“してこれが我の牙や爪であるな。意識しておらなんだが、そこそこ溜まっておった様でな”
“ドサドサドサドサドサッ”
ドラゴンの牙・爪、それは勇者物語にも出て来る最高の剣の素材。その硬度、鋭さ、切れ味、どれをとっても最高の出来となる事が確約されているとされる超高級素材。
過去王都のオークションにおいて桁外れの金額で落札されただの、一本の牙を巡り紛争が起きただのと言われる一品。
それが目の前で文字通り山の様に積み上げられて行く。
・・・うん、大福たちのおやつだな。
俺はサクッと闇属性魔力で包み込み収納の腕輪にポイ。今日だけでどれ程世間様にお見せ出来ない品を仕舞い込んだことか、収納の腕輪様々である。
魔力補給制限が大幅に改善されありえない程の収納量を誇るに至った収納の腕輪(魔力式自己修復機能付き)、これは今度本部長様にお礼をする為に教会へお伺いしなければなりませんね。エルセルの街の清掃もあらかた完了したみたいですし、買い物に出掛けるのもいいでしょう。あそこなら走れば日帰り出来ますから。
目覚めて良かった魔力支配と身体支配、距離の概念がぐんと縮まったケビンなのでありました。
「あ、そうだ、お酒って飲まれます?何かどこかの国だかでドラゴンにお酒と食べ物を供物として捧げている地域があるって聞いた事があるんですが?」
“む、酒であるか?過去に数度飲んだことがあるの、あれは良い物であった。ただ我らは体が大きい故酔う程に飲むと言う事は出来んのであるがな。嗜好品としては楽しめたと記憶しておる”
「でしたら湯呑にカクテルを作って行きますんで、後でゆっくりと楽しんでください。
ドラゴンさんって光属性って大丈夫ですか?」
“光属性であるか?あれは心地よい物であるな。光属性系の攻撃なら幾らでも撃って来いと言うくらいには好きであるな”
「あ、心地いいんすね、そっか~、魔法使いの光属性攻撃は心地よかったのか~」(遠い目)
「それじゃ気を取り直して、まずはジャイアントフォレストビーの蜂蜜をドバドバ、壺で七つ分行っちゃいましょう。
次に光属性魔法マシマシマシマシマシマシウォーター(熱湯)をザバッと入れて先程作った石棍棒(ノーマルタイプ)を使って混ぜ混ぜ。
で、仕上げに本部長様から頂いたあなた様の忘れ物のお酒をドバドバドバっと。
へ~、これって大量に出したい時って勢いよく出せるんだ。流石あちら産の酒瓶、めっちゃ高機能。
最後にクルクルかき混ぜて“ケビン特製蜂蜜カクテル”の出来上がりでございます」
俺は完成したカクテル入りの湯吞を差し出します。
「それじゃ俺たちはこの辺でお
色々とありがとうございました。
お~い大福~、帰るよ~。緑と黄色、空腹は収まった?大丈夫みたいだね。
では失礼します」
俺はいつまでも魔力水の池の上にぷかぷか浮いている大福を触腕を使い引っ張り上げ、お腹もこなれて人心地付いたと言った雰囲気の緑と黄色に声を掛けると、この場を後にする事をドラゴンに告げるのでした。
“うむ、気を付けて帰るが良い。其方達ならいつでも歓迎しよう”
そう言い音も無く洞窟の奥に消えて行く最強生物、それと共に周囲から消える強大なプレッシャー。
どうやら
その場に膝から崩れ落ち力なく座り込む俺氏、もう何なのよ一体。
ドラゴンですよドラゴン、大福たちの進化?そんなもの些事ですわ、些事。
背中に刺さってた棘ってどう考えても総アダマンタイト製の大剣じゃん、こんなん国が動くわ、国が。
それにドラゴンの鱗ですよ、魔法耐性の塊ですよ、剝がれた脱皮後の皮だって幌馬車の幌作れちゃうくらいの奴がどんだけってくらいありますから。
加工してネーミングしちゃえばバレない?黒鴉の鑑定結果を聞いた時も素材については触れてなかったし、染めちゃえばバレないかも。
便利なものはこっそり使う、ケビンの現実逃避による妄想は、緑からの“早く行きましょう”と言う催促が入るまで続くのでありました。
一方洞窟奥のプライベートスペースに戻ったドラゴンはと言えば。
“旨いぞ~~~~、この豊潤にして深みのある味わい、これはいつぞや食した事のあるジャイアントフォレストビーの蜂蜜をベースに光属性の魔力水をブレンド、そしてこの酒は・・・<ケビン特製蜂蜜カクテル>、至高の逸品。
これ程の飲み物を作り出すとは、食材神の加護を受けし村人ケビン、その名、しかと憶えたぞ”
どこぞの食通の様な食レポをしつつ、確りケビンをロックオン(酒)したのでありました。
――――――――――――――
眩しい日の光、永遠とも思える時間からの解放。
洞窟から出たケビンは思う、“俺は生きてるぞ~~~!!”と。
まぁ危険なんで大声を上げる様な真似はしませんが。だってここ、魔境のど真ん中なんだもん。流石に魔境が広大であるとは言え、この地点より危険な場所ってあまりないんじゃないかな?
なんで辿り着いちゃったかな~、ドラゴンの巣なんて運がいいのか悪いのか。
子供が出来たら絶対自慢してやろう、“お父ちゃんはな、若いころドラゴンにあった事があるんだぞ。”って。まぁ信じて貰えないんだろうけどね、俺はそんな我が子を見ながらニヤニヤするのさ。
だからお前に喰われる訳には行かないんだよ、蛇公。
俺の見据える先、そこには鎌首をもたげこちらを見下ろす大蛇。俺なんか一口で丸呑みにされるだろうその威容に、恐怖心が全身を駆け巡・・・らないんだよね。
なんかね、もう最強生物を見ちゃった後だとその辺の生き物が雑魚にしか見えないって言うか、コイツだってこの洞窟から流れ出る魔力水を飲んで巨大化しちゃった口じゃないの?つまりはおこぼれ進化?
・・・雑魚じゃん。
それにいつまで鎌首をもたげてるのさ、さっさと掛かって来いよ、来れるものならな?
先程からこちらを見下ろしたまま動かない蛇公。動かない、のではなく動けない。
だっておいらが基礎魔力の触腕で掴んでるんだもん♪バレないって最高。
そんで蛇公の胴体を影の中にズブズブ、首だけになったところで剣鉈の“一閃”。
溢れ出る赤い液体は<血界領域>でコントロール、急造の壺に収納です。
完全に動かなくなった所で腕輪収納にポイ、影魔法と腕輪収納のコンボ、超便利。
その間護衛してくれるはずの御三方はと言いますと、何かデッカイ鹿やら亀やらと遊んでおられます。いくら恐怖心が湧かなかったからってここって魔境なのよ?今の蛇だって魔境の魔物よ?助けてくれてもいいのよ?
なんか完全に放置プレイを食らうケビン君なのでありました。
「お~いお前ら、さっさと仕留めろよ~。今日中に中層まで帰るんだからな~、流石にここで野営は勘弁だぞ~」
俺は御三方がサクッと仕留められた獲物を腕輪収納に仕舞い、すぐさまその場を後にするのでした。
“グガーーーーーーーッ(旨いぞ~~~~~~!!)”
背後の洞窟からは何やら咆哮が聞こえますが気にしてはいけません。
聞こえないったら聞こえないのです。
“ポヨンッポヨンッポヨンッポヨンッ”
““ススススススススーーーーーーー””
濃厚な魔力溢れる渓谷の岩場を気持ち良さげに進む三匹の魔物、その後ろを某アニメに出て来るニンジャの如くシュタンシュタンと付いて行く俺氏、そしてその上空を確りと獲物を見据えるかのように捉えて離さない飛行生物。
・・・あれって絶対ロックオンされちゃってるよな~。前方の御三方、あまり魔力を抑えていないと言うか、今までの感覚で魔力を抑えるとめっちゃ溢れてると言うか。
進化の影響か総魔力量が桁外れになってるんですよね~。
俺も最強生物を見た後で感覚が狂っていたのか、上空のトカゲに気が付くまで全く意識してなかったって言うね、大失態でございます。
でもあのトカゲもしつこいよな~、このままマルセル村までついて来られても困るし、邪魔にならない様に今のうちに
「ってな訳でストップ~、先生方、お願いします」
俺がそう言うや後ろを振り返り上空を見詰める黄色。
黄色はその口をゆっくりと開き“ビュンッ”
ウォーターレーザーとでも呼ぶべきその一撃は、上空のトカゲを一瞬で捉えると頭部を貫通。揚力を失ったトカゲはこちらに向かい真っ直ぐ落下してって<収納>。
うん、危ない危ない。闇属性魔力を伸ばして上空でトカゲを掴んで収納の腕輪にポイ、なんちゃって魔剣グラトニュートの時もそうだったけど、闇属性魔力と収納の腕輪のコンビって最強じゃね?
今後も何かとお世話になるであろう秘匿性の高い魔力運用方法に、思わず顔をほころばせるケビンなのでありました。
「うわ~~~~~!!」
三日目の朝が明ける、場所は大森林の深層わきの中層部。流石に緑生い茂り魔物か活発に動き回る大森林深層部で夜を明かすほど無謀でも無茶でもない。
昨日この場所に到着した時はすっかり日が沈んでからになってはしまったが、すぐにテントを取り出し野営の準備を行った。
夕食のメインは昼間に仕留めた巨大蛇。倒すだけならそれこそ“黒鴉”で眠らせちゃえば簡単なのだが、それだとお肉に含まれる残存魔力が目減りしてしまう。
無理無茶無謀はしない主義だが、美味しいは正義である。出来るのならば美味しいお肉が食べたい、残存魔力たっぷりの新鮮なお肉を。
幸いこの獲物はすぐに血抜きを行った為、変な臭みもなくすぐにでも食べれる状態。それを串焼き肉の要領で炙り焼き、軽く岩塩を振りかけていただかせてもらいました。
魔境万歳、雑魚蛇でこれってことは空飛ぶトカゲはどうなっちゃうの?
なんか行動がどんどん食欲に侵食されて行ってる様な、これって食料神の加護が関係してるとか?危険を顧みず食材に突貫かますとか?だったら凄い嫌なんですが。
何か先々に不安を残しそうな状態ですが、一先ずテントでお休みさせていただきます。御三方、夜間の警護の方よろしくお願いいたします。
“ポヨンッポヨンッポヨンッ”
““クネクネクネクネ””
で、朝になり一晩経って色々と心が落ち着いたのか、不意に前日の事を思い出した瞬間全身に震えがですね。そりゃ怖いって、ドラゴンだもん、こちとらブレス一発でアウトですから。大森林中層部であるにも関わらず、思わず朝から叫び声を上げちゃいましたっての。
俺よく冷静に対処できたよな、実際は全く冷静じゃなかったんですけどね。逃避行動と言うか防衛本能と言うか、恐怖の感情を押し殺す為、心を部分麻痺させていたようです。
それが目覚めと共に一気に蘇ったと言いますか、あの時の感覚と感情が襲い掛かって来たものだからもうね、身体中ガタガタ震える震える。
何が“蛇公、雑魚だな”だよ、超巨大生物じゃん、どこぞの山の主様じゃん。
空飛ぶトカゲってワイバーンじゃん、前にドレイク村長代理が言っていた七名の金級冒険者パーティーを半壊させた奴じゃん、速攻フラグ回収しちゃってるじゃん!!
冒険者になる気がないから白金級冒険者になる条件のワイバーン討伐も俺には関係ないんですけど、何でその条件達成しちゃってるかな~。
本当に自分はよく無事にここまで戻ってこれたものだと、未だ大森林の中層部(特級危険地帯)ではあるものの、これまでの幸運を感謝し女神様に祈りを捧げるケビンなのでありました。
本日二話目です。
いってらっしゃい。
by@aozora