幕間に行こうと思ったのですが、先に詫びを置いておきますね。
絆ストーリー第一話『新月が昇るよ』
「あ、先生、やっほー☆」
先生がトリニティ総合学園のグラウンドに向かうと、そこではジャージ姿のミカが草むしりに励んでいた。
「“やっほー!!”」
「ごめんね、先生!! あいつも先生の言うことなら聞くかと思ったんだけど……」
そんな感じでミカがもじもじとしていると、あ、とグラウンドの入り口を見た。
「よう、先生。連れてきたぞ」
「……」
ミコトと、ユエの二人組だった。
ただ問題は。
「な、なにそれ、その格好!!」
ミカがユエを指差してお腹を押さえて大笑いを始めた。
「……死にます。死なせてください」
なんと、ユエは紫色のバニースーツを着ていたのだ。
ウサミミと網タイツも完備。当人が死んだ目をしているのと、心なしか自慢の月光のような髪質がしなしなになっているように見える。
なお、言うまでもないが、当然のように覚悟が決まってる角度だった。
「“似合ってるね!!”」
「なんで先生、テンション高いの……」
当人がどうかはともかく、非常に似合っていた。これにはバニーに一家言ある先生も唸る出来栄えだった。
「と言うか、なんでそんな格好……?」
「実はよ、この間ネルから余りを貰ったんだよ。
俺じゃサイズが合わなかったから、奉仕活動サボろうとした罰ゲームでユエに着せたんだ」
「う、うん……」
さしものミカも、ミコトの思考回路は理解できなかった。
「それにほら、アスナが言ってたんだよ。先生はバニーが好きだって」
「先生?」
「“の、ノーコメントで……”」
全生徒随一の差分を誇るミカにメンヘラ顔を向けられ、先生は露骨に顔を逸らした。
「そしたらこいつ、バニースーツなんて商売女の下賤な服だって嫌がるからよ。面白くなって無理やり着せたんだ」
「ああ、そう言えば昔そんなこと言ってたね」
「とりあえず、この後海辺に身投げします。私は別に性的な対象として想像上で搾取されるのは構わないのですが、実際に実行するのは違うと言いますか……」
「いいからさっさとやれ!!」
ミコトが持参した竹刀でユエの頭を小突いた。
「……」
先生も見たことの無いローテンションのまま、ユエは草むしりを始めた。
「オラ、ミカミカ。てめぇもやるんだろうが」
「わかってるよ、そんなもの振り回さないで」
言われなくてもやってるのに、とミカはぶつくさと言いながら草むしりを再開する。
先生は奉仕活動を始めた二人に、飲み物を買って来た。
二人の近くでミコトは竹刀で素振りをしている。
「“二人共、飲み物買って来たよ。ほら、ミコトも”」
「おう、先生。サンキューな」
真っ先に先生から無遠慮にスポーツドリンクを受け取るミコト。
「先生、この野蛮人をどっかにやってくれない? 近くであんなの振り回されると気が散るんだけど」
「ああん? なんでだよ」
「あんた、アリウスでの大立ち回りを忘れたの?
数百人ぐらい一人で倒して、あのやたら強い聖徒会のバルカン女を叩き切って、挙句の果てにはビーム出して曇り空を切り裂いたじゃん」
「ああ、あれは楽しかったな。特にあの変態バルカン女は強かった。だが俺の敵じゃなかったな。
知ってるか? あいつが両手にバルカン持ってたように、両手に剣を持つと二倍強くなんだ。
その上銃の間合いで、俺は剣で勝った。剣で槍に勝つには三倍の技量が必要らしいが、その理屈で言うなら俺は十倍強いってこったな」
ミコトは気分が良いのか饒舌に語った。
いやその計算式はどこから出てきたの、とミカは思った。
「あとビームが出たのはあの超振動電磁ブレードのお陰だ。竹刀でビームが出るわけねえだろ」
「その何たらブレードに、ビームが出る機能なんてあるの?」
「いいや? エクスカリバーだってビームでるだろ? 最強の剣ってのはビームが出るもんなんだよ」
「よく切れる包丁からはビームなんて出ないんだよ……」
ツッコミが追いつかないミカだった。
「あとちょっとで空に浮いてるデカヘイローみたいなのも斬れそうだったのによ……」
と、悔しそうにするミコトだった。
先生は今まで疑問を持ったことは無かったが、多分それ斬っちゃダメな奴だと思うから、やんわりとやめようね、と言うのだった。
「まあ、俺の考えた最強の必殺技は、あの化け物赤肌女にはもったいなかったな」
化け物赤肌女と聞いて、ああベアトリーチェか、と先生は思った。
彼女も最終的にミコトにコテンパンにされていたな、と先生は思い返す。
「私はただミコトが楽しめるような喧嘩の場所をあげたのに、なんでミカさんと一緒にこんな格好で奉仕活動なんか」
「ほざくな、ボケが」
ミコトが竹刀でユエの頭を叩いた。
「アリウスの連中なんざ、所詮ただの浮浪者どもだったじゃねえか。
あんな弱者どもをいくらぶん殴ったところで何が楽しいんだ」
「“いやぁ、そんな風に言えるのはミコトだけだよ……”」
数多の生徒を指揮してきた先生から見て、アリウスの生徒達は普通にこの世界でも武力的に上澄みの方だった。
ベアトリーチェは彼女達に武力を与えると言う意味では、かなり成功していた。
ただ、相手が悪かった。
リオのテクノロジーとミコトの武力という、キヴォトス最強の組み合わせの前では。
「あの変態ガスマスクどもも亡霊みたいなもんだっただろ。
俺は死人を冒涜する趣味もねえのよ。
……あれ、あの化け物赤肌女って、クソ外道なんじゃねえか?」
「え、今更?」
「次会ったらぶち殺しておくか」
「“気持ちはわかるけど、それはダメだよ”」
「わかってる。先生の前ではやんねぇよ」
「“……”」
これには先生も溜め息を吐いてこめかみを揉むしかなかった。
ミコトは典型的な殺人剣の考え方、即ち一人の悪人を殺してそれにより大勢を救うタイプの思考をしていた。
「“ミコト、君は私を守るために剣を振るってくれたよね?”」
「おう」
「“だったらその剣を、誰かを殺す為に使わないでほしいな”」
先生のお願いにミコトは素振りをしながら彼を見て、考えとく、とだけ答えた。
「つーか、俺、お前らが仲がいいなんて知らなかったぜ」
「は? 誰がこんな女と仲が良いって?」
笑顔のままでミカはそう返した。
「だってお前の為にユエの奴は身代わりになったんだろ?」
「知らないよ。この女が勝手にやったことだし」
つーん、とそっぽを向いてミカはそう言った。
「“……実際のところ、どうなの?”」
「先生。そのゲームは既に終わってますよ」
つまらなそうに、ユエは先生に応じた。
「私はただ、望まれることをしただけです。そう、皆が望む、より良き“あはは体験”の実現を!!」
「なんだそれ?」
「アハ体験の親戚?」
ミコトとミカは首を傾げる。
しかし、先生は何か思い当たることが有るのか、ジト目でユエを見ていた。
「あはは体験とは、言わば様式美。例えば使い魔として異世界に召喚された際に決闘をするのと同じ、通過儀礼。
誰もが期待し、消費する為の娯楽。私の意思ではありません」
しゃがんで草を毟り、下を向いて顔が隠れたユエは不貞腐れるようにそう言った。
「まあ、個人的にはあの狂乱の渦中を楽しんでいたのが五割、ミコトに喧嘩の場を与えることが四割……」
「“残り一割は?”」
「……これ以上は無粋ですよ、先生」
雑草を毟りながら、ユエは先生を横目で見た。
「それは既にお教えした筈です」
「“え……”」
「あ、そうだわ、ミコト。ミカさんは貴女の望む強者よ。勝たなくて良いの?」
「え、冗談じゃないんだけど!!」
「テメェは今回反省しやがれ」
もう一度、竹刀でミコトはユエの頭を小突いた。
「ミカミカみたいなひ弱そうな奴をぶん殴ったら俺が悪者になるじゃねーか」
「え……」
予想外の理由に、ミカは絶句した。
実際に強いかどうかではなく、弱そうな見た目だからイジメてるようにしか見えないからミコトが躊躇うなんて、前代未聞だった。
「その認識は間違いよ、ミコト。
彼女の学名は、ミカ・ミカ・ミカ。キヴォトスでも屈指の危険生物よ」
「その悪意ある名前の連呼について詳しく聞かせてくれるかな?」
ミコトを嗾けようとするユエと、笑顔のままキレたミカが乳繰り合い始めた。
そんな二人に、ミコトの竹刀が落ちる。
「喧嘩両成敗だ、オラ」
「ううぅ、ねえ先生、これって私が悪いの?」
「“悪いことをしたのは反省しないとダメだよ”」
遠回しに、奉仕活動に専念しろ、と先生はミカに答えた。
ミカはぐちぐち文句を言いながら草むしりに戻った。
「先生、これだけは勘違いしないでほしいのですが、私はミカさんのお手伝いはしましたが、彼女の意思決定に何一つ関与していません。
ええ、結果的に事態をややこしくしたのは認めますが」
「“本当にね……”」
先生はげんなりした表情でそう言った。
それはもう、恐らく本来の五割増しぐらいで面倒ごとになったのである。
「それでも、この世界で最も尊く美しいモノのひとつを守った自負はありますよ」
「御託は良いからさっさと働け」
ミコトの竹刀が、ユエの頭に落ちた。
ぱしん、と小気味良い音が鳴る。
「そうポンポン叩かないでミコト。私の頭脳は足し算でしか物事を考えない貴女の頭とは出来が違うのよ」
「ミカ、スイカ割りすっか? ユエがスイカな」
「わーお、賛成☆」
「やめてください、死んでしまいます」
「さっきまで死にたがってたじゃねーか」
「ああ、そうだわ」
ぽん、とユエは手を叩いた。
「先生、これは不公平です。ミカさんもバニーになるべきです!!」
「ええ!? なに言ってるの!!」
「私だけこんな浅ましい格好なんておかしいです。或いはキヴォトスの生徒全員がバニーになればつり合いが取れます」
「“う、うーん……”」
「先生、なんでちょっとグッと来てるみたいな表情してるの?」
「別にいいではないですか。所詮水着も下着と同然の露出度。バニーの露出度ならまだ健全ですよ」
「先生、この女、昔バニースーツは娼婦の格好だってバカにしてたよ」
「バカにはしてません。職業に貴賤はありませんから。ただどぶ攫いをしている労働者に近寄りたいとは思わないだけです。それはそれで必要な仕事だと認識しているだけです」
「先生!! 自分が堕ちるなら周囲も堕ちればいいって思ってるだけだからね、この女は!!」
「先生はミカさんのバニー姿見たくはないのですか? 良いんですね、可能性がゼロになりますよ」
「私だってこんな服着たくないよ!!」
「自分だって殆ど裸同然の水着着てたじゃないですか、何を恥じらう必要があるのです」
「正直ぶっちゃけそれはセイアちゃんじゃない? 遠くから見て、アレ真っ裸じゃッ!? って思ったし!!」
ぱしんぱしん、と連続で竹刀の音が鳴った。
「次は、俺がてめぇらの身体で直接草むしりしてやる。良いな?」
「……」
「……」
二人は無言で草むしりを再開した。
先生は、身体で草むしりってどうやるんだ、と戦慄した。
しばらく草むしりをしていると。
「ミカさん。差し入れをお持ちしましたよ」
ナギサが荷物を持って現れた。
「あ、ナギちゃん……」
ミカは嫌な予感がして差し入れの入った箱を開けると、なんとそこにはロールケーキが!!
「え……これも罰なの?」
彼女は呆然としていた。
「…………先生、正直今回も、何もしないつもりでした」
「“そうなんだ……”」
「しかし、それはキヴォトスの生徒として正しい姿なのでしょうか?」
ナギサに対して怒っているミカを見ながら、そんなことを言うユエ。
「先生、私も生徒の一人として行動する。それが成長なのではないですか?」
「“その考え方は否定しないけど……”」
結局、先生にはユエの真意はよくわからなかった。
「ああそうですわ、ユエさん。うちの生徒が暴挙で損壊したあなたの所持品に対して弁償を行いたいと思いますが……」
「いえ、気にしないで」
ユエは申し訳なさそうにしているナギサにこう答えた。
それはユエがトリニティの牢屋に投獄されている最中に、トリニティ生が怒りに任せて彼女の私物をずたずたにして燃やしたりしたのだ。
これに関して、ナギサは本当に申し訳なさそうにしていた。
「いや気にしないでって、そこはもっと怒るべきところでしょ!!」
「ええ、その通りです。こう言っては何ですが、この件が無かったら――」
ナギサはこう言った。
「――――きっと、ミカさんの部屋も荒され、彼女の私物も破壊されることを許していたでしょうから」
自校の生徒の所業とは言え、だからこそナギサの表情は暗かった。
「本当に気にしないで良いわ。
……私にとって価値のあるモノを、彼女達は壊すことが出来なかったから」
ユエはミカの羽根にあるアクセサリーをチラリと確認して、そう言った。
先生は、彼女の口元が僅かに吊り上がったのを見た。
「“ユエ、君は……”」
「さてミカさん。続きをやりましょう。流石に外では紅茶はありませんが、ペットボトルのなら用意できますし」
「えー、本当にこのロールケーキ、外で食べる気? お皿とフォークは?」
「ロールケーキなんて、手づかみで食えるだろ」
ひょい、とミコトが差し入れのロールケーキを掴んで、端っこから齧り出した。
悲鳴を上げるお嬢様二人。意地汚いわよと諫めるユエ。
ほらお前らの分、と4分の1くらい食べて差し出すミコト。
そんな騒がしくも可愛い生徒達に、先生は苦笑いを浮かべるのだった。
130:名無しの先生
エデン条約編読み終わった、前評判通り面白かった!!
でも結局マコトもユエも大して罰とか受けない感じなの?
その辺納得いかないんだけど
131:名無しの先生
マコトは後でミコトにシバかれてるはず
133:名無しの先生
ユエは詫びバニーしたから……
135:名無しの先生
詫びバニー無罪
138:名無しの先生
バニー服に尊厳破壊されてるユエちゃん笑うww
139:名無しの先生
しかもイベントの配布☆1だもんなww
お高く留まった女が一番安っぽい扱いされるの芸術でしょ
140:名無しの先生
バニーユエの表情差分にいつもの笑顔が一個も無いんだよなww
142:名無しの先生
俺バカだからよ、ユエちゃんがエデン条約編で何をしたのかあんまりよく分かってねぇんだ
俺は雰囲気でブルアカを楽しんでる……
143:名無しの先生
しゃーない、エデン条約編は裏での出来事が多いからな
147:名無しの先生
ユエが事態をマジでややこしくしてる
学校間問題エンジョイ勢すぎるんだもう
148:名無しの先生
ユエちゃんは人狼で言えば、マジもんの狂人枠だからなぁ……
152:名無しの先生
回想シーンでノリと勢いでゲヘナ裏切るとか、マジで狂ってるかんね
156:名無しの先生
>>142 エデン条約編のユエの行動まとめ
ミカと一緒にアリウスに働きかける
↓
セイア暗殺未遂事件が発生、ミカの身代わりになる
↓
トリカス動物園を檻の中から観察して愉悦してる
↓
懐柔したトリニティ生を通じて、関係各所に働きかける
↓
新月ユエ「今明かされる衝撃の真実ぅ!!」って先生にゲヘナの裏切りを告白
↓
補習授業部が拉致したナギサに追い打ちをする
二章まではこんな感じ
157:名無しの先生
うーん、これは魔女ですわ
161:名無しの先生
真ゲスわろたww
164:名無しの先生
裏切りごっこも楽しみたいとか、マジでゲヘナだこいつは、ってなったわ
166:名無しの先生
ミカもミカで色々と面倒くさい行動してるのよね……
168:名無しの先生
そのほぼ全てを解体したハナコが名探偵すぎるのよ
先生はワトソンポジだったし
170:名無しの先生
自分はどちらかと言うとミコトの方が印象つよい
後半は基本無双してたし
172:名無しの先生
フルパワーのミコトの最強っぷりは笑ったよなww
一人だけ世界観違うんだもん
176:名無しの先生
しかたないやろ
刀を持ったヘイローのある女の子の世界観は消えてしもうたんや
179:名無しの先生
おうふ……
182:名無しの先生
あれマジで楽しみにしてたのに……
プロジェクト持ち逃げしたクズどもが
186:名無しの先生
あの事件、マジで運営にダメージだけしか与えてなかったもんな……
188:名無しの先生
大上段居合い斬りは頭悪すぎてな……
そうはならんやろ
190:名無しの先生
>>188 なっとるやろがい!!
どうして雲も斬れるんですかね……
192:名無しの先生
早く剣道ミコト実装してくれないかな
195:名無しの先生
剣ミコ実装したらサ終目前って言われてるから……
198:名無しの先生
余りの威力にカラフル()もビビって逃げるくらいだしな
200:名無しの先生
最終編のアリスの光の剣とどっちが強いんだろ
203:名無しの先生
尚、デカグラマトン編でバリアぶち破る模様
205:名無しの先生
あのバリアをミコトがただの壁としか認識してないからなww
207:名無しの先生
ミコトだけ本当にバグってるww
210:名無しの先生
剣ミコト実装されたら確実にミカと同じ永遠のTierゼロだろうしな
213:名無しの先生
武器種は、アサルトライフルかロケランって言い張るつもりですかね
215:名無しの先生
>>213 どこのニケですかね?
216:名無しの先生
でも本当に肝心な時にしか剣を使わないからなぁ
218:名無しの先生
その肝心な時って割とキヴォトスの危機ばかりなんですが……
220:名無しの先生
でもまあ、あれだけ強いとミコトが絶望するのわかるわ
222:名無しの先生
そらな
誰があんなアホ強いやつと戦いたいって思うねん
225:名無しの先生
ネルにさえフラれたんだっけ?
そりゃあしなしなになって隠居同然の園芸部生活始めるわ
227:名無しの先生
バニーユエもしなしなでカワイイ
231:名無しの先生
ここにしなしなになったヒナを一つまみ
232:名無しの先生
待ってほしい、本当にバニーミカの実装は無しなのか?
236:名無しの先生
そうだそうだ!!
ミカも詫びバニーしろ!!
237:名無しの先生
バニーミカ、実装はよ!!
240:名無しの先生
ん、運営は全生徒に詫びバニーさせるべき
このお話を踏まえて、幕間をどうぞ。
作者は伏線とか細かくて面倒ななのはよくわからんのです!!!(ハーメルン歴10年
それではまた、次回!!