転生勇者の三軒隣んちの俺   作:@aozora

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第150話 村人転生者、村長宅に伺う

「あぁ、シンディー様のお宅かい?なんだい、あんた方もシンディー様におすがりに来たってやつかい?

シンディー様は人がいいからね~、冒険者ギルドで偉そうな顔をしている他の金級冒険者とは訳が違うから。

あのお方なら色々と相談に乗ってくださるに違いないさね」

 

薬師ギルドでは濃い~御方の演説のお陰で無事見習いの登録を済ませた俺氏、その後問題なくギルドカードを発行していただけました。

何か絡んで来ていた少年も口を開けてポカンとしていたみたいだけど、調薬スキル無しでのポーション作製方法はまだそこ迄知られていないんだろうか?

アレってちょっと面倒臭いけど、コツさえ掴めば誰でもポーションが作れるようになる画期的な方法なんだけどな~。

 

前にミランダさんとハイポーションを作れないかって検討した事があるんだけど、どうにも難しいみたいです。

まずマルセル村周辺だと素材がない。ハイポーションは癒し草ともう一つ、その幹に茨の生えたトガリヤと言う植物の新芽を入れるらしいんだけど、それが無いんですよね。最初話を聞いた時はタラの芽?って思ったもんだよな~。天ぷらにしたら旨いのかな?天ぷら食べたい。大森林にでも行けばあるんだろうか、あそこは危ないから行かないけど。

ミランダさんの話だと魔の森って呼ばれる所には結構あるらしいんだけど、マルセル村のお隣の魔の森ではそんな茨の生えた木なんて見た事がないんだよな。

昔から冒険者ギルドや薬師ギルドで栽培を試みているらしいんだけど、癒し草と同じで上手く行かないんだそうです。

 

お前、畑の元気な癒し草でハイポーション並みのポーションを作ってなかったかって?

ハハハハッ、なんの事かな?ボビー師匠に飲ませてただろうってそれ内緒だから。

緑と黄色のポーション水は?ってそれ第一級秘匿事項だから、マジヤバ案件だから。あいつらいつの間にかポーション水(激ヤバ)迄出せる様になってやがるし。えっ?どれくらいヤバいのか?

うんとね、あいつらってああ見えてポーションビッグワームの親玉みたいな存在なのよ、それが濃縮されたポーション水を創り出したら・・・。

怖くて実験出来ない。何かね、淡く光ってるの、そんな薬見た事無いんだけど?

ジェイク君に鑑定してもらう?無理無理無理、情報はね、何処から漏れるのか分からないんだよ?

即収納の腕輪行き決定です、緊急用に何本か確保してはありますが。

 

まぁ何れにしても無事に薬師ギルド会員になれた訳で、(わたくし)の身分は薬師ギルドが保証してくださるって訳です。

なんと言っても薬師は冒険者と違って制約が少ない。

冒険者の場合、鉄級・銅級冒険者は移動に制約が掛かります。勝手に他領に渡ってはいけないって奴ですね。これは領民も同様で、その地区の長、マルセル村だったらドレイク村長代理の許可証が必要になります。

冒険者は自由民と言う扱いなのでそうした規則がない代わりに、他領への自由な移動は銀級冒険者以上になってからと言う制限が掛けられています。まぁこれは領内の魔物対策と、王都へ人が集中しない為の対策でもあるんですけどね。

 

で、この制約、薬師の場合は正規会員になった段階でクリアなんですね~。その代わり正規会員になる条件が“ポーションを作製出来る事”なんですけどね。

ポーションが作れる人材は王都でも大歓迎、食い詰め者になる心配もないし、犯罪者になる心配も少ない。その点冒険者はね~、つまりはそう言う事なんでしょう。

 

それに何か緊急事態が発生した場合でも後方支援要員ですからね、薬師の仕事は薬の作製ですから~。冒険者様は強制召集、身体を張ったお仕事が待っております。

身分、制約、緊急時の対応。薬師最高~!!

 

まぁ俺の事はいいとして、こっちの要件が終わったらドレイク村長代理のお付き合い。現マルセル村村長シンディー・マルセル様にご挨拶に伺わなければなりません。

一応定期的にドレイク村長代理が報告書を上げてはいるらしいんですけど、基本放置らしくてですね~。あの御方、故郷の村の運営に一切興味が無いからな~。まぁ直接お話した事が無いのでどんな人物かはよく知らないんですけど。

 

自分の村の村長に対してそれでいいのかって思うでしょ?でも仕方無いやん、俺殆んど見た事も無いんだもん。

この御方、マイケル君が五歳になったくらいで“民が私の助けを待っているの!”とか言って村を飛び出しちゃった御仁だからな~。

でもさっきのおば様のお話ぶりだと領都での評判は上々なご様子、人当たりは良いのかな?

 

「・・・ねぇ、ドレイク村長代理。目の前にお貴族様の御屋敷があるんだけど、俺らが向かってたのってシンディー村長のお宅だよね」

 

「あぁ、間違いないよ。ここがマルセル現村長シンディー・マルセルのお宅だね。私もここに来るのは五年ぶりになるんだけど、本当に立派だよね~」

 

高い塀に囲まれ広い庭を有するそこは、どう見てもお貴族様か豪商の御屋敷。

「えっと、金級冒険者ってそんなに儲かるの?」

 

「う~ん、人によるかな?シンディー村長はかなり活発的に動かれる方だからね。グロリア辺境伯領で起きた魔物暴走、所謂スタンピードを止めたり大型魔獣を討伐したり、かと思えばゴブリン討伐に赴いたりと、仕事を選ばず人々の為に駆け付けるって事で一部からは絶大な人気を誇っているんだよ。

そんなシンディー村長を慕う冒険者や後援者なんかが集まって、今じゃその辺の貴族よりも発言力があるんじゃないかな?

私は冒険者の事はそこ迄詳しくないけど、いつ白金級冒険者になってもおかしくないって言われているんだよ。」

 

「はっ?シンディー村長ってそんなに凄かったんすか?やってる事が勇者様のそれなんですけど?」

 

「あ、うん、彼女は私と一緒になる前から既に有名人だったからね。“血塗れのシンディー”、その名を聞くだけで荒くれ冒険者が大人しくなるって言われた程さ。

近頃は“守護者シンディー”って呼ばれてるんじゃなかったかな?大活躍だからね~」

 

「イヤイヤ、そこ迄ご活躍ならとっくに白金級冒険者になれるんじゃないんですか?おかしくないですか?」

 

「う~ん、多分だけどワイバーン討伐をしてないからじゃないかな?前にボビー師匠が言っていたけど白金級冒険者は最低限ワイバーンを狩れないといけないらしい。

このグロリア辺境伯領でワイバーン被害の話はあまり聞かないからね。それにシンディー村長の信条は“多くの民が私の助けを待っている”だから、ランクを上げる為だけにグロリア辺境伯領を離れる事をよしとはしないんだと思うよ。

それにここオーランド王国で頻繁にワイバーンが目撃されるって事もないしね、そうした意味で金級冒険者は一般冒険者の最高峰と呼ばれているんだよ」

 

へ~、白金級冒険者になるには実力や実績だけでなく運の要素も強いんですね。前にボビー師匠がワイバーンの話をしていた事があったからそれなりにいるものだと思ってたけど、よく考えればそんな化物がゴロゴロしていたらこの国が滅んじゃいますもんね。

 

「ケビン君がどうしてもワイバーンを倒したくなったら、フィヨルド山脈に向かうといいよ。十五年ほど前にワイバーン討伐の為に大森林を越えて向かった金級冒険者パーティーがあってね、何とか討伐して来た事があったんだよ。

もっともあのパーティーはほぼ半壊状態で帰って来たけどね。七名で向かって帰り着いたのは三名、その内一人は左腕を失っていたからな~。相当な激戦だったんだろうな~」

 

「やめて、マジやめて。ケビン君は純朴な村の御子様ですからね、マルセル村の薬師兼農家、それがケビン君ですから」

 

「ハハハ、冗談だよ、流石にシンディー村長ですら討伐を諦めた土地に向かえとは言わないよ。ボビー師匠が“大森林は止めておけ、フィヨルド山脈?なんの冗談だ?”って真顔で言う場所だからね」

 

ドレイク村長代理と楽しい?会話を続ける事暫し、シンディー村長の御屋敷の門へと到着です。

 

「ここは金級冒険者シンディー・マルセル様の屋敷です。当屋敷にどう言ったご用件ですか?」

 

御屋敷の門にはキリッとした壮年の門番さんが立っており、不審者の警戒にあたっておられます。

やっぱり人気者は余計な虫も寄って来るのでしょうか?

 

「はい、私はマルセル村村長代理ドレイク・ブラウンと申します。この度村の子供の授けの儀の為に領都へ付き添いとしてやって参りました。本日はマルセル村村長シンディー・マルセル様にご挨拶申し上げる為にお伺いした次第です。

お取り次ぎをお願い致します」

 

そう言い深々と頭を下げるドレイク村長代理。俺も続いて頭を下げます。

まぁ既に離縁済みの他人様、現在は上司と部下の関係ですからね。こうした際の上下関係の確認は大切です。

 

「うむ、暫し待たれよ、直ぐに確認して来るゆえ」

 

そう言い部下らしき者にこの場を任せ確認に走る門番さん。

・・・?

「ねぇ、ドレイク村長代理、こちらの門番さん、マルコお爺さんに似てない?気のせいかな?」

 

「ん?あの、つかぬ事をお伺い致しますが、もしかしてマルセル村出身のカシムさんでいらっしゃいますか?」

 

「ん?確かに私はカシムだが?

・・・えっ、嘘、村長代理ドレイク・ブラウンってあの村長?でっぷりと太っていていつも上から目線で胡散臭い事この上なかったドレイク村長!?

イヤイヤイヤ、別人じゃん、見た目俺と大差ないじゃん」

 

なんとビックリ、こちらの門番さん、本当にマルコお爺さんのお子さんでいらっしゃいました。

ドレイク村長代理の行った冒険者招聘事業、要はボビー師匠の最初の頃の教え子さんですね。本人も頑張ったお陰か剣士の職業を授かって、これ幸いと村を離れた口です。

その当時はまだ先代村長の影響が強く、冬の餓死者を失くす為に必死になってもがいていた時期。ドレイク村長代理がマルセル一族の好みに合わせてブクブク太って行った頃ですね、そりゃ分からないっての。

 

「そうか~、カシム君はシンディー村長の所で働いていたのか~。いや、元気そうで何よりだよ。他の子供達、ベッキーちゃんやロイ君、タイロン君やジェシーちゃんなんかの話とか聞いてないかな?

村には一切連絡が来ないからね、心配していたんだが元気にやっているんだろうか?」

 

ドレイク村長代理、やっぱり帰って来ない村の子供達がどうなっているのか心配だった様です。そりゃそうだよな、いくらマルセル村が辺境の貧困地帯だったからって、都会に出たら何でも上手く行くなんて事にはならないもんな~。

こうして生きて出会えただけでも奇跡みたいなもの、帰ったらマルコお爺さんに教えてあげよう。

 

「あ~、他の連中の様子はちょっと。村を離れてからはそれぞれバラバラですから。ただジェシーの奴は何処かの商家に下働きで入っていた筈ですよ?俺とあいつは授けの儀が同じ年でしたから、領都でも暫くは互いに連絡を取っていたんで。

ただ互いに自分の事で一杯一杯になってしまって疎遠に、ここ十年程は全くですね。

マルセル村の生活は毎日の食事にも困る様なひもじいおもいをした記憶しかないけど、領都の暮らしも決して楽なモノではなかったですから」

 

ですよね~、このご時世、互いに連絡を取り合うなんてそうそう出来る事じゃないですもんね。都会は世知辛いって言うけど、皆必死に生きているってだけなんだろうな~。

 

「お待たせしました。シンディー様がお会いになられるそうです、どうぞこちらへ」

 

思わぬ出会いに互いに驚いていると、先程の門番さんが戻って来て面会の許可がおりたことをお知らせくださいました。

 

「どうもありがとうございます。それじゃカシム君、たまにはマルコさんに手紙でも出してあげてくれ。生活に困る様なら何時でも村に帰って来てくれて良いからな?最近流行りのビッグワーム干し肉というのがあるだろう?アレを作っているのがマルセル村なんだよ。今では冬場でも毎日干し肉を食べれる様になったんだ。ひもじい真似だけはさせないと約束するよ」

 

都会の荒波の中で、辛く苦しい事が沢山あった事だろう。そんな現実に打ちのめされながらも、それでも決して帰りたいと思って貰えなかった辺境の地マルセル村。

ジミーやジェイク君、エミリーちゃんが巣立って行った時、いつかマルセル村に帰りたいと思って貰えるのだろうか?

故郷は遠きにありて思うもの。忘れたいと思うのではなく、忘れ難き故郷と思って貰いたい。

村を離れて都会で暮らす元村人の話を聞き、そんな思いが胸をよぎるケビン少年なのでありました。

 




本日二話目です。
あしたはいよいよ妖艶の美魔女、守護者シンディー・マルセルの登場です。
お楽しみにね。
いってらっしゃい。
by@aozora
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