ゲヘナ学園 園芸部の死神   作:やーなん

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日間に載ったおかげで、100人くらいお気に入りが増えました。
ありがとうございます!!

今回はミコトの絆ストーリーです。
あとがきに、ミコトのイラストを載せてますので、見たくないのならば観覧設定から挿絵をオフにしてください!!



絆ストーリー「逢坂ミコト」

 

 

 

 

 絆ストーリー「神童の葛藤」

 

 

 

「先生、何の用だ?」

 

 先生はミコトをシャーレのオフィスに呼び出した。

 

「“実は、この間の子たちが、剣道を教えて欲しいってミコトに頼んでほしいってお願いされたんだ”」

「ほーん、先生ってのは暇なんだな」

 

 ミコトは先日のコンビニ強盗の件を思い出し、興味無さそうにそう言った。

 

「答えは、ノー。ダメだ」

「“え、どうして?”」

「単純に、俺は師範や師範代から指導して良いって許可が無い。

 先生、教員免許がない奴が、学校の教壇に立てないのと同じだ」

 

 意外とまともな理由だった。

 ミコトのことだから面倒なのかと、先生は思った。

 

「“じゃあ、見稽古は?”」

「ん?」

「“ミコトが自主練して、それを見るのは自由だよね”」

 

 先生は代案を出した。それは指導ではない。

 

「……まあ、別にいいけどよ。偶には修行しないと鈍っちまうし」

 

 ミコトは視線を逸らして、そう言った。

 

「“じゃあ、行こうか”」

 

 先生は笑顔で、頷き返した。

 

 

 D.U.近郊にある学校に、二人は向かった。

 決してニュースなどに上がることの無いような、尖ったところのないどこにでもある普通のスポーツに力を入れている学校だ。

 一応キヴォトスにもスポーツのジャンル別に大会はあるので、ここの学校には体育館の他に剣道場も併設されていた。

 

 そこで、ミコトは道着に着替えることも無く竹刀で素振りをしていた。

 

「“姿勢にブレがない、ミリ単位で完璧に同じ動作を繰り返している……”」

 

 武道に詳しくない先生にも分かるほど、ミコトの動作は完璧だった。

 

「こんぐらい、練習すれば誰でもできる。

 つーか、武道の世界に、特別な技とか、選ばれた一人しか使えない奥義なんてもんは無いんだよ」

 

 道着を着た生徒達は、整列してミコトの動作を見ていた。

 

「武術はファンタジーや魔法じゃねえ。

 特別な誰かしかできねぇなんて、意味が無えんだよ」

「あ、あの!!」

 

 その時、生徒の一人が手を挙げた。

 

「試合をお願いします!!」

「勝手に挑みかかってくればいいだろ」

「はい、ありがとうございます!!」

 

 彼女は竹刀を構え、ミコトに挑んだ。

 

 先生は最初はちょっとひやひやした。だって防具を付けないのだから。

 ああこれがキヴォトスの剣道なのね、とすぐに順応したが。

 

「ほれ」

 

 ぱしッ、と生徒の頭にミコトの竹刀が振り下ろされた。

 多少打ち合った後、対戦相手の生徒の隙をあっさりとミコトは突いた。

 

「い、一本!!」

 

 ここの上級生が、思わずそう言った。

 

「あ、ありがとうございました!!」

「ああ。そうだな」

 

 対戦相手の生徒は、お辞儀をしてミコトの前から退いた。

 そんなことを、何度か繰り返した。

 

 

 

「……道場の空気ってのは、どこも変わらねえんだな」

 

 壁際に座り、生徒達の練習風景を見ながらミコトはそうぼやいた。

 

「“剣道は、もうしないの?”」

「感傷って奴だよ。正直言うと、道場にあまりいい思い出はねえのよ」

「“えッ”」

「前に言わなかったか、俺は神童だったって」

 

 それはどこか、自嘲のような響きだった。

 

「俺は産まれた時からこう教わった。

 お前は武天様、武の神の生まれ変わりだと」

「“生まれ変わり……”」

 

 先生はミコトが神童の意味を履き違えていることを悟った。

 

「正確には千年前くらいの俺らしいから、二十代目くらい前って話だ。

 そんなだから、永劫の修羅道に身を置く如来だとか言われて、仏像まであるんだぜ。笑えるよ」

「“ミコトの仏像……”」

 

 まるで実物の想像が出来ない先生だった。

 

「“……だから、ミコトはそんなに強いの?”」

「んなわけないだろ。俺だって最初は普通のガキだった。

 てか、そんな風に言われたくねえから、俺は俺の強さを証明したいんだよ」

 

 そうなんだね、と先生はミコトの渇望の根源を見た。

 

「道場での修行に、俺は他の門下生に混ざったことはなかった。

 俺は一人だけ隅の方で素振りやら走り込みやら、技の確認ばかりしてた……師範に、ああ俺の親代わりな、そいつに指導されたこともなかった」

「“え、どうして?”」

「必要が無かったからだよ。技なんて、一度なぞっただけでやり方を理解した……まるで忘れたことを思い出すかのようだぜ」

 

 なんとなくそれで、先生はミコトの幼少期の孤独を悟った。

 

「自らの技を捨てて、最初からガキとして技を磨き直す……俺の前世ってのは度々そう言うことをしてたらしくて、それを悟りを得る為だのなんだの、まるで仙人のようだと、周囲は囃し立てるらしいんだわ。

 道場にまで来て、俺を拝むジジババまでいる始末だ」

「“それは、辛かったね……”」

「辛くはねえよ。それが普通だった。

 てか、門下生どもに交じったら、あいつらをケガさせる、俺はそれを言われるまでもなく理解してた。

 偶にからかわれたりしたが、はん、雑魚がって内心思ってたよ」

 

 孤独というより、孤高だった。

 それ以外の生き方が、ミコトは出来なかった。

 

「でも、姉弟子だけは違った……」

 

 ミコトはそう吐露した。

 

「師範の娘でな、七つ歳上の地味な眼鏡の女だった。

 だがべらぼうに腕が立った。偶に稽古の相手とかしてくれたよ。

 多分、あいつがキヴォトスに来ても剣一本でかなり良いところまで戦えるんじゃないか?」

 

 ミコトがそこまで太鼓判を押す相手。

 だが、先生はその相手の結末を先日聞いていた。

 

「俺が来たお陰で道場は賑わった、とか。

 俺の存在が神様を信じられる理由なんだ、とか。

 いつか本気の武天神君様と戦いたい、とか。

 まあ、時代錯誤な女だったよ」

 

 先生には、その姉弟子だけがミコトを人間扱いしたのだと感じた。

 

「中学の頃は俺もグレて暴れまわったもんだが、師範は何も言わなかった。武天様が武を極める為のことに、口出しは出来ないだとよ」

「“それは、酷いね……”」

「勘違いするなよ、先生。俺よりヒドイ境遇の奴なんて幾らでも居る。

 俺は衣食住に不自由は無かったし、小遣いも貰えた。小心者だったが恨んじゃいなかった」

「“そうなんだ……”」

「代わりに、俺が周りに迷惑を掛けるたびに姉弟子が頭を下げて回った。

 俺も反抗期って奴で、姉弟子の一挙手一投足が気に入らなかった」

 

 きっと大好きな姉弟子が自分の代わりに謝るのが気に入らなかったんだろうな、と先生は何となく感じた。

 

「中三の頃、世界大会があって姉弟子はそれに出場した」

「“へえ、剣道の世界大会に?”」

「いや、武天様ってのは武器を選ばねえ。色んな流派があって、うちの道場もその一つなんだわ。そんな流派から猛者を集めてみたいな?

 まあ分かりやすく言えば、天下一武道会みたいな? 姉弟子はそれで己の最強を証明した。大会の運営委員会からも、“剣聖”の称号も送られた」

 

 スゴイね、と先生は思わずそう言った。

 ミコトの七つ上、恐らく先生と大差ない年齢なのに、世界最強だとは。

 

「その大会にはよ、曰くが有るんだ」

「“曰く?”」

「武を極めた者がその大会に優勝したら、武天神君が降臨して優勝者に戦いを挑み、殺すってな」

 

 え、と先生は言葉を失った。

 

「勿論伝説だよ、いや、伝説だったって言うべきか?」

 

 自嘲する。ミコトはそう言った。

 

「武天様に殺されるのは、武の極みに立ったからだ。

 それは名誉なことだと、そんなのはバカげたことだと、俺も思ってたんだがよ……」

 

 ミコトは、切なそうに目を細める。

 

「俺は姉弟子を倒せば、世界最強なんじゃねえかって思っちまった」

「“ミコト……”」

 

 伝説は本当だった。

 彼女の姉弟子の前に、武の神が現われたのだ。

 

「半年ぐらい、あいつはテレビとかに引っ張りだこだった。

 その帰りに、俺はあいつを襲った。

 なあ先生、あいつは何て言ったと思う?」

 

 ──なぜ今なのですか、武天様!?

 

 だってよ、とミコトは笑い声を上げた。

 

「思わずカッとなったよ」

 

 その時、姉弟子はミコトに武の神を見たのだ。

 

「“ミコトは、彼女にだけは神様扱いしてほしくなかったんだね……”」

 

 ミコトは笑っている。自分が忌み嫌う前世と同じなのだと、自ら証明したことに。

 稽古中の生徒達が、何事かとこちらを見ている。

 

「気づいたら、俺は姉弟子を病院送りにしてた。

 車で送り迎えをしてた師範の声で、俺は我に返った」

「“……”」

「なあ先生、あの時の俺は、“俺”だったのか?」

 

 先生は、何も言えなかった。

 だが、これまで伝え聞いたミコトの行動の理由が、繋がった気がした。

 

「“私は、ミコトが前世とは違う道を歩めると信じてるよ”」

「ッ……」

「“ミコトが思う本当の強さを、見つけられるといいね”」

「ああ!!」

 

 ミコトはようやくいつものように笑った。

 

「よし、お前ら。なにぼーっとしてんだ!!

 お前ら今度、大会があんだろ? 実戦形式だ、鍛えてやるよ!!」

 

 竹刀を手に取り、ミコトは立ち上がってそう言った。

 

「あ、ありがとうございます!!」

「はい、お願いします!!」

 

 ミコトが彼女達の中に飛び込んでいく。

 この日は彼女の激励の声が一日中響いていた。

 

 

 

 

 それからしばらくして。

 

「先生、聞いたか? あいつら、地区大会に優勝したんだと」

「“うん、私も聞いた”」

「次は全国大会か。応援しに行ってやらねぇと」

 

 ミコトは上機嫌だった。

 

「“そうだ、今日はミコトに渡したい物が有るんだった”」

「俺に?」

 

 そう、先生は今日ゲヘナ学園にやってきて、ミコトを呼び出していた。

 

「“はいこれ、手紙”」

「手紙だぁ? 俺に直接送りゃいいのに……」

 

 その手紙は宛先が不明で、ミコトの名前だけ書いていた。

 そして送り主の名前を見て、彼女は固まった。

 

「……姉弟子からだ」

「“ちゃんと近況を伝えないとダメだよ。

 住所が書いてないから、連邦生徒会で保管されてたんだって”」

 

 勿論連邦生徒会は郵便局ではない。

 要注意生徒のミコトの名前が書いてあったから、検閲されたのだ。

 問題無い内容だったので、先生の手に回ってきたと言う経緯である。

 

 ミコトは封筒を破り、中の手紙を読み始めた。

 

「“……なんて書いてあるの?”」

「育児の方が落ち着いて、旦那に子供を任せて鍛錬を再開したってよ。

 ……剣聖の称号を返却したって聞いてたから、剣を置いたと思ってたが」

 

 ミコトは鼻で笑った。

 

「あれで勝ったと思うなよ、だってよ」

「“そう、よかったね”」

「俺に内緒で男にかまけてたくせに、良い度胸だぜ。

 次は正面から、正々堂々と勝ってやるさ」

 

 ミコトの笑みを見て、先生は良かったね、と口にした。

 だが、先生は忘れていた。ミコトのストイックさは、いつだって誰にも理解されないほど斜め上に行くのだと。

 

「そうだ、ここはフェアにやり合いたいな。

 俺もガキを作ったままやり合えば、丁度いいな」

「“……え?”」

「ついでに、俺のガキなら絶対に強いだろうし、鍛え上げて俺と戦えるようにしてやろう」

 

 そして、ミコトの視線が先生に向いた。

 先生は壮絶にイヤな予感がした。

 

「先生、俺のガキを作れ」

 

 先生は、逃げ出した!!

 

「あ、おい、待て!!」

 

 それを追うミコト。

 その後、風紀委員会に駆けこむことで、先生は何とか貞操を守ることに成功したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 





日間七位は、正直ビビりました。
作者の私にできることは、感謝を更新で示すことだけですね!!

それではまた、次回!!
あと、今日からぼちぼち返信を再開します。


↓ ミコトのAIイラスト










逢坂ミコト

【挿絵表示】


キヴォトスには居ないタイプの、中性的な見た目。
AIイラストで一発で作者のイメージ通りに出力されたので、これに決めました。
ちなみに、この美貌が台無しになる四話の笑顔も再現できたんですけど、個人的にマジで気持ち悪かったのでお蔵入りとしておきます。

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