ティーパーティーの水着3Dが良すぎたので、前回の予定を変更してこれを書きました。
あと、お気に入り1500人突破ありがとうございます!!
ミコトの演習からしばらくしてのことである。
トリニティ総合学園、より正確にはティーパーティーの上層部に激震が走る。
「ナギサ……」
「ええ、ついにこの日が来てしまいましたね……」
セイアとナギサが、ずっと戦々恐々としていた日が来たのだ。
それは、即ち──。
「いえーい、みんなー!! 今日から私がホストとして頑張るからねー!!」
生徒会室のテラスから、下に集まっている生徒達に手を振るミカ。
『祝☆ホスト就任』と書かれたタスキを掛けて、元気いっぱいに愛嬌を振りまいていた。
「ミカ様ー!!」
「おめでとうございます、ミカ様!!」
下に居るパテル派の面々が喜んで手を振っていた。
「ふぅ~。いやぁ、これから責任重大だね☆」
「ミカさん」
テラスから戻ってきたミカに、そそそ、とナギサが近づく。
「ホストたるミカさんに、政務のような雑事は似合いませんわ。全てこのナギサにお任せください」
「え、なに、その口調。キモイよ……ナギちゃん」
「お願いですから、校政をかき乱すようなことはしないでくださいね? ちゃんと私に相談してから行動に移しましょうね?」
「ナギちゃん、私達の派閥って敵対してるんだけど……」
「ミカさん!!」
「は、はいぃ」
ナギサの迫力ある笑みに押され、ミカは『祝☆ホスト就任』のタスキを彼女に掛けた。
これがナギサ政権恐怖の縮図である。
「ミカ。次のホストは私なのだから、それまでは校内の安定化に努めるんだよ」
「どうせセイアちゃんは病弱だから、ナギちゃんに丸投げでしょ」
「そ、それについては申し訳なく思ってるが……」
セイアまで苦言を呈してくるので、ミカはぷくぅっと頬を膨らませて嫌味を返した。
「ここ最近、コツがつかめてきたんだ。校内で水面下に噂されている予言が、真実かどうかを確かめねばならないんだ」
「だけど、その予知夢って結構体力使うんでしょ?」
ミカはここ最近、セイアの体調が日に日に悪くなっているという話を耳にしていた。
それが彼女の異能による代償だと言うのなら、ミカとしても面白くない。まるで悲劇のヒロインじみた、気取ったような献身だからだ。
ミカは割とその辺りシビアな考えの持ち主だった。
「あ、そうだ!!」
ミカは二人に対して、にやりと笑って見せた。
「実は私からも予言があるんだ!!」
「ま、まさか、ミカさんまでカルトにかぶれてしまったなんて……!!」
「違うってば!!」
全く信用の無い幼馴染に対し、ミカはぷんぷんと怒って見せた。
「実はね、あの逢坂ミコトが連邦生徒会に演習の申請をしたって情報が入ったの」
「な、なんですって!? どこからそんな話を!!」
どこぞの便利屋社長みたいに驚愕するナギサに、ふふんとドヤ顔でミカが答える。
「私の情報網も中々なんだよ」
「まだ情報局もそんな話を掴んだと聞いてはいないね。本当なのかい?」
セイアの疑問も尤もだ。そんな重要度の高い話、ティーパーティーにすぐに報告しない方がおかしい。
「ふっふっふ、実はゲヘナには密偵を送ってるんだよ」
「……なるほど、内通者ですか」
「もうッ、ノリが悪いなあ!!」
察しの良いナギサに、ミカは不満げだった。
「まあ、所詮ゲヘナの生徒だよ。ちょーっとお金を恵んであげれば、何でも教えてくれるんだ」
大嘘だった。
対立する生徒会長同士、ミカはナギサに全ての手札を晒すことはしなかった。
「ミカさん……普段ちゃらんぽらんで遊んでばかりだと思っていましたが、ちゃんと学校のことを考えて行動してくれていたんですね!!」
「うーん、やっぱり一回ぐらいグーパンしておいた方がいいかな」
感激しているナギサに、拳を握り締めるミカ。
ミカもミカなりに派閥内で意見をまとめたり政策を提出する為にその場に居たりしているのだ。部下たちの話にお人形さんのような容姿を駆使して赤べこのように頷いているのである。
「止めやまえ。その拳を振り下ろせば自らに苦痛が返って来るだけだよ……うッ」
「セイアさん!!」
「ふふ、ミカの就任祝いに、無理をし過ぎてしまったようだ……」
ふらり、と倒れそうになったセイアをナギサが慌てて抱き留める。
「もう、病人に無理してまで祝われたって嬉しくないよ!!」
救護騎士団に連絡を入れてから、ミカはそう言った。
「すまない……」
「ミコトさんの襲撃に関して私達に任せて、今は休んでください」
すぐに救護騎士団が現われて、担架で運ばれていくセイア。
「じゃ、私の方でうちの子たちに準備するように言っておくね」
「こちらも連邦生徒会に問い合わせを行いますので、対応はそれからですね」
「今のうちに私は私のやれることをしておくよ」
「やれることとは?」
「ランチ!!」
ナギサは溜め息を吐いてミカを見送るのだった。
ミカのランチタイムは、学外の喫茶店の奥まった場所だった。
他の席から離れていて、密談にはもってこいのところだ。
「これはこれは。ミカさん、ホスト就任おめでとうございます」
その席には先客が居た。
ユエだ。サンドイッチとアイスティーが置かれている。
「別に。どうせお飾りだし。それより、ここに来るまで誰にも見られていないよね?」
「ええ。それにこの喫茶店はデスサイズが密かに買収して、店員をその構成員で固めていますから」
「へぇ、こんな学校の目と鼻の先にまで手を伸ばしてるんだ」
「お互い様でしょう? ティーパーティーの議員なのに不良ごっこをさせられていると、愚痴をこぼしておりましたよ」
「愚痴をこぼせるくらい懐柔してるんだ。まあ別にいいけどさ」
別に腹の探り合いをする為に、ミカもここに来たわけではない。
ユエが店員に目配せすると、彼女は店の入り口のドアに掛かっている“open”の札を“close”にひっくり返した。
「これが、ティーパーティーの資料庫にあったアリウスに関する資料だよ。最近のもあるみたい」
「おや、アリウス分校の所在地は不明だったのでは?」
「十何年か前にティーパーティーが接触したみたいだよ?
あっちの自治区はかなり荒廃していて、支援の申し出をしたみたい」
ミカはカバンから埃っぽい古い資料をテーブルに置いてそう言った。
ユエはその中から比較的新しい資料を手に取った。
「しかしにべもなく断られた。連邦生徒会に仲裁を求めたが、それさえも突っぱねられた、と」
資料からはトリニティなりにアリウスに歩み寄ろうとした形跡が読み取れた。
相手の対応からは警戒心と猜疑心が満ちていた。
「トリニティの自治区ってさ、かなり古い未発掘の遺跡とか結構あってさ」
「存じてます。私やミコト、リオ会長は連邦生徒会の依頼でそれらの遺跡の探索をしていましたから」
「ふーん、ミレニアムから度々に遺跡調査の申請が来てたってナギちゃんが言ってたけど、そういうことなんだ」
ミカは何やら納得した様子だった。
「アリウスがいるカタコンベも、そのひとつかな。
地下迷宮みたいになっていて、入り口も自動で変化するみたい」
「謎の超技術ですね……リアルにダンジョンが存在するとなると、心躍りますが。モンスターなどは出てくるのでしょうか」
ユエはニコニコと微笑みながらそんな的外れなことを口にする。
「出てきたとしても古代のオートマタぐらいでしょ」
ミカはにべもなくそう答えた。
「正直さ、アリウスと合流して逢坂ミコトに対抗しようなんて考えたわけなんだけど……」
「トリニティがパワーアップしてくれればきっとミコトも喜ぶわね」
「……どう考えても、そんなの無理だよ」
資料には、アリウスの困窮振りが報告されていた。
キヴォトスなのに全員に銃や弾薬が行きわたっておらず、家屋と言えるものはほぼ全部廃墟も同然。
食べ物を奪い合って内戦をしている最中で、ぐったりとした生徒が道端に転がっている有様、と記述されている。
これ以上の潜入に身の危険を感じた為、報告者が退避したと記載されている。
「これでよく滅びてなかったわね」
「本当だよ」
むしろ、今から彼女達を訪ねれば、今度こそ滅びているかもしれなかった。
「これが本当ならさ、彼女達に手を差し伸べるべきだと思う」
「おや、所謂トリニティ流の愛と言う奴ですか?」
「そんなんじゃないよ」
ミカは端的にユエのからかい交じりの言葉を否定した。
「昔の、先輩達がした過ちなら、それは今の私達が正すべきだと思わない?」
アリウスはトリニティ総合学園結成後、ユスティナ聖徒会によって徹底的に弾圧された。
まるで彼女達だけが悪者みたいな言い方だが、それを周囲は止めなかったのだろうか?
意見を違えた相手を叩き潰すのが、正しい事なのか?
ミカはそう思ったのだ。
「なるほど……」
ユエはそんな苦悩をするミカを見て、にやにや笑っていた。
「……何が可笑しいの?」
「いえ、他意はありませんよ。ただミカさんの思考プロセスや苦悩を摂取しているだけです」
「気持ちワルッ」
「私はミカさんのファンなだけですよ。推しの喜びや侮蔑の感情を観察して愉悦を抱くのが正しいファンの在り方でしょう? もっと気持ち悪がってくださると嬉しいです」
「最低すぎるよ……」
何が悲しいって、こんなのしかミカの味方が居ないと言うことだった。
ミカの考えや行動を、全面的に肯定する相手なんて。
「とは言え、アリウスの拒絶は所詮感情によるものです。
情動的な相手には常に相手を肯定することが重要です。特に女性と言う生き物は、そう言うのに弱い。
たとえ優しい言葉を掛けて自分を肯定してくる相手が女衒でも、それにしがみついてしまう浅ましさを持っているのですから」
「なんで私を見て言うのかな?」
「いえ、ミカさんはお可愛らしいな、と」
ニコニコと笑うユエに、いつかぶん殴ると心に決めるミカだった。
「では、近いうちにアリウスの探索に向かうと言うことでよろしいですか? これでも廃墟探索には一家言がありますよ」
「うん、まあそれであってるけどさ」
「それではこちらで探索装備の用意をしておきますね」
これで頼りになるんだから割とムカつくミカだった。
そして後日、カタコンベの探索が始まった。
「それでさ、私がアリウスと仲よくしようって言ったら、二人共何言ってんだコイツみたいな顔しちゃってさ」
懐中電灯で行く先を照らしながら、ミカが歩きながら愚痴をこぼした。
その後ろを歩き、ユエはマッピングをしていた。
「おかしくない!? 私ホストなんだよ!!
私の意見が採用されたり全然しないんだよ!!」
「ホストと言うのはあくまで主催者の意。幹事として催しの中心に立つのは、あくまで主導権があるというだけなのですね」
「そりゃあトリニティは、色々決めるのに時間が掛かるけどさ!! 議題に上げるくらいよくない!?」
根本的にミカと言う少女はトリニティの体質に合っていなかった。
一人で単身ゲヘナに来たことも、こうしてアリウスに直接交渉に出向こうとしているのもそうだ。
「ミカさんならば、ゲヘナの方が肌が合うのでは?」
「は? 冗談じゃないんだけど」
「蓮の花は泥土に咲くから美しいものですよ」
あっそ、とミカは彼女の性癖に冷淡に返した。
「それより、ティーパーティーの制服なんてどこから見つけてきたの?」
ミカの言うように、ユエの格好はティーパーティーの制服だった。まさかゲヘナの制服でアリウスに接触するわけにもいかないからだ。
「アオマさんに借りました。少々胸のところがぶかぶかですが、まあ着れるので問題ありません」
「ああ、あの不良たちの……」
「これはこれでコスプレみたいで楽しいですね♪」
「どこの制服がコスプレだって?」
ミカがイラっとするのは、これでゲヘナの制服よりも似合ってるところだった。
「個人的にはコスプレは嫌いではないのですが、見る分には好きです」
「ふーん」
「例えばバニースーツは嫌いな人はいないでしょう。しかし私はあんな下品な格好を着るのは絶対に無理です。死んだ方がマシですね。所詮あれは娼婦の格好ですから。私はそんなに安くありません。あんなのを着れる方々には尊敬の念しかありません」
「まあ、同感かな」
「そうだ。私も折角こんな格好をしているんですから、ミカさんもバニースーツのコスプレなど如何ですか?」
「ねえ、今さっき自分の言葉を思い返してみなよ!!
それに、うちの制服とバニーじゃ等価交換にならないよ!!」」
ミカの怒鳴り声に、ユエはにこにこと笑っている。
「ああそうだ、向こうに着いての設定を決めておきましょう。
私はミカさんの付き人ってことにしておきますね。実は代々聖園家に仕える従者の家系で、幼い頃からミカさんの従者として育てられ、学校でも献身的にお世話をしている、と。しかしミカさんは私のことをことあるごとに叱りつけて、その剛腕で私のことを何度も痛めつけて、うふふ、ひひひ」
「ねえ、なんで勝手にエキサイトしてるの!!
しかもなんで私がそんな意地悪な悪役令嬢みたいな設定なの!?」
「ああ、言ってませんでしたか。実は私、マゾヒストでしてミカさんに痛いことをして頂けると想像しただけで──」
「えぇ……」
「それは冗談ですから、そんなにドン引きしないでくださいよ」
そんな感じで道中、騒がしかった。
「とは言え、推しのライバーにキモイと言われて喜ぶ視聴者の気持ちが少し理解できましたね。
どんな感情でも、相手に向けられると言うのは私のようなスッポンには身に余る喜びになるのです」
「いやいや、気持ち悪がられて何が嬉しいのよ……」
「そうでしょうか? ミカさんに蔑まれるのなら、それはそれでご褒美なのでは?」
やっぱこいつマゾなのでは、とミカは思い始めた。
「これは一種の哲学かもしれませんね。
愛を向ける相手に、逆に悪感情を向けられる。そのギャップこそ、人間らしさを感じるのかもしれません」
「そうだね、今度セイアちゃんに聞いてみるよ」
「ああそうだ。セイアさんと言えば」
パン、とユエは手を叩いた。
そして、そのまま彼女はミカを壁際に押し付けた。
「え、なに、なになになに?」
「実は私、性自認は男だと言ったらどうします?」
ミカはギョッとした。
そしてぞわぞわっと嫌悪感が顔に出た。
「ふふふ、冗談ですよ。私は多少男性の欲求に理解が有るだけです」
「び、びっくりさせないでよ」
「しかしミカさん。ついさっきまで私を女だと思っていたあなたは、私が男だと聞いて認知が逆転した。
これは面白いことだと思いませんか? 仮に私の心が男性だったとして、これまでそれに気づかなかった以上、そしてそれを告げなかった以上、何にも変わらないのです。事実がどうあれ」
まさしくそれは、水着は下着と捉えるか否かと同じことだった。
目の前の女が実は男の感性を持っているか、それとも女の心のままだと信じているのか。
「……つまり、私をからかって喜んでるってことでしょ?」
「ええ、要するにそう言うことです」
「うん、やっぱり殴るね☆」
まあまあ、と黄金の左手でシャドーを開始するミカを宥めるユエ。
「私はミカさんの味方ですよ」
「嘘くさーい」
「本当ですよ。私はミカさんの悲しむ姿は見たくないですから」
「えー、本当かな」
「もし必要になれば証明しますとも」
胡散臭い笑みのユエを、ミカはこの時信じられなかった。
まさか本当に──。
「そこに居るのは誰だ!!」
その時だった。
暗闇の先から、ガスマスクを付けた白い制服の集団が現われたのは。
「ミカさん」
「うん、アリウスの制服だ」
二人は武器を置いて、無抵抗を示した。
「貴様ら、ここに何しに来た!!」
「私はティーパーティーの現ホスト、聖園ミカ」
銃を突き付けてくる彼女達に、ミカは微笑んでこう言った。
「あなた達と、友好を結びに来たんだよ!!」
補習授業部の最初の試験が終わり、先生は嫌でもトリニティの学内の様子がおかしいことに気づいた。
「こんにちは、先生」
「あ、先生だ。こんにちは!!」
昼間から校内を正義実現委員会の生徒が、巡回している。
非常に物々しい事態だ。
先生は、日が落ちた頃合いに、ナギサの元に行って、その原因を尋ねた。
「……先生にはお話ししなければなりません。補習授業部の意義と、エデン条約について。そして、それを邪魔するだろう黒幕に関して」
「“黒幕?”」
「ええ、私はかのゲヘナの死神。あの逢坂ミコトさんだと思っています」
「“……それはなんで?”」
「決まっているでしょう?」
ナギサは顔をこわばらせる先生に、こう言った。
「先日、セイアさんが襲撃を受けて意識不明の重体に陥りました。その襲撃事件の犯人が、逢坂ミコトの腹心──月見ユエだからですよ」
彼女は今極秘に我が校の牢屋に捕えています、とナギサは言ったのだった。
「うそ、なんで、どうして!! セイアちゃん、私はそんなつもりじゃ!!」
「……ミカさん、ここはひとまず時間を稼ぎましょう」
「私が、セイアさん襲撃犯として、あなたの身代わりになりましょう」
目を腫らしたミカに、いつもと変わらぬ笑みでユエはそう言った。
――『補習授業部編』に続く。
ユエ「ミカさんの情緒うんめぇ!! もっと摂取したい!!」と当人は悦んでる模様。
仲のいいティーパーティーの三人も良いけど、やっぱりそれはギスギスがあってこそだよね!!
エデン条約前はこんな感じでお互いに辛辣だけど嫌い合っては無いって距離感を妄想しております。
これ以上書きたい話も無いですし、いっそのこと二年生編はここで一旦終わりにして、次回以降から補習授業部編の幕間を書こうかと思っています。ゲマトリア関連は別にそこでもいいですし。
そう言うわけですので、一年生は半年ぐらいで終わったのに対し、二年生編は三か月も経っていませんが、余白が有った方が後から付け足せますので、次回は先生とヒフミたち四人の活躍をお楽しみに!!
ではまた、次回!! 感想や高評価を頂ければ、更新スピードが維持されたり作者のモチベが上がります。
ではまた!!
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