更新再開致します。
詳しくは、あとがきにて。
4章 忘れられた神々のためのキリエ
:01 プロローグ
指名手配犯として、逃げ回るアリウススクワッドの面々。
同胞にすら銃を向けられ、アツコは己の身柄と引き換えに三人の無事を要求するも、それすらも裏切られる。
同胞に撃たれる三人、そして――。
まるでブラウン管テレビの砂嵐のスチルが一瞬だけ移り、場面は変わる。
「なるほどな。先生を頼ったのか、お前ら」
どこかの廃墟を背景に、ミコトの立ち絵が表示される。
「とんだ恥知らずだな」
「“(事情を説明する)”」
「――はッ」
ミコトは鼻で笑った。
「先生、てめえ、自分がしてること、理解してんのか?」
ミコトはアリウススクワッドの面々ではなく、先生の方を見ていた。
「キヴォトスの一生徒として、あんたに問うぜ」
ミコトが顎をしゃくると、背後に控えていたユエがスマホを構えて撮影を始める。
「そいつら、アリウススクワッドの連中は連邦生徒会から正式に指名手配されてたはずだ。
シャーレの先生、あんたはそれに反してそいつらを擁護するってことでいいのか?」
「“彼女達がしたことを、肯定するつもりは無いよ”」
先生はミコトの問いに応じた。
「“でも、私は先生として彼女達の力に成りたいんだ”」
「じゃあ次の質問だ」
その矛盾にツッコミを入れずに、ミコトは次の問いを投げかけた。
「先生よぅ、あんたの業務、その報酬としての給料はどこから出てんだ?
あんたが奉仕する相手は、連邦生徒会に属する学校の生徒に限られるべきだろうが。
そいつらがいつ、税金を払ったんだ?」
「“アリウス分校は、連邦生徒会から正式に脱会した記録は無いよ”」
要するに、外国人に国民の税金を使うなと言うミコトと、アリウスの生徒は国民だと主張する先生の構図であった。
ミコトの主張はキヴォトスの生徒として正しく、先生もまたそれに反論する。
「“そして、アリウスの生徒はまともな教育を受けられる環境に無い。シャーレの活動内容に明確な規定は無いから、私が彼女らの環境改善に手を貸すことに正当性はあるはずだよ”」
「なるほどな」
ミコトは一旦、納得したように頷いた。
「だが、それはよう、犯罪者を擁護する理由にはならねえよな?」
しかしここに来て、ミコトは先生の矛盾を指摘した。
「勘違いするなよ。俺はユエみたいにそいつらをいじめて楽しむ趣味は無え。
アリウスの連中は明確に社会的弱者だがよ、事実としてどんな弱者だろうが、テロをしたらそいつらに掛ける情けなんざ無えだろうが。俺はおかしなこと言ってるか?」
「“それが、悪質な洗脳の結果だとしても?”」
「そうか。じゃあ俺が明日デスサイズの連中に連邦生徒会を襲えって言っても、先生は赦してくれるわけだな」
揚げ足取りではない、ミコトは真剣に道理を問うていた。
そして、先生が回答を間違えれば、彼はその暴虐の餌食になるだろう。
そんな綱渡りを、先生はしていた。
「“それは違うよ”」
「ほう?」
「“ミコト、君も分かっている筈だよ。私のするべきこと、したいことを”」
「……」
ミコトの視線が、先生の是非を問う。
「“――破邪顕正”」
「ッ!!」
「“ミコト、私と君は同じ方向を見ているはずだよ”」
完璧な回答だった。ゲームが違えば、パーフェクトコミュニケーションと表示されただろう。
先生は己の道理で、感情で動くミコトの心を動かした。
「――なら、次は覚悟を示せや」
ミコトは嬉しそうに、そう言った。
「弱い奴には、どんな正義や道理があろうと無意味だぜ。
先生、あんたは自分をどうやって貫くんだ? 俺に示せよ」
「“(大人のカードを使う)”」
先生は胸元から、躊躇いなくそれを提示した。
奇跡の担い手が、それを示した。
「先生。――――自分が何をしたのか、分かっているのですか?」
スマホ越しで撮影をしている、顔の見えない生徒が言った。
時間が止まる。
BGMが変わる。
背景が色あせる。
“代弁者”が、現れたのだ。
「因果律の改竄、時間への干渉、そんな生易しいことではありませんよ!!
それを、たったそれだけのリソースで行使したのですか!!
あはははッ、これは恐れ入りました!! チートもチート、そんなことされては、我々も形無しじゃありませんか!!」
「“ねえ“代弁者”。君は言ったよね?”」
先生は、彼女に聞いた。
「“私は何もしなかったのか、って”」
「なるほど、なるほど!! それがこの答えですか!!
先生、大人げないにもほどがありますよ!!」
顔の無い生徒は、けらけらと大笑いしていた。
「何が全てを手放したですか!! キヴォトスの全権程度など、あなたの権能に比べれば些末事ではありませんか!!」
「“君は代弁者と、そう名乗ったよね?”」
先生の言葉に、彼女は笑いを止めた。
「“なら、
「そう来ましたか……」
彼女は愉快そうに頷いた。
「お互いに、難儀なロールプレイをしていますね。
良いでしょう、私も
そして彼女は、どこか遠くを見た。
「ようやく私も理解しました。かの者が、あの子が、■■■が言っていたことを!!
私が唯一頭を垂れる、あの御方が敬意を示したと言う、その意味を!!」
「“……?”」
「……おっと、これは失言でしたね」
忘れてください、と彼女は急に額に浮いた汗を拭ってそう言った。
「これまでの非礼をお詫びします、先生。――さあ、参りましょうか」
彼女は先生の手を取り、歩み出す。
奇跡の、その結末を。
……止まった時間の中で、ミコトの両眼だけはずっと二人を追っていた。
:02 灰混ざりのティーパーティー
「お越し下さりありがとうございます、先生。連日のトリニティへの訪問、真に感謝しております」
トリニティの本校舎にやってきた先生に、ナギサが謝辞を述べた。
ここ最近、先生はトリニティから逃げずに残った数少ないアリウスの生徒から連日の聞き取り調査を行っていた。
「“……こんにちは、みんな”」
「また会いましたね、先生。先日はお世話になりました」
「先日はちゃんとご挨拶が出来ず、失礼しました。救護騎士団の団長を務めております、ミネと申します」
先生の挨拶に、サクラコとミネが応じた。
『そして私が、聖園ミカじゃんね!!』
「……」
その場に居る三人が白けた視線を向ける。
その先に居たのは、なんとユエだった。
「どうですか、先生。ミカさんの声を完全に再現した、名付けてジャンネロイドです」
「“びっくりしたよ……”」
「でしょう? あとでネットで無料で配布し、歌を歌わせたり音MODにしてミカさんをインターネットの玩具にしてさしあげるんです。
私もミカさんの口調を再現する為に何度も調教し……おっと、なんだか背徳的な響きですね♪」
「止めて差し上げてください」
幼馴染を弄ぼうとしているユエに、ナギサがそう言った。
「ユエさん、真面目にやってください」
「……場を和ませようとしただけなのに」
ユエはちょっと寂しそうにそう言って、スマホを操作した。
『そうだよ、ユエちゃんは悪くないじゃんね!!
ナギちゃんとは絶交だよ!! あはは、楽しかったじゃんね、ナギちゃんとの幼馴染ごっこ!!』
「うッ」
文字を打ち込むだけでミカの声が出るアプリに、ナギサはダメージを受けていた。
「悪ふざけはよしてください、ユエさん。
ティーパーティーではない貴女がここに呼ばれた理由を理解しているのでしょう?」
「ええ。しかし、こうしてほぼ毎日ミカさんのお世話に通っていると、実質私もトリニティなのでは、と思ってしまう所存でありますね」
ミネが咎めるような視線を向けると、ユエはくすくすと笑いながらそう答えた。
「では、報告いたしましょう。
――アリウスの生徒への洗脳の治療について」
「“治療、できるの?”」
「それをする為に、私はわざわざどんな洗脳をされているのか把握する必要があったのです。
だからこそ、彼女らの洗脳を逆利用できたわけですね」
ユエはシスターフッドの監視の下で、その研究をしていたのである。
「本格的な治療には長い時間が掛かるでしょう。きっと、卒業してからもずっと。
しかし短期的に、彼女達を支配している生徒会長からの命令を拒否するように、洗脳の応用で彼女達を解放することは出来る筈です」
「“本当に、この間みたいなことは出来なくなるんだよね?”」
「ええ、先生はお優しいですね」
ユエはいつもの笑みで、先生に微笑んでいる。
「……そうですね、洗脳で操るなんて、あんなことがあってはなりません。
私も報告を聞いた時は、卒倒しそうになりましたから」
サクラコはぶるりと身体を震わせてそう口にした。
「しかしユエさん、救護の為の技術を悪用し、アリウスの生徒達を弄んだのは以ての外ですよ」
「おや、あの状況でですか?
ミネさんは私がアリウスの生徒達に囲まれた状況で、彼女たちに殺された方がよかったと仰るのですね?
勘違いしないでほしいですね、あれは自衛と、先生を守る為でした」
「……失礼、失言でした」
はあ、とミネはユエはこういう奴だ、つまり付ける薬無し、として溜め息を吐いた。
「……あなたは自分が卑怯者である自覚はあるのですかッ」
しかしこれに、ナギサはカチンと来た。
「いつも他人を盾に、自分だけ安全なところから他人を弄んで!!」
『へぇ、補習授業部と先生を爆破したナギちゃんがそれを言うんだ!!』
「ッ、それはッ」
ユエは笑い声を上げようとする口を手で押さえ、スマホを操作して明るいミカの声で己の言葉を代弁させる。
『本当に、ナギちゃんはいつも自分が正しいみたいな態度でさ、私の話なんて聞いてくれた試しがないじゃんね!!
この間も学校の美化の為にいっぱいお花を買って来たのに、政治がどうとか管轄がどうとかで、結局ダメにしちゃうところだったんだから!!』
「な、なんで、その話を……」
『忘れたの、ナギちゃん? 私はずっと、ユエと繋がってたんだよ』
それはユエの言葉ではなく、正真正銘、ミカの愚痴だった。
『ナギサさん。この私に少しでも優位を取れると思うなんて、大間違いですよ』
そして、急にトーンが落ちたミカの声で、ユエの口調でスマホが話す。
ミカの声で、ユエの口調で。ナギサの脳がバグる。破壊される。
「あ、あれはミカさんが、また何の相談もなく突拍子もない行動をしたから!!」
まるで目の前にミカが実際に居るかのように、そんな言い訳を述べるナギサ。
『知ってるじゃんね、いつも悪いのは私だから。そうですよね、ナギサさん』
「も、もうッ、や、止めてください!!」
『先に喧嘩を売ったのはそちらですよ』
狼狽えるナギサを見かねて、サクラコが溜め息と共にこう言った。
先生もこめかみを揉んでいる。
「ナギサさん、相手が悪いですよ。
これ以上は話が進まないので、出来れば控えてください」
「……はい」
サクラコは話が通じる方を諫めたのだが、それがより理不尽感を増すのである。
「なんでこう、ナギサさんを困らせる組み合わせになってしまうのでしょうか……」
「私はホストを困らせるつもりはないのですが」
「勘違いしないでください。ナギサさんを困らせるのを楽しんでいるのは私だけの意思ではありません。キヴォトスが望んでいるのです」
「いえ、意味不明に主語を大きくしないでください」
ユエにミネが即座にツッコミを入れた。
「私は信念と誇りを胸に、道を誤った者を正すだけです。
たとえ友人であるあなたでも。同じ道を歩んでいるからこそ」
「なるほど。ミコトが一目置くだけはありますね」
彼女なりの批難に、ユエはくすくすと笑っている。
「……雑談はもういいでしょう。先生をお呼びだてしたのは、エデン条約以降の顛末と後始末について話し合う為だったのですが……」
「……」
「……」
「(にやにや)」
「それを聞いたシスターフッドと救護騎士団のリーダー、そしてゲヘナのユエさんがあちらの状況を伝えに、と押しかけて来たのです」
「シスターフッドも以前と体制が変わりましたので」
「騎士団の務めを果たす為です」
「ミカさんのお世話のついでです」
こほん、とナギサは咳払いをした。
「“つまり、ティーパーティーへの牽制ってこと?”」
先生の質問に対し、サクラコはあくまで情報共有の為だと念を押した。
ミネも今のティーパーティーには外部の助けが必要だと論じる。その上で事実を整理しながら、流れ弾がナギサに飛んでいる。
サクラコは、こう言うところなんですよね、とミネに言いたげだった。
「そして私は皆さんへ報告しに来ただけですよ。それに今、万魔殿は機能していませんから」
「……それは初耳なのですが」
「ええ、だって昨日のことですから。
もしかして、うちの政変についてご存じないのですか?」
あれだけ派手だったのに、とユエは驚いている。
「ではアリウスについて話し合う前に、ゲヘナでの騒動についてお見せしましょう」
ユエはスマホを操作し、動画を再生してみせた。
「――つまりよ、マコちゃんがアリウスの手を引いてミサイルをぶち込んだってことだよな?」
「そのようですね」
画面には、マコトの胸倉を掴んだミコトが映っている。
撮影者のユエの横から、イロハの声が聞こえる。
「お、おい、イロハ、貴様私を裏切る気か!!」
「裏切るも何も、私達は何も聞いていませんよ。
それに嘘を言ったら、我々も丸ごとミコトさんにボコボコにされるじゃないですか」
「そうか」
ミコトのボディブローが、マコトに炸裂した。
ミコトは無表情だった。それが彼女の本気さを伺える。
「つまり、マコちゃんはアリウスの仲間ってことで良いんだよな? 俺はアリウスを全員ぶっ潰すって決めたから、マコちゃんもその範囲に入るってわけだ」
「ま、待て、待ってくれ、ミコト!!」
「問答無用だ、ボケ」
「頼む!! 我々の仲だろう!? いつもマブダチだって言ってるじゃないか!!」
マコトの必死な物言いに、ミコトが彼女を掴み上げる力が若干緩んだ気がした。
「こんな時だけ、都合が良いんですから」
「イロハ!! 何とかしてくれ!!」
「マコト先輩、何か勘違いしていませんか?」
声色から、イロハの冷たい視線が想像できるかのようだった。
「万魔殿は議会制ですよ。あなたは独裁者ではない。
なぜ事前に我々に話を通してくれなかったのですか?
学校の政策としてアリウスを支援したわけではない以上、我々が庇えるわけないじゃないですか」
「うぐッ」
「あと個人的に許せないのが、イブキを巻き込んだことです」
ミコトのボディブローが、マコトに炸裂した。
げはぁ、とマコトが呻いた。
「マコちゃんてめぇ、イブキを巻き込んだのか?」
ミコトの声のドスが、数段低くなった。
ミコトもイブキを可愛がっているのは周知の事実である。
「……わ、悪かった。私もイブキを巻き込むつもりは無かった……」
ここに来てようやく罪悪感に駆られたのか、初めてマコトの気勢がしぼんだ。
「そうか。じゃあケジメは利き手の人差し指か、雷帝御用達のスイートルームか、土下座のどれが良い?」
指を切り落とすか、牢獄行きか、土下座の三択。
マコトは額から汗を流し、即座にこう答えた。
「ど、土下座する、それで赦してくれるのか!!」
「おう、流石マコちゃんだ。やっぱりそいつを選ぶのか」
マコトの選択に、ミコトは急に笑みを浮かべた。
「おーい、やっぱり土下座するってよ!!」
ミコトがマコトを掴んだまま、グラウンド側の窓を開ける。
「こっちの準備はオッケーです、ミコちゃん!!」
そこには園芸部の部員たちが、真っ赤に赤熱した鉄板を用意していた。
「お、おい、あれはなんだ……」
「本当に申し訳ないって思ってるなら、どんな場所でも土下座できるよな?」
ミコトは、窓から鉄板に向けてマコトを放り投げた。
「――たとえ、真っ赤に熱された鉄板の上だろうがよ」
「ぎゃああああああぁぁぁぁ!! 死ぬ死ぬ死ぬ!!」
「ああ、俺の言葉が足んなかったな。
土下座ってのは、みんなに詫びながら死ぬってことだ」
鉄板の上でのたうち回るマコトの背中を、ミコトは踏み付けた。
「おい、トリニティの連中、見てるか?
マコちゃんにはもう詫びれねえってくらい詫びさせておくから、これで手打ちにしてくれや」
マコトに何度もストンピングを繰り返しながら、ミコトはカメラ目線でそう言った。
ばき、ぼき、と骨が折れる嫌な音と、じゅうじゅう、と肉が焼ける音が聞こえる。
「イブキ、あれがアホの末路ですよ。よく見ておきなさい。悪いことをすると、ミコト先輩がやってきてオシオキされるんです」
「う、うん……」
そんなやり取りが後ろから聞こえてくる。
「あとミコト先輩、勝手にゲヘナを代表して謝罪しないでください」
マコトの悶絶の絶叫をBGMに、イロハがそんなところを突っ込んだ。
「それもそうだな。おい、お前ら!!」
ミコトは、何事かと校舎の窓から授業を中断してグラウンドを見ている生徒達に呼びかけた。
「マコちゃんがアリウスの連中にやられた!!
だから俺が代わりに連中を〆ることにした!! それが終わるまで、俺が議長代理をする。文句無えな!!」
政治なんて興味のない、特に事情も分かっていないゲヘナの生徒達は、声援でそれに応じた。
大部分がただ騒ぎたいだけのゲヘナ生徒の声を受け、ミコトはイロハを見やる。
「……そういうことになった」
「はい……」
先生には、九割ぐらいあんたがやってるじゃないですか、という議員達の表情が、画面に映らなくても分かるようだった。
彼女らがここで反論しても、生徒達の反発にあうだけだし、民意も一応あるので従うことにした。
「み、みこと……」
すると、何とか鉄板から這い出たマコトが、救急医療部の担架に運ばれながら、うわごとのように言った。
「やつらは、アリウスの連中が、ゲヘナを、我々を裏切ったのは事実だ……。
全てお前に任せる、報いを……必ず」
「分かってるよ、マコちゃん」
ミコトは、マコトの手を取って、真面目に頷いた。
まるで力尽きた親友の遺志を受け取るみたいな光景だが、九割がた滅多打ちにしたのはこのミコトである。
「き、キヒャヒャヒャ!!! ざまーみろ、アリウス!!
お前達は、終わりだッ!! キヒャヒャヒャ!!!」
保健室に運ばれるマコトは、最後まで哄笑を挙げていた。
「これは喧嘩じゃねえ、戦争だ」
かくして、議長代理に就任したミコトは言った。
「アリウスの連中のヘイローと言うヘイローを叩き壊してやる!!
マコちゃんの仇を討ってやんだ、その後、俺は
「ゲヘナの敵の血を全部抜いてやれ!!」
「奴らの頭蓋骨から脳みそを掻き出して、地面にぶちまけろ!!」
「校舎に死体を吊るしてやろうよ!!」
ミコトの狂気が伝播する。
トリニティに勝るとも劣らない、残虐性の発露だった。
「風紀委員会は学校の守りを固めろ!!
あと、ハルナとカスミを呼べ――――」
……そこで動画は終わっている。
サクラコとナギサと先生は絶句していた。
「ふむ、全治一か月と言ったところでしょうか」
ミネは冷静にマコトのダメージを分析していた。
いやあれで一か月で済むんだ、と先生はちょっとドン引きしていた。
「ミコト議長代理は、これをケジメとして正式にトリニティ総合学園への謝罪とするそうです。
足りないのなら、もう一か月分くらい打擲しますか?」
「……いえ、流石にこれ以上は……」
「わ、わかりました、ティーパーティーは正式にゲヘナ学園の謝罪を受け入れます……」
本当にこれ以上の暴力をやりかねないと、ドン引きしているサクラコとナギサはそう言った。
「ふふ、流石のミコトの政治力ですね♪
タダでトリニティと和解を引き出したのですから♪」
「“そ、そうだね……”」
ユエは笑顔でそんなことをのたまった。
後でお見舞いに行こう、と先生はそう思った。
「そんなことよりも、新たな問題が浮上しました。
ミコトは必ずアリウスに報復をするでしょう。アリウスの生徒達の命を以て贖いとする為に」
ミネが真面目な表情のままそう言った。
「それについては、私に考えがあります。
こんな下らない案件で、ミコトを人殺しにしたくありませんから」
「お、お願いしますね。私も、キヴォトスが血の海になるのは見たくはありません……」
サクラコは気苦労の多い表情をしている。
「今のところ、ミコトはこれをゲヘナの問題として、デスサイズは動員していません。議長代理として戦争をするつもりなようで」
「……それは、デスサイズの影の宗主としての言葉ですか?」
サクラコの視線が、ユエに向けられる。
「何のことでしょう。デスサイズの宗主はミコトですよ」
ユエはいつもの微笑みのままそう言った。
その時、先生はハッとなった。
「“この間、合宿所にアリウスの生徒が現われた時、デスサイズは宗主命令だって言っていたのに、ミコトは何も知らなかった……”」
「おや、先生にも気づかれてしまいましたか。
それではこんなお遊びは終わりですね」
ユエはくすくすと笑っている。
「ええ、そうです。今のメメントモリの四人に声を掛け、デスサイズを創設したのはこの私です。
ミコトは所謂、シンボルですよ。権限としては八割ぐらい私が握っています」
「……なぜ、そんな隠すような真似を?」
「なぜって、その方が秘密結社の裏ボスみたいで楽しいじゃないですか」
ユエはミネの問いに、愉快そうにそう返した。
他の三人は、ああこいつはそう言う奴だよな、という表情になった。
「ですので、デスサイズがトリニティに襲撃するとか、この世界のバランスを崩すようなことは決してありません。
良かったですね、皆さん。これで心労の一つが減ったでしょう?」
「ええ、彼女らが貴女の私兵と言う、新たな心労が増えた以外は」
ニヤニヤと嗤うユエに、そんな嫌味をぶつけるナギサだった。
「おっと、そろそろミカさんの餌の時間……もとい、お昼のお弁当を届ける時間ですね。
私の用事は終わったので、後は皆さんでどうぞ」
「ちょっと、ヒトの幼馴染をペット扱いしないでください!!」
「それについては、お互い様でしょう? 今お世話をしているのは私なんですから。前の飼い主が口を出さないでください」
「私は、そんなッ――」
しかし、ユエはナギサの抗弁を無視して、退出してしまった。
現状を掻き回すだけ掻き回す存在が去り、サクラコはホッとしている。
「それでは、改めてアリウスについての現状を報告し、ゲヘナの対応について協議致しましょう」
サクラコが音頭を取り、先生は彼女達の報告を受けるのだった。
本当は一か月くらいは休もうと思ったのですが、長年の習慣とは恐ろしいモノで、私の身体が執筆をしろと訴えるのです。身体は更新を求めている……。
とりあえず、メンタルは旅行に行って大仏を拝んだりして、大分回復しました。(なお実家は神道ww
これからは更新ペースが伸びるかもしれませんが、少しづつ書いて投稿しようと思います。読者の皆様におかれましては、お騒がせしました。
あと、これは大事なことですので、一応。
これからしばらく、私の精神衛生のため、感想への返信は控えようと思います。
応援のお言葉を下さった読者の皆様には申し訳ありませんが、どうせ私の返信なんてつまらない内容ですし、皆さんから感想を頂いてもそれをにやにやと眺めるだけに留めようかと思います。
作者の事情に振り回してしまい、申し訳ありませんでした。
たった10日ぐらいで更新停止とかww と思われても仕方ありません。
それでも、これからも拙作をご愛読くださるのなら、幸いです。