ほう、ゲマトリア所属シャーレ裏切り系生徒ですか…… 作:くしゃ
先生が今日の仕事を終えて、オフィスを出てしばらく……
もう日が落ちてしばらく。
部屋は明かりが落とされているから、廊下はなんだか薄暗い。
そんな中を歩いてしばらくして。
食堂の前に差し掛かった先生は、なにやら食欲をそそる香りがしていることに気づいた。
食堂に明かりはないけれど、どうやらキッチンが使われているらしい。
先生が中を覗くと、そこには、鍋の前でいわゆる考える人のポーズをしている生徒がいた。
丸いスツールに尻をのせて、なにを行うでもなく、ただ鍋を見ている……
そばにはどんぶりと、なにやらスープの素らしい小袋がおいてある。
「こんばんは、ツネ。」
そう先生が言葉を発すると、赤坂ツネは数秒ほどしてから、「はい、こんばんは。」といった。
鍋をじっとみたままだった。
「……どうしたの?」
「鍋の火を見ています。
よりいうなら、麺を茹でています。
おなかがすいたので。」
そのとき、彼女は鍋のほうを向いたまま、ハッとした表情になり、こちらに視線を向けた。
「先生、おなかがすいたんですか?」
「う、うん……
ちょっと疲れたからね。」
「なるほど。
こんなこともあろうかと、余分に多めの分量を茹でています。
まさか功を奏するとは思いませんでしたが。」
彼女は鍋に視線を戻して、ポーズを崩した。
そのとき、「むっ!」と声が漏れたのを先生は聞いた。
けれど即座に、彼女は平静を装った声色で、「先生は、しょうゆ味が苦手などありますか。ないようでしたら、そのまま出しますが。」という。
けれど、そこまでいってからも、彼女はポーズを半端に崩したまま、微動だにしない……
そばに置かれた粉末スープに、指を伸ばそうともしていない。
「えっと、ツネ……
私があとはやろうか?」
「いえ。
まったく、問題ありません。
いえ、今は少々問題ありますが、ちょっと、すれば……
しびれもおさまるので。」
そういって、彼女はわずかに身じろぎした。
「むっ……!」
どうやら、まだしびれているらしかった。
けれど、ぷるぷると足を震わせている……
先生は、すっとそばによって、粉末スープをどんぶりにいれ、鍋を持ち菜箸で麺を抑えながら、茹で汁を注いだ。
慣れた手つき、流れるような動きであった。
そして「麺は半分こでいい?」という。
赤坂ツネは不承不承といった声色で、「はい」といった。
わずかに耳が赤らんでいた……
そしてふたりはラーメンを食べた。
ツネは冷蔵庫から、いつも使っているらしいトッピングを分けてくれた。
長ネギ、ミョウガ、大葉を千切りにしたソレは、良い香りがした……
そして、なんだかちょっと小腹が空いたままらしい彼女に、今度なにか付け合わせを用意してあげようと思う先生であった。