ほう、ゲマトリア所属シャーレ裏切り系生徒ですか……   作:くしゃ

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いまから書く。




「君は誰?」

 

その言葉をかけられて、女はただ瞳をずらした。

つまならそうな顔は、先生に向けられている。

先生は視線を、彼女の視線の先へ伸ばした。

 

シャーレの机は珍しくきれいに片付いている。

書類はひとかけらもない。ペンもタブレットも整然と配置されている。

カーテンのかけられていない窓から、ほのかに光が伸びている。

その部屋には電気がついていなかった。

 

昼だ。日はずいぶんと登っているらしく、青みがかった空は白い雲がくっきりと形を残している。

机に伸びていた陰影がくっきりと形を得ている。

昼……

 

 

ふと先生は時刻が気になった。今日の用事は、なにか、あった気がする。

 

先生はソファに座っている。シャーレのソファは柔らかい。ただ日差しは足元まで届いていない。

先生は座っていた。女は立っている。

……立って見下ろしている?

視線を合わせていた気がするけれど。

 

 

先生は背後に時計が下がっていることに気づいた。

タブレットが手元にない。

だから、時間はみることができない、ということに気づいた。

それから女をみて、いくつものことに気づきだした。

 

 

女は真っ白い服を着ている。白を基調とした、青が差し色としてあるそれは、連邦生徒会のものと酷似している。

女はどうやら若いらしい。幼いわけではないが、決して歳を経た顔立ちではない。

女は座っている。どこからか引っ張り出してきたらしいキャニスター付きの椅子に座って、足を組んで、その太もものうえに手を組んで、両手の指を絡めさせて、やはり、つまらなそうな顔をしている。

女……?

 

見覚えのあるような気がして、彼女の顔をじっとみた。

じっと見た気がした。

 

 

 

11時36分15秒、と時計が針で示している。

時計が壁にかかっているのを先生はみた。

ソファに座りながら壁をみやると、窓越しに時計が空に浮かんでいるのが見えた。

時計は地平線に沈もうとしている。その裏に隠れた太陽は必死に西日を伸ばすけれど、到底かなわないらしい。

夕焼けは何もない青空に塗りつぶされて、影ばかりが、ほのかに薄暗い。

大きな時計だったから、どうやら外はなにもかもつぶされてしまったようだった。

けれど欠片も名残はなくて、ただ時計と、空と、残光だけが残っている。

 

 

女の唇が動いたことに先生は気づかないまま、窓の外を眺めていたらしかった。

「先生、あなたの選択こそが肝要なのです。」

その言葉が耳にはいったとき、そのことに気づいた。

 

 

「過程も、結果も、すべては後から見出すものです。

考えてもみてください、霊能力者だとか、超能力者だとか、そういったものが一堂に会するように、都合よく、現れる……それは偶然でしょうか?

どのような物語においても偶然とは必然のように筋道が建てられるものなのですよ。後付け?そのように主張することはできますが、しかしあらゆることは蝶の羽ばたきと片付けて相違ないことは変わらない。

で、あるならば、あらゆることはどうなってもかまわない。

最終的に先生が選ぶという事実さえあるならば、なにがあってもなくてもかまわない。

そう私は解釈しました。

そこでです、先生。」

 

 

女はやはりつまらなそうな顔で、こちらに視線を戻した。

女はキャニスター付きの椅子に座っている。女の服は白い。女は若いらしい。

女とは、包括的な定義である。それは未成年の女子に対しては「少女」となり、小児の場合は「女の子」や「女児」となる。

つまりなにをいいたいかというと、その女がいったいどういった存在なのかについて、先生は理解していなかった。

 

 

「あなたにとって断るだけの理由がない提案をひとつ、用意しました。

無論、どう扱っていただいても結構です。ただ……

選択していただければ、それで。」

 

 

 

 

午前11時36分16秒、シャーレの先生が微睡から瞼を引き揚げると、ソファに横たわっていたことに気づいた。

からだにはブランケットがかかっていて、腕をついて起き上がると、それはするりと足に落ちた。

机をみると、ずいぶんと片付いている。書類は見慣れないほどにない。

そしてその先に、椅子に座って窓の外を眺めている少女がいた。

彼女はこちらをみて、キャニスターをからりと動かす。

こちらをみたその顔には見覚えがなかった。

 

「君は?」

 

その言葉を受けてだろうか、少女はなにやらつまらなそうな顔を一瞬浮かべて、けれどすぐ、無表情に戻った。

口を開いて、それから数秒して。

 

「私は本日からシャーレに配属された、連邦生徒会のものです。

赤坂ツネといいます。よろしくおねがいします。」

 

そういった。

先生はそれをみた。

 

 

「うん。

知っての通り、シャーレの先生です。

よろしくね。」

 

「ええ。

よろしく、おねがいしますね。」

 

窓の外は青空と街並みが広がっている。

いつものような車と人の行き交う音がしている。

先生もまた、いつものような笑みを浮かべた。




書いた。
だから今から続き書く。
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