟な理想論に過ぎない。

 

 そして、先生は子供を傷つけるような振る舞いをする彼を赦さない。

 黒服は大人としてのルールは守るが、善悪でその行動を律したりはしない。

 

 どこまでも平行線の二人。もはや敵対するしかなくなった時、先生は“大人のカード”を取り出した。

 それを、黒服は紳士的に諫めた。この話し合いに、暴力の介在は必要無いとでも言うように。

 

 お互いの話はそれで終わった。

 本当に、黒服は先生と話してみたかっただけのようだった。もう、アビドスに介入するつもりはない、とも。

 去り際に、彼はこう言った。

 

「此度の一件では、興味深い事例が確認されました。

 私とはまたスタンスの違う傍観者、あの“代弁者”が一度だけ介入を行ったのです」

 

 黒服はそのように語る。

 

「小鳥遊ホシノを救う選択肢を取りながら、先生、あの逢坂ミコトに恣意的な情報で貴方への印象を操作した。

 かの存在がより多くを救いたいだけなら、彼女を先生の味方とすればよかった。だが、そうはしなかった」

 

 実に興味深い事例です、と彼は笑った。

 

「“代弁者”?」

「我々ゲマトリアとも、このキヴォトスの住人達とも違う、神秘の持ち主。いずれ先生とも相まみえることもあるでしょうね」

 

 そして、黒服は去って行った。

 最後に、ゲマトリアは先生を見ている、という言葉を残して。

 

 

 

 12:努力の結実

 

 

 次の説明会は、商工会の面々だけでなく多くの住人も参加した。

 そして、前回とは違い、アビドスの面々も用意は周到だった。

 

「えー、初めまして!! ミレニアムサイエンススクールのエンジニア部所属、豊美コトリです!!」

「私も同じく、エンジニア部の部長を務める白石ウタハだ。

 私は列車砲の発見当初から、整備や開発、シミュレーション等を担っている。あの列車砲で私以上に詳しい者はこのキヴォトスに居ないだろう」

 

 と、エンジニア部の二人が駆けつけ、プロジェクターで列車砲のデータや子細を説明しだした。

 

「列車砲の運用はこのように厳密なプロセスを用い、念のために市街地から十分に安全マージンを取って運用されます!!

 万が一に列車砲が誤爆しても、その影響は市街地までありません!!」

「街を砂だらけにして埋没させるほどの規模の砂嵐に、列車砲の恒常型プラズマ弾頭弾は有効であると結論付けられた。

 勿論完全な阻止は難しいが、強烈な上昇気流の壁が気流に干渉し、その影響力を削ぐことは十分論理的に可能なのです」

 

 コトリとウタハが、順番に列車砲の有用性や安全性を訴えた。

 

「……本当に、砂嵐はどうにかできるのか?」

「そんな夢みたいな、都合の良いことがあるの?」

 

 住人達は、これに困惑するほかなかった。

 誰も彼もが、諦めているのだ。

 

 彼らはアビドス全盛期からこの地に住まう者達の末裔。

 砂嵐とは花粉と同じだった。もうそこにある、しょうがないモノに過ぎなかった。

 これまで偶然、自分達が致命的な被害に遭わなかった、ただ運が良かっただけの人達なのだ。

 そんな彼らでも、砂嵐の恐怖は身に染みているのだ。

 

「こちらを見てください、このキヴォトスの三大学校は砂祭りの参加を表明しました。

 周辺自治区も、列車砲の運用に関する条約を機に、砂祭りの参加を約束してくれました。

 彼女達も列車砲の安全性は認めているのです!!」

 

 と、進行役のアヤネがそう主張した。

 

「……本当に、本当に砂嵐に対抗できるのか?」

 

 服屋のおじさんが、呆然とそう言った。

 

「嘘じゃ、嘘じゃないんだろうね?」

 

 カフェのお爺さんが、その事実に震えながらそう言った。

 商工会の面々も、みな砂嵐に苦しめられてきた。

 本当は列車砲なんていうか細い希望に縋りたいのだ。

 

「生徒のみんなが、危なくないなら私はそれでいいけど……」

 

 ずっと生徒達を心配していた八百屋のおばちゃんがそう言った。

 

「か、カイザーさんはどう思いますか?」

 

 商工会の一人が、ずっと黙って説明を聞いているカイザー理事にそう言った。

 

「……安全が十分に確保されているのなら、それでいいのでは?」

「え?」

「我々カイザーグループとしては、オアシス周辺の開発が安全に滞りなく進められればそれで十分なのだ。

 アビドス高校生徒会の方々も、それで良いのだろう?」

「……ええ」

 

 あっさりと引き下がるカイザー理事に不信感を持ちながらも、アヤネは頷いた。

 

「では万事解決だ!!

 私は忙しいので、これにて失礼するよ」

 

 商工会とのわだかまりが解決してしまうと、カイザー理事は足早に立ち去って行った。

 

 こうして、商工会や住人と、アビドスの面々は和解に成功した。

 知り合いのおばさんと涙ながらに抱き合うノノミや、反発して悪かったねと言い始めるおじさん達。

 子供たちもそれを許し、先生はその光景を眩しそうに見ていた。

 

 

 その陰で、カイザー理事は暗躍する。

 

「ええ、こちらは万事順調です。プレジデント。

 アビドス高校本館周辺の採掘は進んでいます。

 黒服の言うアレが見つかれば、列車砲なんて電車のオモチャで喜ぶ子供たちなど些細なことに過ぎません」

 

 くくく、と彼は独り電話口で静かに笑うのだった。

 

 

 

 

 

 

「どうしようか? あの理事が反発したら、私達が出て言ってアビドスを襲わせたのはお前だ!! ってするつもりだったのにね」

「よ、余計なことは言わなくて良いのよ、ムツキ!!」

 

 ここにも四人、陰でこそこそ話し合う面々が居た。

 

「なんだか円満に終わっちゃったようだし。これからどうする、社長?」

「アル様、今からでも告発をしますか?」

 

 カヨコとハルカの視線を受けて、アルはたじろいだ。

 

「……そうだわ、ラーメン、ラーメンを食べに行きましょう!!

 今ならきっと、大将もサービスしてくれるわ!!」

「はあ、まあ社長がそれでいいなら良いんじゃない?」

「賛成!! 折角、ミコト先輩と戦ってお金貰えたんだし」

「止めてムツキ、思い出させないで……」

「(がくがく、ぶるぶる)」

「た、食べ終わったら、そのお金をアビドスに渡しに行きましょう……」

 

 なんとも格好の付かない四人であった。

 

 

 

 13:エピローグ

 

 

 無事砂祭り開催にこぎつけた先生は、役目を終えてシャーレのオフィスに戻ってきた。

 

 アヤネからの手紙には、彼女達が苦労しつつも開催に向けて忙しい日々を送っているのがわかった。

 

 先生は彼女達との忙しい日々に思いを馳せ、このお話は幕を閉じたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ???:失われたエピローグ

 

 

 その日は、ホシノが校舎の見回りの夜勤の日だった。

 保安部の部長も兼任するホシノは、こんな些細な仕事も部下に投げずに行っていた。

 

「あれ、生徒会室から明かり?」

 

 もう夜になるのに、誰かが残っているのだろうか。

 ホシノが生徒会室のドアを開けると。

 

「そこに居るのは誰かなぁ? ん?」

 

 ホシノは一瞬、中に居る生徒の横顔が、大野ツクヨに見えた。

 しかしそれは目の錯覚だったようだ。

 

 その月光のような金髪を、黒髪と間違えるなんてありえない。

 他校の生徒とは言え、知り合いの姿にホシノは警戒を解いた。

 

「ああ、あんたか。ミコトと一緒に来てたんだね」

「お久しぶりね。ちょっと失礼しているわ」

「一体こんな夜中に何の用?」

「ごめんなさい、誰かに気取られるつもりはなかったの」

 

 そこにいる生徒は、“楽しいバナナとり”と掛かれた学習帳に目を落としていた。

 

「……それを読みに来たの?」

「ええ。他のモノには手を付けてないわ」

「何でこんな時間に、そんなどうでもいい日記帳を読んでるの?」

「どうでもいい、ね」

 

 彼女はホシノの物言いに、くすくすと笑った。

 

「あなたには分からないのでしょうね。

 この日記帳の内容を把握できることが、先生の有する全ての権限さえを越える特権だと言うことを。

 ──()()()()()()()()()()()

 

 ホシノは思わず後ろを見た。自分に話しかけられているような気がしなかったからだ。

 

「いや、そこまで言う? 全然大した内容じゃないでしょ?」

「ええ、本当に大したことのない、つまらない内容ね。

 だけどこれは私にとっては聖典の原本、ネクロノミコンの原書にさえ匹敵する呪物にも値するものなのよ。これを読む為に、二年も待った」

「……まあ、そこまで嬉しいなら、ユメ先輩も喜ぶんじゃないの?」

 

 ホシノには全く理解できなかった。

 他人の日記を読んで喜ぶ趣味なんて無いからである。

 

「はい、これは返すわ」

「うん……もう帰るの?」

「ええ。私の目的は達したから」

 

 失われるはずだった、失われなかったことで無価値になったそれを、彼女はホシノに返した。

 その価値に、ホシノは永遠に気づくことは無いだろう。それが失われて初めて呪物として価値を持つなんて、知ることも無いだろう。

 

「それじゃあ、またね。今度はミコトと一緒に来るわ」

 

 その生徒、──代弁者はそう告げて、ホシノの前から立ち去った。

 

「砂祭り、楽しみにしているわ」

「うん、またね。去年との違いにびっくりさせるから」

 

 

 こうして人知れず、このエピローグは幕を閉じた。

 

 

 

 




思いのほかあっさりと終わったアビドス編。
まあ物語の導入というか、ブルアカの世界観に入るのには丁度いい話に変わったのかもしれません。

次回以降のネタ、どうしようかな。
二年生編はあっさりと終わらせて、原作時間軸に入った方が良い気もします。

まあ色々とネタをバラまいたので、何とかなるでしょう。
ではまた、次回!!
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