ゲヘナ学園 園芸部の死神   作:やーなん

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アリウス編の予想以上の速さの到来に、戦々恐々としている作者であります。
作者はまとめて見る派なのですが、伝え聞く感じはアリウスの面々は悪い扱いじゃなさそうなので、安心してる次第であります。

それでは、本編どうぞ。



ブルアカVol3「アリウス編」その4

 

 

 

 

 :12 アリウス自治区

 

 

「ふふふ、ミカさん。本気で私と戦うつもりですか?

 やめてくださいよ、私が本気を出したら、ミカさんが敵うわけないでしょう?」

 

 ミカに胸倉を掴まれているユエが笑顔のままそう言った。ユエは秒で捕まっていた。

 周囲は温泉開発部の部員や美食研究会の面々が、死屍累々となっている。

 

「それ、なんの言い回し? いつもあなたはそう。

 他人の台詞ばっか。あはは、もしかして自分の言葉なんて無いんじゃないの?」

 

 ミカは笑顔でそう言った。

 ユエを締め上げる力を強めながら。

 

「はあ、ミカさんのようなお嬢様には、ネットミームは理解できませんよね。

 下らない戯言です、聞き流してください」

「それよりも、サオリはどこ? あなた達が先に行かせていたの見てたよ」

「わかりました、包み隠さずお話ししましょう」

 

 ユエは本当に包み隠さず全部の事情を話した。

 

「先生が、あいつらと一緒に……」

「ゲームを下りたミカさんが、今更何の用ですか?」

「私は公平にしたいだけだよ。

 全部あいつの所為なのに、私だけ失うのは不公平でしょ?」

「ミカさん、それは何と言うか知っていますか?」

 

 悪平等と言うんですよ、とユエは囁く。

 

「悪、ね。確かに今の私にはそれがふさわしいかもね」

「ミカさんに協力して、アツコさんを生贄にさせるゲームも面白そうですが、ミコトを満足させる盤面にならなそうなので、今回は見送りでしょうか」

「それはそれで楽しいゲームかもね♪

 ねえ、今からそれをやるってのはどう? サオリの絶望した顔を見てやるの♪」

 

 ミカは更にユエを締め上げた。

 人間なら呼吸もままならないはずなのに、ユエは平然とこう答えた。

 

「ミカさん。もう我々の関係は終わってるじゃありませんか」

「あっそ、じゃああなたに用はないね!!」

 

 ミカはユエを手放すと、彼女を殴り飛ばした。

 

「ホント、肝心な時にいつもあなたは邪魔するよね♪

 ねえ、そんなに私が嫌いなの?」

「ミカさんに殴られるなんて……これ以上無いファンサですね……」

「もういいや、話にならない。

 前々から一回殴っておきたかったけど、なんで悦んでるの?」

 

 お腹を抑えて蹲りながら、不気味な笑い声を上げるユエ。

 蹲って顔の見えない彼女は、こう言った。

 

「ふふ、ふッ、私はですね、ミカさん。あなたがあの時何を考え、どう行動するかを知りたかった。

 貴女の喜怒哀楽の全てを味わいたかった。

 貴女と言う存在(コンテンツ)を味わい尽くし、消費し、堪能したかった……それがファンと言うものでしょう?」

「はあ、やっぱりあなたと話が通じると思ったのが間違いだった」

「ミカさん、こんな言葉がありますよ。

 スターはファンの為に全てを捧げるものだ、と」

 

 ミカが気づいた時には、遅かった。

 ユエがストローのようなものを咥えていたことに。

 

 それは、吹き矢だった。

 ミカは咄嗟に射出された針を振り払った。

 

「まったく、油断も隙も無いね……」

「今の針に触りましたね? 麻痺毒がたっぷり塗られた針に」

「えッ」

「私のようなただの生徒では、ミカさんの相手など務まりませんから」

 

 よろよろ、とユエは立ち上がってそう言った。

 

「数十分から一時間で効果が現れ、数時間で手足の痺れで動けなくなります。

 おや、そうなっては、ミカさんの目的が達成できませんね」

「ッ、ユエ!!」

「解毒剤はこちらですよ。

 それでは、私はミコトのお世話に戻りますので」

 

 スモークグレネードが、ミカの足元に投じられる。

 怒れるミカの銃撃は、ユエの分厚いバックパックに阻まれた。

 

 白煙があふれ出し、周囲を白く染める。

 ミカの回し蹴りが煙を薙ぎ払う。

 

 しかし、ユエはもうそこには居なかった。

 

『ミコトと一緒に百鬼夜行で忍術の訓練をした甲斐がありました。

 遊びましょう、ミカさん。キヴォトスという盤上に居る限り、ゲームから降りることなんてできないのですから』

 

 スピーカーから、煽るようなユエの声がした。

 

「……いいよ、追いかけっこだね? 私から逃げられると思わないでよ。地の果てまで追いかけても、たとえあなたのような、魔女に成り果てようとも」

 

 笑顔のままのミカが、カタコンベへと足を進める。

 まるで自ら地下墓地へと埋葬されにいくかのように。

 

 

 

 

 ところ変わって、整備されているとは言い難いカタコンベの道を、ミコトを先頭にして先生達は歩いて行く。

 

「なあ、先生。正直、俺はホッとしてるんだ」

 

 ミコトが唐突にそう言った。

 

「“何が?”」

「あんたが俺を止めてくれたことだよ」

 

 それがミコトの本心と知り、先生は少し笑顔になった。

 

「“私も、止められて良かったよ”」

「俺の……俺の地元で奉られてた武神は、こんな言葉を残したらしい。

 ――相手の命を奪うことこそが、そいつの全てを超越した証だ、と」

 

 ミコトの身の上を知っている先生は、笑みが失せた。

 

「命を奪うってのは、当たり前のことだ。

 俺らだって、家畜の肉を食ってる。

 だけどよ、それって家畜に対して、俺達がすげえって威張れることなのか?」

「“少なくとも、私はそう思わないかな”」

「勿論、人間相手と家畜は違ぇ。

 俺がキヴォトスに来てから戦った相手には、多くの強者がいた。

 武神の生まれ変わりだと言われたこの俺が、苦戦するほどの相手が何人もだ!!!」

 

 ミコトは楽しそうに肩を揺らしている。

 

「……あいつらを殺すなんて、もったいねぇだろ。

 あいつらと競い合って、俺はより高みを感じられた。

 ……俺には、あいつらが必要だ」

「“うん。それはとても、素晴らしいことだと思うよ”」

 

 ライバルとしのぎを削る、それはまさに青春の形だ。

 先生はミコトの見つけたひとつの答えに、嬉しそうに肯定した。

 

「俺はキヴォトスが好きだぜ。

 このキヴォトスを守るために、アリウスの連中を皆殺しにしようと思った。

 だがよ、アリウスの連中はみんな“からっぽ”だった。

 美味い飯も、ダチと下らねぇ話をすることも、勉強に四苦八苦することも、知らねぇんだ……」

 

 それは、憐みだった。

 神の如き強者からの、慈悲だった。

 

「俺は恵まれてた。衣食住にもカネにも困った試しがねぇ。

 だがアリウスの連中は? 俺のダチみたいに、バカですらなかった」

 

 洗脳され、搾取され、命令される。アリウスの生徒達はそうやって生きてきた。

 

「俺はあいつらに――」

 

 その時だった。

 

「く、来るなぁぁぁ!!」

 

 カタコンベの物陰に逃げのび隠れていたアリウスの生徒が、半狂乱のまま銃を乱射して飛び出した。

 

「先生!!」

 

 先生への射線を塞ぐように、サオリが彼の前に出た。

 数発の流れ弾が、彼女に当たる。

 

「“サオリ!?”」

「ちッ」

 

 ミコトは軽く木刀を振るった。

 アリウスの生徒はまるで見えない鞭で叩かれたような音と共に、後ろに吹っ飛ばされた。

 

「つまんねぇ真似しやがるな」

 

 ミコトは彼女の胸倉を掴んで、ガスマスクと銃を剥ぎ取った。

 

「こ、殺すなら殺せッ、どうせ私達には何も無いッ!!」

 

 ガスマスクの下は、涙と唾液でぐちゃぐちゃだった。

 

「ずっとそう教わって生きてきたッ、やっと終わりが来たんだ!!」

 

 彼女は明らかに恐慌状態だったが、その全てが錯乱から出た言葉ではなかった。

 

「そうか、じゃあ死んでみろよ」

 

 ミコトは特に感慨も無く、彼女の首を片手で絞めた。

 

「あ、あッ、あ……」

「じっくりと、味わえよ。最後の生の時間をよ」

 

 彼女は最期に、ミコトの両眼を見た。

 

 ――――“死神(ミコト)”が、彼女を見ていた。

 

 連綿と続く、永劫の死の輪廻の奥底。

 死の先、完全なる虚無の果てに得られる、悟りの境地が。

 

 絶対の、“死”が手ぐすねを引いていた。

 

「“ミコト!! 私は大丈夫だから!!”」

 

 ミサキとヒヨリが、サオリの手当てをしている。

 先生は彼女を見ながら、ミコトにそう叫んだ。

 

「安心しろよ、気を失うまで締め上げてるだけだ」

 

 ミコトはアリウスの生徒から手を離した。

 彼女は白目を剥き泡を吹いて完全に気絶していた。

 

「えぇ、首を絞められただけでこんな風になりますか?」

 

 気絶したアリウス生徒をつつきながらヒヨリが言った。

 

「心が弱ぇから、怯えて気絶なんてするんだよ」

 

 なお、ミコトは倒した敵を顧みなかった。

 

「……それは、あんたが強いだけでしょ」

「……」

「全ては虚しい、私達はそんな事実と真実の中に生きてきた。

 最初から強い奴が、勝手に私達を憐れまないでよ」

 

 ヒヨリは感情的にそんなことを言うミサキに、驚いた。

 幼い頃から家族のように過ごしてきたが、こんな風に嫌悪感をぶつける彼女は珍しかった。

 

「ほらな、先生。こいつらはバカですらない」

「なッ」

 

 ミコトは、嫌味をぶつけるミサキを見てすらいない。

 

「てめぇらの短い人生で、何も学んでこなかったくせに人生とやらを知った気でいやがる。

 こいつらの言う真実とやらは、そんな狭ぇ上に小せぇもんだ。

 不良が勉強したくねぇって言うのと、同じなんだよ」

 

 先生は否定も肯定もしなかった。だが、ミコトの言葉は的を射ていた。

 

 勉強しても苦しいだけ、勉強してもどうせ無意味だ。

 アリウス分校の教義とは、そんな自分の惨めさを覆い隠すだけの、そんな諦めの言葉と何一つ変わらない。

 

「ああ、なるほどな。つまり、アリウスってのは筋金入りの不良校ってことか。

 そりゃあテロぐらいするか。ゲヘナの連中も、俺がヤキ入れる前なんざ――」

「恵まれてた奴が、私達を知った気になって――」

「そんな怒んなよ。人生ってのは虚しいんだろ?」

 

 逆上するミサキに、ミコトはへらへらと笑っている。

 

「てめぇらの親玉は俺がしっかり〆てやるよ。

 その土下座姿をキヴォトス中に晒して、手打ちにしてやるってんだ。

 その後の人生はてめえらで決めろ。人間の価値ってのは、葬式に来てくれる奴の数で決まるって話もある」

「……お葬式」

「とりあえず、D.U.セレモニーホールを満杯にすりゃ、意味のある人生ってことになんじゃねーのか?

 人間最初は誰だって無価値だ。それに意味を見出すのが、人生ってもんだろ?」

 

 ミコトは良いことを言ったみたいな表情で、ニヤリと笑った。

 

 ちなみにD.U.セレモニーホールとは、D.U.で最大規模の、千人も収容できる葬式場だ。*1普段はイベントやコンサートもやっている。むしろ葬式場なのにそっちがメインですらあった。キヴォトスの住人は頑丈すぎるのだ。

 

「ミサキ、気持ちはわかるが、奴に感情的になるな」

「……そうだね、らしくなかったよ」

 

 サオリに諫められ、ミサキもバツが悪そうに目を逸らした。

 

「まあとりあえず、しばらくはアリウス温泉郷で働いたらいいんじゃねえの?

 現地民の雇用推進は、企業の社会貢献だってカイザーのプレジデントが言ってたぜ」

「“いったいミコトの人脈って……”」

 

 適当なことを言うミコトに、先生は呆れていた。

 

「お、温泉って、あれですよね、雑誌に載ってた、白いお風呂ですよね?

 そこで働いたら、いろんな美味しい食べ物にありつけるんでしょうか……」

「風呂で思ったんだけど、お前らちゃんと風呂入れてるのか?」

 

 ヒヨリの言葉に、ミコトが疑うようにそう言った。

 

「……? 濡れた布で身体を拭ければ十分だろう」

 

 サオリは真顔でそう言った。

 ミサキも、ヒヨリも、特にツッコミは無い。

 

「嘘だろおい……。お前ら特殊部隊なんだろ、臭いを消すのは基本じゃねえのかよ」

 

 ミコトはドン引きしていた。

 なんならアリウスと戦って、一番ショックを受けたまであった。

 

「“シャーレのシャワー室なら、いつでも来て良いからね……”」

 

 先生も最大限の優しさを発揮して、三人にそう言った。

 彼の優しさを、スクワッドの三人は不思議そうにしているのだった。

 

 

 そんな会話を道中で繰り広げつつも、先生達一行はアリウス自治区に辿り着いた。

 

 一先ず、警備が手薄だと言う訓練所跡地に身を潜める。

 スクワッドの面々の思い出話をミコトは聞き流しながら、外を警戒している。

 

 この後どうするか、という話になって、ミサキがこう言った。

 

「とりあえず、あいつの突破力でバシリカまで強行突破が単純で成功率が高そうだけど――」

 

 だが、その時、サオリに限界が訪れた。

 

「“サオリ?”」

 

 先生は最初、何が起こったのか分からなかった。

 まるで崩れ落ちるように、サオリが倒れたのだ。

 

 ミサキによると、サオリは負傷している上にもう四日も寝ていないと言う。

 疲労と睡眠不足で体力が限界だったのだ。

 

「道理で、口数が少ねぇと思ったぜ」

 

 ミコトは倒れたサオリの額に手を当てた。

 

「熱が出てるな。おいユエッ、てあいつは上に残ったんだったか」

 

 仕方ねぇな、とミコトはポケットから小瓶を取り出した。

 

「え、なんですか、それ」

「俺がいつも飲んでる、ユエ特製栄養ドリンク。滋養強壮が疲労に効く上、栄養満点だ。こいつを飲み始めてから疲れ知らずで、寝起きも良い」

「あの、とても飲み物みたいな見た目じゃないんですけど……」

 

 まるで藻を詰めたような液体に、普段から残飯を漁るような生活をしているヒヨリ達さえドン引きしていた。

 

「“こ、効果は私も保証するよ……一時期ユエに貰ってたから”」

 

 先生は最悪の飲み心地のそれを見て、喉に触れる。

 彼は一週間も持たずに、ギブアップした。

 

「おら、口を開けろ。飲め」

「うぐぐ、なんだこれは、もさもさしてる……雑草を煮た味がする」

 

 それを無理やり飲まされるサオリは、熱や疲労以外の要因で苦しみだした。

 

「解熱剤はあるか? 流石に俺は持ってねえ」

 

 ミコトが三人に問うと、先生は常備薬の解熱剤を取り出した。

 コンビニで買ったとか言う他の品物を出している彼を尻目に、まだ呑み込めていない緑色を、水で胃に押し込ませるように、解熱剤をサオリに飲ませるミサキ。

 程なくして、サオリは何とか眠りに就いた。

 

「まあユエが来ればもっとちゃんとした処置が出来るだろ。

 俺は応急処置以外は出来ねえからな」

「あいつに頼るのか……すごく癪だな」

「そう言うなよ、俺も便利だから使ってやってんだ」

 

 ミコトの物言いには、まるで友情を感じられない。

 むしろ、ユエの件に関しては彼女らに同情的でさえあった。

 

「えぇ、いつも一緒に居るのにですか?」

「今は一緒に居ねぇじゃねえか」

「それはそうですけど……」

 

 ヒヨリはミコトとユエの関係性が全く理解できず、ミコトの視線から逃れるように言葉が尻すぼみになっていく。

 

「俺の世話したいって言うからさせてやってんだ。

 俺の制服の洗濯やらアイロン掛けやらもいつもやってくれるしよ。

 どうせミカの世話も楽しそうにやってんだろ」

 

 割とどうでも良さそうにミコトはそう言った。

 これにはミサキもヒヨリもドン引きである。

 

「……あいつは何者なの? マダムの声を再現したり、私達をずっと探ってたみたいだけど」

「さあな、気味が悪いくらい偏執狂なんだよ。

 きっとお前らの対策も、楽しそうにやってたんじゃねえの?」

 

 ミサキが問うも、ミコトの回答は要領を得ない。

 

「まあそう言うタイプだから、あの変人共の集まりでも割と意気投合してたんだよ。生徒であるのが惜しいってあの二つ頭が言ってたくらいだし」

「“その集まりって……”」

「さてと、俺もサオリが起きるまで寝るわ。なんかあったら起こせ。

 ああそうだ、あとそのチョコバーは食っとけ。カチコむ前はカロリー取っておいた方がいいからな」

 

 先生の言葉はミコトに届かず、彼女はその辺の瓦礫を背にして眠り始めた。のび太君も唸る早寝である。

 

「どんな場所でも眠れるのが優れた兵士の才能だって言うけど……」

 

 敵地の真ん前だと言うのに、既に寝息まで聞こえ始めたことに呆れるミサキだった。

 とりあえず、ヒヨリは先生の許可を貰ってチョコバーを半分こにして食べ始めた。

 

「本当に寝てるんですか?」

 

 いまいち信じられないヒヨリが、チョコバーを片手にミコトに近づこうとした瞬間だった。

 ひゅん、と彼女の鼻先を木刀の切っ先が掠めた。

 ミコトが寝返りを打ったのだ。

 

 狙いは、その手にあるミサキの分のチョコバー。

 仮に武器を持っていたとしても、的確に狙い落としていただろう。

 

「ひ、ひぃ!!」

「ヒヨリ、近づかない方がいいよ……」

 

 ミコトに隙などない、それを理解したミサキは怯えるヒヨリにそう告げた。

 そして、溜め息と共に地面に落ちたチョコバーの埃を払って、躊躇なく自分の分を食べ始めた。

 

「“眠りながら戦えるって、カッコいいよね!!”」

 

 男の浪漫を理解できぬ二人は、何言ってんだこの人、みたいに先生を見るのだった。

 

 そして結局、二人が動けないのでここで少し休憩することにした面々だった。

 

 

 そして仮眠を取り始めた先生に、セイアが夢見の中で語り掛ける。

 キヴォトスの終焉を招く儀式、ミカが過ちを犯そうとしていること、セイアが彼女に謝罪をしたいこと。

 

 セイアの後悔と苦悶のままに、アリウス自治区から逃げて欲しいと願う彼女が遠ざかっていく。

 

 先生は、そこで目を覚ました。

 

 

 

 :13 私達のこれまで

 

 

 目を覚ました先生は、彼女達の話を聞くことにした。

 

 これまでの半生を語るミサキとヒヨリ。

 

 先生は、思わず顔が歪むのを感じた。

 アリウスの生徒達の聞き取り調査から断片的に聞いたアリウス自治区の事情。それを再確認してしまったからだ。

 

 それから先生はアツコの事情も聴くことにした。

 彼女が生け贄としての運命を背負っていることも。

 

 その時だった。足音がしたのは。

 

「ッ、誰!?」

 

 ミサキが真っ先に反応する。

 

「私ですよ……」

 

 建物の中を覗いたのは、疲れた様子のユエだった。

 

「皆さん、聞いてくださいよ。ミカさんです、ミカさんが怒り狂って私を殴ったんですよ。サオリさんを殺して復讐するだの、出来もしないことを言いながら。

 皆さんを追跡するのも骨が折れましたし、これならミコトと一緒に行けばよかったです」

 

 ユエは先生達を見つけるなり、そんなことをまくし立てた。

 

「それは、面白い話だな」

「り、リーダー!?」

 

 ユエが合流するなり、サオリが起き上がった。

 

「“ユエ、サオリを診てあげて。体調が悪いみたいなんだ”」

「ええぇ、まず私の心配をしてくださいよ。世界一可愛らしいゴリラに殴られたんですよ?」

 

 ぶつくさ言いながらも、ユエは先生の頼みを聞いてサオリの触診を始めた。

 

「どれどれ、なるほど、私がミネさんなら即座に病室送りにしますね。

 とりあえず、強壮剤や痛み止めを投与しておきますね」

「……すまない」

 

 サオリは複雑そうにしながら、ユエの注射を受ける。

 

「心しておいてください、これは症状を誤魔化して先延ばしにしているだけです。

 無理をすれば後に祟りますよ」

 

 医療行為だけは真摯に取り組むユエがそう伝えた。

 

 それから、スクワッドの面々がバシリカへの侵入ルートについて話し合っている間に、ユエはミコトを起こすことにした。

 

「ミコト、行動開始ですよ。起きてください」

「くかー」

「ああ、ダメです、熟睡してます」

 

 あちゃー、とユエは額に手を当てる。

 

「こうなってはミコトはしばらく起きません。ミコトは寝る時間はきっちりしてますので」

「ええッ、ここまで来てですか!?」

 

 折角当てにしていた戦力が熟睡状態になっていることに、ヒヨリは全てが終わったような表情になった。

 

「……私はどうにかしてミコトを起こしてみせます。

 その後は適当に暴れて貰って、陽動でもしますので……すみません、皆さん」

 

 ユエはバックパックから爆弾とかを取り出し始めた。

 自らも囮のひとつとして、買って出るつもりのようだった。

 

「……では、それで頼む」

 早速頭の痛い出来ごとに、サオリは諦めたようにそう言った。

 

「ええ、寝起きのミコトは機嫌が最悪ですよ。早く行った方がよろしいかと」

 

 こうして、先生とスクワッドの面々はミコトを置いて行くことになってしまったのだった……。

 

 

 

 

 

*1
作者の前作ネタである。色々あって、エデン条約の調印式の舞台になった。嘘は言っていない(白目





追記
あまりにもネガティブだったので、あとがきの内容を変えました。
コンプレックスで自分を追い込むことが私の創作意欲の源ではありますが、皆さんをお騒がせしたばかりなので、今はやめることにしました。
読者の皆様の応援は私に届いていますので、これからもご愛読下されば幸いです。

ではまた、次回!!

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