転生勇者の三軒隣んちの俺   作:@aozora

145 / 860
第145話 村人転生者、授けの儀を受ける (2)

“コトッ”

テーブルに差し出された湯呑、目にも鮮やかな緑色の液体を湛えたそれは、温かな湯気を立て若葉の様な爽やかな香りを鼻腔に運ぶ。

 

“ズズズズズズッ”

握る手にずっしりとした存在感を示す湯呑から音を立てながらいただくそれは、もう二度と味わう事の無いと思っていた在りし日の記憶の彼方の飲み物。

 

「これはあなたが住む中央大陸より遥か東、東方の島国に住み暮らす鬼人族と呼ばれる者達が好んで飲まれる、若葉を蒸した物を乾燥させて作ったお茶です。どうやらお気に召していただけた様で良かったです」

 

東方の島国・・・何と言うパワーワード。なんか在りし日の食文化って言うと皆東方の島国由来って事で片づける風潮がある様な無い様な。これって下手をすると味噌や醤油、着物や畳なんかも存在するんだろうか?

父ヘンリーも斬馬刀なんて馬鹿デカイ片刃の刃物を持ってるし、俺が持ってる“黒鴉”も片刃の直刀。剣じゃなくって刀なんだよな~。今まであまり考えた事も無かったけど、刀とか風呂敷とかたま~に前世知識風のものが混じって来るんだよね。

領都の“小鳥の巣箱亭”やテンプレ的“村長の家”は完全に異世界転生者の仕業だと思うんだけどね、これが偶然かどうかは分からないけど、この湯呑の形状やどう見ても“緑茶”って感じのこの飲み物、そして音を立てて飲んでも誰もツッコミを入れない飲み方の作法。何だこの世界?って思わなくもないわ~。

 

まぁ現実逃避はこの辺にして現在どう言う状況かと言いますと、あの後部屋を飛び出した“あなた様”に放置プレーを喰らうこと暫し、多くの関係者の方々(皆さん美男美女であられました)に連行され、“あなた様”の上司の更に上、統括本部長的な御方の下に連れていかれて現在って感じです。

しかしここの建物って意外に普通、皆様お姿が人型で特に背中に大きな羽も背負っておられないんですよね。移動中にお隣に控えていた御方にさり気なく聞いてみたら“オフィスワークの時は邪魔だから仕舞ってる”って教えてくださいました。

・・・あれってどうやら収納可能な様です。

ならどうして地上勤務の時は出されているんですかとお伺いしたところ、十全に力を発揮するには必要な器官であるらしいです。今の状態だと能力が半減するとか、地上勤務は何があるのか分からない為覆面調査をするとき以外は大体出しているとの事。

“それに仕舞いっぱなしだとどうも窮屈で肩が凝るのよ”と言うのはお話を聞かせて下さった御方様のお言葉です。

 

「さて、現状あなたがどうしてこの地に訪れてしまったのかが分かりません。それとあなたのお話では授けの儀を受けている最中での出来事であるとか。その事を含め検討する為に一度あなたのステータスを見させてもらってもよろしいですか?」

 

そう言いニッコリと微笑む統括本部長(仮)。本部長のお声は頭にキンキン来ないので大変聞き心地がいいです。俺はコクコク頷き本部長にすべてをお任せします。

すると本部長は俺に向かい手を翳し“管理者権限、ステータスオープン、モニター表示”と仰られました。

 

“ブオンッ”

突然俺の前に現れる巨大ステータス画面。スゲ~、なんかアニメでこんなの見た事がある。あれは仮想現実のゲーム世界に閉じ込められた話とかゲーム設定で異世界転生とか、そんな奴じゃなかったっけ?

本部長がサッと腕を振るうとそのステータス画面が横にずれ、部屋の中に集まった皆の目に見やすい位置で固定されました。

 

名前 ケビン

年齢 十二歳

種族 普人族

職業 無し

 

スキル

棒 自然児

未収得スキル

無音行動 調薬術 気配操作 気配察知 生存術 錬金術(怪) 魔物の雇用主 魔道具作成 解体 暗視 刀術 体術 身体強化 回復力強化 防御力強化 思考加速 索敵 俊足

魔力支配 

(魔力操作 魔力制御 魔力回復 魔力障壁 魔力視 魔力耐性 魔力枯渇耐性 魔力感知 魔力状態異常耐性 魔力隠蔽 無詠唱 を統合)

 

魔法適性 無し

 

称号 

魔物の親友 食のチャレンジャー 通貨を創りし者 新薬を創りし者 生活魔法を創りし者 魔力を理解せし者 小さな賢者 大森林の住人 導く者 進化を促せし者 呪いを解きし者 厄災の討伐者 発明家 魔物を飼育せし者 辺境の隠者 森の聖者 闇に潜む者 交渉人 魂の救済者 干し肉の勇者

 

加護

未収得加護(申請中)

調薬神の加護 調教神の加護 魔法神の加護 食料神の加護 商業神の加護 

 

「・・・・なにこれ?

何か凄い一杯あるんだけど。それとこの未収得って何?」

 

「これは中々凄いですね。皆さん何を呆けているんです?しっかりしてください。

それとこちらの未収得スキルと言うのは既に自力で習得なさっている能力ですね。特殊条件を持った者、例えば勇者や聖女の予定者などは幼少期からの訓練でもスキルを習得する事が出来ますが、それ以外の者は条件を満たしていてもそれがスキルとして反映する事はありません。それらは授けの儀により職業を授かった後反映されるか、十五歳の成人年齢を過ぎてから反映される仕組みとなっています。

これは人族に限った制約ですね、制御し切れない力は余計な諍いを生みますので。

加護に関しても同様の理由です。ただ加護は特殊条件を満たした勇者や聖女を除き一人につき一つ迄と言った制約があります。ですのでこれらすべての加護を与えると言った事は出来ません。

ですが一般の者でこれほど多くの加護を申請されている者等見た事がありません。

それにこの称号の数々、あなたはこれまで一体何をされてきたんですか?」

 

「いや、何と言われましても辺境で普通に暮らして来たとしか」

 

“あっ、この<森の聖者>の称号、君があの呪いの森を清浄なる森に変えてくれたのかい?いや~助かったよ、あの辺は私の管轄でね、あと少しでアンデッドモンスターのスタンピードを起こすところだったんだよ。

そうなったらあの森はフィールド型ダンジョンに変貌してしまうからね、対処が厄介になる所だったんだ。それと多くの魂を救ってくれたみたいだね、彼らに代わって礼を言うよ、ありがとう”

 

お声を掛けて下さったのはいかにも出来る男と言った風のハイスペックイケメン様。礼の言葉は既に本人たちから貰ってますんで、お気持ちだけ頂いておきます。

 

“えっ、あなた生活魔法をどれだけ開発してるのよ。<ミスト>に<破砕>に<ドラム式洗濯術>?<魔力マシマシウォーター>って何?<清浄の霧>って完全に大規模浄化魔法じゃない、それが何で生活魔法なのよ、意味解らない”

 

“おいおいおい、<新薬を作りし者>って、<ポーションビッグワーム>?これって完全に劣化版エリクサーじゃないか。大賢者が生涯をとして作り出した薬と同等って、お前まだ十二歳だよな?どれだけなんだよ”

 

“<厄災の討伐者>・・・呪いの森の暗黒魔導士を倒し賢者の魂を開放。これは偉業、勇者でも無理”

 

「えっと、色々言われていますが称号って皆さんが付けられているんじゃないんですか?なんか初めて知りましたって言った感じの反応なんですが」

 

「あぁ、何かこちら側だけで騒いですみません。それと称号ですが、これは自動付与と手動付与の二つがあります。大概はその人物の功績に合わせて自動的に付与されます。簡単に言えば目印、付箋の様なものでしょうか。

私たちは管理者権限によりその称号に触れる事でその人物がどの様な業績を積んだのかを知る事が出来ます。これは人間と言う種族を知る為に作られたシステムですね。

例えばこの<闇に潜む者>、なるほど、あなたは人知れず村に迫る盗賊の脅威から村を守っていたのですね。ですが何でこんな称号に?あぁ、このエルセルの街で行った偽魔物計画の影響ですか。なんですかこの濃厚な闇属性魔力の塊は、しかも魔獣の襲撃の偽装とか、金属類の回収とか。結果称号がこの様なものに。

それとこの<小さな賢者>ですが、・・・!?

すみません、その右腕に嵌められてる腕輪は?」

 

「あぁ、これは闇属性魔力回収装置ですね。そちらにおられるお方様に試験的にはめていてくれと頼まれまして。現在その検証実験を行っている所です。

本来なら後二~三十年後くらいに出る結果を見て、今後の魔王選定に関する方針が決まる所だったんです」

自分の右腕に目をやりしげしげと腕輪を眺める。職業<魔王>の真実、あれは衝撃的だったよな~。

 

「あぁ、あなただったんですか、魔力回収装置を広く配りこまめに闇属性魔力を回収する事で全体のバランスを取ると言う画期的な提案を行った人間と言うのは。今後問題が発生するとしても魔王のような存在を作り出す弊害よりも遥かに対処し易くなることは明白、会議の場でも皆して唸りを上げたものです。

それでその腕輪を・・・天使の腕輪、森の聖者の称号、神々の加護申請。

なるほど、あなたが彼女の執務室に現れた訳が分かりました。

あなたは偶然にも“神託の聖女”と同じ条件を揃えてしまったのです」

 

「・・・はぁ!?えっ、はぁ!?あの、俺職業持ってないんですけど、しかも聖女様って俺男なんですけど?」

突然の事に混乱する俺氏。神託の聖女?意味が分からない。

 

「まぁ落ち着いて下さい。私もこのような事態が起きるなどと言う事は想像だにしていませんでした。これは今後の為に対応策を練らなければなりません。

分かり易く説明しますと、“神託の聖女”と呼ばれる者はいくつかの条件によってその神託を受け取る事が出来るのです。ただお声を聞くと言うだけならばスキルの<神託>を発現した聖女であれば聞く事が出来ます。ただしこちらに来て直接お声を聞く場合は“聖職の職業”と“神具”、それと“神の加護”が必要となります。

例えば神官等の職業で何らかの神の加護を持った者が、神器や神具と呼ばれる物を身に着け女神様の像の前で祈りを捧げ、尚且つこちらの世界との繋がりを持つ。

以上の条件を揃える事が出来れば、たとえ聖女でなくとも、それこそ男性であってもこちらの世界に来る事が出来るのです。

あなたは職業こそ持ってはいませんでしたが称号の“森の聖者”と“魂の救済者”がその肩代わりをする事となった、そしてその天使の腕輪、それは所謂“神具”に分類される物です。加護に関しては言わずもがな、発現こそしていませんが多くの申請がなされています。そして“授けの儀”により女神像の前でこちらの世界と繋がった。

出現場所が彼女の執務室であったのは、正式に呼んだ訳ではない為出現場所が設定されていなかったからでしょう。その天使の腕輪を与えた者としての繋がりが、彼女の執務室へと導いた。

ケビン君と言いましたか、これはシステム上の穴のような現象でした、責任者として謝罪いたします」

 

そう言い頭を下げる本部長(仮)。そっか~、バグが発生しちゃったのか~、それなら仕方がないか~。

室内に漂う何とも言えない空気に、乾いた笑いしか出ないケビン少年なのでありました。




本日一話目です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。