※1000文字くらい加筆修正して再投稿しました。展開そのものは変わりません。
泣いたごんぎつね
多くの学校の新年度が始まる四月。
多くの生徒が去り、また新しく多くの生徒が入学する。
ゲヘナ学園では恒例行事が行われていた。
「てめぇ、さっき面白ぇこと言ってたよな」
ミコトが花壇の土に、新入生の顔をぐりぐりと押し付けていた。
「このミコト様が腑抜けたって。
知らねえと思うがよ、俺はヘイローぶっ壊してもサツに捕まらねえのよ。
てめぇがぐちゃぐちゃにしたこの花壇に、てめぇを植えることにするわ。責任取って肥料になれや」
この不良は土いじりをしていたミコトに、不意打ちで手榴弾を投げ込んだのである。
一緒に笑いに来た彼女の仲間たちは、怯えて尻もちをついていた。
「てめえら、こいつぶっ殺すけどいいよな?
こいつは俺の育てた花をぐちゃぐちゃにしやがったんだ。命の価値ってのは等価だって言うだろ? 文句ねえよな?」
「ご、ごめんなさいぃ!!」
不良の仲間たちは、泣きながら逃げ去っていった。
「ほらよ」
ミコトは土まみれの不良をグラウンドに投げ捨てた。
「てめぇのつるんでた連中、誰もお前を助けなかったな。下らねぇ連中だ」
ぐすぐす、と圧倒的な暴力に屈して泣いている不良生徒に、ミコトは言った。
「てめぇがつるむダチは選ぶこったな」
ミコトはそう言って、その不良を蹴り飛ばした。
そして、邪魔者を追いやってミコトは作業に戻った。
惰性だった。だからミコトは本気で怒ってなどいなかった。
「スイセンとネモフィラがキレイに咲いたね」
「将来は花屋なんて良いかもしれないねぇ」
「うちは温室の野菜が楽しみだなぁ」
かつてミコトが率いていた不良チームは、園芸部の部員になって一緒に野良作業をしていた。
ツッパることしか知らなかった彼女達も、もう三年生だった。
「春の花の女王と言えば、やはりラベンダーかしら。アロマ、ハーブティ、虫よけ、と用途も多いし」
「色味ならフリージアも悪くないっすよ、ユエさん」
「ああ、あれでしょ、希望の花~♪」
ユエと一緒に雑草取りをしている部員たちも、和気藹々としていた。
本当にここだけ見れば、キヴォトスを震撼させていた不良達とは思えなかった。
「ん? 誰だ」
その時、ミコトのスマホが鳴った。
手袋を脱ぎ捨てて、耳に当てる。
「もしもし」
『ミコトさんですか? 私は連邦生徒会の主席行政官、七神リンと申します』
「ああ? 何の用だよ」
『これについては現時点では極秘事項であると認識してください。
その上で、心当たりがあれば教えて欲しいのです。
────連邦生徒会長が、失踪しました』
なんだと、とミコトは思わず立ち上がった。
……春一番の大嵐が、吹き荒れようとしていた。
連邦生徒会長が失踪して、二週間が過ぎた。
行政委員会はまだ、そのことを隠している。
だが、連邦生徒会のトップが居ない歪みは、あちこちで現れ始めた。
「なんか最近、どこも渋滞してね?」
「してるしてる。交通システムがダウンしてんだってよ」
「スラム街の方だと、下水処理が間に合わなくて次大雨が降ったらヤバいことになるって言ってたぜ」
「うげぇ、それマジかよ……」
世俗の喧騒など、園芸部には関係ない。
部員たちの世間話を横に、ミコトは黙々と土に肥料を混ぜていた。
「ねえミコト。流石にこのままではマズいんじゃないかしら」
「だからどうした。あいつが何の考えも無しに消えるわけないだろ。
それに、あいつには優秀な手駒が居るだろ」
ミコトは連邦生徒会長の失踪に、ちっとも心配なんてしていなかった。
だが、世間はおかしなことになっている。
「SRTの事? 指示をする人間が居ないのに、どうにかできるのかしら」
ユエは首を傾げてそう言った。
「……」
ミコトの作業の手が止まった。
「それに、行政委員会は持て余しているって聞いたわよ。
一部では解体しろなんて声もあるとか。馬鹿な話よね。自分から武力を手放すなんて、とても政治家とは思えないわ」
ユエはこの狂乱を楽しんでいるらしく、情報収集に余念がないようだった。
「……ちょっと出てくる」
「そう。行ってらっしゃい」
ユエは微笑みを湛えながら、ミコトの背中を見送った。
§§§
SRT特殊学園の場所は極秘事項であるが、ミコトはその場所を知っていた。
以前、格闘訓練の練習相手として呼ばれたことが有ったのだ。
乗ってきたバイクを校門前に停めて、その敷地に入ったミコトは、こう感じた。
静かだ、と。
鉄柵で閉じられたゲートを飛び越えて、中の敷地へと入った。
常に走り込みをしているグラウンドは誰もおらず、訓練用の建物からは銃声がしない。
不気味なほど、静かだった。
「おい、誰も居ねぇのか?」
ミコトが問うた、その時だった。
校舎の窓が一斉に開いた。
そこから覗くのは、無数の銃口。
「なんだ、居るじゃねえか」
「──何のようだ、ミコト」
いつの間にか、ミコトの背後にいたユキノがその背に銃口を突き付けていた。
「あいつが失踪したって聞いてよ。お前らはどうしてるのか気になったんだ。
ショックで全員寝込んでるのかと思ったぜ」
「貴様には関係ない。直ちにここから失せろ」
「はいはい。わーったよ」
ミコトは両手を挙げて肩を竦めてそう言った。
「で、お前らはあいつを探さねぇのかよ」
「それを命令する権限を持つ者が居ない」
「はぁ?」
ミコトは振り返って、何言ってんだこいつ、みたいな表情をユキノに向けた。
「今そんなこと言ってる場合なのかよ」
「我々は軍人だ。命令が絶対だ、例外はない」
「軍人である前に、人間だろうがよ!!」
ミコトはユキノの胸倉を掴んだ。
「てめぇ言ってたよな? あいつに取り立てて貰った恩を返さないといけねぇって。
今がその時じゃねえのかよ!!」
「我々が動けば、余計な混乱を生みかねない」
ユキノは淡々と、感情を押し殺した声で答えた。
「我々は連邦生徒会長に依存した学校の生徒だ。
この状況で勝手なことをすれば、それは叛逆と取られても文句は言えない!!」
「なら、俺らのボスを探します、って言ってから動けばいいじゃねえかよ」
「そんな、単純な話ではない!!」
「単純な話だろうが」
「ことは、SRTの存続に関わるのだ。私だけではない、今年入学したばかりの一年生たちにも、迷惑がかかるのだ!!」
血を吐くような言葉だった。
そんな彼女を、ミコトは冷めた目で見ていた。
「下らねぇ。そんなにキャリアが大事かよ」
「──ッ!!」
「どうした、エリート様。気に入らねぇ相手を殴ることも出来ねぇってか?」
「貴様に、何がわかるッ」
至近距離のミコトは、ユキノの悔し涙が見えた。
「自由気ままに、他人を気にせず暴虐を振りまく貴様に、自らを律して暴力を制御し、正しくそれを使おうとしている私達の、何がわかると言うんだ!!」
「正しく使う、か……」
至近距離のユキノは、ミコトがゆっくり笑顔を作るのが見えた。
「じゃあ、俺が試してやるよ」
「な、に?」
「なあ、教えてくれよ、連邦生徒会の犬っころ」
ユキノの瞳に、狂気の笑顔が映っていた。
「連邦生徒会が無くなっちまったら、お前らはどうなんだ?」
「き、貴様、まさかッ」
「てめぇは指くわえて見てろや、ごんぎつね」
ミコトはユキノを突き飛ばすと、SRTの敷地から去って行った。
その手には、スマホが握られていた。
「俺だ、頭数集めろ。連邦生徒会にカチコムぞ」
ぎゃははははは、とミコトの笑い声とバイクの音が遠ざかっていく。
「……どうするの、ユキノ?」
愕然としているユキノの肩を、ニコがやってきて優しく揺する。
「……私は」
場所は変わって、デスサイズ本部。
「福音は来ませり。聖なるかな、聖なるかな、聖なるかな!!」
セキトの笑い声が、本館に響き渡る。
「セキト隊、全メンバー集合なさい。
御座をミコト様に捧げるのです!!」
真っ赤な修道服の女が、黒いジャケットを羽織る。
その背には、青龍偃月刀を掲げた関聖帝君の刺繍。
同じジャケットを着た不良たちが続々とグラウンドに集結していく。
かつてセキトと共に各地で暴れまわった、彼女の精鋭だ。
それに慌てて、本館からシロネが飛び出してくる。
「ちょっと、ちょっと待ってよ!!
まだメメントモリ全員と状況把握が終わってないでしょ!!」
「──必要ですか?」
同僚の制止を、セキトは気にしない。
「ミコト様がやる、と言ったらやる。それが我々の仕事です」
「せめて宗主の意思を確認して──」
シロネの顔面に、セキトのショットガンが炸裂した。
鼻血を出して昏倒する同僚を尻目に、セキトは聖典を開いた。
「この預言の言葉を朗読する者と、これを聞いて、その中に書かれていることを守る者たちとは、さいわいである。時が近づいているからである。*1──ああ、我が主よ。今御座へと向かいます」
そしてD.U.は、キヴォトスは、この日知った。
園芸なんて始めて腑抜けたなんて言われていた、ミコトの完全復活を。
「我が主よ、こちらをどうぞ」
「おう」
連邦生徒会長の執務室。
静謐な雰囲気溢れる無駄に広いこの部屋は、物々しい雰囲気に支配されていた。
セキト率いる二百名の不良達の襲撃によって占拠されたサンクトゥムタワー。
行政委員会の主要メンバーは全員縄で縛られ床に転がされ、それ以外は追い出されていた。
そしてミコトは、連邦生徒会長の執務机の椅子にどっかりと腰を落とした。
「そこは、あなたの席ではありませんよ。ミコトさん」
縛られて床に転がされ、眼鏡がズレてるリンがそう言った。
「居ねぇんだから別にいいだろ。おい、カメラ回せ」
「はい、ミコトさん!!」
ミコトの命令に、セキト隊の不良がスマホで撮影の準備を始めた。
「ミコトさん、いったいなぜ、こんな、クーデターなんて!!」
「クーデターだぁ?」
リンと同様に縛られてるカヤの声に、ミコトはにたにた笑いながら小首を傾げた。
「そいつはちげえなぁ、俺はクレームを言いに来たんだ」
「な、なんですって!?」
「てめらの不始末のせいで、俺ら迷惑してんだ。
そこら中渋滞してやがるし、Wi-Fiは時々切れるし、スラム街の方じゃ下水が氾濫しそうだって話だ」
なあ、とミコトはカメラに語り掛けた。
「知ってるか、連邦生徒会長って失踪してるらしいぜ。
だから俺らはこんなに迷惑してんだそうだ」
「そ、それは、まだ極秘事項です!! それを一般社会に知らせて一体どんな混乱が巻き起こるかわかっているのですか!!」
「じゃあ今が混乱してねぇみてぇじゃねえか。笑わせんな!!」
リンの必死な声に、ミコトは怒鳴り返した。
「今まさに、あんたのせいで業務が滞ってるんだけど!!」
これには普段あまりやる気を見せないモモカも怒っていた。
「そうだそうだ!!」
「み、皆さん、落ち着いてください、相手を刺激しないで……」
ハイネが同調して声を挙げるが、アユムは涙目のまま周囲を宥めようとしていた。
「こ、ここは、穏便に交渉をしましょう!! 我々の力不足に怒っているのは、事実のようですから……」
「……わかった。僕がやるよ」
「ハイネさんが?」
真剣な表情のハイネに、リンは驚くが、とりあえず任せることにした。
「ミコトさん、今年のキヴォトス大運動会――晄輪大祭での出禁を解除するってのはどう?」
「それのどこが交渉材料なの……」
真剣な態度のハイネに、アオイが冷静にツッコミを入れた。
「ああ、あれな。全競技に参加して総なめしちまった奴な。
強過ぎるってのも罪だよな。五種目あたりでレッドカード出されて、大暴れした記憶があるぜ」
「うーん、残当……」
「折角観客は湧いてたのによぉ」
モモカのジト目など気にせず、残念そうにミコトは首を振った。
「あ、そうだ!! そのいかにも番長って格好、応援団長をするってのはどうかな!!」
「ほう、そいつは面白そうだ!!」
「じゃあ大祭公認の応援団の団長をお願いするね!!」
楽しそうにしているミコトとハイネ。
なんで上手く行ってるんだ、と周囲の面々は思った。
「みんな、交渉は上手く行ったよ!!」
「どこがですか、この運動バカ!!」
「運動は大事に決まってるでしょ!!」
「お願いですから状況を考えてください!!」
口論に発展するハイネとカヤ、これにリンも加わった。
「お前ら、喧嘩すんなよ」
呆れたようなミコトの言葉に、誰のせいだ、と言わんばかりに睨まれる。
「そうだ。折角カメラ回してんだ、妄想ごっこしようぜ」
「何ですって?」
「例えば、だ。俺がこのままキヴォトスを仕切るって言ったらどうする?」
捕まっている行政委員会のメンバーが青ざめる。
事実、それは現実になりうる状況だった。
「貴女は、連邦生徒会長になるつもりですか!!」
「バーカ、ちげぇよ」
ミコトはゆっくりと笑みを浮かべた。
「俺が、連邦生徒会長を選ぶんだ。俺のレッドウインターでの役職、知ってるか?」
ミコトは、こう言った。
「神聖レッドウインター連邦帝国学園の初代皇帝、兼初代大統領、兼初代大王、兼初代国王、兼初代総統、兼初代大司教だ。まとめて、レッドウインターの雷帝なんて言われてるらしいな」
めちゃくちゃだった。
これにはレッドウインター出身のカヤもあんぐりと口を開けている。
「なんですか、その、神聖でもレッドウインターでも帝国でも学校でもなさそうなのは……」
「最初は書記長にしてくれるって言われたんだけどよ、書記の何が偉いんだかわかんなくてよ。要らねぇって言ったら新しいレッドウインターを作るから、そこを仕切ってほしいって言われたんだよ。
流石に連中も、一週間で三十回のクーデターは堪えたらしいぜ」
ミコトの暴虐は、レッドウインターを震えあがらせた。
その果てに、誰も住んでいない土地を献上され、そこの支配者にミコトは君臨したのだ。
件の神聖レッドウインター連邦帝国学園とやらは、ミコトがクーデターに飽きたので完全に放置されている。
「つまりだ、俺は連邦生徒会長より偉いってこった。文句ねえよな?」
「そんなわけ無いでしょう!!」
「ぎゃはははは!!」
リンの抗弁も、ミコトは誤魔化すように笑い飛ばした。
「我が母校ながら今回ばかりは恨みますよ……」
「あっちで雷帝呼ばわりされて、マコちゃんにキレられたりもしたが、そんなことはまあどうでも良いか」
恨み節を吐いているカヤを他所に、ミコトは執務机から適当な書類を取り出し、その裏にペンを取り出して何かを書き始めた。
「とりあえず今の連邦生徒会は潰して、生徒会長連合を作るってのはどうだ?
連邦生徒会長ならぬ、連合生徒会長をヘッドにしてよ。
それで俺の考えた最強の生徒会を作んだ」
ほれ、と書類の裏を見せるミコト。そこに役職と各学校の生徒会長の名前が書かれていた。
「連合生徒会長は、マコちゃんで良いか。
政治とか交渉担当大臣はナギサで、技術開発大臣とかはリオにやらせるか。
将軍は……ホシノで良いか、あいつエリートだったらしいしできるだろ」
まさに、ぼくのかんがえたさいきょうの生徒会だった。
まさしく妄想に過ぎないが、それなりによく出来た人選だった。
なお、ここで名前を挙げられてる当人たちは、ミコトの所業に頭を抱えている模様。
「観光大臣は百鬼夜行の生徒会長にすっか、えーと今の生徒会長って誰だっけ?」
こいつ、キヴォトスをジグソーパズルか何かだと思ってやがる、と行政委員会の面々が戦慄していると。
ローター音が近づいてきた。
ヘリコプターだ!!
「……やっと来やがったか」
窓を蹴破り、FOX小隊がエントリーする。
「セキト、遊んでやれ」
「我が主の御心のままに。──総員、一斉射撃」
セキト隊たちが突入してきた四人に銃口を向けた。
しかし、執務室の入り口から十数人の生徒が雪崩れ込んできた。
誰もが、SRTの三年生部隊だった。
「よう、カマキリども、カラスども、オセロットども。お前らも来たのか!!」
ミコトは手を叩いて喜んだ。
四部隊、計16名は十二倍の相手にもひるまなかった。
その戦いに、ミコトは参加しなかった。
暇なので欠伸をしている有様だ。
やがて、銃声は止んだ。
16人はボロボロになりながらも、全員立っていた。
こんな遮蔽物の無い場所では、流石に特殊部隊の面々でも無傷とはいかないようだった。
「申し訳ありません、我が主よ。不甲斐ない者達で」
「気にすんな、こいつら相手じゃ無理はねぇ」
セキト隊は全滅、セキトはそのことを悔やんでいたがミコトは気にしていない。
「で、お前らどう責任取んだ?
なあ、連邦生徒会長の犬っころども」
SRTは連邦生徒会長の命令にだけ、出動が許される。
こうしてここに現れること自体、彼女達には有ってはならないことだ。
「我々を舐めるなよ、野良犬が」
彼女達は全員、懐から白い封筒を取り出した。
それは、退学届けだった。
「これはSRTの正義ではない。我々の正義だ!!」
ユキノは退学届けを床に叩きつけ、そう啖呵を切った。
「退学ついでに、あんたをボコボコにしてあげるわよ!!」
クルミが血走った目でそう叫んだ。
「私達は、どこに居ようと心はSRTだよ!!」
ニコが覚悟を秘めた瞳でそう言った。
「あなたみたいな奴に、キヴォトスは好きにさせないから!!」
オトギが敵意を剥き出しにして銃を向ける。
「……愚かな。天に唾を吐くとは」
「まあ落ち着けよ、セキト」
ミコトは前のめりになって飛び掛かろうとするセキトを諫め、ゆっくりと立ち上がった。
それだけで、16人の間に緊張が走る。
今倒した200人。その10倍と戦う方が、目の前の怪物に挑むよりずっと簡単だからだ。
「なあ、教えてくれよ。なんで誰も俺を裁けねぇ」
執務机の前に、ミコトが出る。
「何で誰も、俺を本気にさせてくれねぇんだ?
俺を満足させてくれよ。俺に勝てる奴を連れて来いよ。
そしたら、矯正局でもなんでもぶち込まれてやるからよ」
ミコトの嘆きに、彼女達は応えない。
「なんだよ、お前らもそうかよ」
彼女は愛銃を振り上げて、つまらなそうにそう言った。
一人、また一人。
ミコトの暴虐に、SRTの精鋭が倒れていく。
その数が半数になり、最終的にFOX小隊の面々だけが残った。
「飽きた」
唐突に、ミコトが銃口を下ろした。
「……なに?」
「こいつらには言ったんだけどな、俺はクレームを言いに来ただけだ。
それとも一市民に手を挙げんのがお前らなのか?」
「ほざくな!! クソ女が!!」
「そう思うなら、捕まえに来いよ」
ミコトは戦意を収め、おい、とセキトに向けて顎をしゃくった。
「はい、総員撤収!! いつまで寝てるつもりだ!!」
セキトの号令に、ボロボロにやられたセキト隊たちが起き上がる。
「今日のところは引いてやる。てめえらが、てめえらの価値を示したんだからな」
そんなことを言いながら、ミコトは彼女達を横切った。
「だから、強者がそんな顔をすんじゃねぇ」
「……ミコト、貴様は」
ミコトはセキトを伴い、そのままエレベーターで階下に降りて行った。セキト隊の面々もそれに続く。
緊張の糸が切れる音が、彼女達にも聞こえるような気がした。
「た、助かりました!! 早く縄を解いてください!!」
カヤの声に、彼女達は動き出した。
リンや他の行政官達が、解放される。
「ユキノ、そんな顔のままじゃ台無しだよ」
ニコがハンカチを取り出し、幼馴染の顔を拭った。
「……すまない」
「いいよ、でもこれからどうしようか」
「わからないさ……だが」
「だが?」
「……いや、何でもない」
ユキノは感傷を振り払ってそう言った。
ミコトによる、連邦生徒会長不在の暴露は、キヴォトスに更なる混乱を巻き起こした。
連邦生徒会の行政委員会の奮闘虚しく、サンクトゥムタワーの基幹システムの運用は連邦生徒会長なくして動かすことは叶わず、解決には更に二週間もの時間を要した。
それは即ち、一人の大人がこのキヴォトスに現れたことを示すことになる。
その裏で、誰も知られずに、何も変わらなかったものもある。
「ねえミコト、結局SRTは存続するみたいよ。青鬼になった甲斐があったわね」
「……ふん、狐どもが居ないSRTなんて、興味ないぜ」
ぱちん、と枝切り鋏で剪定をするミコト。
SRTは存続するも、三年生部隊は離散することになった。
今彼女達がどこにいるのか、誰も知らない。
「まあ、奴らもいずれ戻って来るだろ。何もしないままじゃいられない奴らだ」
「それもそうね」
ユエはミコトの言葉に、いつもと変わらぬ笑みでそう応じた。
「ミコちゃん、なんかこれ手紙だってよ。渡しておいて欲しいって」
「あん? 一体誰だよ」
すると、園芸部の部員が校門の方から駆け寄ってきた。
ミコトは部員から、差出人も宛名もない、厚みのある封筒を受け取った。
中を見ると、そこにはパックに入ったお稲荷さんと手紙があった。
そこにはこう書かれている。
『借りは必ず返す、六文銭は預けておく』
ああ、とミコトは理解した。
「お前だったのかよ、ごんぎつね」
律儀な奴だと、ミコトは小さく笑った。
加筆修正前は何だかミコトっぽくなかったかなって思い、再投稿しました。
二年生編の時と言い、また出鼻が挫かれた感じで己の未熟さに嫌になります。
個人的にはFOX小隊は好きな面子なのですが、やっぱり誰ひとり実装されてないからか、反応しづらいのかしら。それとも私の物語構成が悪いのか。一件も感想が無かったのは重く見ております。
何の反応も無いと不安になって再投稿なんてしてしまいましたが、小心者な自分が嫌になります。
作者のモチベーション向上と自己肯定感アップと更新速度維持の為に、感想や高評価を下さると嬉しいです。
では、また次回!!