ゲヘナ学園 園芸部の死神   作:やーなん

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ブルアカに先生以外の人間の男を出すのはご法度だと理解していますが、一つだけ言わせてください。

ミコト(男)と会って一番貞操が危ないのは生徒達よりも、先生っす……。



ブルアカVol3「補習授業部編」その5

 

 

 :XX 檻の外

 

 

 ティーパーティーのテラス席。

 先生はナギサに事情を説明していた。

 

「そうですか、では“特効薬”を巡る騒動は収束するのですね」

 

 ナギサが溜め息を吐いてそう言った。

 結局、“特効薬”の殆どは幻想だった。

 

 誰もが信じたいように信じ、聞きたい言葉だけを聞いた。

 そんな、下らない結末だった。

 

「“うん、もう彼女は反省しているよ”」

「それが誰かは、言うつもりは無いのですね」

 

 懺悔室の中での告白だからね、と先生はナギサに言った。

 はあ、と溜め息を吐く彼女。

 

「ユエさんが何をしたいのか分かりません。

 出張中だったミネ団長と手紙で連絡を取っていたのは彼女らしいのです」

「“手を打ったって、そう言う意味だったんだ……”」

 

 ナギサ視点では、ユエはトリニティに混乱を齎そうとしている存在の筈である。それは矛盾した行動だった。

 

「“私の方から、もう一度話を聞いてみるよ”」

「はい……お任せします。今回ばかりは、ミカさんの先見の明に感謝するべきでしょうね」

 

 ナギサは疲れているのか、元気が無さげだった。

 先生と言う使い勝手のいい解決札が目の前にいるのは、有難い様子だった。

 

「“……もうお昼前か”」

 

 そんなわけで、先生は生徒会室から出て腕時計で時間を確認する。

 もう昼前だ。ナギサに会うのにこんな時間になってしまった。

 

 広大な校内の移動中に、お昼休みの鐘が鳴った。

 程なくして、先生も牢屋に到着した。

 

 すると、先生より先に数名のトリニティの生徒が入って行ったのが見えた。

 

「“どうしたんだろう……”」

 

 これまで先生がユエに簡単に会えたのは、彼の信頼と実績があってのことである。

 牢屋の前では当然ながら正義実現委員会の生徒が警備している。会いに行っても追い返されるだけだ。

 

 案の定、口論の声が聞こえた。

 

「帰れ!! これは警告だ!!」

 

 牢屋を警備している生徒の怒声が聞こえる。

 先生がドアを開けると、そこは修羅場だった。

 

「この女は、“特効薬”なんてもので我々の感情を弄んだ魔女ですのよ!!」

「それは事実無根だ!! ずっとここを警備していた私が保証する!!」

「じゃあなぜ、犯人が捕まらないのですか!!」

「その魔女を庇っているのでしょう!!」

 

 一般生徒と言い争っているのを尻目に、我関せずとユエはクッションにもたれ掛かりラノベを読みながらポテチを食べていた。

 

「いい加減にしろ、彼女には指一本触れさすなと委員長からのお達しだ。お前達はゲヘナとのいざこざの原因になりたいのか!!」

 

 警備の生徒が銃を突き付け、最後通告を行った。

 ひるむ一般生徒達。しかし、そんな彼女らに向けて。

 

 

 にやり。

 

 ユエは嗤っていた。

 わざわざ見えるタイミングで。何もできない彼女らを嘲笑っていた。

 

「こ、この女、私達を笑いましたわよ!!」

「やっぱり、この魔女が全ての元凶なんですわ!!」

「あなたがトリニティに災いを齎す魔女なのねッ」

 

「なぜ――」

 

 激高する彼女達に、ユエは言った。

 

「なぜ……あなた達はそんなに可愛らしく、――下等で、愚かで!! ――愛おしいのですか?」

 

 想像を絶する言葉だった。

 

「なぜ、自分達が()()()にいると自覚していないのですか?」

 

 ユエは、()()()から中を見ている。

 

「なぜ猫じゃらしに飛びつかずはいられない子猫のように容易いのですか? 檻の中で餌を貪る家畜を眺めるように、この動物園の特等席をタダで与えて下さるなんて、ナギサさんも粋なことをされる」

 

 檻の中に手を伸ばすように、鉄格子に密着して手を伸ばすユエ。

 

「さしずめ、学名はトリニティハネツキザルと言ったところでしょうか。

 人間ごっこは楽しいですか? サルの分際で、発情したように喚き散らして」

 

 ユエの顔が、鉄格子の間にミシミシとめり込んでいく。愛玩動物をより近づいて見ようとしているからだ。

 

 だがその光景は、テレビから登場する怨霊そのものだった。

 

「なんて可愛らしい、抱きしめさせてください。愛でさせてください。その愛らしい姿を際立たせる醜悪さを、もっと近くで見せてください!!」

「ひぃ!!」

 

 一般生徒達は、悲鳴を上げて逃げ出した。

 

「あら、残念です……」

 

 今にも身体を無理やり押し出して、“檻の中”に入り込もうとしていたユエは、何とか“外側”に戻ろうとしていた。

 が、苦戦している。

 

「……あら、先生。こんにちわ。もしよろしければ、手伝ってくれませんか?」

 

 先生は、そこで自分が絶句していることに気づいた。

 

「“うん、わかったよ……”」

 

 先生と警備の生徒で、何とかユエを押し出すことに成功した。

 

 

 

 :XX 毒杯

 

 

 警備の生徒が退出し、先生はユエと二人きりになった。

 

「生徒の皆さんと仲良くなることは、そんなに難しいことではありません」

 

 彼女は、悠々と語る。

 

「彼女らの話を聞いてあげて、肯定してあげて、味方になってあげればいいのです。

 実際に味方になる必要はありません。口だけで彼女らは簡単に、いともたやすく篭絡できる。

 ……おや、まるで誰かのようですね?」

 

 黄金の瞳が、先生を見やる。

 

「“……少なくとも私は、生徒達の味方のつもりだよ”」

 

 自分を揶揄されたと感じた先生は、ユエにそう返した。

 

「ええ、そうですね。少なくとも先生は、容易くない生徒達を相手していらっしゃる。

 実に羨ましいことです」

「“……君の知っていることについて、教えて欲しい”」

「そうですね、私のゲームに参加してくれた他ならぬ先生のことです。私の知ってることを話してもよろしいかもしれません」

「“…………”」

 

 先生は、ジト目で彼女を見ていた。

 ユエはちっとも全てを語るつもりが無さそうだからだ。

 

 その時である。

 

「ユエちゃん、お昼だよ」

 

 警備の生徒が、トレーに昼食を乗せて持ってきた。

 

「ああ、そんな時間でしたね。

 しかし……」

 

 ユエは牢屋に落ちているポテチの袋を見やった。

 

「私はお腹いっぱいですので、先生がどうぞ。まだお昼は食べてませんよね?

 トリニティの食事は美味しいですからね。食べながらお話ししましょう」

 

 折角なので、先生は御相伴に預かることにした。

 

「“ありがとう、ちょうどお腹が空いてたんだ!!”」

「喜んでくださって、私も嬉しいです」

 

 ユエは微笑ましそうな表情でそう言った。

 警備の生徒が自分が使っているテーブルを提供すると、先生はその席に座って昼食を食べるべくスプーンを手に取った。

 

「……ん?」

「“それじゃあ、いただきます!!”」

「先生!! 待ってください!!」

 

 先生がスープを口にした瞬間、牢屋の中からスマホが飛んできて彼の顔に直撃した。

 

「“げほげほッ、なにするんだい!?”」

「先生、落ち着いて聞いてください。そのスープ、毒入りです!!」

「“ええッ!?”」

「早く水か何かで口をゆすいでください!!」

 

 先生がスープを吐き出したのは幸いだった。

 警備の生徒が慌てて自分のペットボトルの水を先生に差し出した。

 

「すぐに救護騎士団を呼んで下さい!!」

「うん、わかったよ!!」

 

 警備の生徒は慌てて教室の外へと飛び出して行った。

 

「先生、大丈夫ですか? 仕事柄、毒物には鼻が利くのです」

「“うん、危うく飲みこむところだったよ……”」

「すみません、まさかこんな下らないことを仕出かすとは」

 

 ユエは不愉快そうにそう言った。

 口を濯いでペットボトルに吐き出した先生は、彼女を疑わなかった。ユエが先生を加害する、そんな必要も動機も無いからだ。

 

 それに、と先生は思った。

 

「(“ユエならこんな分かりやすい手は使わない……”)」

 

 そんな信頼があったからだ。

 

 

 

 :XX 慟哭

 

 

「この度は、本当に申し訳ありませんでした」

 

 生徒会室、ナギサは全ての予定をキャンセルして先生に頭を下げた。

 

「“気にしないで良いよ、大事は無かったし”」

 

 治療を受けた先生はナギサにそう言った。

 

「あれは校内で使われている殺鼠剤ですね。

 少量だったので助かりました。我々ならともかく、先生が飲み込んでいたら危なかったです」

 

 と、事情聴取の為に呼ばれたユエが、手錠を付けたままそう言った。

 

「かつて、死病を運んでいたネズミ、さしずめ私はそれを操る魔女と言ったところでしょうか」

 

 くすくす、と何が可笑しいのかユエは笑っていた。

 

「必ず、我々で犯人を突き止め、始末は付けますので……どうか連邦生徒会は……」

「“何も無かったんだから、そんなに頭を下げないで”」

 

 平謝りするしかないナギサに、先生は優しく声を掛けた。

 

「……わかりました。では、次の話に移りましょう」

 

 憔悴しきった表情のナギサが、ユエを見た。

 

「まさか我々に隠れて、スマホまで持っているとは……」

「今の時代、スマホが無いと人は生きていけませんよ? 私もスマホ中毒なので」

 

 ユエは悪びれもなく、そう答えた。

 

「あ、当然警備の彼女は知りませんでしたよ。彼女を罰するのは辞めてあげてください」

「“一応、スマホを持ってることがバレるのを承知で、ユエは私を助けてくれたみたいだし、多めに見てくれないかな”」

 

 牢屋の中にスマホ以外に硬い物はなかった。

 ユエにそれを投げる以外に、先生を制止する方法はなかった。

 

「わかりました……。ただ、通話履歴や観覧履歴などは洗わせてもらいますよ」

「どうぞ、やましいことなどしてませんから」

 

 先生の口添えに、ナギサは納得するしかない。

 そしてユエは、探られて困る腹は無いと言った態度だった。

 

「……多くのまやかしが剥がれ、結局振り出しに戻って来てしまいました」

 

 校内での騒動を振り返り、ナギサはそう言った。

 

「やはり、私は校内に裏切り者が居ると考えています」

「“ナギサ……”」

 

 自分の同胞たちを疑う態度に、先生が痛ましそうに彼女を見ていると。

 

 

「ええ、確かにトリニティの裏切り者は、本当に存在しますよ」

 

 ユエが、にこにこといつもの笑顔で爆弾を放り投げた。

 

「な、なんですって!!」

「何を驚いているんですか? 自分から疑ってらっしゃるのでしょう?」

「私だって、疑いたくて疑っているわけではありません!!」

 

 ナギサの表情の変化を面白そうに見ているユエ。

 先生は、改めて彼女に尋ねた。

 

「“どういうことなのか、教えて欲しいな”」

「セイアさんの襲撃を計画した犯人を、私が庇って出頭したから、こうして虜囚の身であると言ったらどうですか?」

 

 まるで世間話をするかのような、衝撃的な内容。

 ナギサは口をぱくぱくと絶句している。

 

「お、教え、教えなさいッ!! 誰が、セイアさんを!!」

「まあ怖い。そのようなナギサさんのお顔を拝見するなど、滅多にないことではありますね♪ 得した気分です」

「“ユエ、それが誰なのか教えてくれるかい?”」

 

 激高して立ち上がるナギサを制し、先生は努めて冷静に彼女に問うた。

 

「おや、今言いませんでしたか? 私は犯人を庇っているんですよ。誰がそれをしたか、言うわけないじゃないですか」

「言いなさい!!」

「では、ヒントをお教えしましょう」

「ッ、バカにしてッ」

「補習授業部の面々の誰かですよ。セイアさんを襲撃したのは」

 

 ユエは、ひとつも嘘を言わなかった。

 トリニティの裏切り者と、セイアの襲撃犯。それが別々の人物であると言わなかっただけで。

 

「“な、なんだって!!”」

「先生。その表情が見たかったんです」

 

 驚き戸惑っている先生を、ユエは観察している。

 

「補習授業部の方々と交流し、そのパーソナリティを知り、その上で彼女らの中に犯人が居ると知った、その表情を見たかったのです」

 

 人心を弄ぶ、邪悪な魔女がそこにいた。

 

「“……なんで、君は犯人を庇っているのかな?”」

 

 先生は内にこみ上げる怒りを押し殺して、質問を続けた。

 

「最初は、それは尊い行いだったからですよ。

 だから私も協力していたのです。しかし、不幸な行き違いでああなってしまった」

「不幸な行き違いで、なぜセイアさんはあんな目に遭ったのですか!!」

「それは私には与り知らぬことですよ、他人の心の中までは見通せません」

 

 それに、とユエは視線を逸らした。

 

「私は彼女の事、友達だと思っていますので。

 私は憐れんだのです。そして、代わりに罪を被った。ほら、私は所詮ゲヘナの生徒ですし」

「“なら、今更それを口にする理由は無いよね?”」

 

 先生の言う通りだった。

 本当に友達の為を思って庇うのなら、それを口にしてはいけないはずだ。

 

「“ユエ、君はそうやってまた、誰かを弄ぼうとしているんだね”」

「……おや、生徒のすることに口出ししない“壁”と噂される先生にしては、鋭いご指摘ですね」

 

 そして、ユエはこう答えた。

 

「その通りですが、なにか?」

 

 彼女は、一切ぶれずにそう言った。

 

「“本当のことを言ってほしい”」

「私は本当のことしか言っていませんよ。虚言を弄するなど三流のすることです」

「“それが、本音なの?”」

「まさか」

 

「言いなさい!!」

 

 ナギサが、滅多に使うことの無い愛銃を抜いた。

 

「誰が、セイアさんを!!」

「ナギサさん、それはちゃんと手続きを重んじた行動ですか?」

「ッ、私たちをバカにしてッ」

「おや、自分たちの行動は馬鹿にされないと思っているのですか?」

 

 ユエの煽りに、ナギサは普段の清楚さと優雅さをかなぐり捨てて怒鳴り散らした。

 

「“暴力はダメだよ、ナギサ!! ユエのペースに乗っちゃダメだ!!”」

「そこをどいてください、先生!!」

 

 ナギサとユエの間に、先生が身を挺して割って入る。

 

「私の友人が害されたことを、笑って語る者にする容赦はありません!!」

「“お願いだから、落ち着いて!!”」

 

 その時だった。

 

「何だか大声が聞こえるけど、どうしたの?」

 

 ミカだった。彼女が生徒会室に入って来たのだ。

 

「あれ、ナギちゃんがメッチャ怒ってる!!

 銃なんて抜いて珍しいじゃん、どうしたの?」

「……何でもありません」

 

 ミカの抜けた笑顔を見て、ナギサも毒気を抜かれて矛を収めた。

 先生はナギサが銃を下ろして、ほっと息を吐いた。

 

「今は重要な話をしている最中です。その為に人払いをしていたのですが、なぜ来たのですかミカさん」

「え、ただここに忘れ物をしただけだけど」

 

 ミカは何気なく、近くの引き出しから教科書を取り出した。

 

「先生も居るし、ナギちゃんをいじるのは楽しいけど、程ほどにしなよ」

 

 ミカはそれだけ言って、生徒会室から出て行った。

 

「あれがミカさんですか、彼女も可愛らしいですね」

「どうしても、言う気はありませんか?」

「私にも義理人情はありますよ。あなたがセイアさんのことで怒りを示したように」

「……わかりました。私のするべきことは変わりません」

 

 ナギサの呼びかけに、警備の生徒が現われてユエは退出させられた。

 

「先生、例の“特効薬”を見せてもらって良いですか?」

「“うん、いいけど……”」

 

 先生は胸ポケットから、“特効薬”の小瓶を取り出した。

 彼も自分の目が届かない場所に置きたくなかったから、今日もそれを持参していた。

 

「これが、本物の……」

 

 それを手に取ったナギサは、おもむろに冷えた紅茶の入ったティーカップに少しこぼした。

 

「“ナギサ……”」

「先生、私は怖いです」

 

 冷えた“特効薬”の入った紅茶を呷ったナギサは、そう呟いた。

 

「いつ私やミカさんが、セイアさんのようになるかと思うと、夜も眠れないんです……」

「“……そうだね”」

「中止を予定していた補習授業部の合宿は、許可を致します」

 

 ナギサは覚悟を決めた表情をしていた。

 

「この学園の膿を、私の手で取り除いて見せます」

「“ナギサ、気持ちはわかるけどどうか無理はしないで”」

 

 先生は、それ以上何も言えなかった。

 

「たとえ、補習授業部の全員を退学にしてでも!!」

 

 かくして、回り道は終わる。

 物語は正道に向かって、回り始める。

 

 

 

 

 そして、これは表に出ない会話劇。

 

 

「もう、思わず口を出しちゃったじゃない」

「すみません。ナギサさんが余りにも愛おしかったものですから」

 

「まあ、ナギちゃんのあのおバカなところとかは、確かに長所かもね」

「ふふふ、女性とは恐ろしいものですね。幼馴染同士でお互いに馬鹿だと思っているとは」

 

「人間関係ってそんなもんでしょ? お互いに相手を見下し合ってる。あんたが、それを一番知ってるじゃない」

「それもそうですね」

 

「それじゃあね。精々、勝手に掻き回してよね」

「ええ、私は勝手にやっているだけですから」

 

「……行きましたか。本当に、トリニティの皆さんはなんであんなに愛くるしく、愛おしいのでしょうか」

 

 学校も性格も正反対な二人の会話は、誰にも聞かれずに消えて行った。

 

 

 

 

 

「先生、毒を飲んだって本当ですか!?」

 

 補習授業部の面々と合流した先生は、ヒフミに開口一番にそう言われた。

 

「え、うそ、どういうことよ!!」

「生徒会で噂になってました……先生が毒を盛られたって」

「“もうそんなに噂になってるんだ……”」

 

 困惑するコハルと心配そうにしているヒフミを見やり、先生はそう呟いた。

 

「私も耳にしました。救護騎士団が先生に解毒の処置をしたと」

「……本当なのか?」

「“うん、間違って私が飲んじゃっただけだよ”」

 

 不安げな顔のハナコと眉を顰めたアズサに、先生はそう取り繕って笑った。

 

「……わかりました、深くは聞きません」

「そうですね、先生に何かがあったら、連邦生徒会も黙ってはいないでしょうし」

 

 潔く引いたハナコを見て、ヒフミも察してそう言った。

 

「……先生、今のトリニティはこんな有様だが、いつもは決してこんなんじゃないんだ」

 

 二人の含みを理解した上で、アズサはそう言った。

 

「この学校を大嫌いだ、と懺悔室で彼女は言っていた」

「……」

「だが、私はそうは思わない。

 私はこの学校に来て、学ぶことの楽しさを知った。右も左も分からない編入当時の私に、優しくしてくれた生徒も多かった」

「“アズサ……”」

「そうよ!! 正義実現委員会は真面目な人ばかりだし、先輩達も良い人ばかりなんだから!!」

 

 先生を励ますように、コハルもそう主張した。

 

 先生は思った。なぜ、この子たちなのか。

 この子たちを疑えと言うのか、と。

 

 そう思って、彼は首を横に振った。

 

 自分は政治など関係無い、子供たちの先生たれと、自らをそう定義し直した。

 誰がトリニティの裏切り者でも、関係無い。彼女らは自分の受け持つ生徒であると。

 

 そこは、何一つ変わりはしないのだと。

 

 そう先生は決意を新たにし、生徒達に笑顔を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




自らを犠牲にして原作に軌道修正するユエの邪悪ムーブである。
ナギサも本音を言えて良かったね、補習授業部の皆も仲良くなれて!!
きっとナギサも原作よりはヘイトは少ないかもしれません。

では、次回はミカがぶん殴りに来るまでカットします。
それではまた次回!!

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