ゲヘナ学園 園芸部の死神   作:やーなん

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今回は幕間的なお話になります。



side:先生  「イベント:トリニティVSゲヘナ」

 

 

 

 イベント「カチコミ!? トリニティ学園VSゲヘナ学園!! ~アリウスの生徒を添えて~」

 

 

 

 プロローグ:「トリニティの悪夢、再び」

 

 

 トリニティ学園、大聖堂。

 

 ここはシスターフッドの本拠地にして、ミサの授業などでも使用されるトリニティでも由緒正しい施設の一つだった。

 

 余裕で数百人も収容可能なこの施設を、かつてのアリウス分校の生徒が埋め尽くしていた。

 

 アリウス自治区壊滅の一件以来、彼女達はシスターフッドが後ろ盾になってトリニティに帰属を勧めていた。

 その一件でトリニティの生徒全員が知るところになったアリウスの現状と事実。

 

 戦うことしか教えられていない、虚無的な思想に洗脳されていた彼女達をトリニティの生徒達は義憤を抱きながらも優しく受け止めた。

 トリニティの生徒は思い込みは激しいが、こういう正義感と優しさに満ちているところは長所でもあった。

 

 そしてアリウスの面々は困惑しながらも、それを受け入れた。トリニティの生徒はアリウスの生徒から制服を奪わなかったことも大きかった。

 無論、それに反発した者達と袂を分かつ結果となったが。

 彼女達は今、かつての同胞がどこに居るのかも分からない。

 

 半数となったアリウスの面々だったが、ある時急に大聖堂に全員呼び出された。

 まさしく一人残らず、である。

 

 未だ物騒な思考が頭を離れていない彼女達は、これを機に一掃するつもりなんじゃ、と勘繰ってたりしていたのだが。

 

「アリウスの皆さん。緊急事態です」

 

 シスターフッドの長、歌住サクラコが皆の前に現れて言った。

 

「──ゲヘナ学園が、宣戦布告をしてきました」

 

 その言葉に、アリウスの生徒達は動揺した。

 

 ゲヘナ学園。かつて自分たちがトリニティ同様に憎しみを抱いていた対象。

 突然の仇敵の宣戦布告に、彼女達は大きく慄いたのだ。

 

「それは事実なのか?」

 

 一人、アリウスの制服を着ていない生徒が訪ねた。

 アズサである。彼女はトリニティの在校生と、アリウスの生徒の橋渡し役をしていた。

 

「ええ。それにより、トリニティは幾度も壊滅の危機を迎えてきました」

「まさか、ゲヘナ学園がそこまでするとは……」

 

 まさに全面戦争。

 アズサは思い返す。

 

 アズサがまだほんの小さな頃、アリウス自治区は内戦で酷い有様だった。

 ゲヘナ自治区のスラム街が立派に見えるくらいの、ひもじさと恐怖に耐える日々だった。

 

「主犯は、かのゲヘナの死神。逢坂ミコトです」

「なんだって!?」

 

 その名に、アリウスの生徒は怯えた。

 アリウスの生徒は、自治区で彼女と戦った。

 

 徹底的だった。虚無に逃げることも出来ない、本物の暴力と死を叩きつけられた。

 今でも彼女を夢に見て飛び起きる生徒も多かった。

 

「我々は戦うしかありません。

 ぜひ、アリウスの皆さんも、力を貸してほしいのです」

「それは、我々を最前線で使い潰すと言うことではないのだろうか?」

「?」

 

 ここで、サクラコは小首を傾げた。

 まるで、何を言っているのでしょうか、とでも言いたげに。

 

「……あれ、もしかして、聞いていませんでしたか?」

「シスターサクラコ。彼女達の生活区域は、彼女達に配慮し離れているところにありますから」

 

 ヒナタが、サクラコにフォローをする。

 

「あの、どういうことなのか教えて欲しいのだが」

「あー、えーとですね。ゲヘナの宣戦布告と言うのは──」

 

 代わりに、マリーがアズサ達に言った。

 

 

 

 

 01:宣戦布告……?

 

 

「先生、ついにこの時がやって来てしまいました」

 

 トリニティ学園の生徒会室。

 そこに招かれた先生は、重々しい雰囲気のナギサにそう言われた。

 

「“この時って?”」

「ゲヘナ学園が、我がトリニティ学園に宣戦布告をしたのです」

「“え、ええ!?”」

 

 これには、先生も仰天した。

 

 つい先日まで、ゲヘナとトリニティの両校は和平の為に動いていた筈ではなかったのか、と。

 

「……おや、先生は聞いておられなかったのですか?

 連邦生徒会からの承認は受けている筈ですが」

「“どういうことなの?”」

 

 普通、連邦生徒会が二つの学園が紛争状態に陥ったら、間に入って仲裁を行うはずである。

 だというのに、両校の紛争を承認するとは、一体どういうことなのか?

 

「本当に、聞いていないのですね……。

 わかりました。説明いたしましょう……いえ、実際に目で見た方が早いでしょう」

 

 ナギサはそう言って、席から立ち上がる。

 

 

 先生が案内されたのは、正義実現委員会の部室だった。

 

「皆さん、ごきげんよう」

「“こんにち、わ……”」

 

 部室の中を見た先生は、言葉を失った。

 

「これはどうも、先生。先生が味方に付いてくれれば千人力です」

 

 そう言葉を発したのは、恐らくハスミだろうと先生は当たりを付けた。

 なぜそう断言できないのか。

 

 それは、彼女が雨合羽のような防具を身に着け、顔もガスマスクで覆っていたからだ。

 それはまるで、いつぞやのユスティナ聖徒会の亡霊のような出で立ちだった。

 それが、正義実現委員会の生徒全員となれば、いったい何ごとなのかと思うだろう。

 

「これまで、トリニティとゲヘナの全面戦争“演習”の戦績は、三敗一勝。

 次こそ、我々は勝利せねばなりません!!」

「“待って!? 演習ってどういうこと?”」

「それは勿論。──あのミコトがトリニティに攻めてくる、という状況設定の演習ですよ」

 

 先生は、ハスミの言葉に力が抜けた。

 

「“演習、だったんだ”」

「はい。本当に全面戦争をしては、多くの弊害や被害が発生しますから」

 

 ナギサは言う。

 本気でトリニティと喧嘩したいミコトは考えた。

 何度でも、本気でトリニティと戦える方法を。そこで相手を滅ぼさずに、また何度も大喧嘩する手法を編み出したのだ。

 

「ですが最初の一度目は、悪夢そのものでした」

 

 ナギサは、怒りで身体を震わせながらそう言った。

 

「ゲヘナ学園の生徒と言う生徒が押し寄せ、ペイント弾で校内を荒し尽くしたのです。

 校内中の壁をペイント弾でラクガキだらけにし、私達の制服や羽根を色水でキャンバスのように弄んだのです!!」

 

 先生の目には、ナギサの語る悪夢が目に浮かぶようだった。

 ゲヘナの生徒のやんちゃな悪ガキどもが、大手を振ってトリニティの校内で大暴れするのが。

 

「全面戦争です。ゲヘナの生徒一人たりとも校内で好きにさせません!!」

 

 ガチギレだった。先生は、ナギサの新しい一面を見れたな、と遠い目で思った。

 

「生徒会室の陥落が我々の敗北条件です。

 先生は遊撃隊を率いて、その存在を示して頂ければ」

 

 先生がトリニティ側で参加するという事実に動揺するゲヘナの生徒を思い浮かべ、まさに暗黒微笑としか言いようのない笑みを浮かべるナギサ。

 

「“……まあ、暴力じゃないなら何でもいいか”」

 

 先生は幾度となく味わったキヴォトスでのカルチャーショックにたじろいだが、特に深刻な学校同士の紛争ではなさそうなので納得することにした。

 

「“一応聞いておくけど、別に私達が、トリニティが負けても何もないんだよね?”」

「何も? 我々の純白の制服が汚され、毎日心血を注いで手入れしている羽根を画用紙扱いにされ、伝統ある校舎や施設にラクガキされ放題になり、挙句その後始末を押し付けられる我々に、何も失うものは無いと!?」

「“うん、ごめんね……”」

 

 ゲヘナのクソガキどもが襲い掛かって来るから、こっちは仕方なく応戦している、と雄弁に語るナギサの態度に、先生はそう言うことしか出来なかった。

 実弾で応戦しない分トリニティの方が大人な対応──いや、ペイント弾は服に当たればさほどでもないが、生身のところに当たればそれなりに痛い。

 実弾が致命傷にならないキヴォトスでは、ペイント弾の方が洗い流す手間を考えれば被害が大きいのかもしれない。

 

 なんとなくミコトの性格を知っている先生は、建物に被害を与えない為の配慮なんだろうな、と思った。トリニティの生徒には逆効果のようだが。

 

「とりあえず、こちらはツルギが第三広場に待機しているという情報でミコトの奴をおびき寄せます。彼女は一騎打ちを望んでいるので。そこを我々が袋叩きにします。

 先生は一般生徒の指揮をお願いします」

「“う、うん……”」

 

 異様な姿のハスミに、先生は頷き返したのだった。

 

 

 

 

 02:開戦準備……?

 

 

 校内の広場には、数百の一般生徒が先生を待っていた。

 

「あ、先生だ!!」

「やった。今回は勝てるかもしれません!!」

 

 案の定、一般生徒達にとってはちょっと刺激の強いイベントか何か程度の認識のようだった。

 わいわいがやがや、雨合羽やゴーグルを身に着けてはしゃいでいる生徒も見受けられる。

 

「ねえ、その、大丈夫? 本校舎を守っててもいいんだよ?」

 

 羽根の無い生徒が、雨合羽に羽根をしまっているちょっと着ぶくれしてる感じの生徒を気遣うが。

 

「……トリコニティ」

「え?」

「私の左右の羽根を赤と青のペイント弾で染めて、ゲヘナの連中は大笑いしながらそう言ったのです……」

 

 気遣われた方の生徒は、復讐の憎悪と怒りに戦意を滾らせていた。

 

「前回は大勢で囲まれ、雨合羽を剥ぎ取られて好き放題弄ばれました!! 油性ペンで額にカスだなんて、もうお嫁にいけません……!!」

「あ、うん。頑張ろうね……」

「そう言えば先生はゲヘナの生徒と関わりがあるとか。こうなっては先生に代わりに責任を取ってもらわねば──」

 

 なんだか変な方向に思考が飛んでいたりしていた。

 

 そんな中で。

 

「あら、先生もいらしたんですね♡」

「“ハナコ……”」

 

 読者の皆様の期待を裏切らず、スクール水着に水泳用のゴーグルをつけたハナコが先生に話しかけた。

 今から海にダイビングにでも行くのかと言わんばかりの格好だが、彼女は平常運転である。

 

「ハナコちゃん、やっぱり普通に雨合羽を着た方が……」

「おや、ヒフミさん。それはこの水着の上に雨合羽を羽織った方がよろしいと言うことですか♡?

 それはそれで、不審者度合いが増しているような気もしますね♡」

「あうう、やっぱりいいです……」

 

 雨合羽を着こんで、内側のスクール水着を人前で開帳する変質者と化したハナコを思い浮かべ、一緒に居たヒフミは肩を落とした。

 

「ああすみません、先生。

 エデン条約の件で今年はまだ宣戦布告がされてなかったので。皆さんはしゃいでいるようです」

 

 と、満面の笑みでハナコがそう言った。

 彼女もはしゃいでいる一人のようだった。

 

「コハルちゃんやアズサちゃんがこっち担当じゃないのは寂しいですが、先生と一緒なら心強いです!!」

「“あれ、コハルはともかく、アズサはここに居ないの?”」

 

 元補習授業部の仲良し四人のうち、コハルは正義実現委員会側として参戦しているのは分かるが、アズサがここに居ない理由を先生はパッと思いつかなかった。

 

「ええ、アズサちゃんはアリウスの皆さんの方に行っているんです」

「“ああ、確かアリウスの皆の橋渡し役をしているんだっけ?”」

 

 ヒフミの言葉に、先生は納得した。

 アリウスの生徒達はまだトリニティに馴染めていないと聞いていた。

 そして今、アズサはかつてサオリに望まれたように両方の生徒の間に立って骨を折っているようだった。

 

「……先生。我々はこの辺りの防衛をするだけですので、アズサちゃんの方に行ってあげてください」

「え、ハナコちゃん?」

「我々より戦闘訓練を受けているアリウスの皆さんを活用できる方が先生も勝率が上がるというものではありませんか?」

「“確かに、そうかもね”」

 

 ハナコの言葉の裏を読み取って、先生も頷き返した。

 彼女は未だトリニティに馴染めていないアリウスの面々を心配しているのだ。

 

「“じゃあ、ここの指揮はハナコに任せるね?”」

「あ、そう来ましたか」

「“嫌かな?”」

 

 先生はハナコが繊細な心の持ち主であることを理解している。

 だが、それでもこのイベントを子供らしく心から楽しんでほしかったのだ。

 

「ふふふ、私の指図で、皆さんが濡れ濡れの透け透けになって乱れてしまうなんて♡

 なんだかいけない気分になりますね♡」

「ハナコちゃんは平常運転ですね……」

 

 実際、ゲヘナの生徒達は雨合羽を剥ぎ取って追い打ちを平然としてくるので、ヒフミはあんまり否定できなかった。

 

「“それじゃあ、任せたよ”」

「ええ。先生もお気を付けて」

 

 アリウスの生徒達の居場所を聞いて、先生はそちらに向かうのだった。

 

 

 

 

 03:アリウスVSアリウス

 

 

 アリウスの生徒達は、トリニティ自治区でゲリラ戦を仕掛ける手筈だった。

 

「D小隊は建物の上に待機だ。

 E小隊はあそこの建物の後ろでアンブッシュを」

「“アズサ、頑張ってるね”」

「ああ、先生か」

 

 先生は、アリウスの生徒達の前線指揮をしているアズサに話しかけた。

 

「ハナコから連絡が有った。

 先生は今回こちら側だそうだな。心強い」

「“皆は大丈夫かな?”」

 

 先生にとって、トリニティとアリウスの生徒に違いなど無い。

 彼女らの自治区が壊滅して以来、何かと気にしていたのだ。

 

「ああ。まさかあれほどゲヘナへの憎しみを植え付けられていた私達も、こうして直接ゲヘナ学園と戦うことになるなんて、今になって実感が湧いてきたようだ」

「“そうなんだね……”」

 

 ゲマトリアのベアトリーチェによる、歪んだ洗脳教育を思うと、先生は奥歯を噛み締めるほどの怒りを思い起こす。

 

「本当は私達は、ひもじさや惨めさをそうやって誤魔化すしかなかったんだ。

 自分達だけが、苦しい思いをしていると」

「“そんなことはないんだよ”」

「分かっている。みんな分かっているんだ。でも、私はともかく、皆は誰かから優しくされることなんて慣れていないんだ。

 マダムは邪悪だったが、その全てが私達にとって不利益でもなかった」

 

 アズサも複雑そうにしていた。

 ベアトリーチェは間違いなく悪だったが、アリウスの悲惨な内戦を終わらせた。それは大人にしかできない偉業だった。

 そんな彼女を、悪く言えない者もいた。たとえそれが洗脳の結果だとしても。

 

「それが捻じ曲がっていても、マダムに恩が有るのは嘘ではない。どうしても心の底から憎み切れない。

 サオリ達もどう思っているのだろうか……」

 

 アズサは、結局生き別れる形になった家族たちを思い起こす。

 

「“ゆっくり、傷を塞いでいこう。

 私は、皆の苦しみを理解してあげられないけど、必要なら寄り添ってあげることは出来るから”」

「……そうだな。ありがとう、先生」

 

 アズサは目元に滲んだ涙を拭って、頷いた。

 その時だ。

 

「敵襲、敵襲だ!!」

 

 高所で見張りをしていたアリウス生が、大声でそう言った。

 

「どうやら、来たようだな。先生、指揮を頼む」

「“うん、任せて”」

 

 先生は雨合羽とゴーグルを付けて、頷いた。

 アリウスの生徒は、アズサも含めてかつてそうだったようにガスマスクを着用した。

 

 今は、ただトリニティの為に戦う。ただそれだけだった。

 

 

 バトルパートが始まる。

 

 

 

 

 

「まさか、この動き、間違いない!!」

 

 バトルパートが終わると、アズサは何かを確信したようにそう言った。

 

 ゲヘナ側から来た雨合羽とゴーグルの生徒達は、ゲヘナ生とは思えないほど秩序だって行動していた。

 アズサ達の奇襲や配置までも見破られ、状況に拮抗が生まれた。

 

「彼女達は、元アリウスの生徒だ!!」

「“なんだって!?”」

 

 

「その通りだぜ」

 

 強烈な水流が、アズサ達の防衛陣地を薙ぎ払う。

 

 驚愕する先生達の前に、放水車の上に乗ったミコトが彼女らの前に現れたのだ。

 

「お前らのところから去ったアリウスどもはよ、俺の舎弟になったんだ」

 

 放水車を戦車に見立て、その周囲をゲヘナ側の元アリウス生が随伴歩兵として付き従う。

 

「おうおう、てめぇら。トリニティのカスどもに世話になって鈍ってんじゃねーのか?」

「うちらは誰にも愛されねぇんだ。だからツッパルしかねえんだよ」

「昔馴染みだからって関係ねぇ。アリウスの喧嘩、姐御と一緒に教えてやるんだ!!」

 

 彼女達は、しっかりとグレていた。

 かろうじて存在していたトリニティっぽい清楚さをかなぐり捨てて、完全に不良になっていた。

 

「“うわぁ、悪影響を受けてる……"」

 

 これには先生も、そう言うしかなかった。

 

「よっと」

 

 バンカラ装束の代わりに、雨合羽を羽織ったミコトが放水車から降りる。

 

「お前ら、もう一度その誰だかわかんねぇガスマスク剥ぎ取って、叩き潰してやんよ!!」

 

 ケダモノの笑みを浮かべたミコトが、そう言った。

 

「楽しいわね。ミコト」

「ああ、何度でもトリニティと大喧嘩できっからなぁ!!」

 

 運転席からエグイ覚悟の決まった競泳水着を着たユエが降りて、防弾盾を構えてミコトに寄り添う。

 恐らくユエはこのイベントのピックアップの限定☆3として実装されているのだろう。これが好きなんだろ、と露骨にプレイヤーに媚びを売るスタイルであった。諸君、石の貯蔵は十分か?

 

「“マズい、早く立て直さないと!!”」

「おう、先生も居るのか。じゃあ今回の喧嘩はもっと楽しめるな!!」

 

 行け、とミコトが合図を出した。

 

 すると、放水車の後ろからゲヘナ生が雪崩のように押し寄せてきた。

 皆でわいわいきゃーきゃー、心底楽しそうに銃を持ってはしゃぎまわっている。

 

「おめーら、トリニティどもが考える大悪党ミコト様ってのは、民間人も攻撃するよなぁ!! 遠慮しないで建物や人に撃ちまくれ!!」

 

 悪ガキの群れは、手あたり次第トリニティ自治区の白い白亜の壁や建物にペイント弾でラクガキを始めた。

 お店などは事前に閉めている。流石に関係ない建物に進入しない程度の理性はあるようだった。

 

 だが、それだけだった。

 

「や、やめてくれぇ!!」

 

 偶然歩いていた住人の一人が犠牲になった。

 

「ねえねえ、ゲヘナ参上!! って書いてみたんだけどどう?」

「あはは!! こっちの方がアートだよ!! あたし、ワイルドハントでもやってけるんじゃないかな!!」

「そーれ、捕まえた!! 塗っちゃえ、塗っちゃえ!!」

 

 災害だった。

 悪魔の群れが、無邪気に笑いながら絵具で美しいトリニティの街並みを塗りたくる。

 まさに蹂躙とはこの事だった。

 

「く、これでは戦いにならない!!」

「“とりあえず、退却しよう”」

 

 戦いなれている筈のアズサ率いるアリウスの生徒達が、物量で押しつぶされそうになっていた。

 もう既に何人かは雨合羽を剥ぎ取られ、白い制服を汚されまくっている。

 

「あ、先生みーっけ!!」

「本当だわ!!」

 

 その時、先生の前にアルとムツキが登場した。

 

「先生、悪く思わないでね。ゲヘナの生徒は全員、ミコト様に脅されて参戦してるだけだから」

「そう言う設定だけどね♪」

「ええ、キヴォトス最大のアウトロー、ミコト様はトリニティが気に障るから滅ぼすのよ!!」

「そんな前書きは良いから、早く先生を捕まえて、ラクガキしよう♪」

 

 ムツキが、にまぁ、と意地悪く笑った。

 先生は思わず背筋がぞくりとした。

 

「そーれ、襲い掛かれハルカちゃん!!」

「先生!! すみません!!」

「“う、うわあぁぁ!!”」

 

 物陰から強襲してきたハルカに襲われ、先生は成すすべなく地に伏した。

 

「先生!!!」

「“私のことは良いから、早く逃げて……”」

「く、先生のことは忘れない!!」

 

 割と一度でも良いから言ってみたかった台詞を言いながら、先生はアズサにそう告げた。

 撤退を開始するアリウス生たち。

 

「それじゃあ先生。お絵描きしようね♪」

 

 きゅぽ、と油性マジックの蓋を開けたムツキが先生に迫る。

 

 こうして、トリニティとゲヘナの全面戦争が幕を切ったのであった。

 

 

 

 

 




ユエが星3ピックアップなら、配布は誰になるんでしょうか。
別衣装の無い、雨合羽姿のミカとか? 殺意の波動に目覚めたナギサだったりするかもしれませんね。

それでは、また次回!!
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