転生勇者の三軒隣んちの俺   作:@aozora

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第153話 村人転生者、領都を観光する (2)

ダンジョン、それはファンタジーの定番。多くの魔物が跋扈し、侵入者に牙を剥く危険地帯。ダンジョン、そこは油断した者から命を失う己の全てを賭けた夢舞台。

 

「はい、ホブゴブリンの挑戦者はこちらの列に並んでくださ~い」

 

「助っ人はいかがですか~、最後の止めまできっちりご指導いたしますよ~」

 

「お守りにポーションはいかがかな?使わなかった場合半額での買取もしているからお得だよ?一本銀貨一枚と銅貨五十枚、命の値段と考えれば安いもんだよ~」

 

第二階層もそれなりの人で賑わっておりました。って言うかギルド職員が誘導整理を行ってるって一体。“最後尾はここ”って言うプラカードを持ってらっしゃる方は現役冒険者の方なんですね。簡単な割に報酬がいいと、そうですか、お仕事頑張ってください。

 

って言うかここまで一匹のゴブリンもいなかったんですけど?

まぁウロウロしていたら何枚か投げ捨てられたゴブリンの腰巻を見つける事が出来たんでいいんですけどね。これだけの人数で掃討作戦を行えば腰巻きくらいドロップするわな~。

なんかもうね、探索って言うよりも採集ですわ、ドロップアイテムはその場に投げ捨てて置けばしばらくしたらダンジョンに吸収されるらしいんですけどね。

消えちゃう前に急いで回収せねばって訳で第一階層をぐるぐると。

でも一匹もゴブリンを発見する事は叶わず、仕方がないので第二階層に来てみたんですが、ここでも状況は一緒でございました。

試しに第二階層全体を対象に魔力感知を行ったんですけど、ゴブリンらしき反応が発生した途端に消えて行くって言うね、持って十秒、大概五秒以内。

・・・こんなの狩れるか~!!

仕方がないので最終ボスのホブゴブリンの所に来てみたものの、某テーマパークの人気アトラクション状態って言うね。

しかも現役冒険者様の手厚い介助(有料)も完備、ポーション販売も行われておりますって。・・・もの凄いこれじゃない感。

何度も言いますが、安全なのは良い事なんですよ?無理と無謀は良い事無しですから。良い事なんですけどね~。

俺は再び肩を落としながらドロップ品の回収に向かうのでした。

 

え~、先程“これじゃない感”とか言っていましたが、訂正いたします。ビバ、混雑!!

いや~、ドレイク村長代理の仰っていた事をコロッと忘れてましたわ~。

ゴブリンのドロップアイテムは腰巻だけ、取れる魔石も小指の爪の先くらいの小さなもので折角討伐しても見失ってしまう、パッと見その辺の石ころと変わらない。

だったらその辺に転がってるんじゃね?

魔石って言うくらいなんだから魔力は豊富なはずと思って目に魔力を纏って探してみたところ、ありましたよ魔石。本当に小さなものでこりゃ見つからないわってくらいの大きさでしたけど、ドロップアイテムと違って討伐すれば必ず採取出来るからか、結構な頻度で見つかる見つかる。

しかもある程度慣れて来ると何となく大体の落ちてる場所が分かるって言うね。これって職業を授かった事で反映された魔力支配のスキルの影響?何度も拾った事でゴブリン魔石の魔力反応を覚えたみたいです。

って事はゴブリンの魔石拾い放題?塵も積もれば何とやら、やったねこれで小金が稼げるじゃん。

魔石は魔道具の動力源に使われるとかなんとか、マルセル村に持って帰って色々実験してみよう。ゴブリンの腰巻と言い、いいお土産が出来ました。

 

そんな感じで第二階層をうろつくこと暫し、通路の脇にある少し窪んだ小部屋とも呼べない様な場所。何故かこの壁の向こうからゴブリンの反応があるんですよね~。

壁に向かってペタペタペタ、何となく違和感を感じる出っ張りを発見。

押しても叩いても特に反応は無いと。

・・・魔力でも流してみるかな?

 

”ガチャッ”

あ、なんか音がした。

再び壁を”ガゴッズズズズズズッ“・・・開いちゃったよ。

どうやらここは隠し扉になっていた様です。

お邪魔しま~す。

扉を開け中に入ると真っ直ぐ進む通路。そうそう、このダンジョンと言う場所、何故かそこまで暗くありません。それこそヒカリゴケでも生えてるんじゃないかってくらいに明るいです。そんでこの奥へと続く通路も同様に明かりがある訳で、その先にある家の扉の様なものもはっきり見えています。

でもボビー師匠の話だともう少し薄暗いって事だったんだけど?それこそ暗視のスキルでもない限り・・・そう言えば俺、未取得スキルの中に暗視のスキルがあったわ。確か身体支配ってスキルに統合されちゃったんだった。そりゃ違和感なくダンジョンの中で拾い物が出来る訳だよ、魔力支配に身体支配、見えまくりでしょう。

通路最奥の扉を前に、“村に帰ったらちゃんと状態チェックをしないと”と今後の予定を決める、ケビン少年なのでありました。

 

“ギギギギギギッ”

軋み音を立て開かれる木製の扉、その奥はこれまでの薄暗い通路と違い、天井から昼間の陽光のような優しい光が降り注いでいる。部屋の中央には立派な台座が鎮座し、その上には水晶の様な透明感がある淡い光を発する球状のものが置かれている。

そしてその脇では人を駄目にするソファーの様な柔らかそうな何かに子供ほどの背丈の小鬼の様な何かが寝転んでいる。

大きく口を開け、気持ち良さ気に眠るソレの様子を暫し観察。前歯は鋭く尖っているものの奥歯は擂り鉢状、おそらくは雑食。爪は太く鋭い事から攻撃の主体はこの牙と爪であろう。ただ五本揃った手の指は人と同じで器用に使いこなせるのだろう、道具を使った攻撃を行うものとみておいた方が良さげだ。これだけの特徴があるにも関わらず部屋の中に爪による傷も無ければソファー状の何かも破れたりしていない、ある程度の知性と理性があるものと考えた方がいいだろう。

まぁ観察はこれ位にして、そろそろ起きて動く反応も見てみたいところ。

 

俺はおもむろに腕輪収納からお手製の七輪と金網、それと炭を取り出し、ファイヤーの生活魔法で火を付けてからその上でビッグワーム改の干し肉を焼き始めるのでした。

 

“ジュ~”

焼き始めて暫し、炭火によってじっくりと焼かれたビッグワームが音を立て旨そうな香りを部屋全体に広げて行く。やっぱり七輪といえば炭でしょう、モルガン商会の案内人さんに聞いたら“当商会で扱っております”って言うんで譲ってもらっておいてよかった。

何か小間使いみたいな事ばかりしてもらっちゃってるけど、なんでもベストな答えを用意してくれる案内人さんマジ優秀、やっぱりできる人間は違うわ。

忙しい商会を抜け出して“マルセル村の大切なお客様をご案内しております”と言いながら仕事をさぼる手腕、流石です。

 

“ピクピク、クンクン”

干し肉がいい感じに焼け、そろそろ食べ頃といったところで寝こけていた緑色の何かが匂いにつられ反応しだしました。

 

“ガバッ、グギャク~”

 

“グ~~~~~~~ッ”

お~、盛大な腹の虫ですこと。まぁ誰がどう見ても完全な飯テロですからね、腹の虫が暴れるのも仕方がないですよね、それで目が覚めちゃいましたし。

「どうも、ダンジョンの誰かさん。侵入者の人間です。

ところでここって何?なんか台座の上にいかにもな怪しい光る玉がのっかってるんだけど?」

 

“グギッ!?グギャッグギグギグギャ~”

 

「いやいやいや、行き成り殺さないから、その気なら寝てる最中に殺してるから。まぁとりあえずこれ食べる?うちの村の特産、ビッグワーム干し肉の最高級バージョン。

美味し過ぎて問題になるからってんで販売見送りになってる商品です。

なんでそんなものを俺が持ってるのか?それは俺が生産者兼開発者だからですね。いらないんなら食べちゃいますけど?」

 

“グギギャググ”

“グ~~~~~~~ッ”

 

「お腹は素直だね~、まあ別にここで毒を盛ってもね。疑うようなら先に食べようか?半分貰うけど」

俺は焼き立てのビッグワーム改干し肉をパクリ。

“ハムハムハム”

うん、正解、やっぱり旨いわ~。我ながら岩塩のかけ具合が絶妙、ここまで来れば自信を持ってお客様にお出し出来るわ。

 

“フグギャグ~”

「はいはい、ちゃんとあげますよ」

 

”グギッ、ガツガツガツ”

「ほら、そんなにがっついたら口の中火傷しますよ?

えっ?ゴブリンはこれくらいじゃ火傷しない?そうなんですか?

ってやっぱりゴブリンなんですね、俺初めて見たんで自信がなかったんです。

ちょっと聞いてくれます?俺きょう初ダンジョンだったんですよ、めっちゃ期待して来たんですよ。それなのに昨日の授けの儀で戦闘職を授かって冒険者になった連中がわんさと押し寄せてましてね、もうダンジョン中大盛況で、結局一体のゴブリンも見ないままボスのホブゴブリンのところまでたどり着いちゃったんですよ。

しかもあれってボス部屋っていうんですか?ホブゴブリンのいる部屋の前に行列ができてまして、冒険者ギルドの職員さんが冒険者の誘導整理をするっていうね。もうなんだかな~って感じだったんですよ。

仕方がないんで冒険者が投げ捨てた腰巻やら見つけられなかった魔石やらを拾い歩いていたら、ここを見つけたって訳なんですよ。

あ、お水がなかったですね。よかったらお茶飲みます?偽癒し草の煮出し茶ならすぐ用意できますよ?あと東洋の島国産の蒸し茶っていうのも出せますけど」

 

“ギャギャグギク”

 

「蒸し茶行っちゃいます?結構チャレンジャーですね。

俺は好きなんですけど、好みがあるからな~」

そう言いながらカバンから急須を取り出し、陶器製の茶筒から取り出した茶葉を入れ熱湯をちょろちょろ。がっしりとした湯呑を注ぎ入れゴブリンさんの前に差し出します。

って言うかテーブル出していいですか?脚を切ればちゃぶ台になりますんで。

 

俺は腕は収納からフレムさん宅から回収した古いテーブルを取り出し長い脚をスパンスパン。剣鉈さん魔力の通り良過ぎ、全くと言っていい程抵抗を見せる事なくきれいな断面を作ります。

足の長さはばっちりですね、これは建築のスキルのお陰かな?目分測量が驚くほど正確に出来る。こんなのスキル頼みの世の中になってもおかしくないっての、便利過ぎでしょう。

なんか在りし日のスマホ依存症の人を思い浮かべそう、手放せませんって奴ですね。

 

“コトッ”

ちゃぶ台の上に差し出した湯呑。その湯呑を繁々と眺めてから静かに口を付けるゴブリン。まぁゴブリンがお茶に息を吹き掛けたり、ズズズッって啜るなんて事をしたらその方がびっくりなんですけどね。

啜るって行為は意外に難しいらしいですよ?俺の周りでスープを啜る人間を見た事ないもんな~。やった事がなければ出来ない、完全に生活習慣の違いですね。

 

「ところでゴブリンって種族はお茶なんて飲むんですか?」

 

“グギャ、グギャグギャ”

「そりゃそうですよね、普通水ですもんね。でもスープは作るんですね、意外です。

その辺は好みなんですか、生肉が好きな者もいれば焼いた方がいい者もいると、納得です。

そうそう、さっきも聞きましたけどあの台の上で光ってる玉って何なんです?凄い気になるんですけど」

俺は台座の上の光る球を指差して聞いてみた。

 

“グギグギグギャ~グ、グギグググギ”

 

「マジっすか、あれがあの勇者物語にも登場したダンジョンコアですか。それでゴブリンさんがダンジョンマスターだと。気が付いたらこの場所に囚われていたって完全に誘拐じゃないですか、怖いなダンジョンコア」

 

“グギイグギャ”

「いろいろ難しいことが考えられるのはこのダンジョンコアに触れたからなんですか、へ~。これって触れたら強制的にダンジョンマスターにさせられちゃうって奴なんですかね?めちゃくちゃ怖い代物ですね」

ダンジョンコアがマジ物のトラップだった件、こんなの怖くて近寄れないじゃん。ダンジョンマスターを倒してお宝GETって近寄ったところをって奴ですね、悪辣すぎる。

 

“グギ、グギャギャグ”

ゴブリンさんがダンジョンコアに向って何か話すと、部屋の壁がモニターに代わりボス部屋の様子が映し出されました。

あれがホブゴブリン、なんかがっしりタイプのおデブさんって感じ、もしくは小柄なオークと言ったところでしょうか。

おっ、新たなチャレンジャーが。“行くぞ!”って気合い入れてる割にめっちゃへっぴり腰なんですけど。あれで冒険者?冒険者ヤバくね?あんなんじゃすぐ死んじゃうよ?ホーンラビットに会ったら一撃よ?

ほら言わんこっちゃない、ホブゴブリンのこん棒で吹き飛ばされた。

あ~あ、パーティーメンバーへたり込んじゃったよ、これどうなるんだろうね~。

 

「ん?助けたいかって?まぁ自業自得じゃね?ここってダンジョンだし、ダンジョンって命懸けの場所なんでしょ?だったらまあね、狩りに失敗したんだから仕方がないんじゃない?

でもあれだね、死にそうになったら装備品剝ぎ取ってダンジョン入り口にでも放り出せばまた来てくれるかもね。そんでその装備品は修理してドロップアイテムにでもしちゃうとか?そうすればリピーターも増えるかも?」

 

“グギ、グギャ”

「その案採用ってマジ?そんな事出来るの?ボス部屋限定ならリソースもそんなにかからないんだ、なんか大変なんだね。

よかったら魔力いる?俺結構な魔力持ちよ?」

 

“グギグギ?グギャ”

「この球に向かって注げばいいのね、了解~。とりあえず三日分でいいかな?」

 

“ズオン”

 

“!?グギャ、グギグギ~♪”

「へっ?三十年分の魔力がフル充魔ってマジ?これならいろいろ改装も出来ると、へ~、よかったじゃ。それじゃさ、オークの階層作らない?第三層、だだっ広い草原階層で不定期にオークが現れるの。集団のオークは厳しいから基本単体で、ドロップアイテムはオーク肉でいいんじゃない?やっぱり肉だよ肉、お客様の求めているのは肉なんだって。

ダンジョンコアへの魔力補充ってあと何年分行けそう?さっきので三十年分なら二百年分は余裕で行けるよ?」

 

“グッ、グギョ?”

「この人間おかしいって失礼な。でも時間が掛かってもいいから改装工事よろしくね、そのうち遊びに来るから」

 

俺はダンジョンコアに魔力の腕輪に貯め込んだ魔力をたっぷりと補充、ゴブリンさんがお礼に何かくれるというのでお布団セットを頂きホクホク顔でダンジョンを後にするのでした。

でもダンジョンコアって凄いのね、魔力次第でなんでも出せるってあり得ないでしょう。ゴブリンさんとダンジョンコアの秘密は、墓場まで持って行く事にします。

 

高級寝具セット、魔力二年分。あなたに理想の眠りをお約束します。

(byダンジョンコア)




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