転生勇者の三軒隣んちの俺   作:@aozora

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第126話 村人転生者、冒険者ギルドで従魔登録を行う

荷馬車は進む、ミルガルの街の大通りを。カタコト音を立てて進む荷馬車の脇には、大きな狼を従えた少年が一人。

 

「いや~、ケビン君、見事だったね。まさか私も精肉店のご主人にゾイル夫妻を預けるとは思わなかったよ。私の中にも鍛冶工房とは武器武具の工房である、生活鉄器は一段下であると言った意識が刷り込まれていた様だよ、本当に盲点だった」

 

荷馬車の荷台から興奮気味に声を掛けるドレイク村長代理。でも実際問題生活全般においてフレムさんの作る切れる刃物の需要って絶対あると思うんですよね。解体の道具に限らず台所の包丁から縫製の現場まで、前にベネットお婆さんの所にお土産でゾイル工房のハサミをお持ちしたら大絶賛してたもんな~。

それにフレムさんは一流の鍛冶師だからちゃんと仕事がある大きな街にいた方がいいと思うんですよね。マルセル村にお迎えしても良かったんだけど、マルセル村じゃくず鉄すら手に入りませんから。夜の清掃活動だけじゃそんなに沢山集まりませんしね。

 

「そうだね、あんなに素晴らしい剣を打たれる方をマルセル村で燻らせる訳には行かないよね」

フレムさんには基本生活全般の刃物を打って貰って、刀剣類は注文が入り次第って事にして貰えれば他の工房とも軋轢を生まないかと。それに幾ら怪我が治ったからって一カ月以上も荒れた生活をしていたんです、元に戻るには時間が掛るでしょうから。

 

荷馬車は進む、ミルガルの大通りを。次の目的地冒険者ギルドに向かって。

 

「こんにちは、誰かいませんか?」

声を掛けたのは冒険者ギルド建物脇の解体所受付。この時期は魔物の持ち込みも少ない為か解体場職員も皆のんびりとした雰囲気である。

 

「はいよ、なんだい坊主、魔物の持ち込みかい?」

のそのそやって来た職員の一人が訝し気に声を掛ける。

 

「ううん、今日は友達の従魔登録の付き添い。登録主はこっちのケイトで、魔物はこの狼」

 

「おお、結構立派なウルフじゃないか。ウルフ系を従魔にするテイマーは多いからな。お嬢ちゃんは今年テイマーになったばかりなのかい?」

 

「違うよ、僕たちこれから授けの儀に行くんだ。この狼はミルガルの街に来る途中で知り合ったんだよ。ケイトに凄く懐いてるんだ」

 

「ほ~、だったらお嬢ちゃんはテイマー系のスキルに目覚めたのかもしれないな。

どれ、従魔にするには街中で暴れないかどうかの試験がある。これは街中で従魔が人に危害を加えた場合、従えてる主人の責任になるって決まりがあるからだ。

それで試験の内容だが簡単な目視検査と行動検査になる。目視検査は職員の目から見てその従魔がきちんと従っているかどうかを見るものだ。

まぁその点については全く問題ないだろう。

行動検査は従魔が主人の命令を聞くかどうかの検査だな。ケイトちゃんって言ったか?いくつか簡単な命令をしてみて貰えるかな?」

 

「ん。」

 

職員さんの言葉にコクリと頷くケイト、彼女はブラッキーに目を合わせると指示を出し始めるのでした。

 

「ブラッキー、立て」

“ガサッ”

 

「ブラッキー、お座り」

“バサッ”

 

「ブラッキー、私の周りを三回廻る」

“タッタッタッタッタッタッタッタッ”

 

「ブラッキー、跳ねる」

“ピョンッ”

 

「ブラッキー、空を飛ぶ」

“ピタッ”

 

「ブラッキー、空を飛ぶ」

“・・・クウン”

 

「・・・ブラッキー、言う事を聞かない。従魔に成れない」

 

「「「イヤイヤイヤ、ウルフは空を飛べないから、ブラッキー悪くないから」」」

その場にいた全員からツッコミが入る中、一人小首を傾げるケイトちゃん。

ブラッキーはと言えば俺の方を向いて、“あの、俺どうしたらいいんすか?空なんて飛べないんすけど”と非常に困った顔をなさっておられます。

 

「あ、うん。非常によく訓練されている様でなによりです。それとウルフ種は空を飛べないから、ブラッキー君を責めないであげてね。登録には銀貨一枚が掛かるから、ちゃんと用意しておいてね。上の受付カウンターにこの書類を持って行ったら鑑札をくれるから」

 

そう言い渡してくれた書類には、名前ブラッキー・種族フォレストウルフと記入されていた。

「あの、ブラッキーってフォレストウルフなんですか?」

俺はキョトンとした顔をしながら職員さんに聞いてみた。

 

「あぁ、別に俺は鑑定が使える訳じゃないけどね。グラスウルフはもう少し足腰が太い特徴が有るんだ。おそらくこれは生活環境の違いだと思うんだが、グラスウルフは草原地帯を疾走するのに比べフォレストウルフは木々の合間を縫うように進む。そうした事からより俊敏に動けるように進化したんじゃないのかな?」

 

なるほど、確かにブー太郎の所にいるグラスウルフたちに比べブラッキーは細身で足もシュッとしている。これは森や林で狩りを行うものの特徴なのか、納得。

 

「それでもこの大きさのウルフは街中では怖がられるからな、なるべく主人の傍にいさせるようにするんだぞ。問題を起こした従魔は殺処分されるからな、十分に気を付けるんだぞ」

 

とても親切な職員さんに良く礼を言い、俺たちは早速冒険者ギルド受付カウンターへと向かうのでした。

 

―――――――――――――

 

「所でケビン君、先程解体所職員さんはああ言っていたけど、冒険者ギルドに着くまで誰もブラッキーの事を気にしていなかったのはどういうことなのかな?」

 

解体所受付を後にした俺に質問をしてきたドレイク村長代理、なぜか顔を引き攣らせておいでですが一体何があったんでしょうか。

まぁ聞かれれば答えますけどね。

 

「それはこの風呂敷のお陰ですね。」

そう言い俺が指差したのはブラッキーの首に巻かれたスカーフ状の風呂敷。

「これは路傍の石計画第二弾“目立たない風呂敷”です。

作り方は例の聖水スカーフと同じですね。素材は闇属性マシマシ魔力水とスライム溶液と紺色のインク。黒ばっかりじゃ面白くないと思ってちょっと変えてみました。

効果は見ての通り、目立たなくなるんです。そこにいるって事は分かるんですけど意識しないと気に留めないんです。

さっきの解体所職員さんも従魔の試験をするってなる迄ブラッキーを気にしてなかったじゃないですか、そう言う事です。

突然現れるんじゃなくただあまり気に留められない程度、この塩梅が難しいんですよ。まだまだ試行錯誤の段階なんですけどね。

ザルバさんの言う貴族の余計なゴタゴタに巻き込まれさせたくないって要望を叶えるには、絶対に必要な装備なんですよ」

 

俺の言葉に目を見開いて感謝の礼をするザルバさん。でもそんなに気にしないでもいいですからね、路傍の石計画は自分自身の為でもあるんで。備えあれば憂いなし、人生何が起きるのか分からない。この世界、過剰なまでの備えをしておかないと死んじゃうって事は、夜の草原であの化け物が教えてくれたからな。

貴族恐い、金持ち怖い、魔物恐い。世間は怖いものだらけ。あ~、早くマルセル村に帰りたい。魂の揺り籠、マイベストプレイス、それがマルセル村。

寒空に浮かぶ雲を眺め一人黄昏る、ケビン少年なのでありました。

 

「ブラッキーはザルバさんと一緒に荷馬車で待っててね、すぐに帰って来るから。荷台に乗って横になっててもいいから」

”ウオンッ”

 

「それじゃ行きましょうか」

俺はブラッキーを荷馬車に残し、ケイトとドレイク村長代理を連れて冒険者ギルド受付カウンターに向かう事にしました。なんやかんやでテイマーは目立つんですよね、街中で見る事ってほとんどないですし、と言うか見た事ないですし。

今まで見た事のあるテイマーさんって養蜂家のジニーさんとその息子さん(兄)くらい。領都みたいな大きな街に行けば別でしょうが、ミルガルの街くらいだとあまりいない様子。あの“ブラックウルフの尻尾亭”ですら会わなかったもんな~、やっぱり少ないんだろうな~。

領都には従魔専門のお店があるって宿のご主人が言ってたし、他のテイマーさんに会うのはそれまでお預けですかね。

 

建物二階にある冒険者ギルドの受付は、相変わらず多くの冒険者が(たむろ)しています。この時期は魔物討伐の仕事も少ないし、この人たちってどうやって生活してるんだろうか。

自由人と言えば聞こえはいいけど要は根無し草、吹けば飛ぶような人生、ハイリスクローリターン。子供たちが憧れる冒険者って一体・・・。

 

「すみません、解体場受付で従魔の審査を受けて来たんですが、登録をお願いします」

俺達マルセル村一行、余計なものには目もくれず真っ直ぐ六番受付窓口のお兄さんの元へ向かいます。

 

「ん?従魔登録か。ほう、フォレストウルフか、中々良い従魔を手に入れたじゃないか。ウルフ種は人気だからな、底辺冒険者に絡まれない様に気を付けろよ。

それで登録主はそっちのお嬢ちゃんか、肝心の従魔はどうした?」

 

「はい、冒険者の皆さんを刺激しない様に荷馬車に預けて来ました」

 

「ほう、君たちは若いのに中々分かってるじゃないか。俺の所に真っ直ぐ来たって事は、下で聞いて来たのか?」

 

「いえ、半年ほど前に僕が従魔登録したもので。今回は僕と後ろのケイトが授けの儀を受ける為に領都に向かう所だったんですが、途中で幸運な出会いがありまして。

ところで四番さんは未だご健在だったんですね」

 

「半年、あぁ、思い出したよ。あの時の爺さんは元気してるか?あれは中々良い判断だったと思うぞ。それと奴だが、あれからも度々やらかしてるからな。

俺の見た所どうやらギルマスに上手い事利用されてるみたいだけどな、他所だったらとっくに首だろうさ」

 

「ハハハ、やっぱり冒険者ギルドっておっかない所なんですね。これ、登録料の銀貨です。この前の時は買取価格から天引きしてくれたんですね、気が付きませんでした」

 

「まぁな、その辺は暗黙の了解って奴さ。ほら、鑑札だ。細かい説明は不要だな」

 

「はい、ありがとうございます。それではこれで」

 

「あぁ、これから領都か。この時期は魔物が少ないとはいえ何が起きるのかは分からない、十分気を付けて行けよ」

 

俺たちは六番受付のお兄さんに礼をし、そそくさと冒険者ギルドを後にするのでした。

 

「ねぇケビン君、やけに急いで冒険者ギルドの受け付けを済ませて出て来ちゃったけど、何か理由があったのかい?」

俺が六番受付で従魔登録を済ませた後、急ぎ受付ホールを後にした事に、ドレイク村長代理が首を傾げ聞いて来る。

 

「えっと、ドレイク村長代理は行商人時代に護衛として冒険者を雇ったりしてなかったんですか?」

 

「いや、雇っていたよ?もっとも私自身元冒険者だったし、行商人として独立する前に信用のおける冒険者の選定は済ませておいたからね、シンディーの罠にはまるまではその人たちに専属で付いて貰っていたんだ。無論間に冒険者ギルドを挟んでいたから彼らの実績にはなっているけどね、それがどうかしたのかい?」

ドレイク村長代理は昔から計画的に物事を進める人物だったらしい。危険要素は最初から排除する、それなら気が付かないのも無理もない。

 

「あぁ、それじゃ分からないかもしれませんね。冒険者ギルドには所謂ゴロツキと変わらない底辺冒険者も大勢いるんですよ、彼らは暇を持て余しては冒険者ギルドに現れる獲物を物色している。

特にこの時期は討伐の仕事もほとんどないですからね、力のある冒険者なら温かい南へ移動したりダンジョン都市と呼ばれる様な場所に移動したりしますが、燻っている連中はそんな力も度胸も無い。

そんな所に見るからに田舎者の子供連れがやって来たらどうします?

“領都に行くんだって、俺たちが護衛してやるよ”とか言ってニヘラニヘラやって来るに決まってる。俺たちはどう見ても美味しい獲物ですからね。

だからなるべく早くこの場を離れる必要があった。

荷馬車に行けばザルバさんやブラッキーがいますから、彼らも強く出れませんしね」

 

「それだったら受付ロビーにブラッキーを連れて来た方が騒動にならなかったんじゃないの?」

 

「う~ん、それがそうでもないんですよ。彼ら基本暇ですから、人気のウルフ種がいれば絶対に絡んで来る。触らせてくれなんてのは可愛いもので、その従魔を寄越せとか、魔物を街に入れるなとか言って切り掛かって来る馬鹿とか。

冒険者ギルドは実力主義な所がありますからその程度の厄介事は自分で何とかしろって感じで不干渉を貫くと思うんですよ、そこで思わぬ実力者でも見つかれば儲けものくらいのつもりでね。特にここのギルドマスターはその傾向が強いですから。

鑑札さえ貰ったんならすぐにでも逃げるのが一番なんです。

厄介事が黙っててもやって来る上に実力で排除すれば更なる厄介事を押し付けて来る、本当に冒険者って怖いですよね」

 

冒険者ギルドの外階段を下りながら俺が説明すると、呆れた様な顔をしながらも納得するドレイク村長代理。

はい、こんなおっかない所はさっさとオサラバして次の目的地に向かいましょう。

 

マルセル村一行の荷馬車は走り出す、荷台にドレイク村長代理とブラッキーを乗せて、次の目的地バストール商会に向けて。




本日二話目です。
いい加減衣替えしないと。
いまだコートがぶら下がってるのはまずいよな~。
それとホットカーペット、完全に絨毯替わり。
ハウスダストヤベ~。

いってらっしゃい。
by@aozora
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