ゲヘナ学園 園芸部の死神   作:やーなん

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お気に入り数1600突破、ありがとうございます。(突破、これ重要
拙作が読者の皆様にこれからもご愛読下されば幸いです!!



ブルアカVol3「補習授業部編」その6

 

 

 

 

 :17 そんな世界も

 

 

 コハルの狙撃で、アリウスの指揮官が崩れ落ちる。

 それが最後の一人だった。

 

「か、勝った?」

「全員戦闘不能」

 

 心臓がバクバクと脈打つ感覚に身を委ねながらのコハルの問いに、アズサは端的に現状を答えた。

 

「あうぅ、……先生の指揮があって、本当に助かりました……」

 

 ヒフミはホッと一息吐いた。

 

「……はい、では難所をひとつ乗り越えたところで、次のフェーズに移りましょうか。

 この後、アリウスの増援部隊が到着するでしょう。ですが、私達は時間を稼ぐだけで大丈夫です」

 

 このまま時間を稼ぐだけで良い、ハナコはそのように手を尽くしていた。

 

「正義実現委員会の部隊がここに到着するまでの間、それまで時間を稼げれば――」

「あ、ハスミ先輩には連絡しておいた!! すぐ返事が来るはず!!」

「はい、ありがとうございます♡」

 

 ハナコは語る。現在本校舎を警備中の正義実現委員会が動けるとしたら、それはティーパーティーの身辺に異常が起こった時だけ。

 その為に、彼女らはナギサを誘拐までしたのだ。

 

「定期連絡とかもあるでしょうし、きっと今頃ハスミさん達はナギサさんに何かあったことに気づいたはず。

 それに合わせてコハルちゃんからの連絡……先日の校門前の騒動の影響もあって、少なくとも状況を確認するために動き出すまで、そうそう時間はかからないはずです」

 

 これにはミコトさんに助けられましたね、と冗談めかしてハナコが言う。

 それが、ハナコの一の矢だった。

 

「後は、早く来てくれることを願うばかりですが――」

 

 しかし、そんなありきたりな展開で、この物語が終わる筈もなかった。

 爆音が鳴り、突入してくるアリウスの部隊。

 

「これは……」

「増援部隊が、こんなに早く……!?」

 

 アズサが目を見開き、ハナコも想定外の事態に驚く。

 

「……数が多い、大隊単位だ。多分、アリウスの半数近くが……」

「あうぅ!? こ、これだけたくさんの方が、平然とトリニティの敷地内に!?」

 

 ヒフミの言う通り、これだけの大部隊が自治区内を移動していて、何の問題にならない方がおかしいのだ。

 

「まだ、正義実現委員会が動く気配がない!?

 ……いえ、しかし」

 

 その時、ハナコの脳裏に、ある人物の顔が過ぎった。

 

「それは仕方ないよ」

 

 だが、その思考を遮るように、その場には現れてはいけない人物が現れた。

 

 聖園ミカ、その人である。

 

 

 アズサの発言から利用されていたと思われていたミカの登場は、状況を一変させるのには十分だった。

 

 

 彼女は語る。

 

「私が、本当の「トリニティの裏切り者」」

 

 と。

 

 ゲヘナが嫌いだから条約を邪魔した。ナギサを襲撃する為にこうしてアリウスを動員したこと。

 彼女は詳らかにした。

 

「なるほど、ユエさんが庇っている相手とは、あなたのことでしたか」

 

 ハナコが淡々と、自らのパズルのピースを埋めるようにそう言った。

 

「そうだよ。意味わからないでしょ?」

「な、何でですか、ユエちゃんはゲヘナの生徒なのに、あなたを庇ったんですよ!?」

「今言わなかったっけ? ゲヘナの生徒と仲良くなれるわけないじゃん、って」

 

 吐き捨てるように、ミカはヒフミにそう返した。

 

「あんな気持ち悪い奴、最初は利用してやるだけ利用してやろうと思ってたけど、あいつ意外とマメだったから、それなりに長い付き合いになっちゃってね。

 でも何を考えてるのか全然わからない。あいつの趣味知ってる? 人間観察だってさ、私のファンだとか、そんないい加減な事ばかり言ってた」

「“ユエは、最初は尊い行いだって、言ってたよ。だから協力したって”」

「そんなこと言ってたんだ?

 まあ確かに……私はアリウスと和解したかった」

 

 そう言ってから、ミカがフッと笑った。

 

「そう言えばそれが最初だったっけ、あいつとの馴れ初めは」

 

 画面は、ミカの回想シーンに移行する。

 

 ゲヘナの校門にやってくるミカ、画面外から現れるユエ。

 喫茶店の背景に移行し、楽しく会話するように立ち絵が動く。

 

「尊い行いだから協力したって?

 あいつと初めて会った時、何を言ったか知ってる?」

 

 可笑しそうにミカは言った。

 

「ゲヘナを裏切っちゃダメだって校則は無い、だってさ!!

 イカレてるでしょう? 遊びなんだよ、あいつにとっては全部!! ああして牢屋の中に入れられているのもね!!」

 

 ミカの物言いに、先生達は絶句した。

 

「“なんて、ユエらしい……”」

 

 自由と身勝手の極みだった。

 先生はそう呟くほかなかった。

 

「ねえ知ってる? ゲヘナの校則にはトリニティを裏切っちゃダメなんて書いていない。

 あんな連中と平和条約なんてしたところで、意味なんてあるわけがない」

 

 残念ながら、ミカの発言に補習授業部の面々は誰ひとり言い返せなかった。

 

「……この子たちは、同じゲヘナを憎む仲間」

 

 ミカはアリウスをそのように紹介した。憎しみの純度ならより高い、とも。

 

 共通の敵の為に、お互いに手を取り、ミカは密かにアリウスを支援していた。

 

 権力は要らないと語りながら、ホストになる為に活動しているミカ。

 その矛盾を、彼女は理解していなかった。

 そして知っていながら、理解していなかった。

 

 その可憐さの奥に隠された、幼さ、愚かさを、誰が一番愛しているのかを。

 

 戦闘になり、予想外の抵抗を見せる補習授業部に驚くミカ。

 盤面が膠着した時、ハナコが問いかける。

 

「ミカさん、一つ聞かせてください!! セイアちゃんを襲撃したのも、あなたの指示だったんですか!?」

 

 ハナコの問い。それは、ほぼ確信をもっての言葉だった。

 

「あはッ、ハナコもそんな目をするんだね。

 うん、私の指示だよ。セイアちゃんってば、楽園だのなんだの、いつも変なことや難しいことを言ってばかり」

 

『なるほど、セイアさんがホストのままでは困りますものね!!』

 

「でもヘイローを破壊しろとは言ってないよ。私は人殺しじゃない」

 

『アリウスから信頼されて、こっちの都合で部隊を運用しても良いと言われて最初にすることがそれなのですね!!

 なるほど、人は強い力を得ると、使ってみたくなるものですからね!!』

 

「ただ卒業するまで、檻の中に閉じ込めておいた方が良いなって思っただけ。でも、自然とああなっちゃったのッ」

 

『ミカさんは本当に、御自分に嘘を吐く天才ですねぇ』

 

「――ああ、うるさいなッ!!!」

 

 ミカの独白ごとに、シルエットだけのユエの台詞が挟まる。

 魔女が過去に残した呪いが、徐々に表面化してきたのだ。

 

『私が、セイアさん襲撃犯として、あなたの身代わりになりましょう』

 

 それは献身ではなく、憐みの言葉だった。

 ミカが存在などしないと思っている、神のような上位者としての。

 

 ――絶対的な、愛玩の形だった。

 

 

「いつもいつも、いつもいつも!! 私を見下して、馬鹿にして!!」

 

 突然苛立ったミカに、周囲は戸惑った。

 

「ああッ、イライラする!! どれもこれも全て、白洲アズサ、あなたの所為じゃない!!」

「ッ!?」

「あなたがあんなしくじりをするから、ここまで全ての歯車が狂ったんじゃん!!

 セイアちゃんがあんなことになったのも!! ここまで事態がややこしくなったのも!!」

 

 そのように責められて、アズサは動揺した。

 

「あ、アズサちゃん……? それはいったい、何のお話、ですか……?」

「ち、違う、あれはッ」

 

 その時だった。

 合宿場の入り口の方から、爆音が聞こえた。

 

 大聖堂からの増援。それは――。

 

 

「シスターフッド!!」

 

 

 

 :18 成就

 

 

 シスターフッドの面々が突入し、クーデターの鎮圧に参戦する。

 だが、補習授業部への加勢はそれだけではなかった。

 

 爆発音とは違う、爆音の群れが次々と聞こえだしたのだ。

 

「今度は何!?」

「クロガさんの強襲部隊です!!」

「“って、ことは!?”」

 

 無数のバイクが、グラウンドへと突入してくる。

 バイクの搭乗者たちは、次々と降車し、ライトを付けたまま光を背に受け特攻服を翻す。

 その特攻服に刻むのは、金色の刺繍で“死神大鎌頭蓋”の文字。

 

「私の昔の縄張りで、調子ぶっこいてる奴ってのはお前らか?」

 

 サングラスとマスクを付けた、暴走族の生徒がそう言った。

 彼女がクロガ。デスサイズの強襲担当だ。

 

「あれは、デスサイズです!!」

 

 ヒフミがそう言った。

 

「私だけじゃねえぞ」

 

 クロガが顎をしゃくると、暗闇から赤い修道服が浮かぶ。

 

「かつて、天下無双と謳われた稀代の武将は、裏切りの果てに処刑されました」

 

 その後ろから、黒いジャケットを着た不良たちが続々と現れる。

 

「しかし、仁君と共に国を立ち上げ、武名と共に時代の終焉を齎した武将は死後、奉られ――神となった」

 

 つまり、と祈りの姿勢で彼女は言った。

 

「ヒトは、神に成れるのです!!」

 

 彼女はセキト。その黒いジャケットには、青龍偃月刀を掲げる関聖帝君の画。

 

「……我らの神が御所望です。悲鳴という祝詞を、血という供物を!!」

「よーやく尻尾見せたな、アリウスども。

 宗主命令だ。お前ら、遠慮しなくていいぜ」

 

 そして二人の号令に、銃や鉄バットを構える不良達。

 

 

「正義実現委員会に待機を命じたのは、失策でしたね」

「シスターフッドに、デスサイズ……浦和ハナコ!!」

「……トリニティ、ゲヘナ。楽園の名の下に手を結ばんとする。

 それらはかつてトリニティから別たれた者達の手によって、忘れ去られるであろう」

 

 ミカの視線を受けたハナコは、己の知る預言の内容を諳んじた。

 

「私の知る限り、百発百中の預言の一説です。

 ええ、きっとミカさんの言う通り、エデン条約なんてものは不可能で淡い幻想なのかもしれません」

 

 その預言は先生の到来を語り、彼女の友人が害されることまで当てた。

 

「ですが、それを成そうとして足掻き苦しむ者達を、嘲笑うことは許しませんよ」

 

 しかし、それは預言のせいなのか?

 預言されたから、その通りになるのか?

 

 預言が当たらないように信じて戦うものを、ハナコは何人も知っている。

 

 シスターフッドの面々が体育館に到達し、不良達が包囲を開始する。

 当初の人数差は、ひっくり返った。

 

「まあ、いずれどっちも綺麗にする予定だったし、それが早くなっただけかな」

「……あくまでも、まだ戦うつもりですか、ミカさん。この状況での勝算がどれくらいか、わからないあなたではないですよね?」

「ねえ、悪役がここまできて、「おとなしく降参します」なんていうわけ無いでしょ?」

 

 薄暗い体育館に咲く可憐な花のように、ミカは微笑んだ。

 

「……もう私は、行くところまで行くしかないの」

 

 バトルパートが始まる。

 

 

 

 バトルパートが終わり、ミカは溜め息を吐いた。

 

 

「まったく、シャレにならないなぁ。

 セイアちゃんが襲撃された時だって動かなかったのに……今このタイミングでシスターフッドが介入するなんて、冗談にもほどがあるよ」

 

 外では待機していたアリウスの兵力と不良たちの戦いが終わろうとしていた。

 

「デスサイズの連中をおかしな預言を信奉する連中だって、馬鹿にしてたからかな、こんな時に割り込んでこられるなんて……」

 

「全て、勘違いにもほどがありますよ、ミカさん」

 

 その時だった、戦闘が終わり死屍累々となった体育館に、そんな声が響いた。

 

「この声って」

「おや、忘れたのですか、ミカさん。貴女一番のファンの顔を」

 

 ユエは、悠々とその場に現れたのだった。

 

「今更、何しに来たの? 私を笑いに来たの?」

「はい、その通りですが?」

 

 ミカはまさか的中するとは思わず、言葉を失った。

 

「実はずっと、補習授業部の皆さんとアリウスの方々が戦う前からここで隠れていました。

 お陰で先ほどの会話の録音が出来ました。これは後日個人的に堪能するとして、ミカさんは本当に誰よりも可愛らしく愚かで、愛おしい」

 

 くすくす、とユエは笑っている。

 

「アリウスの皆さんの為に、と己を偽ってクーデターを起こすあなたは実に滑稽で、憐れな道化でした。

 初志貫徹は素晴らしいですが、何事にも引き際があるのですよ」

 

 知っていましたか、とユエは言った。

 

「私はミカさんがアリウスに関わると知った時から、彼女らの位置を特定し、裏からまとめて潰してやろうと思っていたのです」

「……初めから、私に協力するつもりはなかったんだ」

「おや、まるで裏切られたみたいな反応ですね?

 おかしいですね、以前私はこう言いませんでしたか?

 私はゲヘナを裏切る、と。そして、一度裏切った者はもう一度裏切るものだ、と」

 

 ユエは本当に楽しそうに、このように述べた。

 

「それに、ゲヘナの校則にトリニティの生徒を裏切ってはダメなんて書いてませんよ?」

 

 それは痛烈な、皮肉だった。

 

「勘違いしないでほしいのですが、私は裏切りを否定しませんよ、ミカさん。だってほら、裏切りは女のアクセサリーって言うではありませんか。

 アクセサリー、大好きでしたよね? しかしながら、より美しく着飾ったのは私と言うだけの話です」

 

 聞いている方が耳を塞ぎたくなるような断罪の言葉だった。

 ユエはミカを追い詰めて、楽しんでいた。

 

「待てッ、貴様は我々も騙していたのか!!」

「下等な虫けらが、私に話しかけないでください」

 

 地べたで這いずっているアリウスの指揮官が、堪らずに叫んだがユエは相手にしなかった。

 

「我々が、虫けらだと……」

「以前、友人に一日だけコンビニの夜勤を代わって欲しいって言われたので、代わってあげたのです。

 しかしその日、偶然白アリが大量に羽化し、羽蟻がガラスにたっぷりと張り付いていたのですよ。

 それに殺虫剤を掛けるとですね、面白いように落ちるんです。最終的に、塵取りに掃いて捨てるんです。まるで炒られた黒ゴマのようで滑稽でした」

 

 おや、とユエは死屍累々となっているアリウスの面々を見やる。

 

「アリウスと白アリ、名前だけでなく地面の奥に住んでいるところまで、似てますねぇ!!」

「おッ、おのれッ」

「自分の意志すらない下等な虫けらが、誰に怒りや憎悪を向けているのですか?

 下等生物の分際で、おこがましいのですよ」

 

 ユエはカバンの中から殺虫剤を取り出し、おもむろにシューッと吹きかけた。悶絶するアリウスの指揮官。

 

「は、初めから、私を騙してたの? アリウスと和解したいって、私を笑っていたの?」

「いいえ? アリウスの名前が出るまでは、本当に協力して差し上げるつもりでしたよ。

 でもアリウスはダメでした。デスサイズが預言の内容から追っている危険集団。私には彼女達を排除する義務があった。

 だから私はミカさんに協力する傍ら、アリウスを一掃する計画を立ててました。今回デスサイズが動いたのもその証拠です。

 そのタイミングを見極める為にも、あなたの代わりを演じました」

 

 全ては、ユエの計画通り。

 

「おかげでシロアリの半分を駆除できました。大手柄ですよ、ミカさん。所詮あなたが和解したいと言っていたシロアリどもは、ただの虫けらの集まりに過ぎないのですから。あなたが心を砕く価値もない」

 

 そして、ユエは慰めるようにそう言った。

 

「あなたがこうして追い詰められ、やけっぱちになってトリニティのホストになるなんて妄言を吐くようになったのは、この下等な虫けら共の所為なんですから」

 

 最早アリウスのことを、ユエは虫としか呼んでいなかった。

 

「……どういう意味?」

「初めから、彼女らはセイアさんを殺す気だった。

 最初にあなたを裏切ったのは彼女達の方ですよ」

「ッ!?」

 

 唖然としていたミカの顔色が、変わった。

 

「しかし、その実行の寸前で、一匹の虫けらに過ぎなかったはずのシロアリが、自らの意思を持ち美しい蝶へと姿を変えた。その結果を目の当たりにしましょう」

 

 ユエは己が出てきた体育館の入り口の影から、一人の生徒を連れ出した。

 

「う、うそッ、――セイアちゃん?」

「ミカ……」

 

 それは百合園セイア、その人だった。

 

「セイアちゃん、もう外出しても大丈夫なのですか?」

「ああ、ミカがとんでもないことをしていると聞いて、居てもたってもいられなくなったんだ」

 

 ハナコが彼女を案じて駆け寄るが、セイアの顔色はあまりよくは無かった。

 

「ミカ、どうしてこんなことを……君は無思慮にも程がある!!」

「だって、だって!! ナギちゃんもセイアちゃんも、話を聞いてくれなかったじゃない!!」

「なッ」

 

 そんな風に言い返されて、セイアも言葉に詰まった。

 

「私はただ、本当にアリウスと和解したかっただけだったのに……」

「だからって、ナギサまで排除しようとするなんて、どうかしている!!

 引き返せるタイミングはあったはずだ!!」

「そんなタイミングはなかったよ!! セイアちゃんが、意識不明の重傷だって聞いて、面会謝絶で、いつ目を覚ますか分からないって……」

「それはッ、身を隠さざるを得なかったんだ……。

 私が生きていると知れば、何をしてくるか分からない連中だった……」

 

 セイアは肩を落としてそう言った。

 

「セイアちゃんが、セイアちゃんが、最初から無事だったら、私はこんなことしなくても済んだのに……」

「……悪かった。君も君なりに苦しんでいたんだね」

 

 すまなかった、とセイアはバツが悪そうに言った。

 

「なによ、私なりッて、いつも一言多いんだから……はあ、もういいや」

 

 ミカは銃を捨てた。

 

「もう、どうでもいい……好きにしてよ」

 

 彼女は戦意を喪失し、此度の事件の全ては幕を引いた。

 

 

「さて、私の容疑も晴れたことですし、私はミコトと合流しましょうか」

「ユエさん、アリウスの奴ら、捕まえときましたよ」

「ご苦労様ね」

 

 体育館に空いた穴から外に出るユエに、クロガ達が縛り上げたアリウスの生徒達を突き出した。

 

「くくく、今更奴と合流しようとしたって遅いッ」

「ゲヘナの死神には、我々と同規模の部隊が向かっている!!」

「奴は単独で、孤立しているッ、もう終わりだ!!」

 

 縛られたアリウス生たちは、強がりでそんなことを嘯いた。

 

 それを聞いた、デスサイズの面々は顔を合わせ、――笑い声を上げた。

 

「言うに事欠いて、ミコトさんが終わりだって!?」

「クロガ、自ら贄として供物として、その身を捧げる献身を笑ってはいけませんよッ!!」

「おめぇが一番笑ってんじゃねえか!!」

 

 デスサイズの幹部二人は、大爆笑だった。

 ユエは言葉も出ないと言うように、お腹を抱えている。

 

 その時だった、先生のスマホに着信が入った。

 ミコトからだった。

 

「“もしもし”」

『ああ、先生か? なんか知らねーけど、アリウスって奴らがそっちに行ったんだってよ、大丈夫か?』

「“ああうん、こっちはもう終わってるよ。そっちこそ大丈夫?”」

『ああ、丁度準備運動は終わったところだ。そっちが苦戦してんなら、手伝ってやろうと思ったんだがよ』

 

 拍子抜けだ、とミコトは呟いた。

 

「“ミコトはもう全部倒したって”」

「うそ、私達、こんなに苦労したのに……」

 

 まさかのナレ死に、崩れ落ちるコハル。

 自分達の苦労は何だったのか、と。

 

「……結局、私達の行動は預言されていた。

 何の意味もない虚しい行為だった……。どうか皆も、目を覚ましてほしい」

「黙れ、裏切り者!!」

「お前もスクワッドの一員だったのなら分かるはずだ、サオリ達がお前を赦すと思うな!!」

 

 アズサの悲嘆な願いは、かつての同胞たちには通じなかった。

 

「ああ、そうだ。忘れていましたよ、サオリさんです」

「何がだ?」

「まだサオリさんの、裏切って差し上げた時の怒りや憎しみの感情を摂取できていません!! 彼女とはミカさんと一緒に何度か行動を共にしていたので惜しいことをしました。彼女が顔を真っ赤にして怒っているところを見たかったのに……」

「そうか……」

 

 余りにも予想外なユエの反応に、アズサはそっと目を逸らすだけだった。

 

 

 

 

 

 そして、今回のオチ。

 

 

「う、ううッ」

 

 ナギサが押し込められていた、合宿所の体育準備室。

 要するに、体育館のステージの裏側の倉庫なのだが、彼女はそこにずっと気絶していた。

 

「ナギサ様ッ、大丈夫ですか!!」

「ひ、ヒフミさん!?」

「かなり乱暴に扱われたって聞いて、心配していたんです!!」

 

 ナギサが押し込まれたゴルフバッグのチャックが開けられ、ナギサが解放される。

 

「ナギサ様、全て解決しました。犯人は捕まったんです!!」

「え、ほ、本当ですか……?」

 

 色々なことが有って混乱しているナギサは、与えられる情報を受け取るだけしかできなかった。

 

「はいッ!! あれ?」

 

 その時、ヒフミはすぐそこのテーブルに置かれているモノに気づいた。

 

「なんで、こんなものが……今ここに」

「ヒフミさん?」

「ああいえ、大したものじゃないんですけど」

 

 それは、写真の束だった。

 

「あ、そうだ、ナギサ様、見てください!!

 これは先日ペロロ様のゲリラライブに行った時の写真なんですけど!!」

「ッ!?」

 

 そこにはヒフミと、なぜかユエが一緒にモモフレンズグッズを手にピースしていた。

 

「あ、これもッ、モモフレ専門店に行った時のやつです!!」

「な、なぜ、ユエさんが一緒に……写って」

「ああ、ユエちゃんですか? 実はユエちゃんとはモモフレ仲間なんですよ!! だから疑いが晴れて良かったです!!」

 

 その写真の束には、どれもヒフミとユエが笑顔で写っていた。

 それだけで、ナギサの脳には大ダメージが発生していたのだが。

 

「ユエちゃんも熱狂的なモモフレファンで、キヴォトスでモモフレを知らないなんて人生の損だって言うんですよ!!」

 

 笑顔で語るヒフミを他所に、ナギサは気づいた。

 写真にはどれも、白い花が映っていた。

 

 それは、白いゼラニウム。

 

「こ、この、花は……」

「あ、ユエちゃんはゼラニウムが好きみたいなんですよ!!

 トリニティに相応しい花だって!!」

 

 ナギサは、知っている。

 趣味でガーデニングなどを嗜んでいるし、教養のある彼女は。

 

 ゼラニウムは数多くの花言葉を持ち、特に白いモノにはこのようなものがある。

 

 ――“偽り”“あなたの愛を信じない”

 

 

「今度、記念日にでもナギサ様にお送りしたいですね!!」

「すやぁ」

 

 ナギサの脳は情報を処理しきれず、シャットアウトした。

 

 通常の性癖の持ち主の読者の方々には理解できないかもしれないが、寝取られとは不意打ちだからこそ意味があるそうだ。

 

 ヒフミとユエが、実は裏でこっそりと仲良し――自分よりずっと親しいと知ったナギサは、脳が破壊されつくされ、意識を失った。

 

「え、あれ、ナギサ様、ナギサ様、どうしたんですか!!

 だ、誰か、救護騎士団、救護騎士団を呼んでください!!」

 

 それを知らぬ天然なヒフミは、急に電源が切れたみたいなナギサの容態に悲鳴を上げるしかなかったのだった。

 

 

 

 




ブルアカの二次創作とは、ナギサ様の脳破壊と見つけたり。
ユエの実は牢屋にモモフレグッズがあったり、伏線はあったのです。それに、キヴォトスに来てモモフレを堪能しないとかありえないですしね!!

あとその、1600人もいらっしゃるのですし、よろしければ感想いっぱい下さると嬉しいかなーって。あ、催促じゃないですよ? 言わないと伝わないって、経験で知ってるので……。勿論、高評価も待ってます!! 作者のモチベーションと更新速度の維持につながりますんで!!

ではまた次回!! 次回以降からずっと、皆のお待ちかねのミコトが大暴れです!!
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