同時に、あのふにゃふにゃボイスを文章で表現できないな、と膝を突きましたがww
それでは、本編どうぞ!!
車内は、沈黙に包まれた。
ミコトの告白、それはある種の懺悔だった。
「……道理で。キヴォトスの常識に囚われない訳だよ」
カヨコが真っ先にそう呟いた。
彼女はミコトの素性を行政官時代に調べていた。
結果は、真っ白。ミコトがキヴォトスの外部から来たと言う推察が、正しかったのを知った。
「キヴォトスにも色々とやっちゃいけないラインはあるけど、妊婦をボコボコにするのはかなり上位に食い込むよね……」
ムツキは割とドン引きしていた。
知らなかったとはいえ、赤ん坊を一人殺しかけた。キヴォトスでも笑って済まされない。
「まあ、こっちでやれば一発で矯正局行きかな」
カヨコもそう太鼓判を押した。
これより先の未来で、ミカが審問会で論点になったのは、クーデターを起こした叛逆よりも、セイアの殺害に関与した件についてだった。
つまるところ、キヴォトスで最も重い罪とは、ヒトを殺すことの次に、殺意を抱いて準備をしそれを実行すること。
滅多に人死にが無いからこそ、それを実行できる状況は強い殺意の証明になってしまうのだ。
殺意の立証は、法的に非常に困難とされる。
例えば強盗目的で住居に進入し、住人を金属バットのような凶器などでボコボコにして結果的に死なせても、それは強盗の結果として死んでしまった、と判断される可能性が高い。殺すことを目的としたわけではないからだ。
「俺の地元じゃ泣く子も黙るキヴォトス送りはどんな不良もビビる代物だったんだぜ。全員が銃を持って乱射しまくってるやべー場所だって」
「あんまり反論できない……」
窓の外を眺めるカヨコは、ミコトの言葉に遠い目になった。
「実際はみんな銃を撃ちまくって、爆弾をバカスカ投げまくるイカレた場所だったがな」
「うーん、実際そうだから困る♪」
ムツキは肩を竦めて笑った。
多分キヴォトス全員が、お前が言うな、と言うだろうなとカヨコは思った。
「キヴォトスに来たのはゲヘナに入学する二か月ぐらい前だ。
だから考える時間だけはあった……」
銃を調達したり地名を覚えたり入学手続きしたり、色々やることもあったがよ、とミコトは言った。
「俺が欲しいのは、本物の強さだ。俺の強さの証明だ。
誰も追いつけねぇ、力の最奥なんだよ。
身体も、精神も、技術も。その果てを手にしたい」
ミコトはそう語ったのだが。
「あのさ」
カヨコは前を見やってこう言った。
「あんたさ、反省してないでしょ?」
彼女は、後に先生も感じたことを言語にした。
「もしその、あんたがボコボコにした女性が復帰したら、また挑むつもりでしょ?」
「当たり前のこと聞くなよ」
「それを、反省していないって言うんだよ」
結局のところ、ミコトの後悔は全部自分の為だった。相手に対して申し訳なく思ってるが、それは全体からすれば些細な部分でしかない。
酷く自分勝手で横暴、彼女の本質はそれ以上でも以下でもない。
「まあな、こっちに来てツルギの奴にもやりすぎちまった。
俺なりに気を遣おうとしてたんだがな……中々うまくいかねぇ」
ミコトが手加減を覚えたのも、ホシノの要求に従ったのも、トリニティとの演習も、彼女なりの気遣いだった。
虎が子猫を踏みつぶさないようにするような、そんな程度だが。
「別に責めてはないよ。ゲヘナは自由だから。そんな権利も無い」
とは言え、普段口数の少ないカヨコにしては、かなり咎めた方だった。
ゲヘナの不良なんて、反省しないし顧みないのがデフォだ。カヨコはそんな輩を山ほど見てきた。
ミコトは言った、キヴォトスは銃を乱射して爆弾をドカンとする輩ばかりの世界だと。ある意味、その一員としてミコトは振舞っているだけに過ぎないのだ。他人に銃口を向けたことのない生徒だけが、ミコトに石を投げられる。ただそれだけのことだ。
「それに、その代償をあんたは知っているしね」
「ああ……不良ってのは、キヴォトスじゃ弱者よ。
勉強なんてしたくない、学校の政治が気に入らない、居場所がない、金が無い、そんな理由で社会から爪はじきになんだ」
多くの場合、それは自己責任だ。
だが、それに対してやり直す機会が無いのもまた事実だった。
ミコトは良い、それで納得しているし、受け入れている。
「俺が不良として、キヴォトスに対してツッパる理由はそれよ。
あいつらはバカだけど、話してみりゃそこまで悪い連中でもない。
俺は一応キヴォトスでやり直せって言われてこっちに来た。じゃあ何であいつらにその機会が無えんだ? こんだけ学校がいっぱいあんのによ、誰もそれをしねえんだ?」
ミコトはそれを不条理だと感じた。
だから不良としてその立場に身を置き、それに反発しようと考えた。
「俺の喧嘩は、俺についてくる全員のもんだ。
最初にトリニティにカチ込んだ時もそうだ。俺が殴る相手は、俺がオカシイって思った全部だ。
これが風紀委員にできるか? なあ、カヨコ」
「ならもっと、やり方を考えてよ……」
その過程で一度ボコボコにされたことのあるカヨコは、再び遠い目になって窓の外を見やった。
「だからアル。お前は普通に部活でもしてろよ。わざわざこっちに来る必要はねぇ」
そう、ミコトは締めくくった。
「珍しいわね。ミコトが昔のことを話すなんて。
この話は甘えられる相手にしかしないのに」
手鏡で化粧を直しているユエがそう言った。
「あれ、ユエ。この話をお前にしたっけ?」
「したでしょう、忘れたの?
「そうだったっけな」
まあ忘れたと言うことは、どうでもいいことだ。ミコトは追及しなかった。
「……ミコト様、やっぱりあなたは」
ずっと黙って話を聞いていたアルが、口を開いた時であった。
「えー、着きました」
車が目的地に辿り着いた。
とても言いづらそうに運転手のカイザー社員がそう言った。
そこは、ヘリポートだ。
ここからはヘリでの移動になる。
「きゃぁ!! ムツキ、私ヘリに乗るの初めて!!」
「くふふ、乗ってから怖がったりしないでよ」
既にプロペラが回っているヘリコプターに、アルが目を輝かせる。
一行がヘリに乗り込んだ。
ヘリが飛び立つ。
「む、ムツキ、お願いだから手を離さないで……」
「もう、言わんこっちゃない」
自分の思った通りの反応をする幼馴染に、にっこりとするムツキだった。
「次の犯人の電話まで、あと二時間か」
「向こうまで、ギリギリ間に合いそうね」
一行を乗せて、ヘリは飛ぶ。目的地へと。
「よし、着いたね」
ヘリコプターから、縄梯子でカイザー所有のビルの上に降り立つ。
そこはある自治区の都市部だった。
「……中の様子はどうだ?」
「今、見てみるわ」
アルはスナイパーライフルを構えて、スコープを覗き込んだ。
その視線の先は、この自治区の学校だった。
「……銃を持った生徒が巡回しているみたい。授業が行われてる形跡もないわ。厳戒態勢ね」
「それじゃ、作戦通りにするべきだね」
カヨコがハナコに連絡を入れた。
すぐに、スマホに学校の図面が送られてくる。
『予想通り、学校の一勢力が暴走した結果でしょう』
電話越しに、ハナコは語る。
そう、目の前の学校は、カイザーが掘り当てた油田のある自治区だった。
『恐らく生徒会のメンバーが、生徒会室に軟禁されている筈です。
彼女達の解放が、あなた達の役目です。恐らく、人質もそこに』
「オーケー、シンプルだな」
『FOX小隊の皆さんには他の実行犯の捕縛をお願いしました。こちらはすでに人数も、居場所も把握済みです』
学校には最低限の実行犯だけが残されていると見ている。
「……実行犯は、恐らく風紀委員のような治安維持組織だろうね」
『ええ、そうでしょうね』
カヨコの複雑そうな言葉を、ハナコは肯定した。
『資料を見る限り、この自治区は以前より財政難を抱えていたみたいです。
しかしカイザーが大金で採掘権を購入し、一時期は潤いました』
『きっと、彼女達も油田が見つかるなんて思っていなかったんでしょうね……』
そんなユウカとノアの声が聞こえた。
「なんかアビドスみてぇだな」
「あそこより酷いところはそうないよ。でも、あれよりだいぶマシなだけな自治区は幾らでもある」
ここもそんな自治区の一つだった。ただそれだけのことだった。
「どうする? 裏口から行く?」
「まさか」
ムツキの問いに、ミコトは鼻を鳴らす。
「正面突破だ」
ミコトが突入した学校は、すぐに阿鼻叫喚に陥った。
彼女は陽動で、本命はムツキとユエが裏口から生徒会室を解放すると言う、贅沢な作戦だ。
アルは狙撃を担当し、カヨコはスポッターをすることになった。
「ヒット、ターゲットダウン」
アルは単発式のライフルで狙撃を行う。カヨコがその結果を淡々と報告する。
すぐに廃莢を行い、ライフル弾を装填する。
スコープの先を覗き込むと、混乱する敵勢力が見える。
アルの射撃の成績なら、幾らでも当て放題だった。
「ヒット、ターゲットダウン」
次にリロードを行うと、スコープの先の廊下には誰も居ない。しかし、窓から見える位置に居ないだけだろう。
だが、もうこの時点でアルの役割は果たしている。
狙撃手の存在を印象付けるだけで、相手の行動を制限できる。
「いい腕だね。うちの学校で狙撃なんて我慢強いことが出来る生徒が居るとは思わなかった」
「あ、ありがとう……」
位置的にカヨコのほぼ真横にアルが居るので、彼女はその声音にぞわぞわっとした。良い声が過ぎるのも考え物である。
『あー、あー、こちらユエ。生徒会室の制圧完了。
軟禁状態だった生徒会役員全員及び人質を解放しました。これ以上の戦闘は無意味だわ』
すると、校内放送でユエの声がした。
どうやら生徒会室に放送設備が備え付けられていたようだ。
「終わったみたいだね。まあ辺境の学校ならこの程度のものか」
「そうね……」
アルも銃を下ろし、頷いてみせた。
「これで全員だな」
校庭に今回の誘拐事件を企てた下手人たちが引きずり出されて拘束されていた。
三十人程度の治安維持組織、誘拐事件はある種のクーデターでもあった。
「この度は、私達の仲間が申し訳ないことを……」
解放された気弱そうな生徒会長が、何度も頭を下げていた。
「気にしないでよ。一緒に監禁されていた時に、言葉は尽くしたじゃない」
と、そう言ったのはプレジデントの娘だった。
プレジデントと同様にロボットの子供かと思いきや、普通に人間の生徒だった。
「お前がプレジデントの娘か。
なんつーか、血は繋がってないのか?」
「ミコト」
「あ、悪い悪い」
流石にセンシティブすぎる内容に、ユエが軽くミコトを睨んだ。
「別に構わないわよ。普通に養子。
うちみたいな裕福な家庭は、世間体の為に孤児を引き取ったりするのはよくあることよ」
気の強そうなプレジデントの娘は、何でもなさそうにそう言った。
反省したミコトは、そうか、とそれ以上事情にツッコまなかった。
「くそ、油田さえ手に入れば、我が校の未来は明るかったはずなのに」
すると、拘束された犯人の一人がそんな恨み言を吐いた。
「何を言っているの!! 他人を不幸にして得た利益に、何の意味があるのよ!!」
これには、アルもたまらずそう言った。
「あなた達の誰が、石油が出ると思っていたのよ!!
誰も出来ないと思っていたことを成した相手から、それを掠め取ろうとするなんて、恥を知りなさい!!」
アルの一喝に、犯人たちは──中学生達は涙目になった。
そう、ここは中学校なのだ。
「アルちゃん、年下相手なんだからそれくらいにしてあげよう」
「はッ、い、いえ、その、出しゃばるつもりはなかったっていうか……」
なんか目立ってしまったアルは、ムツキの言葉にあたふたし始めた。
「どうやらあっちの実行犯の捕縛も済んだみたい」
スマホで連絡を取っていたカヨコが、作戦の完了を告げた。
今回のシゴトは、これにて終了した。
「皆の衆、今回は本当に助かった。こちらを好きに分け合いたまえ」
犯人グループを警察に突き出して報告に戻ると、プレジデントがアタッシュケースを今回の参加者の前に置いた。
「わぁ、これって一億円? キャッシュで? 本物なの!?」
と、アルが目を輝かせていたが。
「私は学校の要請で来ましたので、報酬は頂けませんわ。娘さんの無事の確認こそ、私の報酬です」
ハナコは報酬を辞退した。
まさにお上品なお嬢様な対応だった。
「私達も似たようなモノなので、どうしてもというならセミナーと報酬を交渉してください」
「そうですね。今回の経験はお金に代えられないモノだと存じます」
ユウカとノアもそう答えた。
「狐たちは?」
「もう帰ったわ。彼女達もお金なんて個人的に受け取らないでしょう」
ミコトがこの場に居ないFOX小隊について尋ねると、そのようにユエは述べた。
「そうか。じゃあ俺の取り分はあの中学校に送ってやれ」
「……良いのかね?」
「私もそれで良いわ。お金なんて興味無いし」
ではそうしよう、とミコトとユエの意思を尊重するプレジデント。
「みんな欲がないね♪ まあ私はこれだけでいいや、大したことしてないし」
敢えて空気を読まずにムツキは札束をひとつ手に取った。
「あ、その、私も、二発撃っただけだし、これだけで……」
幼馴染にならってアルも札束ひとつで我慢した。
「じゃあ、私もこれぐらいでいいや」
風紀委員時代の貯蓄ももう殆ど残ってないので、カヨコも遠慮せずに札束をひとつだけ受け取った。
こうして、一連の事件は幕を閉じたのだが。
カヨコの物語が始まるのは、これからであった。
後日、カヨコは登校して教室でホームルームの時間を待っていた。
「ねえねえ、鬼方さんって……」
「この間、ミコトさんに連れてかれたし……」
「やっぱり不良なんだわ……」
「耳元で何かささやいてほしいな……」
クラスメイトの口さがないひそひそ話が聞こえてくる。
いつものことだ。
身体的特徴、成績、それ以外の何か。クラスという社会の縮図、その中では異質さを持つ者は排除される。
カヨコの場合、それが目の鋭さと言うだけの話だった。
彼女はこれまでの人生経験で、それに反論するのが無駄だと知っている。
そうやって口論が過熱すれば、より不利な立場になるだけだ。
女性の多くは理屈ではなく、感情で物事を判断するものだ。風紀委員会に居た頃でもそれは大して変わらなかった。
風紀委員も前政権時代に無理やり割り当てられたからしただけ。
なにか情熱があってやっていたわけではない。
無味無臭、モノクロの人生。
ミコトの語る弱者の不良と、何の大差も無い。将来なんてなにも見据えていない。
カヨコは自分の好きな音楽で、自分の世界に籠ろうとイヤホンを耳に当てた。
留年して、もう一度登校してみたが、何も変わらない。
当座の資金はできたし、またしばらく引き籠もろうか、と無気力な彼女がそう考えた時だった。
「ムツキ、やっぱり先輩達の校舎って気まずいわよ……」
「そんなこと言ってどうするの?」
聞き覚えのある声が聞こえたのだ。
「あ、居た居た!! あ、あの、カヨコ先輩!!」
無垢で満面の笑みを浮かべる、アル。彼女がカヨコの居る教室に入って来て、彼女にこう言った。
「ねえ、カヨコ先輩!! 一緒に起業しましょう!!」
「アルちゃんったら、カヨコ先輩がミコト先輩にも頼られるようなワルだって思い込んでて、スカウトしに来たんだよ」
「なに、それ……」
本当に、なにそれ、だった。
偶々この間、一緒に居ただけ。会話も特段していない。
「ふふふ、初心表明は大事よね。付いてきて!!」
アルは周囲の視線も何のその。
カヨコは居心地の悪くなったクラスから逃げるように、二人に付いて行くことにした。
「ねえ、この間とキャラ違うけど、どうしたの?」
「実は、新しく銃を新調したんだけど、それで気が昂っちゃって」
カヨコはムツキにこっそり尋ねると、アルの背のライフルを見やる。
そこには、ワインレッド色に塗装されたスナイパーライフルがあった。
これ高いんだよなぁ、と他人事のように思うカヨコだった。
だが、二人の行き先はカヨコも衝撃を受けた。
「ミコト様!!」
よりにもよって、アルはミコトのクラスへと向かったのだ。
「なんだ、お前ら」
「ミコト様、私はね!!」
退屈そうにホームルームの時間を待っているミコトに、アルはこう言った。
「私は、あなたのように自分が理想とした自分になるわ!!
あなたが私の理想を、ファンタジーだって言うなら」
ミコトは、何も言わずジッとアルを見ていた。
「私が、最初の一人になるわ。あなたが、キヴォトス最強という最初の一人になろうとしているように!!」
アルの理想がファンタジーなら、ミコトの目標も相当にファンタジーだ。ミコトにはそれを現実に出来る実力があると言うだけで。
「私の、憧れの人……私は、私の道を行きます」
カヨコは、彼女のその最初の一歩を見ていた。
彼女の白黒の世界が、色づいていく。
無味無臭の彼女の人生に、青春の風が吹き始めた。
「いいぜ。お前が下らねぇチンピラになり下がるなら、そん時は殴って止めてやるよ」
ミコトはニヤリと笑ってそう言った。
「だがきっと、お前みたいな奴が、いつか世界を変えるんだろうぜ」
「い、言っちゃったぁ!!」
気が大きくなり過ぎたアルが我に返ったのは、それからすぐのことだった。
「わ、私ったらみんなの前で、あんな大胆なことを……」
「なに言ってるのさ、アルちゃん。あれぐらいしないとダメだって、言ってたじゃない」
校舎裏で白目を剥いて愕然としているアルの姿を、ムツキは面白そうに見ながらそう言った。
「まさか何にも考えてなかったとはね」
これにはカヨコも呆れてものが言えなかった。
「か、カヨコ先輩……そ、その、一緒に会社経営をしませんか?」
アルはもじもじと指先を合わせて、上目遣いでそう言った。
「……別に、やることなんてないし、私は良いよ」
「ほ、本当!? カヨコ先輩!!」
「先輩はいいよ。それより、うちの学校でも起業は校則違反だよ」
学生の本分は学業なので、他人から経営権を譲ってもらうなどしてもらうならともかく、勉学の時間が取りにくい起業はダメだという理屈だ。
尤も、これは時代にそぐわない校則の一つである。携帯など無かったような時代では、会社経営に専念するのはそれに全てのリソースを割かなければならなかった。
「ふ、ふふふ、それに関しては、実績を打ち立てて認めさせれば良いのよ。ミコト様みたいにね!!」
カヨコは、アルの尻尾を確認した。タヌキ系の尻尾は無いようだった。
「でもまあどうせ、そんなに悪い事しなければ風紀委員会もこないでしょ♪」
「たしかにそれはそうだけど……」
風紀委員会も、悪ガキ相手に対応が忙しい。
よほどのことをしなければ目を付けられないのは本当だ。
とは言え、二人の皮算用にカヨコも不安になる。
「すみません、すみません!!」
ふと、校舎裏の奥の方から、そんな声が聞こえてきた。
「あのさ、ハルカ。ちゃんと私達が話を振ってあげてるんだから、ちゃんとしないとダメだよ」
「いいの? このままじゃ昔みたいにいじめられて孤立しちゃうよ?」
三人がそちらを見てみると、何やら一人の生徒を数名の生徒が囲んでいるではないか。
「私達の言う通りにすれば、あなたを守ってあげられるんだから、ちゃんとしなきゃ」
「そうそう。他のところじゃやってけないでしょ?」
「ハルカ、うちらは友達だから言ってあげてるんだよ」
すみません、すみません、とハルカと呼ばれた生徒は必死に頭を下げている。
「なんだ、ああいう手合いか」
同調圧力の強いクラス内カーストの確認作業だと、カヨコは思った。
ミコトがこの学校の暴力の頂点に君臨して以来、彼女にイジメの相談をする者たちが一時期現れたのだ。
イジメなんて下らない弱者の所業である、とミコトは定義している。
気に入らないので、それが本当かどうか確認した後、ミコトは下手人をぶん殴ったりしていた。
それ以来、露骨ないじめは校内から消えたのだが……。
「あなた達、止めなさい!!」
遠巻きに見ていた二人は、彼女達の方に向かうアルに目を見開いた。
「そんな風に詰め寄って、可哀想じゃない!!」
「な、なんなの、あんた?」
「やめよう、高等部の制服だよ」
「ちぇ……また後な」
中等部の生徒達は、先輩の登場にそう言い捨てて去って行った。
「あなた、大丈夫かしら?」
「すみません、こんな私に気遣ってくれて、私にそんな価値なんてないのに……」
「気にすることはないわ。誰だって、最初は無価値なのよ」
ハルカと言う少女が、顔を上げる。
「もし本当にあなたが無価値だと言うのなら、私が一緒にあなたの価値を探してあげるわ!!」
アルの笑顔が、そこに在った。
無価値で無意味なハルカの人生に、意味が出来た瞬間だった。
「お、お名前を、教えてください……」
「ふふふ、私の名は陸八魔アルよ。キヴォトス最高の、アウトローになる女よ!!」
まだ自分に酔ってるよ、とムツキはくふふと笑いながら思った。
やれやれ、とカヨコはまた犠牲者が増えた、と思った。
「あ、アル様、ですね!! どこまでも付いて行きます!!」
恍惚の表情で、ハルカはアルにそう言ったのだった。
これにて、便利屋結成編は終了です。
あとはハナコと、黒服関連とミカの暗躍を予定しています。
それが終わったら、アビドス原作編みたいな、原作とは変化した補習授業編を書きたいと思います。
ここ最近は連続で低評価を貰ったりしたので、ちょっと不安定でしたが何とか持ち直しました。
メンタルの起伏は作者の創作の源泉でもあるので、痛しかゆしでもありますな!! いや、お恥ずかしいことですが!!
気を取り直して、これからも頑張って更新を続けますので、高評価や感想があれば作者のモチベーションアップにつながるので、これからもどうぞご愛読下さると幸いです。
あと、作者はブルアカで前作もあるのですが、エロ無しR18というジャンルなので、ここでおススメしずらいのが難点ですねww 一応、エ駄死版というのも書いているには描いたのですが……。
FOX小隊と絡みに行くのに、あっちのオリキャラであるWolf小隊とか出してみようかなと思う反面、これ以上キャラが増えてもなぁ、という感じです。
なので、一応何もかも未定ですが、アンケートを設置させてもらいますね!! ご協力のほどをお願いします!!
ではまた、次回!!
どんなオリキャラのエピソードが読みたい?
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デスサイズの統括集団、メメントモリ
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エリートなのに落ちこぼれ、Wolf小隊
-
まさかの登場、プレジデントの娘