ゲヘナ学園 園芸部の死神   作:やーなん

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ブルアカVol3「補習授業部編」その4

 

 

 

「なぜ“特効薬”などを作り、トリニティに齎したのか?」

 

 トリニティのテラス席の背景に、シルエットだけの生徒が語る。

 

「先生。エデン条約に関する騒動を振り返り、ティーパーティーの面々についてどう考えましたか?」

「“……もっとちゃんと話し合ってくれれば、あんなにすれ違いはおきなかったんじゃないかな”」

 

 先生は己の所感を答えた。

 

「ええ、先生。それが全てですよ」

 

 シルエットの生徒は、三日月のような笑みを浮かべた。

 

「これは社会実験とでも言うべきでしょうか。

 仮にトリニティの生徒達が本音を全て口にできた場合、今回のような騒動は起きなかったのではないか?

 きっと、()()()そう思ったことでしょう」

 

 先生は、何も答えない。

 

「だから、そうしてみただけです。結果は御覧の通りでしたが」

 

 彼女は肩を竦めた。

 

「結局のところ、真実か虚偽かなど、どうでも良かった。

 自分達の信じたいことを信じ、自分達の聞きたい言葉だけを聞いた。

 猜疑心と、思春期特有の女子の反応と言いますか。結局はそんなありきたりな結論に至りましたね」

「“そんな、君のどうでもいい好奇心を満たすために、あんな薬をばらまいたのか!!”」

「先生、事実を歪曲しないでください」

 

 くつくつ、と激昂する先生に彼女は笑いながら言った。

 

「私は、何もしていないじゃないですか。ただ舞台を整え、見ていただけ。

 あの二種類の“特効薬”をトリニティにバラまいたのは、全て彼女の意思でした。私は唆してすらいません」

 

 それは全て、事実だった。

 ただ、彼女の思惑通りに動くだろう生徒の前に、薬を置いただけ。

 

「銃がその辺に転がっていたからと言って、それを拾って強盗をするかどうかは当人の問題でしょう?」

「“だからって、そんなことをする必要はなかった……”」

「でも先生、他ならぬ彼女は“特効薬”を必要としていた。

 私は誰よりも必要と望んだ者に、善意で与えただけです。

 隠れた意図が有ったとしても、それで彼女の心の隙間を埋めることが出来るなら、と私は本気でそう思ったのです」

 

 実際あの“特効薬”は偶然の産物ですし、と最初からそうするつもりではなかったと彼女は口にした。

 

「私はこれでも冥界の女主人と同一視されたこともあります。

 女性の味方をしたいと言うこと自体に、誓って偽りはありませんよ」

「“それが、君が生徒達を弄ぶための建前だとしてもかい?”」

「先生!! あなたがそれを言うのですか!!」

 

 シルエットだけの生徒は、お腹がよじれるほど笑い出した。

 

「自分より下等な存在を弄び、観察し、一方的な善意や慈愛を与える。

 あなたはその為に“先生”になったのでしょう? 一体私と何が違うと言うのですか!!」

「“違う、それは違うよ!!”」

「くふふふッ、そのことについて論議するつもりはありませんよ」

 

 ひとしきり笑った後、彼女は真面目にこう言った。

 

「しかし、先生。あなたは先生である限り、決して生徒達と本当の感情を共有することは出来ません。

 キヴォトスに居る限り、生徒達は子供に過ぎないのですから」

 

 先生は、大人である。

 それは子供である生徒達との隔絶を示している。

 

 先生は大人として、先人として、子供たちを教え導くことは出来る。

 だが、決して同じ目線で喜びや悲しみを共有することは出来ない。

 

 先生は、絶対的に()()()なのだ。

 

「それとも、見守ることも教育でしょうか?」

「“……私は、それで良いと思っているよ”」

「ふむ、それは理解できる感情です」

 

 子供たち同士でお互いに成長し合うのを見守る、それは両者にとって求めているものが合致していた。

 

「なるほどなるほど、今回の語り合いもまた、非常に有意義でした。解像度を上げるのは大事なことです」

 

 シルエットだけの生徒は、勝手に納得したように何度も頷いた。

 

「では、此度の邂逅はこれまでにしましょう。

 ……ああそうだ、先生。()()()からの伝言です」

「“ミコトから? なにかな”」

 

「今度、()()会って話をしたいそうです」

 

 ではまた良い夜を、という言葉と共に、先生の意識がこの場から遠ざかっていく。

 

 あなたは、報酬のジュエルを受け取り、このエピソードは終了した。

 

 

 

 

 

 :0X 徒労の回帰

 

 

 先生と補習授業部は、トリニティ学内に戻ってきた。

 各々、方々に掛け合う為に別行動をしている。

 

 特に伝手の無いアズサは、先生の護衛をすると言って彼に同行し、牢屋のある教室に向かった。

 

「“物が増えてる……”」

 

 先生達がゲヘナくんだりまで行っている間に、ユエの牢屋の中に私物が増えていた。

 牢屋の主はクッションにもたれ掛かり、置かれているライトノベル数冊を脇に置きながら、モモフレンズのグッズを愛でていた。

 

「おや、先生。もう戻ってきたのですね」

 

 ユエは読んでいたライトノベルを置いて、顔を上げる。

 

「徒労の為に駆けずり回った気分はどうですか?」

「徒労だと?」

「ええ、預言のことはアオマ達から聞いていますでしょう?

 もし“特効薬”でトリニティが滅びるなら、その預言が成されてなければおかしい。

 なので、放っておいても事態は収束しますよ」

 

 一応手は打っておきましたし、とユエは何でも無さそうに言った。

 

「わざわざ私にもう一度会いに来たと言うことは、――彼女のことでしょう?」

 

 彼女、即ちここまで“特効薬”絡みで面倒なことになった犯人のことだ。

 

「“君が、最初に“特効薬”を与えたんだろう?”」

「ええ、そうです。私は相談に乗ってあげて、丁度いい薬があるから差し上げただけです」

 

 それが全ての始まりだった。

 

「先ほど先生に差し上げた薬は、偽薬。ただの興奮剤です。

 本物の“特効薬”は直接経口摂取するだけでなく、気化したものを吸引しても効果を発揮します。判別しやすいように、柑橘系の匂いも付けています」

「だが、ヒフミがさっき飲んだ“特効薬”は本物だった」

「ごく少量でも効果は発揮します。A薬にスポイトでちょっと掛けて乾かしてそれを包装シートに入れ直せば、錠剤タイプの“特効薬”が完成と言ったところでしょう。

 A薬は手製の錠剤ですから、多少不揃いでも違和感は無かったはずです」

 

 それが、A薬をB薬にするトリックだった。

 正真正銘、本物の“特効薬”は、液体だった。

 しかも、ちょっとした小瓶で百回分として携帯できる程度の量だ。

 

「私と先生は、“特効薬”の存在を知る前から、その効果を目の当たりにしていた」

「そうですか。彼女らしいですね」

 

 そう呟いてから、ユエは少し思案してこう言った。

 

「先生。彼女を責めないであげてください。

 代わりと言っては何ですが、この騒動の責任は私が負いましょう」

「“なんで、そこまでするの?”」

「おや、ゲヘナの生徒がトリニティの生徒と仲良くしたいと思うのは、可笑しいですか?」

 

 ユエはいつもの微笑みを浮かべて、そう言った。

 

「“いいや、良いことだと思うよ”」

 

 先生はそう答えた。

 彼はこの時、想像だにしていなかった。

 ユエの仲良くしたいと言ったトリニティの生徒という言葉が、この件の犯人に掛かっていなかったことに。

 先生にとって、ユエは最後の最後まで油断できない生徒だった。

 

「さて、これ以上は私の口から言うべきではありませんね」

 

 その時だった。

 先生とアズサのスマホに、メッセージが届いた。

 

 登録されていない、プロフィールに画像の無い、即席アカウントと思われる人物からのメッセージだった。

 内容は一言、放課後に大聖堂の懺悔室で全てをお話しします、とだけ。

 

 それを受けて、二人は牢屋を後にした。

 

 

 

 

 :0X 懺悔

 

 

「あ、先生!!」

 

 大聖堂前。既にヒフミとコハルはそこに集まっていた。

 

「二人もメッセージを受け取って来たの?」

「“うん、そうだよ”」

 

 コハルの問いに、先生は頷き返した。

 

「じゃあ、ハナコちゃんも同じメッセージを受け取っているってことでしょうか?」

 

 送信者不明のメッセージの共通点は、補習授業部の面々と先生だけ。

 ヒフミのそんな言葉に、先生とアズサは顔を見合わせる。

 

「……ハナコは、用事があるからこちらで話を聞いておいてくれ、と言っていた」

「あ、そうなんですね、わかりました」

 

 アズサの言葉に、ヒフミは頷き返した。

 

「あ、皆さん。話は聞いています。こちらにどうぞ」

 

 すると、大聖堂からマリーが現われ、一行を中へと案内した。

 

「ちょっと、狭いわよ!!」

「あはは、そうですね……」

 

 懺悔室は電話ボックス程度の広さしかない。

 そこに押し込められた四人は、ぎゅうぎゅう詰めだ。

 

「あッ、先生!! くっつき過ぎよ!!」

「“そんなこと言ったって……”」

 

 大人なので占有面積の多い先生は、コハルにたじたじだった。

 他の三人が小柄な上に胸部の出っ張りが控えめなので、かろうじて事故は起こっていない。

 

「まったく、ハナコに見られたらなんて言われるか……」

 

 コハルがそう憤っていると、懺悔室の向こう側のドアが開くのが聞こえた。

 

 向こう側は格子窓によって顔から下が見える構造になっている。

 これによって声のやり取りが出来る仕組みだ。

 対面についたのは、やはりトリニティの制服の生徒だった。

 

 彼女が、この一件の犯人。トリニティに“特効薬”を広めた存在。

 

「……懺悔いたします」

「ッ、え……」

 

 その声に、コハルは目を見開いた。

 この場の全員が、知っている声だった。

 

 ヒフミは絶句して同室の三人の顔を伺うが、アズサと先生は覚悟をしていたと言うような表情だった。

 

 だが、やがて意を決したように、こう言った。

 

「告白なさい。神は全てをお赦しになるでしょう」

 

 ミサの授業でやったように、ヒフミはそう言った。

 

 格子窓越しに、アロマポットが置かれる。

 アロマポットはキャンドルで皿を温めて、アロマオイルの匂いを楽しむものだ。

 

 その皿の上にペットボトルで水が張られ、キャンドルに火が付く。

 そして、皿の上に彼女が取り出した小瓶から、――数滴の“特効薬”が注がれた。

 

 それは、犯人しか持ちえない、原液だった。

 

 すぐに柑橘系の匂いが、狭い懺悔室に充満する。

 

「……私は、この学校が大嫌いでした」

 

 彼女は、そのように話を切り出した。

 

「この学校は嘘と偽りで満ちている……欺瞞と虚飾で彩られていると感じていました。

 他ならぬ、この私もそうです。

 周囲より多少要領が良いだけで、褒められ、おだてられ……」

 

 一旦、彼女は口ごもった。

 

「私はそんな人間では無い。みんなが想像するような優等生じゃない。

 そんな一言さえ、周囲を気にして言えなかったのです。

 己の愚かさも、周囲の愚鈍さをも恨みました。

 そんな時、ゲヘナの生徒でありながら、多少の交流があったユエさんにこう言われたのです」

 

『よろしければ、今度そちらに“正直になれる薬”を差し上げますよ』

 

「……最初“特効薬”とは私にとって、嘘を暴き立てる薬ではありませんでした」

 

 本当にただの善意だった。

 それを使い、彼女は正直になれた。

 

「ただ仲良くしたかっただけなので派閥には入りません、ティーパーティーの議席なんて身に余るので辞退します、もう嫌です、息苦しくてたまらないんです。……たったそれだけを口にするのが、こんなに簡単にできる。

 これは素晴らしい薬だと、私は思いました」

 

 それを聞く四人は、何も言えなかった。

 

「きっかけは、あの興奮剤でした」

 

『すみません、業者が間違えて隣の興奮剤をそちらにお届けしてしまったようでして……。ああ、使い道など無いので、送り返すのも手間でしょうからそちらで処分してくださって構いません。改めて、例の薬をお送りしますので』

 

「そんな業者のミスで、ダンボール一箱分の興奮剤が私の手元に届きました。

 そして、これを使って、私は学校にささやかな復讐をしようと考えたのです……」

「“復讐……?”」

「誓って、害意が有ったわけではありません。

 まずティーパーティーなどの、影響力や発信力のある生徒達に、B薬を染みこませた興奮剤を送りつけました。

 彼女らが効能を確認した後、ただの興奮剤をバラまくように手配したのです」

「だから、あんなに興奮剤が出回っていたのか……」

 

 納得したように、アズサは頷いた。

 

「私は、みんなに目を覚ましてほしかっただけなんです。

 欺瞞を捨て、嘘や偽りから脱却して、本音で話しあえるようになって……お互いに信頼できるようになってほしかった。

 これはそんな、ささやかな意趣返しだった、その筈でした……」

「そして意図せず、大事になってしまったのですね」

 

 ヒフミは慰めの言葉を言おうとして、結局何も言えなかった。

 

「……もし、真に天罰があるべき者がいるとすれば、それは薬を乱用する者よりも、それを分かっていて売り捌く者でしょう。

 皆さんは何も悪くありません……真に愚かなのは、私だけです。

 ただ……私の愚かさに、もっと早く……誰かに気づいてほしかった……」

 

 ぽたり、ぽたり、と乙女の涙がアロマポットの皿の上に落ちる。

 

「“私達は君を罰したり、告発するつもりもないよ”」

 

 同情や慰めなどではなく、先生はこう言った。

 

「“ただみんながちょっとずつ間違えた。ただそれだけの話だよ”」

「ええ、神へ告白した秘密は守られます」

 

 先生に続いて、ヒフミはこう言った。

 

「それに、相手に赦しを与えることが、本当の愛であると……ミサの授業で習いませんでしたか?」

 

 ……そうですね、と彼女はか細い声で応じた。

 

「わ、私は初めから分かってたわよ!! あんたが馬鹿で、くだらないことを言う奴だって。

 ……あんたは運が悪かっただけよ」

「そうだな」

 

 コハルの言葉に、アズサも頷いた。

 

「私達にこっそりと“特効薬”を使っていたのには気づいていた。

 コハルの言動は実に分かりやすかったからな」

「うん……え、ちょっと待って、あんたそんなことしてたの!?」

「だからもう分かっていると思うが、私達はもうお互いに本音で話し合える関係なんだ」

 

 まあまあ、と先生がコハルを宥めている横で、アズサは言った。

 

「つまりは、これを……友達と言うのだろう」

 

 “特効薬”の残酷なところは、嘘吐きを炙り出せることだろう。

 だが彼女はもう知っているのだ。見栄っ張りなだけのコハルと、思ったことしか口にしないヒフミとアズサ。そして、良心と自制を持って生徒に接する先生の存在を。

 

「だからきっと、それは本当は“友達が出来る薬”なんだと思う」

 

 友達の振りをして、陰から悪口を言う人間なんていくらでもいる。

 それを篩にかけることができる。結局は、使い方次第だった。

 

「学校の政情や立ち位置の話なんかじゃなくて、くだらないことを言い合って、ちっとも特別じゃないことを、したいです」

「いいですね!! そうだ、今度みんなで海に行きましょう!!

 そんな有り触れた、普通の思い出を作りましょう!!」

 

 彼女の言葉に、ヒフミは笑顔でそう語った。

 

「“うん、きっとそれを、青春って言うんだよ”」

 

 それが先生がキヴォトスの生徒達に見出した、美しく尊いものだった。

 

「……そうですね、先生、皆さん」

 

 彼女は、格子窓越しに“特効薬”の入った小瓶を差し出した。

 

「どうやら、もう私にはこれは必要無いみたいです。

 どのみち、私はこれで六度目の使用ですから」

 

 ありがとうございました、と言って彼女はドアから懺悔室を出て行った。

 

 四人も外に出て、反対側のドアから“特効薬”の原液を回収した。

 

「こんな小さなものが、トリニティに混沌を齎そうとしたんですね……」

 

 まだ半分近く残っているそれを見て、ヒフミは複雑そうな表情をしていた。

 

「“これは没収するね”」

「ああ、その方がいいだろう」

 

 先生が小瓶をシャツの胸ポケットに入れるのを見て、アズサも頷き返した。

 

 そうして、四人が大聖堂を出ると、向こうからハナコが現れた。

 

「皆さん、お話は聞けましたか?」

「“……うん、もう彼女は“特効薬”をバラまいたりしないよ”」

 

 ハナコの目元が赤いことに触れずに、先生はそう言った。

 

「私は許さないからね!! 私達にこっそり使ってるなんて、信じられないんだけど!!」

「コハルちゃん、そう言えば今朝、ハスミさんがゲヘナの生徒に酷い辱めを受けたそうですよ」

「何ですって!? そんな羨ましいことがあったの!? 私もいつか事故を装ってハスミ先輩の胸にダイブするつもりだったのに!!」

「コハルちゃんはエッチなことが大好きなんですねぇ♡」

「当たり前でしょ、エッチなことが嫌いな奴なんていないわ!!」

 

 コハルは笑顔でそう言い切った。

 ヒフミは曖昧に笑って、楽しそうにしているハナコを見ていた。

 

「……そうなのか?」

「なによアズサ、かまととぶってるの?

 それとも無知シチュって奴!? あざといわね、無罪!!」

 

 まるでいつもと正反対なコハルの口を、先生は後ろに回ってそっと押さえた。彼女の名誉を守る為である。

 

「もごもご、何するの先生、エッチな事するつもりなの!! このまま後ろから■■して――」

「コハルちゃん、えーと、それ以上は何も言わない方が……」

 

 目が泳いでいるヒフミに、納得がいかず例の顔文字みたいな表情になっているアズサ。

 

「ふふふ、やっぱり私達、本音を言える友達になれたみたいですね♪」

 

 この混沌とした状況で、ハナコはそんなことを言い放つのだった。

 

 

 

 

 :0X 救護騎士団、参上!!

 

 

 翌日の早朝、トリニティの正門前で彼女達が動き出した。

 

「皆さん、学校に蔓延る未認可の薬を排除しますよ」

「はい、団長!!」

 

 団長のミネを筆頭に、救護騎士団の生徒達が検問を敷いていた。

 何事かと見ている生徒達に、ミネは言った。

 

「今日から未認可の錠剤、通称“特効薬”の所持は連邦生徒会直々に禁止されました。所持だけでも薬剤師の教育課程の完了が無ければ違法です」

 

 そう、先生は昨日のうちに、“特効薬”について連邦生徒会に報告し、これはマズいとリンが直々に対応し、こうして条例が発された。

 

「あとから所持しているのが発覚した場合、手続きを省略し停学処分となります」

「そんな、横暴です!!」

「そんなことをするなんて、連邦生徒会と救護騎士団に黒いつながりが……」

「我々に疑問を持つのは構いませんが、それならば病気や体調不良の際は我々にではなく自治区内の病院などに頼って下さい。勿論、緊急の際には我々は救護の手を止めませんが」

 

 ミネにそう言われては、生徒達も弱い。

 学内の保健室が全て使えないのは、あまりにも不便だ。

 

「ミネ団長、出張中だと聞きましたが」

 

 そこに、ナギサが現われて挨拶もなくそう言った。

 

「はい、ナギサ様。代わりの者に一時任せて、急遽戻って参りました」

「まさか、あの“特効薬”についてあなたが――」

「ナギサ様」

 

 妙な勘繰りをしている彼女に近づいて、ミネはこう言った。

 

「救護に、政治を持ち込まないでください。あなたは政治で誰を助けるのか決めるのですか?」

「あ、はい……すみません」

 

 両目をかっぴらいて詰めてくるミネの迫力に、ナギサはすごすごと退いた。

 

「さて、ティーパーティーの了承(?)も得られたところで、持ち物検査を開始しますよ!!」

 

 そんなミネを始めとした救護騎士団の活躍もあり、供給源も絶たれた“特効薬”はこの日以降鳴りを潜めたと言う。

 

 

「ミネ団長、例の件ですが……」

「安心してください。“ごんぎつね”の四人が対応してくれています」

 

 こっそりとミネに近づいてそんなやり取りをするハナコ。

 

「わかりました。では」

 

 最低限の会話だけで、ハナコは荷物検査の列に交じる。

 

「ミネ、俺が代理でもよかったんだぜ?」

 

 喧騒の中から、真顔のミネの顔のお面を付けた、救護騎士団の制服を着た生徒が現われてそんなことを言った。

 

「貴女に任せた場合、強度の高い救護にしかならないでしょう?

 救護は適切に、状況に応じて行使しなければなりません」

「ふッ、そうだな。まだまだ救護を極めるのには時間が掛かりそうだ」

「私とてまだ道半ば。生涯を懸けての求道ですよ」

 

 そんな二人のやり取りを他所に、生徒達が銃を抜いて抵抗を始めた。

 

「麻酔係、出番ですよ。私は救護に貸し借りは無いと思っていますが、ボランティアは受け入れます」

「おう、団長」

 

 そうして、謎の生徒の医療行為で沈黙した生徒達を見た者は、渋々薬を差し出したそうな。

 

 

 

 

 




最後に登場した謎の生徒、いったい誰コトなんだ……!!

多分こっちではメインストーリー最長を誇るエデン条約編のボリュームが更にアップしているんでしょうね。ユエの所為で。
でもトリニティの各組織が出るので、導入としては理想的って評価がされるかもしれません。一章は結局、最後にミカがプールで出てきて持ってくためみたいなところありますし。

次回からは、この騒動を踏まえての続きを描写していきたいと思います。

それではまた、次回!!
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