ゲヘナ学園 園芸部の死神   作:やーなん

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前回からお気に入りが倍以上に増えてる!? 評価バーが赤い!?
ちょっと我が目を疑いました。こんな駄文を評価して頂いて、感謝の極みです!!

ほんの息抜きの単純な二次創作のはずだったのに。やっぱり単純な内容の方がウケが良いんですかね……。

とにかく、本編どうぞ!!



救護の誓い

 

 

 

 トリニティの噴水広場前にて、二人は対峙した。

 

「まずお前が、俺を愛してくれるのか!!」

「はい、その通りです」

 

 ミコトの言葉に、ミネは銃を捨てた。

 ミネの同僚たちは、やめなよ、危ないって、と後ろから声を掛けているが彼女は意に介さない。

 

「さあ、救護騎士団の真髄を御見せしましょう」

「ぎゃははははははははは!!!!」

 

 ミコトは腹の好かせた獰猛な獣のようにミネに飛び掛かった。

 

「ステゴロか!! それも大好きだ!! わかってるじゃねえか!!」

 

 ミネに応じるように、ミコトも武器を捨てた。

 

 お互いの初撃の右ストレートがお互いの顔面に突き刺さる。

 そのままお互いに距離を話さず、至近距離(インファイト)での戦いにもつれ込んだ。

 

 ジャブを連打するミコト、腕で防御を固め隙を伺うミネ。

 勝負はすぐに動いた。

 

「私はここに集う人たちの前に、厳かに神に誓わん」

 

 ミネが拳の使えない距離、超至近距離にまで捨て身の特攻を行ったのだ。

 

「!?」

「私は生涯を清く過ごし、その任務に忠実であることを!!」

 

 顎を的確に捉えたアッパーが繰り出される。

 これにはミコトもたたらを踏んだ。

 

「私は全ての毒あるもの、害あるものを断ち、悪しき薬を用いることなく、またそれを知りつつ勧めざることを!!」

 

 が、ミコトも黙っていない。

 渾身の拳がミネの腹部に突き刺さる。

 

「……あいつ、なにぶつぶつ言ってんだ? 戦いながら神に祈ってんのか?」

「なに言ってるのよ、あれは──」

 

 固唾を飲んで戦いを見守る両者。

 ゲヘナの不良の言葉に、思わずと言った様子でトリニティの生徒が言った。

 

「──あれは、看護師の始祖への誓いよ」

 

 

 

 本気の拳のぶつかり合い。

 死力同士の殴り合い。

 

 血が飛び散り、顔が腫れ、お互いに破局に向かって突き進んでいる。

 

「私は、私が力及ぶ限り目標を高くし、自己を高めることに努めん」

「そうか、お前は俺と同じか!!」

「私の任務において知る私事の全て、または相手の事情の一切を漏らさんことを!!」

「それが、お前の愛か!!」

「その通りですッ」

 

 凶暴なケダモノを相手にして、ミネは一歩も引かない。

 ミコトが暴れまわって生じるはずの全ての怪我人を救うために。

 そしてなにより、目の前の相手がこれ以上傷つかん為に!!

 

「私は心より医師の助けとなり、この手に託される全ての人々の幸福の為にこの身を捧げん!!」

 

 鏡合わせのように、お互いの拳が顔面に入った。

 クロスカウンターだ!!

 

 その壮絶さを語るように、お互いに殴り飛ばされた。

 

「救護、完了……」

 

 ミネは自身を受け止めてくれた救護騎士団の仲間の胸で力尽きた。

 

「ミコちゃん!!

「ミコトさん、大丈夫っすか!!」

 

 そしてミコトも、ゲヘナの仲間たちに寄り添われ、うつろな視線を虚空に彷徨わせていた。

 

 彼女の仲間が噴水の水をぶっかけると、ミコトはハッとして飛び起きた。

 

「……今、俺何をしてた?」

「え?」

「……俺は今、誰と戦ってたんだ?

 生徒会室を制圧して、その後……俺は何してたんだっけ?」

 

 ミコトはここ数十分の記憶が飛んでいた。

 

 例えばプロボクサーも脳震盪を起こした試合後、数日の記憶が飛んでいたりと、実例が存在する。

 

 これには、ゲヘナとトリニティの両生徒は顔を見合わせる。

 

「ミコトさんはトリニティの生徒のテッペンを取ったんすよ!!」

「ええ、演説なんてしてないっす!!」

「な、お前ら!!」

「そ、そうですわー!!」

「えーん、えーん、負けてしまいましたわー」

「ゲヘナもやりますわねー」

 

 両者の長い歴史の中で、彼女達の心はこの瞬間ひとつになった。

 かくして、トリニティを襲うはずだった未曽有の危機は去った。

 

「盟友よ、それを隠せ。思い出されても面倒だ」

「う、ううう……この羽根の手入れにいったいどれだけの手間を掛けたと……」

 

 その裏で羽根の一部を毟られ、犠牲になった生徒会長も居たが、とりあえず一件落着と相成った。

 

 

 

 

 

 

 

 そんで、俺は記憶が飛ぶほどミネと殴り合ったんだ!!

 どういう風に戦ったか覚えてないが、あいつの攻撃が全て的確に人体にダメージを与えるモノだったのは痛みから分かった!!

 

 そんで、先生。俺とミネはマブダチになった。

 ステゴロで殴り合ったんだから当たり前だよな!!

 

 だが、勝ったのは良いが、辛勝もいいところだ。

 流石は最強のインテリ、医者だって思ったね。

 

 なに? 医者と看護師は違うって? 分かってるよ!!

 俺だってその時はまだその違いがわからなかったんだよ!!

 

 だがあいつの強さの源は救護だってのはわかった。

 俺もこんな勝ち方じゃダメだと思った。

 

 そこで俺は思った。

 俺も救護を会得すればいんじゃねって。

 それに俺が倒した奴を治療できりゃ、また短時間で再戦できるからお得じゃねって思ったんだよ。

 

 これにはミネも賛成してくれてよ、でも自分は忙しいから教えられないって言ってたんだよ。

 

 でもよ、俺の考えは甘っちょろい代物だってすぐに後悔させられた。

 ミネがダメならどうするか、そうだ、うちの学校には救急医療部があるじゃねえかって思い当たってよ。

 俺は救護を学ぶために救急医療部の部室の門を叩いたんだが。

 

 ……それが、その、何と言うか……。

 

 そこの先輩、めっちゃ怖かったんだよ……。

 俺がビビるなんて意外だって? 先生もあの人に会えば同じ感想になると思うぞ。

 

 その当時の救急医療部は、ヤバかった。

 噂じゃ雷帝すらも思い通りにはできなかったって話だったんだ。

 まあ単純にあの天才も医療は門外漢だったから、口を出せなかったって話かもしれねえが。

 

 ……俺は、両方だと思った。

 雷帝は医療は専門外でなおかつ、そこの部長がヤバかった。

 

 名前は、思い出したくねぇ。

 名前を言ったら飛んできそうなんだよ、あの人。

 

 ……ああ、俺が頭の上がらねえ、唯一の先輩だった。

 今卒業してキヴォトスに居ないのが救いだよ。

 

 写真あるから見て見るか?

 見ろよ、顔が縫い傷だらけだろ? どこの医療漫画の主人公だよって思うだろ?

 不良顔負けの凶悪なツラしてるけど、性格も同じくらいヤバかった。

 

 部長は…………いや、この話は止めよう。

 マジでキヴォトスの外から飛んできそうだ。

 

 なんつーか、俺が“部長”って呼ぶのはあの人だけなんだなって、辛気臭くなっちまう。

 

 他に何の話がいいか……え? じゃあミネとどうやって仲良くなったかだって?

 まあ、いいぜ。順番に話すか。

 

 

 実はよ、あの後治療を受けたマコちゃんが出戻りしてきたんだ。

 

「キヒヒヒ、よくやったミコト!!」

 

 包帯を巻いてミイラみたいだったが、他の万魔殿のメンバーを連れて来たんだよ。

 すごいガッツだよな。

 

「さて、どんな条約を結んでやろうか!!」

「そのことですが。こちらに」

 

 一応お互いの学校のアタマの会談ってことになるのか?

 だけどお嬢は先んじて、なんか書類みたいなのを出したんだよ。

 

「なんだ、これは」

「先ほどそちらのミコトさんが話した、演説の内容です。我が書記官が記録した正式な記録です」

 

 がしっとマコちゃんはそれを掴んで食い入るように内容を読んだんだが。

 

「おい貴様!! なんだこのお互いに何の意味もない同盟は!!

 こんな内容が空っぽの物なんて見たこと無いぞ!!」

「勝ったんだからいいじゃねえかよ」

「そうだとも、勝ったんだから奪い取るのだよ!!」

「なにを?」

「何をだと!?当然土地や利権などは勿論此度の紛争の解決金などをだな──」

「はあ……」

 

 俺は呆れて溜め息を吐いた。

 

「土地貰ってどうすんだよ。ゲヘナには余ってる土地なんていくらでもあるだろ。利権? カネ? マコトパイセンはもう金持ちじゃん」

「私個人の話をしてるんじゃない。学校同士の話をしているのだ!!」

「当たり前じゃねーか」

 

 俺はわけわかんねーこと言ってるマコちゃんに言ってやったんだよ。

 

「ゲヘナは喧嘩でテッペンを取った。俺はこれでもゲヘナの為に戦ったつもりだぜ。この喧嘩は俺だけのモノじゃなかった」

「……」

「その上で、功労者? 一番槍? とにかく、大活躍した俺が言ってんだ。カツアゲなんてシャバい真似はしねぇって。

 いくらマコトパイセンでも、ここのキレーな街をうちのスラムみたいに台無しにするってーなら」

 

 うちの学校が土地なんてとっても、そこがスラムになるだけだ。

 それに山も海も、ゲヘナは呆れるほど自然豊かだ。土地が欲しいならそっちを開発すりゃあいい。

 マコちゃんはそれができる能力がある。

 

「今度はマコトパイセンと喧嘩しなけりゃならなくなるぜ」

「……良いだろう。所詮降って湧いた牡丹餅だ」

 

 なんとか、マコちゃんは分かってくれたようだった。

 

「今回の件でよくわかった。お前を我が世界征服計画に組み込むべきではない、とな」

「お、流石ゲヘナのヘッド。考えることのスケールが違うじゃねえか」

「当然だ。その時が来たらお前を最前線で使い潰してやる」

「望むところだぜ」

「ふん!! 諸君、此度の勝利を喧伝するぞ!!」

 

 マコちゃんは連れてきた万魔殿のメンバーにそう言った。

 

「チアキ!! クロノスの報道部に記者会見をさせるぞ、他の報道機関にもだ!!」

「はい、マコト先輩!! 週刊万魔殿創刊号のネタは特大スクープになりますね!!」

 

 ……ああ、そこにチアキも居たんだよ。

 あいつまだ中等部だったけど、マコちゃんは前の生徒会のメンバーは使えないって総入れ替えしたんだよ。

 だから当時中等部だったチアキとかも積極的にメンバーにしてたんだ。

 

「……ゲヘナの新生徒会長。正式な会談や同盟の調印は行いますか?」

「こんな口約束、チリ紙の裏にでも書いておけばいいだろう」

 

 多分、何の効力も無い同盟なんて顔を突き合わせて協議する意味なんてない、みたいなクールで政治的な言い回しなんだと思う。多分。

 

 だけどよ、あとからチアキに聞いたんだよ。

 

「でもマコト先輩、あの後しばらく上機嫌でしたよ!!

 ゲヘナ生徒のトリニティの自治区内での自由行動権ってのはメッチャ強い権利だって。あの時は顔には出してなかったですけど」

 

 曖昧だから幾らでも拡大解釈できる、だとか。

 はー政治って面倒だなって俺は思ったね。

 

 要するにあれだろ、たとえば諜報に来てても、観光ですって言い張ればゲヘナの生徒ってだけで追い出せなくなる、みたいな?

 あの後、治療を受けた総長も来てたけど、俺を見て渋い顔してたのはそう言う理由だったのかって、割と最近になって合点がいったんだわ。

 

 ちなみにさ、同盟とか条約って名前があるだろ?

 例えば俺の名前が入ったりさ!!

 

 ……だけど書面も何もない同盟だったから、名前の無い同盟って後から呼ばれるようになったらしいぜ。

 本当に名前が無かったらどの同盟かわからねぇしな。

 ……個人的には、俺の名前が付かなくてちょっと残念だったがよ。

 

 これが後でエデン条約に繋がるってんだから、わからないもんだよな。発案者を土下座させた俺が言うのもなんだけど。

 

 

 そんで、マコちゃん達が帰った後ぐらいに、ミネはむくりと起き上がった。

 そんでそのまま、怪我人の治療を始めたんだよ。

 

 俺達が戦ったのは多分百人もいなかったんだけどよ、それよりずっと多くの人数がパニックで転んだり踏まれたりして怪我してたんだ。

 

 ……先生、あんただから正直に言うとな、割とショックだった。

 

 俺は別に弱い奴や、戦えない奴に迷惑を掛けたいわけじゃなかったんだよ。

 

「ミコちゃん、打ち上げはどうすんの?」

「トリニティのうまい店でなんか食いましょうよ!!」

 

 そんな中で、俺の仲間たちがそう言った。

 

「今はそんな気分じゃねえ」

「ミコトさん?」

「あいつらを手伝ってやれよ。その後にしようぜ」

 

 それで俺の仲間たちも、救護騎士団の連中がせわしなく走り回ってるのを見て何かを感じ取ったらしかった。

 

「そっすね」

「荷物運びくらいは手伝ってやろうぜ……」

 

 仲間たちはおずおずと救護騎士団の連中のところに向かっていったんだ。

 俺は、ジッとミネが手当てをしてるのを後ろで見ていたんだよ。

 

「なあ、お前の仕事が終わったらもう一回勝負しようぜ」

「そのような時間はありません」

 

 あいつはぴしゃりとそう言った。

 

「やだね、俺はあの勝ち方に納得がいってねえ。戦いの過程も覚えてないんじゃ、不完全燃焼だ」

「私のトリアージによると、あなたの治療優先度は下がりました。

 あなたを救護するのは当然として、今はより重度な患者に救護が必要なのです」

「流石トリニティのインテリ……何言ってんのかわかんねぇ」

 

 俺に分かったのは、ただミネが強いってことだけだった。

 

「だが、今回の喧嘩で俺に足りねぇものはよくわかった。俺はまだ強くなれる。まだ成長できる!!」

「あなたは、それをしてどこに行くのですか?」

「最強への道だよ」

 

 俺は迷わず答えた。

 

「俺は、俺が納得できる強さが欲しい。それを証明したいだけだ」

「その道の先は、孤高です。

 全ての相手を倒した後に、何も残りません」

 

 怪我人に包帯を巻きながら、ミネは行ったんだ。

 

「巨大な病巣と化した、あなただけしか残りません」

「そうかもな……。あッ、そうだ、じゃあこうすればいんじゃねえのか?」

 

 俺は挑発するように言ってみたんだよ。

 

「片腕を折ったまま、全員とまた戦うってのは」

「……」

「それで全滅させたら、今度は片目だ。その後は……両目を潰して戦えるようになるまで鍛えて、また挑む」

 

 俺の強さの探求に、終わりはない。

 だから俺が孤独になることはないんだよ。

 

「そんなこと、私が赦しません」

「ならお前が止めろよ」

「言うに及びません。必ず、止めます。貴女の為にも、貴女が倒すだろう全ての人々の為にも」

「……本当か?」

 

「ええ、この命に代えても」

 

 俺は痺れたよ。

 俺はまだ自分の命が惜しかった。最強になる為にも、それを証明し続ける為にも。

 

 だがあいつは、本気で己の命を惜しんでなかった。

 本物の覚悟って奴を見たね。

 

 俺は実力だけでなく、精神でもあいつに勝つ必要があった。

 だから、その為にもあいつを理解し、リスペクトする必要があった。

 

 ミネと同じ土俵に立つには、ミネを理解する必要がある。

 あいつの言う救護をより深く理解する必要がある。

 

「……わかった、今日は喧嘩はヤメだ」

「そうしてください。可能ならこの後もずっと」

「ああ、待ってろよ。俺も救護を会得して、お前に挑む」

「??? それは素晴らしいことですね」

 

 これが、ミネとの出会いだった。

 部長も含めて、俺の人生を変えるような出会いだったよ。

 

 

 それじゃあ、この話のオチと行くか!!

 

 俺達はトリニティ学園から出た後、打ち上げにハルナの行きたがってた店に向かったんだ。

 有名な高級店らしくてな、ドレスコードってのがあるらしいんだよ。

 

 でも俺たち学生だろ? だからドレスなんて必要無かったんだけどよ。

 そこの店員がな……。

 

「お客様、申し訳ございません。当店にはドレスコードがございます」

「我々はちゃんと制服を着用しておりますよ」

「ああ、ちゃんと伝わりませんでしたか。

 ゲヘナ学園の制服は、当店は制服として扱っていないのですよ」

 

 3。

 

「そもそも当店は貴女方のような粗野な集団に料理を提供しておりません。事前に予約をしてからお越しくださいませ」

「…………」

 

 2。

 

「尤も、貴女方にトリニティの生徒のような品性を理解できればの話ですが」

「もうよろしいですわ。分かりました」

 

 1。

 

「この店に、お客を相手に料理を提供する資格が無いことは」

 

 ドカン!!

 

 ハルナが大暴れして、店は半壊。

 俺は帰りのその足で、ハルナの額を地面に叩きつけてトリニティの生徒会に詫びを入れる羽目になったんだよ……。

 

 

 

 

 

 

 





簡易人物紹介。

ミネ:救護によって改心したと思っているが、主人公は骨の髄まで戦闘狂である。方向性が違うだけで、主人公と同類である。

部長:当時の救急医療部の部長。三年。まだ軽く言及されただけなのに、ヤバいのが確定している人。セナの先代。

主人公の強さは、相手に勝てるまで鍛えるので、キヴォトス上位陣に有利を取れるけど、彼女らが二人掛かりなら確実に勝てるぐらいを想定しています。
最強格だけど、絶対に勝てない相手ではないし、疲弊もする、みたいな感じで。この辺りはふわっとしておいた方が楽しめる感じでしょうか。
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