転生勇者の三軒隣んちの俺   作:@aozora

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第133話 村人転生者、領都に向け移動する (2)

カタコト音のする荷馬車に揺られ、マルセル村一行は一路領都に向けて旅を続ける。授けの儀を受ける為に領都に向かう少年ケビンとケイトは、暇潰しに荷馬車に乗り込んで来た司祭様のお話に目を輝かせる。マルセル村での生活では知り得ない様々な知識は、彼らの知的欲求を強く刺激する。

 

「へ~、神様にも色んな方々がおられるんですね。それと加護にはそんな役割があったんだ~。シスター様に加護のお話を聞いた時は、スキルの一種なのかなと思ったんだけどちょっと違うんですね」

 

「あ~、そう言われるとそんな側面もあるよな。所謂パッシブ系スキルと呼ばれる物に近い所はあるかな。スキルについてはボビーの所でも軽く教わっていると思うが、基本的に自分が発動させようと思って使える様になるアクティブ系スキルと、自分の意思とは関係なく常に発動し続けるパッシブ系スキルと言うものがある。

このスキルって言うのも面白くてな、大概がその持ち主にとって有用なものであることが多いんだが、中には“誘因”の様に魔物を呼び寄せたり“確率変動”みたいにハイリスクなスキルも存在する。

例えばテイマーのスキルに“魔物の友”ってスキルがある。これがパッシブ系スキルでな、このスキルを授かったテイマーは通常一体から二体しかテイム出来ない魔物を複数体テイム出来るって言う一見もの凄い効果を持ったスキルなんだけどな、テイム出来る魔物が低級魔物に限られちまうって欠点があるんだよ。聞いた話だとグラスウルフやホーンラビットもテイム出来ないんじゃなかったかな?

冒険者ギルドではこうしたスキルの事を“外れスキル”とか呼んでたっけな。

まぁ“誘因”辺りはアクティブ系スキルだから使い様によっては魔物討伐の助けになるんだが、調子に乗って壊滅したパーティーの話なんかも聞くしな、どちらかと言えば敬遠されるスキルではあるかな。

他にもパーティー全体を補助する代わりに自分の力が減少する様なスキルとか、それこそ千差万別なんだよな。王都辺りじゃそう言ったスキルや職業の情報を集め研究する機関もあるらしいからな。

 

そうそう、ついでにこれから向かう領都で行う授けの儀について話しておこうか。

授けの儀ってのはまず初めに領都の教会に行って聖堂で女神様の像にお祈りをし、司祭による祝詞(のりと)を行ってもらう。不思議なものでただ教会でお祈りをしても職業は得られない、十二歳を迎え尚且つ司祭による祝詞を教会で行う、この条件を満たして初めて職業を得る事が出来るんだよ。

で、これに調子づいて教会がデカい態度で以ってえばり散らしていると天使様が制裁を加えるって言うね、昔それで教会組織が大粛清を受けた事があるんだよ。“女神様のご意思を捻じ曲げる者には死の制裁を”って奴だな。

以来この授けの儀に関してだけはどんな俗物司祭も厳粛に行う様になったって訳さ。教会側が授けの儀を受けた子供たちにスキルについての用紙を発行するだろう?あの情報が余所に漏れないのも、この大粛清のお陰って言われてるんだよ。

授けの儀の結果上級職と呼ばれるものを授かった子供が集められて学園に通わされるのもギリギリの辺りでね、これが強制的に徴兵とかになったら女神様のお怒りが今度は王家や貴族に向いちまう。

これは大粛清の際に聖女様方に直接女神様が降ろされた神託で明らかになっている警告だな。

この警告はあの軍事国家バルカン帝国ですらきちんと守っているからな。その昔この警告を無視して滅ぼされた国があったんだが、その地は滅亡後数百年に渡り魔物跋扈する不毛の地になったらしい。現在は大魔境と呼ばれる地域に飲み込まれちまったからどうなってるのかは分からないけどな。」

 

・・・女神様コエ~。そりゃ“あなた様”が職業は人々に与えた救済であるって言ってたけどさ、欲深な人間、特に普人族に切れちゃったのかね~。

“文明発展の為に<補助神>まで用意したってのに何やってるんじゃボケ~!!”って奴なんだろうか。人々の争う事態には関与せず、さりとて自ら用意したシステムの誤用には容赦しない。まさに神の視点、俺、大丈夫だよね?

光属性魔力マシマシウォーターの件は他所には漏らしませんのでどうかご容赦を。

背中に冷たいものを感じるケビン少年なのでありました。

 

「そんでこの授けの儀が終わった後に行われるのが大鑑定大会だな、この時の鑑定結果を持って行かないとどんなギルドでも登録する事は出来ないし街で住民証を発行する事も出来ない。まぁ抜け道が無い訳じゃないんだけどな、例えば村の住民はそんなものいらないし、そんな村人が街の住民と結婚すればそのまま街民証に記載される。

無論その際は村民証は必要だけどな。

これは街の食糧事情を支える村に対する救済措置と言った側面もあるんだが、犯罪の温床にもなりかねないと言った危うさもある。だから村民証の発行元である村長の責任は重いとも言えるしその村民証が悪用された場合村長も責めを負わされる事があるんだよ。

で、オーランド王国では“十二歳になったら授けの儀を受けなければならないし受けさせなければならない”と言う法があるから、各地域の大きな教会にその年齢の子供たちが集まって来るんだが、授けの儀だけだったらそれこそエルセルの教会でも出来るんだわ。要は教会の女神像の前で司祭が授けの儀の祝詞を唱えるだけだからな。

じゃぁなんでわざわざ領都まで行かないといけないのか、ここからは大人の事情としか言えないんだが、先ずは教会が発行する鑑定書、これを出せる人材がそれほど多くない。大体鑑定が行える人間自体貴重だからな。故に教会が出す鑑定書には信用があるとも言えるんだけどな。

更に言えばその人物を細かく見る事の出来る人物詳細鑑定を行えるものが少ない。

彼らは長年人物鑑定を行ってスキルが成長した者達だからな、当然貴重って訳だ。

言っとくが俺は出来ないからな?そんなスキル持ってないしな」

 

うん、司祭様超ぶっちゃける。えっとこれって普通の平民が知っていていい事なんだろうか?他所で話さなければ問題ない感じかな?不敬罪とか異端者認定とか怖いんだけど?御者台にいるザルバさん、顔が引き攣りまくってるんだけど?

やっぱり不味いんだろうな~。

 

「でだ、授けの儀を受けた子供たちを俺みたいな司祭やシスターが鑑定の為に整列させるんだが、その際に魔力量が突出した子供たちを選出して詳細鑑定を行う事の出来る鑑定士の下に送る事になってるんだよ。

これは“魔力量の多い子供の中からの方が希少職が出易い”って言う経験則から来る判断だな。実際聖騎士や賢者、聖女と言った希少職は皆魔力豊富だからな。

中には魔力豊富な魔道具職人と言った場合もあるが、そうした者も優秀な魔道具職人になったと言うし、“魔力量の多い者は有望株”と言うのが教会関係者の常識になってるな。

ところでケビン君とケイトちゃんは鑑定と言ったものについてどれくらい知っているかな?」

 

えっとそうですね。名前と年齢、職業とスキル、魔法適性が分かるってお父さんから聞きました。

 

「うん、まぁそれが一般的な人物鑑定の結果だな。その際偽名を使っていた者やスラムの住民が真実の名前を知るなんてことがあるが、その人物の基本的な情報が分かるのがこの人物鑑定なんだよ。

これは鑑定のスキルを持つ者、例えば商人や学者なんかでも同様の結果を出す事が出来る。

で、ここからが教会の売りになるんだが、教会にはこの人物鑑定を長年行う事で更に上級のスキル、人物詳細鑑定のスキルに目覚める者がいる。これは大体十年くらい鑑定に明け暮れると目覚めると言われているな、俺も詳しくは知らないんだが。

この詳細鑑定になると先ほどの情報に加えてその人物の出身やら身分、加護や称号と言ったものまで見る事が出来る様になる。これは聞いた話だが“真眼”と言うスキルだとその人物の来歴から罪の有無、それまでの人生の全てを見通す事が出来るらしい。

このスキルはボルガ教国の聖女様がお持ちになっているって話だな。

俺も司祭になるにあたりこの詳細鑑定を受けてな、そこでお酒の神様の加護を受けている事が発覚したって訳よ。

加護は神様のご意思、お陰で大手を振って飲みに行けるって言うね。しかも店側も加護持ちの来店は縁起がいいってんで大歓迎、俺の人生ツイてるわ~。

まぁ称号の所に“稀代の遊び人”ってのがあって周りからは渋い顔をされたけどな、教皇様は“流石メルビン”と言って大爆笑されてたらしいぞ」

 

「ゲッ、何その称号って。その人物を表す二つ名みたいなもの?大きな出来事を乗り越えたり、長年取り組んでる努力が認められたりすると付くんですか。例えばどんなものがあるんですか?」

 

「ん~、そうだな。それこそ勇者物語に登場する剣の勇者様は“ドラゴンの盟友”や“救国の英雄”って称号があったって言う記録が残っているぞ。ただいい物ばかりじゃ無くてな、“呪われた姫”みたいなあまり印象の良くない称号もあったりするんだよ。犯罪者なんかは“殺人鬼”や“殺戮者”なんて物騒な称号が付いてたりするらしい。

教会ではこの称号の事を上げて“女神様はいつでも人々を見守って下さっている”なんて言って説法を行っているんだけどな。」

 

「へ~、女神様はいつでも見守って下さっていて、その証拠を残して下さっているんですね~」(冷や汗)

 

やっべ~、何だよその称号って、そんなの聞いてないよ~!!

いや、変な称号だけならいいよ?“真なる勇者病<仮性>患者”とか。ヤバい称号の心当たりがありまくりなんですけど・・・。

ポーションビッグワームとか、生活魔法の開発とか、スキルなしでのポーション作成とか、草原で化け物退治もしちゃったしな~。もしかしたら呪いの森の浄化も何か付いちゃったりするのかな~。(遠い目)

 

幸い一般的な鑑定では称号や加護は分からないって話だし、魔力を抑えてれば詳細鑑定には送られないって事が分かっただけでも僥倖。俺の読み通り司祭様やシスター様たち複数の方々が魔力の測定が出来るご様子、これって完全にそう言う技術でしょう。魔力操作の一環?目に魔力を集中して相手を観察する訓練を繰り返してるって事ですね、分かります。

危ない危ない、この世は危険が一杯です事。メルビン司祭様のお話はとっても為になるな~。(乾いた笑い)

 

「でだ、ここからは俺の考察なんだがな、この称号ってのは神様たちが俺たち人間を観察する為の目印なんじゃないかって思ってるんだよ。つまり鍛冶仕事を頑張ってそれなりの偉業、例えば魔剣を打ち上げたりしたとするだろう?そうするとその人物には“魔剣を作りし者”みたいな称号が付いたりする。そうすると鍛冶の神様の目に留まったりする訳だ。そんでそんな人物たちの中からこれはと思う者に加護を授ける。

つまりお酒の神様に加護を頂いた俺は遊び人の中の遊び人、遊び人の最高峰って訳だな」(どや顔)

 

おぉ~、ここまで開き直れるって凄い。ミルガルの街の人が司祭様を好きになる訳だわ、気持ちいい遊び方をしてるんだろうな~。一晩で金貨三枚使っちゃう様な御方だけど。ボビー師匠が“あいつはおかしい”って言ってたもんな~。

「えっとケイトさんは何故そこで俺の顔を見る?」

 

「ん。」

「俺が女遊びに走るってそんな訳ないじゃん。都会の女性は怖いのよ?そんな女性相手に楽しく遊べるのは、メルビン司祭様くらいの猛者だけよ?」

 

“ジ~~~~~~ッ”

「いやマジだって、それに俺女性受けしないから、リトルオーガだから」

 

何故か浮気した訳でもないのに冷たい目で見られるケビン少年。そんな彼の様子に、“ん?もしかしてケビン君とケイトちゃんは青春しちゃってるって感じ?いいねいいね、アオハルだね~♪”と気を良くする司祭様。

 

荷馬車は進む、カタコト音を立てて一路領都グルセリアに向かって。

少年ケビンは天高く浮かぶ薄雲を見詰め、“なんかとっても理不尽”と呟くのでした。




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